帚木蓬生のレビュー一覧

  • 悲素(下)(新潮文庫)
    事件の真相究明がどのように行われていたか初めて知りました。
    専門的な難しい語句が臨場感のある展開となり一気読みでした。
  • エンブリオ 下
    男性の妊娠を国際学会で発表した岸川。
    アメリカの不妊治療ビジネス大手の企業が接近してくる。
    ただ、その企業は岸川に罠をしかけようとしていた。
    それに気付きた岸川もまた、驚きの対策をする。
    不妊に悩む夫婦を助けながらも、卑劣な面を垣間見せる岸川。
    衝撃的な展開に息を飲む。

    2018.11.29
  • エンブリオ 上
    「エンブリオ」というのは受精後八週までの胎児のこと。
    産婦人科医の岸川は、人為的に流産させたエンブリオや、様々な手を使って手に入れた卵巣等を培養し臓器移植をするという異常な医療行為を行っていた。
    その技術は異常ながらも、世界の最先端をいっている。
    しかし、そうなるともう歯止めが効かなくなってくる…次...続きを読む
  • 日御子(上)
    面白い。帚木 蓬生氏の本は「国銅」「水神」につづき3冊目となるが、どれもすばらしい歴史小説だと思う。本小説は日本に文字のない時代の話であり、歴史を語る文献は日本には存在しない。数少ない、事実と事実の間を実にうまく肉付けし違和感のない小説に仕上げている。はるかいにしえの時代は、確かにこのような時代であ...続きを読む
  • 悲素(下)(新潮文庫)
    和歌山毒カレー事件はもう20年前のことになるのですね。
    ちょうど今頃でした・・・。
    今でもそうですが、マスコミは熱していましたからいろいろ情報が錯綜して
    この小説を読んでいると、わたしでも昨日のことのように思い出します。

    この本の前半、カレー事件とは別の彼女が起こしたとおもわれる保険金詐欺が
    ...続きを読む
  • 蠅の帝国―軍医たちの黙示録―
    第二次大戦で軍医として関わった人たちの短編集。
    内地勤務だった人もいれば前線に近い外地での救命活動に携わった人、のんびりとした環境で終戦を迎えた人もいれば、やっとの思いで内地に帰り着いた人もいる。
    そして軍医ならではなのは、やはり命を救う、病気を治すことに使命感を感じ務めを全うする姿勢だと思う。
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  • カシスの舞い
    実験用のラットを手に入れるように
    人間を手に入れる
    へえーそうなんかい、凄いじゃん

    南フランスのマルセイユ、カシスを舞台に広げられるコワーイお話の中に
    帚木蓬生の作品「深い」を再認識

    書かれた1983年と言えば帚木蓬生はまだ36歳 
    彼にも「シモーヌ」はいたのかな

    ――帚木蓬生氏の作品に接して...続きを読む
  • 千日紅の恋人
    少し年取ってしまった兼業アパート管理人の主人公の落ち着いた視点での恋模様を書いた小説。
    時代感は少し古く、アパートが水洗じゃないころの話であり、時代設定がきちんと些細なところまで統一されてるのが深みのあるリアリティを感じさせる。文体もとても落ち着いており、読みやすい古典的な文章であり、正統派な小説で...続きを読む
  • ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
    啓蒙書のような本はめったに読まない。この本は人に勧められて読み始めた。書いてあることに違和感はない。聞き慣れないネガティブ・ケイパビリティという言葉も、考え方自体は特異なものではない。要は結論を急がないということ。急ぐ前に相手の意図をよくよく聞き分けるということ。そして共感することを心掛けるというこ...続きを読む
  • ギャンブル依存国家・日本~パチンコからはじまる精神疾患~
    国とすれば、稼げればOK、国民なんて、どうでもいい

    ギャンブルをやるのは、人間の本能かもしれません。
    なぜ、ギャンブルを生み出したのか、
    それをやると楽しいからです。

    脳科学が発展して、
    ギャンブル依存症患者の脳の報酬系の仕組みが、
    はっきりしました。ギャンブルをすると快楽物質のドーパミンが出る...続きを読む
  • 悲素(下)(新潮文庫)
    和歌山毒物カレー事件を題材にした、ノンフィクション的小説。

    精神科のクリニックを開く作家・帚木蓬生氏が、地元の医師仲間でカレー事件やサリン事件にも捜査協力した井上尚英九州大学名誉教授から鑑定資料一式を託され、「知られていない事実があまりに多すぎる」ことに驚いた著者が、井上氏をモデルにした〈沢井直尚...続きを読む
  • 悲素(上)(新潮文庫)
    1998年、和歌山毒カレー事件。よくよく見れば20年前のこと。当日の報道映像を思い出し、小林真由美へのインタビュー映像も思い出す。
    大学教授たちの毒物鑑定や被害者の診察状況などの事実の積み重ねが語られる。感情的な部分が少ないのに心の底に怒りと疑問が溜まっていく。書かれる医学用語のほとんどはよく理解で...続きを読む
  • 悲素(下)(新潮文庫)
    警察への供述調書、検察への供述調書、公判での証言、弁護人からの反対尋問。犯人が逮捕されてからも大変な役割がある。結審しても被害にあわれた方や残された方の身体や心の傷が完全に癒えることはない。
    どうか少しでもお元気で、少しでも笑顔をと祈るばかり
  • 三たびの海峡
    職場の先輩からお借りした作品。とても苦しく、重厚な作品でした。
    人は自分がされたことはいつまでも覚えているけど、自分がしたことはあまり覚えていないのかもしれません。でもだからといって、それを軽く考えたり、文中にもありましたが、加害者側が「水に流す」としてしまうのは間違いだということがわかりました。
    ...続きを読む
  • 聖灰の暗号(上)
    予備情報ゼロだったのもあって前半はやや退屈なスタートだったけど、後半から引き込まれ始めた。下巻に期待高まる。
  • ヒトラーの防具(上)
    作品中にも出る「正義は弱者にある」そういう視点から書かれた小説です。
    相変わらず帚木さんらしい抑えたれた丁寧な文体で、ナチスによる迫害や戦争の悲惨さが次々と冷静に語られていきます。声高でも押し付けでもないヒューマニズムです。
    近年発見された日記という形式で語られるのも、リアリティを生み出すのに成...続きを読む
  • 空山
    同じ背景・登場人物の前作「空夜」が恋愛小説だったのに対し、この作品は「ごみ問題」を取り上げた社会小説です。
    さすがというか、帚木さんの筆力は素晴らしく、一気に読ませてもらえます。人物造形の上手さや、途中に盛り込まれる恋愛模様の面白さもあります。
    ただ、ごみ問題があまりに正論過ぎて、どうしても青臭...続きを読む
  • 逃亡(上)
    読み始めは一寸違和感があった。
    平和な世界から見れば、異常行動と言える拷問や殺人を経験した主人公が、反省や後悔も無く自己弁護している姿は、これまで読んできた帚木さんの感じとどうも違う。有ってはならない悲惨さを読者に訴えるのではなくて、むしろそれを肯定してる感さえあるる。
    しかし、後半に進むにつれ...続きを読む
  • アフリカの蹄
    帚木さんらしいヒューマニスティックな作品です。
    一般的にはミステリーに分類されるのかもしれませんが、私にはヒューマニズムの面から純文学のように見えます。
    やや、定型的過ぎるかもしれません。右翼白人は皆悪人ですし、黒人は皆善人のような書かれ方です。そういった面での深みを感じられないのは、少し減点で...続きを読む
  • 空の色紙
    最初の作品を読んで"やはり帚木さん!"次を読んで"エッ?"、最後で"アリャリャ”という感じ。
    空の色紙はなかなかです。第2次大戦が出てくるところも、ヒューマニスティックなところも、いかにも帚木さん。
    しかしあとの2作はね。「頭蓋に立つ旗」はデビュー作だそうですが、文章にやたらと力が入っている感じ...続きを読む