田中慎弥のレビュー一覧

  • 孤独論 逃げよ、生きよ

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    高校から引き篭もり、読書と執筆の中に身を置き、果てに芥川賞を受賞する著者。捻くれてそうで、常識人ぽくない所が面白そうではないか。本来、作家稼業は生き様が詩的であって欲しいものだ。そして確かに、彼の書く純文学には詩的な魅力があった。

    しかし、主張は一本、生業の奴隷になるなと。自分を押し殺し、思考停止、ただ働くだけ、主客転倒に仕事や道具に使われてたまるか、と。少し、ズレているか。奴隷とはある種の状態だが、人は、カロリーを得るために自由を交換する社会性生物なのだから、一時的な「奴隷状態」などは飯を食うためには必ず経験する事だ。それはつまり、肉体の限界や根源的な欲望に対し、それこそ、精神との主客転倒

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    2018年02月03日
  • 孤独論 逃げよ、生きよ

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    苦手なことを排除して、好きなことをする時間を突き詰めていったら作家になっていた。苦手なことを排除しても、好きな読書から自分の感じ方を拡張することが出来た。最近ノンフィクションばかり読んでしまいがちですが、フィクションの方が自分の試されてる感が大きいのかなと思いました。

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    2018年01月04日
  • 孤独論 逃げよ、生きよ

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    世の中の人はあまりにも孤独を恐れている。ネットで常につながっていたい。1人でメシを食うところを見られたくない。・・・何を言っているのだ、人は孤独なのだ。

    著者は高校卒業から10数年の引きこもりを続け、小説家としてデビューし、芥川賞を受賞。孤独な引きこもり時代があったからこそ、今がある。そんな著者が過去を振り返りながら語る孤独の肯定論。

    ブラック企業に勤め、自分を見失いそうな人へ、著者は「逃げろ」とアドバイスする。プライドや意地を捨て、親や友人でも頼り、引きこもる。引きこもりだって生きるための立派な術なのだ。そこで初めて孤独のありがたさを知るのだろう。

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    2017年11月15日
  • 犬と鴉

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    表題作を含め、全部で三篇併録されている。表題作「犬と鴉」は幻想小説のような作風。この作者は比喩が重要であると感じるが、今回の比喩が一体何を示すのか掴めなかったが、”悲しみで腹を満たす”という一文は心貫かれた。アンナ・カレーニナの一文に”幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである”とあるが、その心境に近いのだろう。一読しただけでは凡てを掴みとることが出来ないが、残留します。

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    2017年07月26日
  • 孤独論 逃げよ、生きよ

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    芥川受賞作家田中慎弥氏による人生論。田中氏は30代まで引きこもりの生活を続けていたそうだ。作家以外の職業に就いたことはない。世間的に見れば、非常に苦しい立場にあったわけだ。そんな逆境を乗り越えて作家になった意志の強さには、心を打たれる。現代人の多くは奴隷の地位に甘んじている、と彼は指摘する。それは誤りではないと思うが、奴隷として生きるしかない人もいるわけで、そういった人達の胸の内にもっと思いを巡らせて欲しかった。書けても書けなくても必ず机の前にすわるという粘り強い姿勢は、生きる上で参考になる。

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    2017年04月10日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    「逃げてからどうするの?」従兄の幼い娘に問われ「逃げつづけるしかない」と、答える主人公。たとえそれが辛く虚しい行く末だとわかっえいても、逃げはじめたらそこに終わりはなく、逃げ続ける人生が死ぬまでつづくのかな?

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    2016年07月25日
  • 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場

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    首相が記者会見で明らかに右側に傾いてきている。体調の何らかの変化なのか癖なのか。ついには国会審議の中で野党からも右に傾いている姿勢について、国民の間にも疑問と不安が広がっていると、説明を求められる。首相曰く、マスコミも野党の皆さんも、私が右に傾いているとさかんに騒ぎ立てるが、皆さんから見て右ということは、私にとって左に傾いているということと嘯く。各紙はこれに猛反発。客観的に見て右に傾くのを左に傾くというのはあまりに無責任と噛みつく。側近たちは極力意識して正面をむくよう進言することになる。
    相変わらずの直球どストレート。そんな中、希死念慮をも窺わせる弱気もちらほら見せる。なかなか可愛い。得意の掌

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    2016年07月16日
  • 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場

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    田中慎弥の掌編集。独特の世界観にあふれつつも、その短さと相まって病みつきになる。「桜」「書いている、読んでいる」がすき。

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    2016年07月01日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    最近話題になったプロ野球選手が賭博に関わった問題。読み終わってから間もなくのことだっただけに妙な縁と呼ぶのか、奇妙な繋がりもあるものだと思う。

    サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を下地に、野球という色彩。更には最初から最後まで父親が子供に語りかける口語体で文章が綴られるという構成。かなり実験作的な一冊である。
    読み始めは口語体であることにクドさを感じ、胸焼けの様な気分を覚え、なかなか読み進めるのには苦労した。
    半ばほどで、野球観戦が好きな者であれば、現役を知らずとも名前は知っている選手について語られ、その部分は面白く読めた。
    あくまでメインは主人公である父親の、父に対する思い、息子

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    2015年12月03日
  • 犬と鴉

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    表題作はあまり好みでないのルールは、この一冊についても有効だったけれど、全体的に、あまりピンとる話がなかった。
    かろうじて聖書の煙草が惜しい感じ。
    解説が、初めて解説だと感じられて、難解なものを読み解こうとしていなかったと気付かされ、あるいは表題作はあまり好みでないのルールは、読み解かないことの前提に依るものなのかもしれないと思うなど、自分の田中慎弥に対する印象に、いくつも気付きを与えた一冊だった。
    150212

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    2015年02月13日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    共喰い(に関しての他人の感想)のイメージから濃くてどにょりとしてるのかなと思ってたけど、そうでもなかった。
    どれもほんの1枚程度の短編でサクサク読めてしまった。
    現実と村上さん的境界線上の話(ファンタジー寄り)から、日常と非日常の話まで。
    個人的には うどんにしよう、雨の牢獄、リレー、四丁目十番地、意志の力、悪魔、会話の中身、竹やぶ あたりが好きだな。(多)

    いきなりいきなりな言葉が出てきたりして思わず何度も何度も読み返してみたりした。どん!と出して放置!みたいなのすごくいい。不穏な空気が一気にブワッと溢れてきてそれ以後は全て白く見ることができないw

    日常と非日常に関しては小さいことなら自

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    2014年11月20日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    <「冷たい氷の羊」について>
     いじめがストーリーに絡んでくる小説は読むのが難しいなと感じる。凝視すべき点は本当にそこなのか?と疑いつつも、気が付けばそっちに目が行ってしまう。いかにも寓意がたっぷり込められていそうで、読書の流れを勝手にぶった切ってしまう。
     主人公の視点がはまった。狭溢な世界の中で、視線で外側へ穴を空けるんじゃないかってくらい、じっ…と見る。でも、絶対に穴は空かない。でも、しっかり見てる。一所懸命見てる。そんな感じが好き。
     現実をそのまま見ている訳では、もしかしたらないのかもしれない。後半に出てくる他者の視点が、主人公のような少年がたくさんいることを気付かせてくれた。
     終

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    2014年10月15日
  • 燃える家

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    ネタバレ

    とにかく長くて、厚くて、文字がページにたくさんあって、読むのが大変な本でした。次のページを開くと余白がぜんぜんなく、全部活字でうまっている、会話文が少なく、めくっても、めくっても、減っていかない残りのページ。

    内容もなかなか頭に入ってこなくて、どうして最後まで読もうとしているのかわからなくなってきましたが、とにかく読み終わりました。

    現実にはありえないことが現実のように書かれていることも入り込めない原因のひとつでした。

    文字を追っているだけの部分もありましたが、作者がずっと追い求めているいる主題があるんだろうな、きっと。

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    2014年04月07日
  • 切れた鎖

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    内省的なお話だった。
    引きこもりな『蛹』が好き。

    『不意の償い』『切れた鎖』、そして『蛹』の三作の短編集。
    どれもなんとなくすっきりしなくて
    屈折した感じ。
    結構好き。

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    2013年12月05日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    この人の本初めて読んだけど割と感覚的な文章書くんだなーと思った。印象的な気味の悪さ、残酷さ、冷静さを感じる短編集でした。

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    2013年11月17日
  • 切れた鎖

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    抽象的な世界が、まさに田中ワールド。近年希薄となる家族意識を作者は強いインパクトで前面に引っ張り出している3作品。

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    2013年11月10日
  • 田中慎弥の掌劇場

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     仕方がないので最後の手段に出ることにした。死を遠ざける最も有効な、限りなく情けない方法は、死の準備をすること以外にない。私は真新しい原稿用紙を取り出すと、遺書に手をつけた。死ぬまで書き終わることのない、長い道のりの始まりだった。
    (P.92)

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    2013年11月05日
  • 切れた鎖

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    相変わらずクセのある文体。非常に難解だが力強い。
    特に「不意の償い」の男の妄想(幻覚?)の描写は凄まじい。この男は発狂したのか、これから何をしてしまうのか、途中で死んでしまうのではないか…読みながら非常に気がかりであった。
    「蛹」「切れた鎖」も現代の作家としては抽象性の強い、異色の作品である。

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    2013年10月14日
  • 犬と鴉

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    高校一年生のとてもおとなしい女の子に”図書室に「犬と鴉」ありませんか?”と言われた。作者の例のインタビューとタイトルでいやな予感がしたので、図書室に入れるかどうか、自分で買って、田中愼弥初読。うわっ。こんなの学校図書室にはおきたくない。文学のメタファーとしてはありなのかもしれないが、グロとファルスが満載なのはいただけない。でも、連体修飾と読点でえんえんと続く長文が喚起するイメージはちょっとあとをひくところがある。「血脈」はなかなかおもしろかったが、この作者の本を自分でお金を出して買うことは二度とあるまい。

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    2013年10月10日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    「共食い」挑戦前の、田中慎弥慣らし第2弾。

    ひとつひとつがとても短い話なので、気が抜けませんでした。
    面白い話と、理解できない話との差がありました。
    でもこれは、私の読解力のせいだと思われます…。

    「これからもそうだ。」や、インタビューを読んだときも思いましたが、
    田中慎弥さんの発する言葉や文章を読むと、ときどきぐっと魅きつけられことがあります。

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    2013年09月13日