あらすじ
空から落とされた無数の黒い犬が戦争を終わらせた。悲しみによって空腹を満たすため、私は図書館に篭る父親の元へ通い続ける。歪んだ家族の呪われた絆を描く力作。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
「犬と鴉」「血脈」「聖書の煙草」の三編入り。
うまいなあ、熱いなあと思いながら読み切った。
回りくどいような描写も小物がうまくまとめてくれている。
その年初めて逃げ水を発見した時のよな(さしてうれしくもないのにはっとしてじーっと眺めてしまう。毎年。)印象的なシーンがたくさん詰まっている。まだまだ空腹です。
Posted by ブクログ
表題作を含め、全部で三篇併録されている。表題作「犬と鴉」は幻想小説のような作風。この作者は比喩が重要であると感じるが、今回の比喩が一体何を示すのか掴めなかったが、”悲しみで腹を満たす”という一文は心貫かれた。アンナ・カレーニナの一文に”幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである”とあるが、その心境に近いのだろう。一読しただけでは凡てを掴みとることが出来ないが、残留します。
Posted by ブクログ
表題作はあまり好みでないのルールは、この一冊についても有効だったけれど、全体的に、あまりピンとる話がなかった。
かろうじて聖書の煙草が惜しい感じ。
解説が、初めて解説だと感じられて、難解なものを読み解こうとしていなかったと気付かされ、あるいは表題作はあまり好みでないのルールは、読み解かないことの前提に依るものなのかもしれないと思うなど、自分の田中慎弥に対する印象に、いくつも気付きを与えた一冊だった。
150212
Posted by ブクログ
高校一年生のとてもおとなしい女の子に”図書室に「犬と鴉」ありませんか?”と言われた。作者の例のインタビューとタイトルでいやな予感がしたので、図書室に入れるかどうか、自分で買って、田中愼弥初読。うわっ。こんなの学校図書室にはおきたくない。文学のメタファーとしてはありなのかもしれないが、グロとファルスが満載なのはいただけない。でも、連体修飾と読点でえんえんと続く長文が喚起するイメージはちょっとあとをひくところがある。「血脈」はなかなかおもしろかったが、この作者の本を自分でお金を出して買うことは二度とあるまい。
Posted by ブクログ
表題作は黒い犬とか病気とか、色んなイメージがちりばめられていて少し雑多な印象を受けた。ストーリーも抽象的だったので、少し分かりにくかったな。でも、これは個人の好き嫌いの問題だと思う。
気に入ったのは『聖書の煙草』。いい年をして仕事もせずにブラブラしている主人公が近所で発生した強盗事件をきっかけに自らの変化を試みるも、やっぱり上手くいかない。そんなせせこましい「挫折」がよく描けていると思った。