【感想・ネタバレ】完全犯罪の恋のレビュー

あらすじ

「すごい小説を読んでしまった。
私はこの先も、何度も自分の血を辿るように
この作品を読み返すと思う」
――紗倉まな

「人は恋すると、罪を犯す。
運命でも必然でもなく、独りよがりの果てに。
その罪を明かさないのが、何よりの罰」
ーー中江有里

「私の顔、見覚えありませんか」
突然現れたのは、初めて恋仲になった女性の娘だった。

芥川賞を受賞し上京したものの、変わらず華やかさのない生活を送る四十男である「田中」。
編集者と待ち合わせていた新宿で、女子大生とおぼしき若い女性から声を掛けられる。
「教えてください。どうして母と別れたんですか」
下関の高校で、自分ほど読書をする人間はいないと思っていた。
その自意識をあっさり打ち破った才女・真木山緑に、田中は恋をした。
ドストエフスキー、川端康成、三島由紀夫……。
本の話を重ねながら進んでいく関係に夢中になった田中だったが……。

芥川賞受賞後ますます飛躍する田中慎弥が、過去と現在、下関と東京を往還しながら描く、初の恋愛小説。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

完全犯罪とは。
露見しない、犯人・被害者が特定できない、証拠が残らない。
緑との恋は最初こそ露見せず、お、タイトル回収早いですね~とミスリードされましたが、完全犯罪の主語は緑であり、静だったのですね。

紗倉まなさんの書評が良かった。
静のことを書いている”成敗しなければ気が済まない”という表現、かなり好き。

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても面白かった。
あまりにも文章が上手い。その上で思っていたよりもストーリーがしっかりしていて、面白かった。
川端康成も三島由紀夫も一冊も読まずにこの本を読んでしまったことは失敗だった。せめて『仮面の告白』『雪国』くらいは読まねば。
緑が一時期、田中と森戸の両属状態にあったという点は普通にクズだと思った。
透明な罪悪感。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本好きで繋がる田中と緑の関係は、甘酸っぱくていいなと思う。そこに三年生の先輩森戸の影がちらつき…
キスまでしておいて友人認定だったの?と思うけど、結局どちらだったのだろう。好きな作家と同じ死に方をすべき、というのがキーワードになってくる。
二男一女の三角関係は死人が出るのが文学のお決まり。
「こころ」のお嬢さんも名前「静」だったな。
男なんだから、という育てられ方をした田中に対し、静はジェンダーに過敏な反応をするけど、その静自身が田中を「男性」「作家」という枠組みでレッテルを貼っているという解説の指摘に、なるほどなと思った。

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

3.8 誰かの人生や思い出に残る人でありたいと願う物語。恋愛はその可能性が高い関係である。一方的であることは多いけどね。まあモテてモテてと言う人生ではない人には刺さる話。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

「愛」と「完全犯罪」は両立するのか? 田中慎弥が描く、背徳の果ての純愛

愛するがゆえに、壊さずにはいられない。
奪うことでしか、手に入れられない。

田中慎弥の『完全犯罪の恋』は、そんな危うい愛の形を突き詰めた物語だ。登場人物たちは誰もが孤独で、報われぬ想いを抱えながら、互いに深く絡み合っていく。そして、その果てにあるのは——「完全犯罪」と呼ぶべき、ある決断。

田中慎弥の端正かつ研ぎ澄まされた文体は、まるでナイフのように鋭く、読む者の心を抉る。情熱と狂気が紙一重のバランスで描かれ、読み進めるほどに背筋がぞくりとする。そして、気づけばあなたもこの危険な物語の虜になっているだろう。

「愛」とは何か? 「完全犯罪」とは何か?
その答えが知りたいなら、この本を手に取るしかない。

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2025年03月08日

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