田中慎弥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最近話題になったプロ野球選手が賭博に関わった問題。読み終わってから間もなくのことだっただけに妙な縁と呼ぶのか、奇妙な繋がりもあるものだと思う。
サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を下地に、野球という色彩。更には最初から最後まで父親が子供に語りかける口語体で文章が綴られるという構成。かなり実験作的な一冊である。
読み始めは口語体であることにクドさを感じ、胸焼けの様な気分を覚え、なかなか読み進めるのには苦労した。
半ばほどで、野球観戦が好きな者であれば、現役を知らずとも名前は知っている選手について語られ、その部分は面白く読めた。
あくまでメインは主人公である父親の、父に対する思い、息子に対する思いが描かれているため、野球が中心でもなければ、「ゴドーを待ちながら」もその要素でしかない。結局は完結しない、主人公自身のための物語であった。 -
Posted by ブクログ
共喰い(に関しての他人の感想)のイメージから濃くてどにょりとしてるのかなと思ってたけど、そうでもなかった。
どれもほんの1枚程度の短編でサクサク読めてしまった。
現実と村上さん的境界線上の話(ファンタジー寄り)から、日常と非日常の話まで。
個人的には うどんにしよう、雨の牢獄、リレー、四丁目十番地、意志の力、悪魔、会話の中身、竹やぶ あたりが好きだな。(多)
いきなりいきなりな言葉が出てきたりして思わず何度も何度も読み返してみたりした。どん!と出して放置!みたいなのすごくいい。不穏な空気が一気にブワッと溢れてきてそれ以後は全て白く見ることができないw
日常と非日常に関しては小さいことなら自分にもよくあるよね。仕事でやらかす前と後とか。さすがに殺す前と後とか死ぬ前と後とかそんな経験はないけど。
ブンガクにありがちな、何かの比喩的な話は難しくてよくわからない。怪物 とか宇宙の起源とか。
でもなんでだろう、書いてることは普通のことなのに、何が書きたかったんだろう?って裏に何かあるのかと疑い、裏の裏の裏を見すぎてこれはコメディか?って感じるのが不思議だ。 -
Posted by ブクログ
<「冷たい氷の羊」について>
いじめがストーリーに絡んでくる小説は読むのが難しいなと感じる。凝視すべき点は本当にそこなのか?と疑いつつも、気が付けばそっちに目が行ってしまう。いかにも寓意がたっぷり込められていそうで、読書の流れを勝手にぶった切ってしまう。
主人公の視点がはまった。狭溢な世界の中で、視線で外側へ穴を空けるんじゃないかってくらい、じっ…と見る。でも、絶対に穴は空かない。でも、しっかり見てる。一所懸命見てる。そんな感じが好き。
現実をそのまま見ている訳では、もしかしたらないのかもしれない。後半に出てくる他者の視点が、主人公のような少年がたくさんいることを気付かせてくれた。
終盤の描写は素敵だったが、面白くは無かった。
<表題作について>
笑ったけど、何だか良く分からなかった。
どちらの短篇も、思っていることや言っていることが行動とかみ合っていない。袋小路チックで息苦しい。客観的な語り口なのに、明らかにズレてるであろう解釈をする。語り手は、そのズレを意識しているのだろうか。
意識しているのだと思う。話の途中気が付けばいない伯母や、母の反応に、彼がズレを感じ取らないとは流石に思えない。だからこそ、彼は洪水のように語るのではないだろうか。それが、彼が現状もち得るアクセスの手段なのではないか。
だから、本当か作り話かは、どうでもいい。あくまで話。戦争も同じく、話。吉岡のとんでもない体験も、入れ籠構造によってぼんやりと遠ざかっていく。
「冷たい氷の羊」では読めたのに、「図書準備室」での吉岡による残酷な描写は眠くて読むのに苦労したのは、この現実性の乏しさが原因なのかも。なんだか、戦争が遠のいた。 -
Posted by ブクログ
表題作は過去最強に暗い小説だった。主人公の小説家のもとに、引きこもりになった幼馴染の相談に乗って欲しいという知らせが来る。幼馴染にはうつ病を発症し、自殺未遂も起こしていた。主人公は幼馴染を小説のネタにしようと、ある「実験」を試みるのだが…。
幼馴染のキャラクターがこれでもかというぐらいに暗い。35歳を過ぎても童貞の幼馴染が両親のセックスを目撃する場面の恐ろしさといったらもう…。
他にも『汽笛』『週末の葬儀』の2編が収録されている。『週末の葬儀』は、荒廃しつつあるニュータウンの描き方が秀逸だと思った。実家のある住宅地を思い出してしまった(笑)。