田中慎弥のレビュー一覧

  • 図書準備室(新潮文庫)
    【図書準備室】
    主人公がずっと喋っていくスタイルの文章。序盤のリズミカルな、小気味良い口調が読んでいて楽しかった。子供の頃、倒錯的な強迫観念を抱いた経験が多かれ少なかれ誰にでもあるのではないだろうか。大人になり世の中のことがわかってくるにつれ、それが無知ゆえの取るに足らない思い込みであることに気付く...続きを読む
  • 図書準備室(新潮文庫)
    ◯図書準備室、冷たい水の羊ともに、まず表現の面でエンターテインメントを感じた。
    ◯図書準備室では、現在の語りと当時の行動のギャップに驚き、冷たい水の羊では、凄惨なイジメの描写に驚く。
    ◯しかし、その先に、それぞれの生きることに関する論理がある。あるのだが、なかなか読み解けず、その分心惹かれた。
  • ひよこ太陽
    ギリギリ生活ができる程度の
    売れない小説家の不安定な心情を描く。
    いずれはヒット作を出して欲しいと願う。
  • ひよこ太陽
    死に依存し、妄想にとりつかれ、何の為に生きているのか自問しつつ、それでも生きる作家。不条理だ。不条理極まりない。登場人物の誰しもが、どこかしらだらしなく、どこかしら弱い。もやもやしながら読む作品。ひよこ太陽は、みつからない。
  • 切れた鎖
    新進気鋭の作家による中編集。まだ若手なのにかなりシュールな表現力・独特の世界観。一文一文を噛み締めるようにして読みたい一冊。
  • 宰相A(新潮文庫)
    主人公は、母の墓参りに帰郷したが、到着したのは故郷ではなく、全く見覚えのない景色。周りは軍服のような服装をしており、瞳も髪も日本人離れしている風貌な人ばかりだった・・。
    ここは日本であるが、今現在の日本とは違う世界にスリップしてしまった主人公。右も左も分からず、拘束され”旧日本人”と差別され、隔離さ...続きを読む
  • 神様のいない日本シリーズ
    父が一方的に息子に話し続けるという、かなり挑戦的で独特な形式で書かれている。

    三世代それぞれの思いや感情の連鎖が伝わってくる。かなり面白いと感じた。
  • 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場
    大変おもしろく読んだ。
    共食いも宰相Aも正直途中で挫折したんだが、
    これは、短いんで、もーだめだー、な瞬間がこず、最後まではい次はい次、な感じで最後まで読めた。
    この人のはなんかいろいろ濃いので、好き嫌い分かれるだろうなあっと思う。
    でも濃いけど、文章事体は分かりやすいとゆーか読みやすい。ので、この...続きを読む
  • 切れた鎖
    やっぱり蛹がよかった。けれども文章構成の美しさでは最初の話が素晴らしかったし、話そのものの豊饒さにかけては表題作が一番か。取り合わせがいい。読んでよかった。
  • 切れた鎖
    「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の短編三つ。
    蛹が一番面白かった。
    力を蓄えて、蓄えて、蓄えて、蓄えて、そして蓄えたままでいる。
    その始まりから終わりまで、ずっと力を込めつつ読んでいた。
    田中慎弥はまだ3冊目だと思うけれど、いつも表題作じゃないやつが一番面白い。
    150120
  • 共喰い
    共喰い

    独特の文体が 怪しい雰囲気をつくる。
    サカナのにおいが 漂っている。
    カタツムリが ゆっくりと歩いている。
    怪しい文体にもかかわらず 凶暴な勢いがある。

    登場人物の 抱えている闇は大きい。
    昭和63年のころ。
    篠垣遠馬は 17歳。高校生。
    つきあっているのが 会田千種 18歳。

    生みの...続きを読む
  • 切れた鎖
    田中慎弥の作品に出てくる人物の本当にどうしようもなさ。これこそが人間なのではないかと強く思う。本当に本当にどうしようもない。ろくでもないし、怒りもわいてくる。しかし、ひとつひとつの言動を取り上げるのではなく、総体として、人間はこういう弱さとか残忍さを抱えた存在なのではないかという疑念を払拭しきれない...続きを読む
  • 切れた鎖
    「不意の償い」くどいまでの自己の描写は三島由紀夫みたいです。火事は金閣寺のオマージュなのかも。
    「蛹」は作者自身の私小説ですね。人間も昆虫のように、しかし違ったかたちの変態をする。人間を原初生命体として見た、成長の表現だと思います。母親と作者との半生とこれからの思いを感じました。
    「切れた鎖」'母'...続きを読む
  • 田中慎弥の掌劇場
    ちょっと毒有りのキャライメージの田中さんだからではないですが、初ものは短編からいってみました。
    私的には怖い、面白いといったところの他とてもきれいでわかりやすい文面という感じで好感度大です。
  • 田中慎弥の掌劇場
    ちょっと毒有りのキャライメージの田中さんだからではないですが、初ものは短編からいってみました。
    私的には怖い、面白いといったところの他とてもきれいでわかりやすい文面という感じで好感度大です。
  • 神様のいない日本シリーズ
     野球クラブでいじめに遭い、部屋に閉じこもってしまった息子に父親が語る父(息子にとっては祖父)との野球をめぐる物語…。というと何かハートウォーミングな話を期待してしまいそうだけど、全然そういう話じゃない。
     父は実家の困窮のために中卒で働くことになり、野球を諦めた。仕事が決まった日、父は愛用のバット...続きを読む
  • 犬と鴉
    「犬と鴉」「血脈」「聖書の煙草」の三編入り。
    うまいなあ、熱いなあと思いながら読み切った。
    回りくどいような描写も小物がうまくまとめてくれている。
    その年初めて逃げ水を発見した時のよな(さしてうれしくもないのにはっとしてじーっと眺めてしまう。毎年。)印象的なシーンがたくさん詰まっている。まだまだ空腹...続きを読む
  • 田中慎弥の掌劇場
    昨年の芥川賞で話題をかっさらった田中氏の掌編小説集。

    とかく風刺みたいなものを書かせるとこの人光るなぁ…と。個人的には「男たち(一幕)」がフフっと笑えるために好きだったり。どれもたった3~4ページしかないのに、どこか「えっ?!」と思うような終わり方をしているので、読んでいていろいろな引っ掛かりを覚...続きを読む
  • 田中慎弥の掌劇場
    昨年の芥川賞で話題をかっさらった田中氏の掌編小説集。

    とかく風刺みたいなものを書かせるとこの人光るなぁ…と。個人的には「男たち(一幕)」がフフっと笑えるために好きだったり。どれもたった3~4ページしかないのに、どこか「えっ?!」と思うような終わり方をしているので、読んでいていろいろな引っ掛かりを覚...続きを読む
  • 図書準備室(新潮文庫)
    図書準備室、冷たい水の羊の二編からなっている本。星4つをつけたのは後者の方。図書準備室はぼちぼち。冷たい羊はいじめをあつかっている作品。いじめられている彼は自殺を考えるようになる。色々な理由をつけ、最良の日を選択する。どうなるか。暗い内容を書いている本だが、好きな感じの落ちで、読み終われば爽やかな感...続きを読む