田中慎弥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第146回芥川賞受賞作家の機嫌が悪い方。
田中慎弥さんの孤独感漂う短編集。
いや、この人はすごい。多分すごいんだと思う。
文学的水準の高さを見せつけられた思いがします。これでもかと。
特に3編のうちの真ん中、「蛹」は面白かった。
井伏鱒二の「山椒魚」をふと思い出したりしました。
やはり孤独を描いてて。
無駄に思慮深い、けれども基本的に何もしないカブトムシの話。
表題作「切れた鎖」は読んでて正直しんどかったなあ。
金銭的に安定した生活に浸りつつも、
身を切るような孤独に苛まれる年老いた女性の惨めさというか。
全体的に自分からは一歩も動かず、
ひたすら流れて行く現状に歩幅を合わせようと四苦 -
Posted by ブクログ
一躍時の人となってしまった「もらっといてやる」の人の作品。
純文学の小難しさや自然に時折混ざる隠喩、それとラノベの緻密すぎる状況描写を足して割ったような作風。
そもそも理解するのが難しい感じ。
確実に人によって好みは分かれるだろうし、「よくわからないからつまらない」って人がかなりいそうな気がする。
不意の償いは死から生へと結びついていく話。途中主人公が失調症にでもかかったのかと思った。女は宇宙、という言葉が読後に浮かんだ。
どの作品もツカミはかなり強いけど全体的に落ちとして無理に収束はさせてない雰囲気。描写はラノベ風で一つ一つが意味ありげに見えるので、そこをしっかり読み解いていったらおもしろい -
Posted by ブクログ
三作品が収録されています。
巻頭の「不意の償い」では暴力と性愛、死と生が一つに融合する瞬間が、一人の男の妄想がリアルに描かれています。
筆者が社会を虫等の生物にとっての地上、社会から隔絶された部分を地下に例えて、自らの生き方、思考、心情について語った「蛹」。
巻末の「切れた鎖」では裕福な旧家とその裏手に建てられた正体不明の新興のキリスト教会とのあり方を対比させながら、祖父ー父ー息子という関係性の基本構造と鏡像のように逆転した、祖母ー母ー娘という三代の物語が描かれています。
どれも独創性豊な内容で、解りやすい物語性とは違い、自信の無意識から発する原型的なイメージで表現されているように