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海峡の漁村・赤間関を、コンクリの町に変えた桜井の家。昔日の繁栄は去り、一人娘の梅代は、出戻った娘と孫娘の3人で日を過ごす。半島から流れついたようにいつの間にか隣地に建った教会を憎悪しながら……。因習に満ちた共同体の崩壊を描く表題作ほか、変態する甲虫に社会化される自己への懐疑を投影した「蛹」など、ゼロ年代を牽引する若き実力作家の川端賞・三島賞同時受賞作!
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Posted by ブクログ
大好きな小説集。何度も折り入って読み返しているんだけれど、なかなかレビューを書けなかった。書いてみます。 この小説集には『不意の償い』『蛹』『切れた鎖』の3篇が収録されている。三島賞と川端賞をダブル受賞したそうな。賞の裏付けもある通り、初期の傑作と言えるだろう。中でも衝撃的なのは社会化されていく自己...続きを読むをカブトムシに投影した『蛹』だろうがみなさん言及されていると思うのでここではそれ以外の2編について重点的にレビューを書いてみようと思う。 まず『不意の償い』。収録されている作品の中で個人的に一番好きだ。大まかな筋としては同じ団地で同じ年に生まれて育った男女(夫婦になる)が初めてのセックスをしている時に両親の勤め先のスーパーマーケットで火事が起き4人全員が死に、「セックス中に親が死んだ」罪の意識を感じ、さらに便所と下駄箱の間に妻を押し付けて犯し妊娠させたことが罪の意識を加速させ、妄想と錯乱の中ラストまで突っ走る。主体と客体がところどころで逆転し、スーパーマーケットは一分ごとに燃えてまた復活し、街は炎に包まれ、人間の顔をした犬が歩き回り、股間が突然大きくなりズボンを突き破って表れたのは磨きたてのぴかぴかのボルトだ。あまり目立たないが田中慎弥の傑作短編。 『切れた鎖』は没落した名家の女三代が主人公というか語り手で(おばあちゃんが主人公だろうか)、因襲に満ちた共同体の中で朝鮮半島からやってきた教会を憎み、顔がいいだけでそのほかには何のとりえもないだろう男たちと遊んでばかりいる二代目の問題に手を焼き、幼稚園に通う孫と共同体の没落を表しているようなファミリーレストランで食事をしながら話は進む。この「近代化が進み空虚さだけが残った共同体」の描写がとてもうまい。「男たちが酒を飲んだ後に食べるのは穴子の湯漬けではなくアイスクリームサンデーだった」という一文にすべてあらわれている。 この作品全体に漂っているのは「濃厚な死の匂い」だ。ある人にとっては不快なものになるだろう。はまる人にははまる。薄くてすぐ読めるし本屋に行けば新潮文庫から出ていることもありわりと簡単に手に入ると思うので読まれたことがない方は一度読んでみることをおすすめしたい。現代文学の担い手の初期の短編。読む価値あり。
田中さんの作品としては、これが読んだの二つ目でした。 短編の作品が三つ入っていて、各々、不意の償い、蛹、切れた鎖です。 共食いと同様、文章が力強くて、短編なのに物凄く疲れるものでした。 疲れるとはいっても、不快感はなく、本文といい意味で対峙している感覚になれます。 三つとも印象には残...続きを読むりましたが、三つ目の切れた鎖が一番印象に残りました。 正直、初め人間関係や、話しのつながりが把握できなくて、半分行く前に初めに戻って、やっと本の世界に入り込むことができましたが。 自分の国語力のなさに改めて気づかされました。 まだこの春休み本を読むとは思いますが、今のところ春休みでは、一番印象に残る小説です。 また、田中さんの作品を読みたいと思わせられました。
写文したくなる名作 やっぱり「血縁」なんやなテーマは。しかし、共喰いより断然面白い。 家族はバトンを繋いでいくけどその中身は思いや、時代で形を変えて受け継がれる。そしてそれはいかなる力でも切れないと思わせる。いくら時代がグローバリズムを称揚しても、関係なかったことにはできない。関係ないことにしよう...続きを読むとして「関係ないやん」と思うこと自体、関係に縛られている。 著者は「切れた鎖」でその呪縛を解き放とうとしたのではなく、あえて浮き彫りにしたんだと思う。 とにかく素晴らしい作品。
新進気鋭の作家による中編集。まだ若手なのにかなりシュールな表現力・独特の世界観。一文一文を噛み締めるようにして読みたい一冊。
やっぱり蛹がよかった。けれども文章構成の美しさでは最初の話が素晴らしかったし、話そのものの豊饒さにかけては表題作が一番か。取り合わせがいい。読んでよかった。
「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の短編三つ。 蛹が一番面白かった。 力を蓄えて、蓄えて、蓄えて、蓄えて、そして蓄えたままでいる。 その始まりから終わりまで、ずっと力を込めつつ読んでいた。 田中慎弥はまだ3冊目だと思うけれど、いつも表題作じゃないやつが一番面白い。 150120
田中慎弥の作品に出てくる人物の本当にどうしようもなさ。これこそが人間なのではないかと強く思う。本当に本当にどうしようもない。ろくでもないし、怒りもわいてくる。しかし、ひとつひとつの言動を取り上げるのではなく、総体として、人間はこういう弱さとか残忍さを抱えた存在なのではないかという疑念を払拭しきれない...続きを読む。しかしこのひとの本の、日本伝統純文学のど真ん中感はいったいどこから来るのか。少々時代錯誤感をわたしはかんじてしまうのだけれど、今、こういうものを発表する意味、というのはまあ著者の関係なのでしょうがないのだけれども、こういうものを読む意味、ということについて考えていくと、どうにもこうにもやっぱりしっくりこないんだよなあ。
「不意の償い」くどいまでの自己の描写は三島由紀夫みたいです。火事は金閣寺のオマージュなのかも。 「蛹」は作者自身の私小説ですね。人間も昆虫のように、しかし違ったかたちの変態をする。人間を原初生命体として見た、成長の表現だと思います。母親と作者との半生とこれからの思いを感じました。 「切れた鎖」...続きを読む39;母'、'祖母'と時間が度々行ったり来たりするので読みづらいです。性交、女性へのコンプレックスを多分に感じました。
こちらの人生まで負の連鎖に巻き込まれる不安を感じるほど圧倒的な力がある。憎むことで自分の輪郭を捉えてきた人間にとってソレが受け継がれるということは恐怖であっても自分に対する肯定なのだから止めさせることはできないだろう。土地に縛られるということは自分に縛られることとイコールなのだ。
読んでいて、気が滅入った。 悪夢や幻覚みたいな、行間のつまった描写は文学的なのかもしれないけど、 巻き込まれてもいい、と思える好きな世界ではなかった。 表題作とか、とても暗くて救いようがない感じ… 不意の償い は、そんな中でもなんか、主人公が現実で置かれている環境、周囲からきちんと愛されている様子が...続きを読むちらほら、妄想の向こうに見えるのがたまに微笑ましい時があり。 ほらほら、素直にそっちの幸せなほうに行こうよ。。と思ってしまう。 きっと、とても不器用でいい人なんだなあ。。 でも、意地で全部読んでしまって読後感の悪さに後悔した。。
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田中慎弥
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