田中慎弥のレビュー一覧

  • 神様のいない日本シリーズ

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    最近話題になったプロ野球選手が賭博に関わった問題。読み終わってから間もなくのことだっただけに妙な縁と呼ぶのか、奇妙な繋がりもあるものだと思う。

    サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を下地に、野球という色彩。更には最初から最後まで父親が子供に語りかける口語体で文章が綴られるという構成。かなり実験作的な一冊である。
    読み始めは口語体であることにクドさを感じ、胸焼けの様な気分を覚え、なかなか読み進めるのには苦労した。
    半ばほどで、野球観戦が好きな者であれば、現役を知らずとも名前は知っている選手について語られ、その部分は面白く読めた。
    あくまでメインは主人公である父親の、父に対する思い、息子に対する思いが描かれているため、野球が中心でもなければ、「ゴドーを待ちながら」もその要素でしかない。結局は完結しない、主人公自身のための物語であった。

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    2015年12月03日
  • 犬と鴉

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    表題作はあまり好みでないのルールは、この一冊についても有効だったけれど、全体的に、あまりピンとる話がなかった。
    かろうじて聖書の煙草が惜しい感じ。
    解説が、初めて解説だと感じられて、難解なものを読み解こうとしていなかったと気付かされ、あるいは表題作はあまり好みでないのルールは、読み解かないことの前提に依るものなのかもしれないと思うなど、自分の田中慎弥に対する印象に、いくつも気付きを与えた一冊だった。
    150212

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    2015年02月13日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    共喰い(に関しての他人の感想)のイメージから濃くてどにょりとしてるのかなと思ってたけど、そうでもなかった。
    どれもほんの1枚程度の短編でサクサク読めてしまった。
    現実と村上さん的境界線上の話(ファンタジー寄り)から、日常と非日常の話まで。
    個人的には うどんにしよう、雨の牢獄、リレー、四丁目十番地、意志の力、悪魔、会話の中身、竹やぶ あたりが好きだな。(多)

    いきなりいきなりな言葉が出てきたりして思わず何度も何度も読み返してみたりした。どん!と出して放置!みたいなのすごくいい。不穏な空気が一気にブワッと溢れてきてそれ以後は全て白く見ることができないw

    日常と非日常に関しては小さいことなら自分にもよくあるよね。仕事でやらかす前と後とか。さすがに殺す前と後とか死ぬ前と後とかそんな経験はないけど。

    ブンガクにありがちな、何かの比喩的な話は難しくてよくわからない。怪物 とか宇宙の起源とか。

    でもなんでだろう、書いてることは普通のことなのに、何が書きたかったんだろう?って裏に何かあるのかと疑い、裏の裏の裏を見すぎてこれはコメディか?って感じるのが不思議だ。

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    2014年11月20日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    <「冷たい氷の羊」について>
     いじめがストーリーに絡んでくる小説は読むのが難しいなと感じる。凝視すべき点は本当にそこなのか?と疑いつつも、気が付けばそっちに目が行ってしまう。いかにも寓意がたっぷり込められていそうで、読書の流れを勝手にぶった切ってしまう。
     主人公の視点がはまった。狭溢な世界の中で、視線で外側へ穴を空けるんじゃないかってくらい、じっ…と見る。でも、絶対に穴は空かない。でも、しっかり見てる。一所懸命見てる。そんな感じが好き。
     現実をそのまま見ている訳では、もしかしたらないのかもしれない。後半に出てくる他者の視点が、主人公のような少年がたくさんいることを気付かせてくれた。
     終盤の描写は素敵だったが、面白くは無かった。

    <表題作について>
     笑ったけど、何だか良く分からなかった。
     どちらの短篇も、思っていることや言っていることが行動とかみ合っていない。袋小路チックで息苦しい。客観的な語り口なのに、明らかにズレてるであろう解釈をする。語り手は、そのズレを意識しているのだろうか。
     意識しているのだと思う。話の途中気が付けばいない伯母や、母の反応に、彼がズレを感じ取らないとは流石に思えない。だからこそ、彼は洪水のように語るのではないだろうか。それが、彼が現状もち得るアクセスの手段なのではないか。
     だから、本当か作り話かは、どうでもいい。あくまで話。戦争も同じく、話。吉岡のとんでもない体験も、入れ籠構造によってぼんやりと遠ざかっていく。
     「冷たい氷の羊」では読めたのに、「図書準備室」での吉岡による残酷な描写は眠くて読むのに苦労したのは、この現実性の乏しさが原因なのかも。なんだか、戦争が遠のいた。

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    2014年10月15日
  • 燃える家

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    ネタバレ

    とにかく長くて、厚くて、文字がページにたくさんあって、読むのが大変な本でした。次のページを開くと余白がぜんぜんなく、全部活字でうまっている、会話文が少なく、めくっても、めくっても、減っていかない残りのページ。

    内容もなかなか頭に入ってこなくて、どうして最後まで読もうとしているのかわからなくなってきましたが、とにかく読み終わりました。

    現実にはありえないことが現実のように書かれていることも入り込めない原因のひとつでした。

    文字を追っているだけの部分もありましたが、作者がずっと追い求めているいる主題があるんだろうな、きっと。

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    2014年04月07日
  • 切れた鎖

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    内省的なお話だった。
    引きこもりな『蛹』が好き。

    『不意の償い』『切れた鎖』、そして『蛹』の三作の短編集。
    どれもなんとなくすっきりしなくて
    屈折した感じ。
    結構好き。

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    2013年12月05日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    この人の本初めて読んだけど割と感覚的な文章書くんだなーと思った。印象的な気味の悪さ、残酷さ、冷静さを感じる短編集でした。

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    2013年11月17日
  • 切れた鎖

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    抽象的な世界が、まさに田中ワールド。近年希薄となる家族意識を作者は強いインパクトで前面に引っ張り出している3作品。

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    2013年11月10日
  • 田中慎弥の掌劇場

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     仕方がないので最後の手段に出ることにした。死を遠ざける最も有効な、限りなく情けない方法は、死の準備をすること以外にない。私は真新しい原稿用紙を取り出すと、遺書に手をつけた。死ぬまで書き終わることのない、長い道のりの始まりだった。
    (P.92)

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    2013年11月05日
  • 切れた鎖

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    相変わらずクセのある文体。非常に難解だが力強い。
    特に「不意の償い」の男の妄想(幻覚?)の描写は凄まじい。この男は発狂したのか、これから何をしてしまうのか、途中で死んでしまうのではないか…読みながら非常に気がかりであった。
    「蛹」「切れた鎖」も現代の作家としては抽象性の強い、異色の作品である。

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    2013年10月14日
  • 犬と鴉

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    高校一年生のとてもおとなしい女の子に”図書室に「犬と鴉」ありませんか?”と言われた。作者の例のインタビューとタイトルでいやな予感がしたので、図書室に入れるかどうか、自分で買って、田中愼弥初読。うわっ。こんなの学校図書室にはおきたくない。文学のメタファーとしてはありなのかもしれないが、グロとファルスが満載なのはいただけない。でも、連体修飾と読点でえんえんと続く長文が喚起するイメージはちょっとあとをひくところがある。「血脈」はなかなかおもしろかったが、この作者の本を自分でお金を出して買うことは二度とあるまい。

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    2013年10月10日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    「共食い」挑戦前の、田中慎弥慣らし第2弾。

    ひとつひとつがとても短い話なので、気が抜けませんでした。
    面白い話と、理解できない話との差がありました。
    でもこれは、私の読解力のせいだと思われます…。

    「これからもそうだ。」や、インタビューを読んだときも思いましたが、
    田中慎弥さんの発する言葉や文章を読むと、ときどきぐっと魅きつけられことがあります。

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    2013年09月13日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    気持ち悪いけど美しく、読み終わってみると、なんだかスッキリした感じがある。私の中の言いたくて言えないものまで、読むことで出て行ったのかな。

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    2013年08月06日
  • 犬と鴉

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     表題作は黒い犬とか病気とか、色んなイメージがちりばめられていて少し雑多な印象を受けた。ストーリーも抽象的だったので、少し分かりにくかったな。でも、これは個人の好き嫌いの問題だと思う。
     気に入ったのは『聖書の煙草』。いい年をして仕事もせずにブラブラしている主人公が近所で発生した強盗事件をきっかけに自らの変化を試みるも、やっぱり上手くいかない。そんなせせこましい「挫折」がよく描けていると思った。

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    2013年06月09日
  • 実験(新潮文庫)

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    書けなくなった小説家下村が、三十を過ぎ鬱病を発症した旧友春男を題材に小説を書こうと接近する。

    外界との接触を絶ち、自らの論理の中で生きる春男の発する言葉とは?
    そして下村はどう反応するのか?

    現代日本文学の旗手、田中氏の萌芽的作品。

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    2013年05月18日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    母が憎悪する父、あの男。会いたいと渇望するのは単なる義務感なのか。いつか必ず現れる筈の父を待つ、子の役目をうまく演じようとしているだけではないのか。自分の子に語りかけながら、真実は何なのか、自らの思いを追い求める。相も変わらず結論はない。

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    2013年05月12日
  • 犬と鴉

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    無聊を託つ平坦な日々が一つの強盗事件を契機に大きくうねる。性器がブリーフの中でそりかえる。性欲ではない興奮に右手を激しく上下させる。犯罪者であることを念じることにより勃起が硬度を増し、いきりたたせる。正当な犯罪者として認められることが唯一の血路と行動を起こすが結局はありふれた日常に戻る。結論もなければ教訓も見出せなかったが味のあるペーソスが目を楽しませてくれた。微妙な著者とのシンクロも興趣を誘った。

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    2013年05月06日
  • 切れた鎖

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    孤独で排他。殻に閉じこもっている。永遠の蛹である。底に流れるのは、人間だろうが動物だろうが、父というもの、雄に対する不信感と喪失感。しかるに何故かしらそれを徹底できない。どこまで行っても延々と続く自己弁護と言い訳に言い知れぬもどかしさを感じる。

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    2013年05月05日
  • 実験(新潮文庫)

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     表題作は過去最強に暗い小説だった。主人公の小説家のもとに、引きこもりになった幼馴染の相談に乗って欲しいという知らせが来る。幼馴染にはうつ病を発症し、自殺未遂も起こしていた。主人公は幼馴染を小説のネタにしようと、ある「実験」を試みるのだが…。
     幼馴染のキャラクターがこれでもかというぐらいに暗い。35歳を過ぎても童貞の幼馴染が両親のセックスを目撃する場面の恐ろしさといったらもう…。
     他にも『汽笛』『週末の葬儀』の2編が収録されている。『週末の葬儀』は、荒廃しつつあるニュータウンの描き方が秀逸だと思った。実家のある住宅地を思い出してしまった(笑)。

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    2013年03月01日
  • 実験(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自身をモチーフとしたと思しき新作が書けない小説化を主人公として、うつ病で悩み自殺願望を持つ友人との交流を通じて、彼をテーマにした作品を書くことで1つの実験を試そうとするがその結末は・・・。帯の「お前の苦しみを小説のネタにもらっといてやる」という一文そのままの小説。

    他人の苦しみですら小説の糧として利用せざるを得ない小説家という職業を露悪的に描きつつ、きっちりラストで希望を描いている点は巧いと思う。

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    2013年02月17日