帚木蓬生のレビュー一覧
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和歌山砒素カレー事件を題材にした『悲素』は18年に読んだ。本作も、語り手は九州大の沢井教授。冒頭は、『悲素』のサリン事件回想の場面とほぼ同じ展開。現実の事件を基にした物語とは言え、テーマが変わったからといって関連する場面を変えたりしない、作者の姿勢が見えた気がする。
インチキ宗教に、高等教育を受けた優秀な人材が嵌まり込み、大量殺人を起こしたこと。その、状況的に真っ黒な、しかも前代未聞の凶悪犯罪を起こしたと思われる組織の広報担当が連日TVに出て、空疎な反論を吐き散らしたこと。それを視聴率が稼げるからとTV局が連日放送し、我々もそれを半ば面白がって見ていたこと。オウムも十分に異常な組織だったが、そ -
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十編を収めた短編集。
いずれも老若男女の「良医」が主人公・花が必ず登場するもので、どれもものすごく大きな起伏があるという話ではないけれど、なんだかじんわりよかったなと思わせられた。
現役精神科医である作者によると、メディアなどで大きく名医だと取り沙汰される医者よりも、日の当たらないところに良医はいるのだと、それを伝えたかったのだと。
たしかに作中に出てくる医師たちは、患者をよく見て、患者との関わりを常に模索している人たちが多かったな。
1話目は個人的に導入が入りづらいなあと感じだけど、どの話も全体的にどこか印象に残る。
あらすじには紹介されてない話だけど、藤籠、顔、アヒルおばさんという話が好き -
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イギリス医学会の重鎮アーサー・ヒルがノーベル医学・生理学賞を受賞したことを端緒に、青年医師・津田が自信の恩師である清原の随筆を読んだことから始まる医療サスペンス。
津田の恩師に対する思い、その娘・紀子の父への思慕、無名の研究者の発見が搾取され狂わされた人生、そして研究者たちの不可解な死因、とグイグイ引き込まれた。
章が変わるごとに目線が変わり、今回は誰?あれは誰が探り当てたんだっけ?と混乱する時も。
権威あるものに逆らえない風潮はどの分野にもあるんだろうけど、殺人はともかくこんなことは現実にもありそうで、なんだかノーベル賞も手放しで賞賛できなくなりそう。
それにしても死因が明らかになる終