田中慎弥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表題作は過去最強に暗い小説だった。主人公の小説家のもとに、引きこもりになった幼馴染の相談に乗って欲しいという知らせが来る。幼馴染にはうつ病を発症し、自殺未遂も起こしていた。主人公は幼馴染を小説のネタにしようと、ある「実験」を試みるのだが…。
幼馴染のキャラクターがこれでもかというぐらいに暗い。35歳を過ぎても童貞の幼馴染が両親のセックスを目撃する場面の恐ろしさといったらもう…。
他にも『汽笛』『週末の葬儀』の2編が収録されている。『週末の葬儀』は、荒廃しつつあるニュータウンの描き方が秀逸だと思った。実家のある住宅地を思い出してしまった(笑)。 -
Posted by ブクログ
1篇がとても短くてさらりと読めてしまう。
不思議な話だなぁとぼんやり思う話と、ものすごく怖いと思う話があった。
怖いと思わなかった話はただ単に私がその物語の中に隠れている毒に気づいていないだけて、全部怖い話なのではないかと想像する。
特に怖かったのは「怪物」。ぞっとする怖さ。
「願望と遺書」はちょっと笑ってしまった。(笑っている場合ではないほど切羽詰まった話なんだけど)
本当にこんな精神状態になったら自殺する前に頭がおかしくなると思う。
でもその必死さが滑稽でもある。
そんな不思議で、(私の場合は)たまにぞくっとする掌篇集。
田中慎弥さんの長編も読んでみたいなと思う。