あらすじ
「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療が行なわれていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
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女医が主人公のミステリー。インターセックスというタイトルに引かれ何となく読み始めたがリアリティーのある記述に引き込まれあっという間に読み終えた。帚木蓬生さんという作者を知らなかったが東大仏文科卒業後、九大医学部を出た医者の方と知り納得。ミステリーとして良かったのはもちろんだがリアリティーのあるインターセックスに関する記載も多々あり性というものの微妙さ、難しさを改めて感じた。
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サンビーチ病院に勤務することになった翔子。そこでは性同一性障害やインターセックスの患者達への治療が行われていた。翔子は絶望の淵にいた患者達のために奔走するが、岸川院長の周辺に不可解な変死が続いていると気づき…。
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すごいなぁ。素晴らしい作品だった‼︎
602ページ夢中で読み、今朝の電車で読み切ってしまいました。何度も胸が熱くなり涙が滲みました。ますます帚木蓬生作品、好きになりました。
人間性そのものへの探究と、事件性のミステリーとの両面、どちらも読み応えたっぷりです。
ちょっと大袈裟な言い方だけど…全人類が読めば良いのに…なんて思いました。
泌尿婦人科の医師、秋野翔子は、天才と評判の医師、岸川に誘われて、サンビーチ病院に転勤する。
医療技術や人材も、施設も充実した病院で、翔子の人柄と技量に魅了され、病院にも活気がでる。
そんな中、翔子は、岸川の周辺での奇妙な変死に気づき…!
両性具有という言葉は知っていたけれど、インターセックスというのは『性分化疾患』という医学用語も使われているそうです。ネット検索したら、
「体の性に関する様々な機能・形・発達が、一般的に『男』『女』とされる典型的な状態と一致しない部分がある」という状態。
(以下ネタバレあります)
染色体の区別だけではない、形や機能も、そして気持ちも…。
医学的な考え方で、早くどちらかに決めた方がいいと、赤ちゃんのうちから手術され、思春期にも周りに隠しながら、何人もの研修医たちに見られながら、手術を繰り返す。
それに対して、翔子は言う。
(注: 私の抜粋です、本文ではもっと詳しい)
「しばらくこのままでいい。形はどうあれ、赤ちゃん自身が元気なのに、白黒つけるための手術は…幼い頃から何度もメスを入れられ取り返しのつかない傷をつけられる。書類やしきたり上は、男か女か決めろと、世間の目もそうでしょう。でも、親や家族は真ん中も許されるのだという信念を持っておくべき。大人になって、18歳くらいになって、本人が決めれば良い。それまでの辛さをやわらげてあげるのが、両親、家族、そして医師です。
もちろん辛いこともあるでしょう。形以上に気持ちが揺れ動く。気持ちは外見で決まるものではない。
男、女ではなく「人間」として考えて接してあげる。家族の中ではタブーとせず、オープンに話し合う。もちろん私もずっと相談に乗ります。
自分の意思でしたことは耐えられます。意思に反してされることは、傷として心の中に残ります。」
この辺りの、悩む両親とのやり取りが…もう、翔子の素晴らしさに、当事者たちの苦悩に、涙が出ます。
ドイツでの自助グループのシーンも切なくて力強くて、素晴らしい。
この中でも、男と女だけでなく、その真ん中を3つに分けて5つの性として考えるといい!という話もあり、なるほど〜と感じました。
日本中に、世界中にそういう人たちが本当はたくさんいて…言えないからわからないだけなのだということ。
もちろんこの世には沢山の病気があり、難病、心の病、それは数限りないと思う。好きで病気になる人はいないのに…。
大っぴらに言えない、周りの目が嫌で、恥ずかしくて、何を言われるか差別が怖くて…そういう理由で人に言えない病気って多いと思う。(私自身も経験あります)
翔子の言葉にもあります。
「コソコソする必要なんてありません。何も悪いことをしてないのだから」そう!そうなのに…。
人間として生まれ、人間として生きることが大切。そんなことを、いろいろ考えながら読みました。
インターセックスに限らず、人に言えず悩んでる人、みんなに読んで欲しい傑作です。
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ノンフィクションともとれる現代の日本のジェンダーや医療と倫理をテーマにした深い内容。ながらにして、ストーリーとしても面白く、ぐいぐいと引き込まれて読めました!
男と女の性差の前に、ひとりの人間ー、って今日現在に生きる私たちにとって、本当に重要な問いかけですよ。ちゃんと目の前や周りの人に興味を持って、人として幸せに出来てますか?って話。2020年末に読み終えて大変有意義でした。
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ふぅ〜〜〜
と、読み終わった後に考えこんでしまう。
概念としては大学時代に勉強はしていたが、生物学的にこういうことがあるのは知らなかった。
知っても、自分に深く関係のある状態にならないとフラットに近づくのは難しい気がする。
未だに女性の社会進出なんてことを言ってる世の中で、性と言うものの概念をきちんと理解し、社会システムが形づくのはいつのことになるか。そもそも来るのか。
物語の作りは海堂尊っぽい(笑)
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元医師であった帚木さんの作品。
外的に男でも女でもないインターセックスを題材に人としてのあり方を問う。サスペンスの謎解きも面白いが、無くても厚い内容。
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サスペンスとサイエンスミステリー。インターセックスやセクシャリティの問題を色々考えさせられた。LGBT活動をしている人にはぜひおすすめします♪
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読み終わって、息を殆ど止めた状態で読んでいたことに気づいた。
無知な私には、医学の知識をそのまま鵜呑みにしてしまっていいのかはわからない。
でも、かなりの確率で第三の性を持って生まれてくる人達がいて、その大部分がひっそりと生きているのだろうことはわかった。
岸川院長の考え方にはハラハラさせられたが、遺書を読むと、もう何も言えない。
誰もが楽しめる本だとは思わないけど、読み応えのある作品に挑戦したい人にはお薦め。
『閉鎖病棟』とは違い、読み手に元気がなくても充分楽しめるのもよい。
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「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障碍者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、〈インターセックス〉と呼ばれる人たちへの治療が行われていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき……。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
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今まで男女の二分でしか見てなかった世界が拡がりました。
どちらかに寄せる手術がよいのでは、と最初は考えてましたが、読み進むうち、そうでない選択もあり、それがよいのだと考えが変わりました。
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題名の通りの本。
最後の方になるとミステリー要素が強くなってきて面白い。
そこまでは、インターセックスや性同一性障害の方についてとても勉強になるし、色々と考えさせられました。
ミステリーに関しては、殺人の動機が弱い、、??と少し思ったが面白かった。
翔子が岸川に呼び出されて部屋で話してる時、どんな結末になるのだろう、、とすごく胸が踊りました。
翔子の素性を最後に知って、驚きともに納得。
その後のサンビーチ病院の話を読んでみたい。
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エンブリオを読んでからのインターセックス。
エンブリオは岸川目線だったのが本作は翔子目線で物語が進む。
インターセックスについてとても興味深く読み進め、いろんな意味で勉強になった。
途中からサスペンス要素が強くなり、翔子が真相に近づくにつれドキドキが止まらない。
予想もしないラストにこれ以上のラストは無いと思った。
とにかく読み応え十分、おすすめです。
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当事者にしてみれば「興味深い」なんて言ってはいけないのかもしれないけど、世間であまり話題にされることのない、生まれつきの「インターセックス」を題材にした長編。
最近、性同一性障害などはわりとオープンになってきたけど、体そのものが男性器と女性器を両方兼ね備えていたり(ただしどちらも未発達のことが多い?)、または両方ともなかったりする「インターセックス」は、割合的には多く出産しているにも関わらず、当事者が声をあげることなくひっそりと生きているため、問題にされることが少ない。
主人公の女医は、赤ちゃんのうちに手術をしてどちらかの方に近づけるべき、という従来の考え方を転換させ、そんな体でもいいじゃないか、病気じゃない、そういう第三の性なのだ、ということを主張し、大人になってから自分は女性になりたいのか、男性になりたいのか、本人が決断を下す権利があるはずだという考えを貫こうとする。
それだけでも十分に重たいテーマなのに、臓器移植や不妊治療、病院の経営のありかたなどなど、いろんな問題が絡んできて、とっても読み応えのある1冊です。
病院長が本当は信頼に値する人物なのかどうかがなかなか分からなくて、それが小説全体に緊迫感をプラスしていて面白い。
でも、殺人動機がイマイチだったなぁ…。
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『エンブリオ』の続編。
こっちの方が興味深かった。
今回は、あの岸川の経営するサンビーチ病院に転勤することになった秋野翔子が主役。
彼女は性染色体の異常により、男性でも女性でもない「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療を行っていた。
思いがけず、サンビーチ病院に転勤になった翔子だが、岸川の周辺に奇妙な点があることに気付く。
先が気になって、読むのがやめられなくなる。
2019.1.20
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2017.7.21完読
これ読むの結構時間かかったわー
だけど、なんだか面白かった
岸川先生が本当はやってなくて
誰かに仕組まれたことだったら良かったのにー
って本当に思う
でも、何よりの一番の衝撃は、直子さんとデキてたこと
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『エンブリオ』の続編。『エンブリオ』を読んで以来、読みたいと思っていた本がやっと読めました。
続編だけど、単体で読んでも違和感なく読めそうです。
maleかfemaleに無理矢理分類させようとしない、というのは眼からウロコでした。
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インターセックスを扱った医療ミステリー。医師の翔子が、インターセックスに対する偏見と闘いながら、亡くなった親友の死の真相に迫る。
『エンブリオ』の続編となっているけれど、単体でも十分理解できる。
ミステリー部分については、犯人がほぼ分かっているので、物足りない気もするけれど、専門用語が多いのに分かりやすく、医療ものとしてはかなり楽しめる。
半陰陽、両性具有という言葉には馴染みがあったけれど、インターセックスは初めて聞いた。広義のインターセックスの新生児が、100人に1.5人の割合で生まれるということにビックリ。
性同一性障害はだいぶ認知されてきたけれど、それ以上にマイノリティな存在であるインターセックスの人たちが、声を上げることもできず、隠れるように生きている現状が淡々と描かれていて、読んでいて辛くなる。もっと世間に認知され、彼もしくは彼女たちが、自分らしく生きていける世の中になればいいと願う。
男か女かである前にひとりの人間であり、インターセックスは<第三の性>なのだという言葉が印象的。
Posted by ブクログ
本の背表紙のあらすじでは「~やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気付き…」とがっつりサスペンス感があるけど、その話はたまーにチラチラ最後にポッと出てくるだけでほとんどがインターセックスやその当事者の事、主人公の考えなど。
インターセックスに興味があったので興味深い事だらけでよかった
インターセックスに全く興味が無く、サスペンスを期待して読むとキツイかも
むしろサスペンス要素は無しで、インターセックスや性差医療、男とか女とかじゃなくて人間として…的な内容だけで十分だったかも
たまに難しそうな医学的用語や描写があるけどとても読みやすかったので、サスペンスは期待せず、インターセックスを知るために読んでもらいたい
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久しぶりに手にした帚木さんです。
『エンブリオ』の続編ですが、それを読んだのが6年前ですから、内容はほとんど覚えてなくて、ただ天才医師・岸川とリゾートのようなサンビーチ病院だけは強く印象に残っていました。
帚木さんらしいヒューマニズムに溢れた作品ですが、やや冗長な感じがあります。それはこの物語に2つの軸を持たせた為だと思います。軸の一つが半陰陽(=インターセックス)に対する医学的偏見、もう一つは岸川と病院をめぐる連続殺人事件です。ただ、著者が描きたかったのは前者で、後者は物語の形を作る道具だてに過ぎない感じがします。
インターセックスを巡るエピソードは秀逸で心を揺るがせます。また、その関連で綴られる医療過誤問題も考えさせられます。
『エンブリオ』が有ったから、この『インターセックス』が書けた。しかし『エンブリオ』を引き継いだために、岸川の背徳にケリを着けなければならず、その為に焦点が絞り切れなくなった、そんな気がします。いっそ『エンブリオ』から離れ、別のストーリーで『インターセックス』を描けば。。。ちょっと残念な気がします。
Posted by ブクログ
読み応えのある長編。
当人とその家族にしかわからない大変な辛い想いや葛藤。
そういう人たちが実際にいるということは知っているべきである。
信頼できる優れた医師に出会えることはこのような患者にとっていかに大丈夫なことか。
Posted by ブクログ
医師としても経営者としても優れた岸川と、インターセックスや性同一性障害の患者に向き合う翔子。翔子の秘密については早期に予想はつくし、ラストも予想の範囲内だが、医療ものとしては分かりやすく、とても勉強になった。すべてのインターセックスの人が同じ考えを持つかは分からないが。薬の量にしても、誰を基準としているかなど考えたこともなかったので、なるほどと思えた。
岸川の魅力が強すぎて、翔子が霞んでいる気がするのが惜しい。
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これは深いい本だった。両性具有は知ってたけど色んなインターセックス(半陰陽)のパターンがあるとは驚きだった。そもそもインターセックスという言葉も初めて知ったし。
その方たちは本にもあるように誰にも知られず、ヒッソリと生活しているのか?そもそも人間は白黒つけたがるし。個人的にはグレーもウェルカムだけど、その本人にとったら隠したいのも良く分かる。
ミステリーの方はおまけ的な感じ。インターセックスの勉強をする本だと思う。読んで良かった。
岸と名のつく苗字は前職の社長を思い出させるので、そこだけが何とも気持ち悪い感じだった。
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男でもなく女でもない第3の性「インターセックス」
広義では100人に1.5人もいるという事実にびっくり。
学校でいえば、1学年に1人くらいはいるってことか・・・
マイノリティの苦悩
すごく勉強になった1冊
ミステリの部分は、まぁおまけ的な感じ(笑)
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薦められて読んだ本。おもしろい、というより勉強になる本。普通に生きていたら知ることもない世界に対して、筆者の知ってほしいという感情が溢れている。「おそらく不意に襲ってきた不幸に対して、人は「どうしてよりによって」と反射的に考え、その解決策として原因探しをし、自分を責めるだろう。人間の遺伝子に組み込まれた知性がそうされるに違いない。
要するに人間の知性は<偶然>を受け入れられないのだ。すべてに因果関係を求めるこの傾向こそが、ヒトをその他の動物から抜きん出させた原因とさえ言える。」
蛇足だが岸川先生のような人材は罪に問われる必要は無いと思う。
Posted by ブクログ
これは、続編なのですね。
知らずにこちらを読みました。
最初から読んだ読者さんは当然しっていることを、複線のように書くのは難しいんでしょうね。
それとも複線のようにするつもりもないのかも。
途中で話が読めてしまって、ミステリー側の方は、特に面白くなかったです。
でも、インターセックスの話は、事実の程度は知らないですが、引き込まれました。
それだけで書いたらもっと良かったのではないかと思ってしまいました。
Posted by ブクログ
両性具有という言葉は聞いたことがありましたが、それがインターセックス。未発達な二つの生殖器を持っていて、性同一性障害とは異なる。
専門用語が沢山使われていてチョット読みにくいうえ、前半 インターセックスの説明、患者さんの苦しみや生きづらさが長過ぎ、いやになります。
何処からサスペンスが始まるのだという感じでしたが、勉強になる作品でした!
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男性でも女性でも無い性があると言う観点ではとても感心した話であった。
しかし、主人公の女医が完璧すぎてこれまた入り込めない。ほほえんだだけで周囲の男性が皆でれっとする・・そんな場面は必要か?
Posted by ブクログ
インターセックスという、世間からはひた隠しにされてきたマイノリティな性に焦点を当てた一冊。
マジョリティであるmale、female に分類される読者にはインターセックスとは何かという周知を図り、
マイノリティである読者にはインターセックスであるからと恥じる必要はない、性は二分化されるべきではないのだと声をかけている。
そういう意味で大きな意味を持つのではないかと思う。
エンブリオの続編、と知らずに読んで、エンブリオでの岸川と加代の話がやたら出てきて驚いた。
この小説に岸川の黒い部分はそこまで必要でなかったように感じる。
Posted by ブクログ
前作『エンブリオ』の続編です。
サンビーチ病院ような病院ができ、世に知られるようになってこそ、本当の意味でやっと「性差別」の領域に踏み込めるような気がします。
しかし、この病院を作った岸川院長は、そのために多くの人間を犠牲にしました。それほど理想の病院を作ることは困難だという作者の警告のようにも感じとれます