あらすじ
「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療が行なわれていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
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Posted by ブクログ
読み終わって、息を殆ど止めた状態で読んでいたことに気づいた。
無知な私には、医学の知識をそのまま鵜呑みにしてしまっていいのかはわからない。
でも、かなりの確率で第三の性を持って生まれてくる人達がいて、その大部分がひっそりと生きているのだろうことはわかった。
岸川院長の考え方にはハラハラさせられたが、遺書を読むと、もう何も言えない。
誰もが楽しめる本だとは思わないけど、読み応えのある作品に挑戦したい人にはお薦め。
『閉鎖病棟』とは違い、読み手に元気がなくても充分楽しめるのもよい。
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「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障碍者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、〈インターセックス〉と呼ばれる人たちへの治療が行われていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき……。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
Posted by ブクログ
題名の通りの本。
最後の方になるとミステリー要素が強くなってきて面白い。
そこまでは、インターセックスや性同一性障害の方についてとても勉強になるし、色々と考えさせられました。
ミステリーに関しては、殺人の動機が弱い、、??と少し思ったが面白かった。
翔子が岸川に呼び出されて部屋で話してる時、どんな結末になるのだろう、、とすごく胸が踊りました。
翔子の素性を最後に知って、驚きともに納得。
その後のサンビーチ病院の話を読んでみたい。
Posted by ブクログ
当事者にしてみれば「興味深い」なんて言ってはいけないのかもしれないけど、世間であまり話題にされることのない、生まれつきの「インターセックス」を題材にした長編。
最近、性同一性障害などはわりとオープンになってきたけど、体そのものが男性器と女性器を両方兼ね備えていたり(ただしどちらも未発達のことが多い?)、または両方ともなかったりする「インターセックス」は、割合的には多く出産しているにも関わらず、当事者が声をあげることなくひっそりと生きているため、問題にされることが少ない。
主人公の女医は、赤ちゃんのうちに手術をしてどちらかの方に近づけるべき、という従来の考え方を転換させ、そんな体でもいいじゃないか、病気じゃない、そういう第三の性なのだ、ということを主張し、大人になってから自分は女性になりたいのか、男性になりたいのか、本人が決断を下す権利があるはずだという考えを貫こうとする。
それだけでも十分に重たいテーマなのに、臓器移植や不妊治療、病院の経営のありかたなどなど、いろんな問題が絡んできて、とっても読み応えのある1冊です。
病院長が本当は信頼に値する人物なのかどうかがなかなか分からなくて、それが小説全体に緊迫感をプラスしていて面白い。
でも、殺人動機がイマイチだったなぁ…。
Posted by ブクログ
本の背表紙のあらすじでは「~やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気付き…」とがっつりサスペンス感があるけど、その話はたまーにチラチラ最後にポッと出てくるだけでほとんどがインターセックスやその当事者の事、主人公の考えなど。
インターセックスに興味があったので興味深い事だらけでよかった
インターセックスに全く興味が無く、サスペンスを期待して読むとキツイかも
むしろサスペンス要素は無しで、インターセックスや性差医療、男とか女とかじゃなくて人間として…的な内容だけで十分だったかも
たまに難しそうな医学的用語や描写があるけどとても読みやすかったので、サスペンスは期待せず、インターセックスを知るために読んでもらいたい
Posted by ブクログ
薦められて読んだ本。おもしろい、というより勉強になる本。普通に生きていたら知ることもない世界に対して、筆者の知ってほしいという感情が溢れている。「おそらく不意に襲ってきた不幸に対して、人は「どうしてよりによって」と反射的に考え、その解決策として原因探しをし、自分を責めるだろう。人間の遺伝子に組み込まれた知性がそうされるに違いない。
要するに人間の知性は<偶然>を受け入れられないのだ。すべてに因果関係を求めるこの傾向こそが、ヒトをその他の動物から抜きん出させた原因とさえ言える。」
蛇足だが岸川先生のような人材は罪に問われる必要は無いと思う。