田中慎弥のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第146回芥川賞はニュースにかなり取り上げられたのを覚えているだろうか。「共喰い」で受賞した田中慎弥さんの会見が非常に話題になり、また受賞スピーチでも一言で終わり、インターネットだけではなく、各メディアで大きく取り上げられた。その結果「共喰い」は大ヒットし、作家としての知名度が大幅に上がった。
もともと2008年に川端康成文学賞、三島由紀夫賞を受賞しており、何回も芥川賞候補になっているので、力はかなりある作家である。なんでもそうだが、実際に受賞した人は記憶に残るが、それ以外はすぐに人々に忘れ去られてしまう。会見及びスピーチで世間的にかなりイメージが作られてしまったが、王様のブランチや他の -
Posted by ブクログ
他の多くの方と同様、私も芥川賞の受賞インタビューで著者のことを知り、それで受賞作を読んでみた。
この掌篇集は、2008年10月から2012年1月まで、毎日新聞西部本社版に連載されたもの。
一篇が3頁前後、不思議でちょっと不穏な、ときにユーモラスな、そしてリリカルな掌篇が並ぶ。
私は存外、この本の全体が好きになってしまった。
「存外」というのは誉め言葉で、芥川賞受賞作から想像していたよりも、遥かに様々な色合いの、遥かに様々な想いを掻き立てられて、そしてそれが楽しかったのだ。
「あとがき」で著者は、「命を縮めて得た糧で、また命を延ばす。」と記すが、たしかにこれは、著者の内面の何かを削って書かれ -
Posted by ブクログ
「不意の償い」
ある行為のせいで死に至ったのではないかと無意識に抱えていた罪悪感が、徐々に噴出し精神のバランスがあやふやになっていく。
読み進むにつれて、このバランスの崩れた不安定感こそがが逆に安定した世界の様にも思えてくる。
「蛹」
一番好きな作品。
内包された自己への強い自信とは裏腹に、いつまでも地上に出る事の叶わず日々悶々とする存在。
実際は地上に出られないのではなく出たくないのであって、結局内包されていた自信とはただの虚勢である。
考えなければいいのに。
何も考えずに外に出て人生を謳歌して、繁殖して死ねばいいだけなのに。
「だけなのに」が、一番難しい事なんだなと。
「切れた鎖」 -
Posted by ブクログ
芥川賞受賞のインタビューで、刺激的な悪態をついた著者を
どこまでパフォーマンスが入ってるんだろ…? なんて、
半ば、よこしまな気持ちを持って手にしたのが本書だった。
あれは、著者の気持ちの飾り気ないストレートな発露だったろう…
「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の3編…
川端賞・三島賞のダブル受賞という随分と評価の高い短編集だ。
小説を読む恐ろしさは、気づかずにある内面を引きずり出され、
歪によどんだありのままの様をつきつけられることにある。
どの作品からも、そうした領域に切り込んでゆこうとする、
著書の文学的に真摯な姿勢を感じた…
たとえば冒頭作「不意の償い」は、妻となった女と
はじめて関 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「人間の脳、身体は、いわば言葉の容れ物です。そこから言葉をどんどん出して、出したぶんだけまたどんどん容れていかなくてはならない。他者の言葉を知らずして、自分の言葉は生まれません」
「自分の外側から言葉を獲得し続けて、内側にどんどん蓄えていき、もう収まり切らないというところまで溜まると、言葉は外に出たがるようになります。すると身体がごく自然に 『書く』というアウトプットを求めるようになるのだとわたしには思えます」
要約すると言葉の新陳代謝を活性化しなければならないということなのではないでしょうか。
このレビューを書くという行為も他人の言葉を容れていった後、自分の言葉でアウトプットしているこ