田中慎弥のレビュー一覧

  • 田中慎弥の掌劇場

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    気持ち悪いけど美しく、読み終わってみると、なんだかスッキリした感じがある。私の中の言いたくて言えないものまで、読むことで出て行ったのかな。

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    2013年08月06日
  • 犬と鴉

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     表題作は黒い犬とか病気とか、色んなイメージがちりばめられていて少し雑多な印象を受けた。ストーリーも抽象的だったので、少し分かりにくかったな。でも、これは個人の好き嫌いの問題だと思う。
     気に入ったのは『聖書の煙草』。いい年をして仕事もせずにブラブラしている主人公が近所で発生した強盗事件をきっかけに自らの変化を試みるも、やっぱり上手くいかない。そんなせせこましい「挫折」がよく描けていると思った。

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    2013年06月09日
  • 実験(新潮文庫)

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    書けなくなった小説家下村が、三十を過ぎ鬱病を発症した旧友春男を題材に小説を書こうと接近する。

    外界との接触を絶ち、自らの論理の中で生きる春男の発する言葉とは?
    そして下村はどう反応するのか?

    現代日本文学の旗手、田中氏の萌芽的作品。

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    2013年05月18日
  • 神様のいない日本シリーズ

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    母が憎悪する父、あの男。会いたいと渇望するのは単なる義務感なのか。いつか必ず現れる筈の父を待つ、子の役目をうまく演じようとしているだけではないのか。自分の子に語りかけながら、真実は何なのか、自らの思いを追い求める。相も変わらず結論はない。

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    2013年05月12日
  • 犬と鴉

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    無聊を託つ平坦な日々が一つの強盗事件を契機に大きくうねる。性器がブリーフの中でそりかえる。性欲ではない興奮に右手を激しく上下させる。犯罪者であることを念じることにより勃起が硬度を増し、いきりたたせる。正当な犯罪者として認められることが唯一の血路と行動を起こすが結局はありふれた日常に戻る。結論もなければ教訓も見出せなかったが味のあるペーソスが目を楽しませてくれた。微妙な著者とのシンクロも興趣を誘った。

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    2013年05月06日
  • 切れた鎖

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    孤独で排他。殻に閉じこもっている。永遠の蛹である。底に流れるのは、人間だろうが動物だろうが、父というもの、雄に対する不信感と喪失感。しかるに何故かしらそれを徹底できない。どこまで行っても延々と続く自己弁護と言い訳に言い知れぬもどかしさを感じる。

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    2013年05月05日
  • 実験(新潮文庫)

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     表題作は過去最強に暗い小説だった。主人公の小説家のもとに、引きこもりになった幼馴染の相談に乗って欲しいという知らせが来る。幼馴染にはうつ病を発症し、自殺未遂も起こしていた。主人公は幼馴染を小説のネタにしようと、ある「実験」を試みるのだが…。
     幼馴染のキャラクターがこれでもかというぐらいに暗い。35歳を過ぎても童貞の幼馴染が両親のセックスを目撃する場面の恐ろしさといったらもう…。
     他にも『汽笛』『週末の葬儀』の2編が収録されている。『週末の葬儀』は、荒廃しつつあるニュータウンの描き方が秀逸だと思った。実家のある住宅地を思い出してしまった(笑)。

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    2013年03月01日
  • 実験(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自身をモチーフとしたと思しき新作が書けない小説化を主人公として、うつ病で悩み自殺願望を持つ友人との交流を通じて、彼をテーマにした作品を書くことで1つの実験を試そうとするがその結末は・・・。帯の「お前の苦しみを小説のネタにもらっといてやる」という一文そのままの小説。

    他人の苦しみですら小説の糧として利用せざるを得ない小説家という職業を露悪的に描きつつ、きっちりラストで希望を描いている点は巧いと思う。

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    2013年02月17日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    まだ全部読んではいませんが

    やはりこの人は凄い人なのだな、と
    読めば読むほど
    惹かれていくから不思議です

    多分自分の中にも彼と同じ狂気が宿っていて
    呼応してるんだと思います

    作者紹介の顔を見て
    知っている人の瞳にとても似ているなといつも思う
    彼ほどぎらぎらはしていないけれど

    彼も
    彼の書く文も
    嫌いじゃないです

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    2013年02月09日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    ご本人から想像していたとおり、頑なな難しい人間の奥深くを表現してると思う。若い時分、落ち込んでるときに読む本かなと思う。

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    2013年02月04日
  • 切れた鎖

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    陰鬱、重い。文体が少し最近の作品よりくどいかな。
    最近の文体のほうが好きかも。表題作の「切れた鎖」がいちばんよかった。かぶとむし目線の「蛹」になぜか共感しちゃったりもしたけど。

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    2012年11月12日
  • 切れた鎖

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    面白かった。
    特に「蛹」が好き。
    自分では何十年かかっても書けないような話。
    田中さんの、書きなぐったような、かつ洗練された力強い文章に驚いた。
    途中から「何だこれは!?」の連続で薄い本なのに読み終えた時には燃え尽き症候群になった。

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    2012年10月01日
  • 切れた鎖

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    表題作の「切れた鎖」は、一気に読み終えてしまうほど切迫感が絶えず、作者の抱える恐怖や不安、焦燥がリアルに伝わって来た。そのため、読み終えた時は、暗い長いトンネルからポッと突然抜け出たような突然我に返った感じが私自身した。主人公はこの結末によって、それまで悩み続けた一種の異常な精神状態やトラウマからの脱却に成功したことは明らかであるが、その感覚は、読者である私が感じられた以上に痛快であったに違いない。このように作者と共に彼の世界に入り込み、まさに没頭する小説にはなかなか出会えないと思う。おもしろかった。

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    2012年09月23日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    1篇がとても短くてさらりと読めてしまう。
    不思議な話だなぁとぼんやり思う話と、ものすごく怖いと思う話があった。
    怖いと思わなかった話はただ単に私がその物語の中に隠れている毒に気づいていないだけて、全部怖い話なのではないかと想像する。

    特に怖かったのは「怪物」。ぞっとする怖さ。
    「願望と遺書」はちょっと笑ってしまった。(笑っている場合ではないほど切羽詰まった話なんだけど)
    本当にこんな精神状態になったら自殺する前に頭がおかしくなると思う。
    でもその必死さが滑稽でもある。

    そんな不思議で、(私の場合は)たまにぞくっとする掌篇集。
    田中慎弥さんの長編も読んでみたいなと思う。

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    2012年09月19日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    装幀がいい。でもこれ本棚に普通に差しといていいのかな。
    いわゆるショートショート。でも星新一みたいな感じはしない。起伏やオチが弱いからだけど、それがマイナスかというとそうでもない。
    淡々とさざめく海を眺めている。あー綺麗だなぁと月並みな感想をもつと、一匹の魚が跳ねる。次の瞬間にはなにごともない海なのだが、読者は遅れて気づく。その魚のグロテスクさに。みたいな。
    なんでもないような話だけどピリッと皮肉が効いてたり。そんなものにニヤッとして楽しむ小説。

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    2012年09月01日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    何気ない日常を描いたような文中に「何故そこにそれが?」という怖いことが…。でも一篇一篇は本当に掌編。良い小説とは長さに関係なく書けるものなんだなと思いました。

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    2012年08月27日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    初めて田中慎弥さんの書いた物を読んだ。テレビで姿を拝見して想像していたとおりの文体。自分の好みの文体だけれど、少しもたもたしているのが気になってしまった。芥川賞を受賞した作品も読んでみたい。

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    2012年08月24日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    王様のブランチで紹介され、読んでみました。新聞に掲載されていたもので、どれも超短編です。政治家の対談?「男達(一幕)」とか、震災以後に書いたものは原発を題材にしており、毒のある作品が多いです。

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    2012年08月06日
  • 田中慎弥の掌劇場

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    毎日新聞西部本社に連載~短編集~どうしたって「てのひら・劇場」と読みたくなる。はいはい「しょうげきじょう」ね。とっつきにくものもあったなあ

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    2012年07月26日
  • 図書準備室(新潮文庫)

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    2編とも、読んでいる間はけして気持ちいいものではない。というか、不快のレベル。劇的でもないし最後まで不快さが払拭されるほどのことも起こらない。ただ、表題作はいろんな解釈が出来る(私だけ?)し、「冷たい~」は主人公がそれまでとは違う形で明日を楽しみに?待てる終わり方。大々的でないところが返ってリアリティがあって、いろいろ想像出来ていいのかもしれない。

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    2012年07月24日