あらすじ
7年にわたり書き続けてきた田中文学の結晶。
〈掌の小説〉集大成、衝撃の44篇!
1篇1600字に世界が凝縮。生と死、過去と未来、絶望と希望、作家のイマジネーションが、いま、あらゆる境界を突破する。
〈田中慎弥の聖書〉とも言える標題作はじめ、小説の醍醐味に満ちた作品が織りなす圧巻の文学体験。2012年に出版界の話題をさらった『田中慎弥の掌劇場』の第2弾。
「作家が死んでも小説は残る。つまり自分の命より価値のあるものを自分で書かねばならないのが作家であり、一日で一気に仕上げる「掌劇場」の場合は特にそれを実感させられた。作家の自分が人間の自分を徹底的に痛めつける時間だった。私自身と死について扱ったものがあった。自殺に関するものもあった。私が何度も実行しようとしたのは事実だ。生涯他人に言えないことを見たり体験したりした末のことだった。また、身近な人がいなくなり、自分一人が生きていていいのかと悩んだ結果でもある。死に接近し、死を描くことが私の道になった。明日死ぬとしても今日のところは小説を書こう、という意識は、一日で仕上げる「掌劇場」の形式に添ったものと言えた。それと同じ時期に、現実の政治や、私の地元選出の総理大臣を反映させて書いたものもある。あの総理大臣に私が感じる反発は政治的、社会的背景のものではない。それだけに、私は私自身の今後が恐ろしい。死への恐怖より怖いのは、生きる恐怖だ。そして、この二つの距離はいまや、ほとんどない。」――「連載を終えて」毎日新聞西部本社版より
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大変おもしろく読んだ。
共食いも宰相Aも正直途中で挫折したんだが、
これは、短いんで、もーだめだー、な瞬間がこず、最後まではい次はい次、な感じで最後まで読めた。
この人のはなんかいろいろ濃いので、好き嫌い分かれるだろうなあっと思う。
でも濃いけど、文章事体は分かりやすいとゆーか読みやすい。ので、この短さはちょうどよい感じ。
表題のイメージは深い。
「今日の昼飯」が結構好き。
「右傾化」には笑った。が「体験」がそれなりに実体験は入ってそうでコワイ。
表現の自由に鎖がまかれないことを願うのみ。
いや、願うだけじゃだめなんだろうが、
今回の選挙結果をみれば暗澹たる気分。
Posted by ブクログ
首相が記者会見で明らかに右側に傾いてきている。体調の何らかの変化なのか癖なのか。ついには国会審議の中で野党からも右に傾いている姿勢について、国民の間にも疑問と不安が広がっていると、説明を求められる。首相曰く、マスコミも野党の皆さんも、私が右に傾いているとさかんに騒ぎ立てるが、皆さんから見て右ということは、私にとって左に傾いているということと嘯く。各紙はこれに猛反発。客観的に見て右に傾くのを左に傾くというのはあまりに無責任と噛みつく。側近たちは極力意識して正面をむくよう進言することになる。
相変わらずの直球どストレート。そんな中、希死念慮をも窺わせる弱気もちらほら見せる。なかなか可愛い。得意の掌編をあえて卒業というのも意味深。何だか特別な一冊になりそう。