帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み始めは一寸違和感があった。
平和な世界から見れば、異常行動と言える拷問や殺人を経験した主人公が、反省や後悔も無く自己弁護している姿は、これまで読んできた帚木さんの感じとどうも違う。有ってはならない悲惨さを読者に訴えるのではなくて、むしろそれを肯定してる感さえあるる。
しかし、後半に進むにつれ、本当に徐々に、しかも自然の流れの中で、追い詰められた主人公の自己弁護が後悔や反省に変化していき、最後にはいつもの帚木さんである。
加害者である日本の犯罪的行為とともに、戦勝国である米国の行為も随所で批判しながら、再び起こしてはならない悲劇を、いつもの如く淡々とした語り口で表現している。
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Posted by ブクログ
同じ背景・登場人物の前作「空夜」が恋愛小説だったのに対し、この作品は「ごみ問題」を取り上げた社会小説です。
さすがというか、帚木さんの筆力は素晴らしく、一気に読ませてもらえます。人物造形の上手さや、途中に盛り込まれる恋愛模様の面白さもあります。
ただ、ごみ問題があまりに正論過ぎて、どうしても青臭い理想論のようにしか見えないのです。例えばごみを税金で処理するのではなく、製造会社が回収するべきという論理もその一つです。製造会社は営利団体です。でなければ、その会社の従業員の生活は成り立ちません。回収義務を与えれば、その費用は製品の価格に反映されます。結果的には税金を支払うのと大差は無くなります。