田中慎弥のレビュー一覧

  • 切れた鎖

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    新進気鋭の作家による中編集。まだ若手なのにかなりシュールな表現力・独特の世界観。一文一文を噛み締めるようにして読みたい一冊。

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    2018年12月14日
  • 宰相A(新潮文庫)

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    ネタバレ

    主人公は、母の墓参りに帰郷したが、到着したのは故郷ではなく、全く見覚えのない景色。周りは軍服のような服装をしており、瞳も髪も日本人離れしている風貌な人ばかりだった・・。
    ここは日本であるが、今現在の日本とは違う世界にスリップしてしまった主人公。右も左も分からず、拘束され”旧日本人”と差別され、隔離される。

    日本の政治とは何か? 現在の政治から窺える日本の未来はどうなのか?・・考えられるであろう道筋が作中に落とし込まれている。

    ただし、あくまでフィクションである。どのように感じ、考えるかは各々の捉え方だろう。今の政治に不満があるのか、無いのかで捉え方も変化するだろう。

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    2018年11月29日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    父が一方的に息子に話し続けるという、かなり挑戦的で独特な形式で書かれている。

    三世代それぞれの思いや感情の連鎖が伝わってくる。かなり面白いと感じた。

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    2017年08月16日
  • 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場

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    ネタバレ

    大変おもしろく読んだ。
    共食いも宰相Aも正直途中で挫折したんだが、
    これは、短いんで、もーだめだー、な瞬間がこず、最後まではい次はい次、な感じで最後まで読めた。
    この人のはなんかいろいろ濃いので、好き嫌い分かれるだろうなあっと思う。
    でも濃いけど、文章事体は分かりやすいとゆーか読みやすい。ので、この短さはちょうどよい感じ。

    表題のイメージは深い。
    「今日の昼飯」が結構好き。
    「右傾化」には笑った。が「体験」がそれなりに実体験は入ってそうでコワイ。
    表現の自由に鎖がまかれないことを願うのみ。
    いや、願うだけじゃだめなんだろうが、
    今回の選挙結果をみれば暗澹たる気分。

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    2016年07月10日
  • 切れた鎖

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    やっぱり蛹がよかった。けれども文章構成の美しさでは最初の話が素晴らしかったし、話そのものの豊饒さにかけては表題作が一番か。取り合わせがいい。読んでよかった。

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    2015年03月05日
  • 切れた鎖

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    「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の短編三つ。
    蛹が一番面白かった。
    力を蓄えて、蓄えて、蓄えて、蓄えて、そして蓄えたままでいる。
    その始まりから終わりまで、ずっと力を込めつつ読んでいた。
    田中慎弥はまだ3冊目だと思うけれど、いつも表題作じゃないやつが一番面白い。
    150120

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    2015年01月21日
  • 共喰い

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    共喰い

    独特の文体が 怪しい雰囲気をつくる。
    サカナのにおいが 漂っている。
    カタツムリが ゆっくりと歩いている。
    怪しい文体にもかかわらず 凶暴な勢いがある。

    登場人物の 抱えている闇は大きい。
    昭和63年のころ。
    篠垣遠馬は 17歳。高校生。
    つきあっているのが 会田千種 18歳。

    生みの母親は 魚屋で仁子。60歳。
    戦争で 右腕の手首が先からなかった。
    10歳年下の父親 円。
    暴力を振るうことで仁子とわかれた。
    決して美人というわけではないが胸と尻が大きい琴子 
    35歳が 父親と一緒に住んでいる。

    登場人物の設定自体も ぐにゃぐにゃしている。

    川が割れ目だと言う表現に、川の表情

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    2021年09月27日
  • 切れた鎖

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    田中慎弥の作品に出てくる人物の本当にどうしようもなさ。これこそが人間なのではないかと強く思う。本当に本当にどうしようもない。ろくでもないし、怒りもわいてくる。しかし、ひとつひとつの言動を取り上げるのではなく、総体として、人間はこういう弱さとか残忍さを抱えた存在なのではないかという疑念を払拭しきれない。しかしこのひとの本の、日本伝統純文学のど真ん中感はいったいどこから来るのか。少々時代錯誤感をわたしはかんじてしまうのだけれど、今、こういうものを発表する意味、というのはまあ著者の関係なのでしょうがないのだけれども、こういうものを読む意味、ということについて考えていくと、どうにもこうにもやっぱりしっ

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    2014年01月15日
  • 切れた鎖

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    「不意の償い」くどいまでの自己の描写は三島由紀夫みたいです。火事は金閣寺のオマージュなのかも。
    「蛹」は作者自身の私小説ですね。人間も昆虫のように、しかし違ったかたちの変態をする。人間を原初生命体として見た、成長の表現だと思います。母親と作者との半生とこれからの思いを感じました。
    「切れた鎖」'母'、'祖母'と時間が度々行ったり来たりするので読みづらいです。性交、女性へのコンプレックスを多分に感じました。

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    2013年11月26日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    ちょっと毒有りのキャライメージの田中さんだからではないですが、初ものは短編からいってみました。
    私的には怖い、面白いといったところの他とてもきれいでわかりやすい文面という感じで好感度大です。

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    2013年07月30日
  • 神様のいない日本シリーズ

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     野球クラブでいじめに遭い、部屋に閉じこもってしまった息子に父親が語る父(息子にとっては祖父)との野球をめぐる物語…。というと何かハートウォーミングな話を期待してしまいそうだけど、全然そういう話じゃない。
     父は実家の困窮のために中卒で働くことになり、野球を諦めた。仕事が決まった日、父は愛用のバットで自宅で飼っていた豚をなぐり殺して川に捨てる。野球への執着は野球賭博というかたちであらわれ、賭博のせいで身上を持ち崩して家を出る。妻と幼い子どもを置いて。その子どもが中学生になる頃、家を出た父から「野球をやっているか」という手紙がくる。ちょうどその頃、プロ野球の日本シリーズでは奇跡が起きようとしてい

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    2013年05月08日
  • 犬と鴉

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    「犬と鴉」「血脈」「聖書の煙草」の三編入り。
    うまいなあ、熱いなあと思いながら読み切った。
    回りくどいような描写も小物がうまくまとめてくれている。
    その年初めて逃げ水を発見した時のよな(さしてうれしくもないのにはっとしてじーっと眺めてしまう。毎年。)印象的なシーンがたくさん詰まっている。まだまだ空腹です。

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    2013年03月02日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    昨年の芥川賞で話題をかっさらった田中氏の掌編小説集。

    とかく風刺みたいなものを書かせるとこの人光るなぁ…と。個人的には「男たち(一幕)」がフフっと笑えるために好きだったり。どれもたった3~4ページしかないのに、どこか「えっ?!」と思うような終わり方をしているので、読んでいていろいろな引っ掛かりを覚える。でも、それがこの小説集の良さなんじゃないかなー、と私個人は思います。

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    2013年01月22日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    ネタバレ

    図書準備室、冷たい水の羊の二編からなっている本。星4つをつけたのは後者の方。図書準備室はぼちぼち。冷たい羊はいじめをあつかっている作品。いじめられている彼は自殺を考えるようになる。色々な理由をつけ、最良の日を選択する。どうなるか。暗い内容を書いている本だが、好きな感じの落ちで、読み終われば爽やかな感じがした。次は著者の切れた鎖をよんでみたい。

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    2013年01月08日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    どの話も先が読めず、どうなるんだ?と進むがあっという間に終わっちゃうショートストーリー。いくつか怖い!と心に響く物もあり、何度読んでも心に残らない作品あり。ほかにはどんな文章を書くのだろう?
    いくつか使い慣れない見慣れない語句があって、最近「文学」読んでなかったし・・・と自分を省みた

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    2012年12月17日
  • 切れた鎖

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    こちらの人生まで負の連鎖に巻き込まれる不安を感じるほど圧倒的な力がある。憎むことで自分の輪郭を捉えてきた人間にとってソレが受け継がれるということは恐怖であっても自分に対する肯定なのだから止めさせることはできないだろう。土地に縛られるということは自分に縛られることとイコールなのだ。

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    2012年11月25日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    初めて田中作品を読むのに短編だったらいいだろうと思って借りた。すごくよかったのでここのレビューを見て意外だった。とはいえ内容は覚えてない・・・。

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    2012年11月25日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    1986年日本シリーズ。この年限りで引退する広島の四番山本浩二、涙のドラフトから西武入りして高卒ルーキーながら四番に座る清原和博。
    象徴的な二人がチームの柱である両チームの闘いは、野球の神様が奇跡的な運命を起こした。
    あの日あの時こうであればというのは、野球も人生も同じこと。タラレバ禁止の世界において、希望と後悔の行き先と人間の足掻きを作者は描いていると思う。

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    2012年11月12日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    待っているとき。時間は勝手に流れるし、何もしなくてもいいのにたまに辛いときがある。
    「待つ」という行為がなんで苦痛なのか少しだけわかった気がする。

    田中先生の作品を読むのはこれが二つめ。
    まさに男が書いた小説!といった感じです。とても面白かったです。

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    2012年10月13日
  • 田中慎弥の掌劇場

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     第146回芥川賞はニュースにかなり取り上げられたのを覚えているだろうか。「共喰い」で受賞した田中慎弥さんの会見が非常に話題になり、また受賞スピーチでも一言で終わり、インターネットだけではなく、各メディアで大きく取り上げられた。その結果「共喰い」は大ヒットし、作家としての知名度が大幅に上がった。

     もともと2008年に川端康成文学賞、三島由紀夫賞を受賞しており、何回も芥川賞候補になっているので、力はかなりある作家である。なんでもそうだが、実際に受賞した人は記憶に残るが、それ以外はすぐに人々に忘れ去られてしまう。会見及びスピーチで世間的にかなりイメージが作られてしまったが、王様のブランチや他の

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    2012年08月12日