帚木蓬生のレビュー一覧

  • 逃亡(上)

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    戦争当時の日本軍の非行を読むのは辛く、進みは遅く何度か止めようかと思いながらも読み終えた充実はある。戦争の中での日本の狂気と、敗戦国の不条理な不当な裁判のあり方、また無差別殺人である核兵器が何も問われない勝国の論理。これからは成り立たないだろう。

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    2016年08月11日
  • 日御子(上)

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    「日御子」というタイトルにも関わらず、上巻には卑弥呼さん出てきません。使えきという通訳の一族を中心に話が進んでいきます。
    テキストや音源がたくさんある現代においても、語学の習得は難しい(少なくとも私には)のに、この当時、中国語をモノにするのは本当に大変だったろうなぁと当時の通訳さんの努力には頭が下がります。
    うろ覚えですが、通訳一族の家訓で『毎日の習慣は才能に勝る』みたいな言葉があったので、私もコツコツ頑張ってみようかな、という気持ちになりました。
    志賀島の金印についても、なぜあんなに貴重なものが忘れ去られていたのか、というのが書かれていて、作者さんの想像であることを理解していても、なかなか面

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    2016年09月09日
  • 聖灰の暗号(下)

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    こうやって歴史の表舞台から抹殺されたり、生き残った勝者によって事実を曲げられたりした者はたくさんいるのだろうな。

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    2016年07月30日
  • ヒトラーの防具(下)

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    第二次大戦中のドイツを軍の駐在員の視点から描いた話。
    実際にどんなことが起き、市民の生活はどうだったのか、という描写が生々しい。
    総統の最後が少し迫力が足りないような気もするが全体的には読み応えがある。

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    2016年07月20日
  • 聖灰の暗号(下)

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    宗教には関心がないがキリスト教も複雑な。勿論仏教もイスラム教も然りだが。外(全く異質のもの)に対しては一丸となり勝敗が明確だが内部抗争となると、止め処ない執拗さが継続する。会社という組織も同様だ。

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    2016年06月11日
  • 三たびの海峡

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    20代前半の頃に読み「よい本だ、また読もう」と思い十数年。本棚の整理がてら再読。
    内容を殆ど覚えておらず、こんな内容だったかと驚きながら、少しずつ思い出していった。

    二次大戦中、日本の炭坑に無理矢理つれてこられ、労働を強いられた韓国人の主人公。時代は現代になり終戦後韓国に戻り経営者として成功した主人公が、三度海峡を渡り日本に来る、過去と現在を織り交ぜて話は進む。

    戦争、終戦、六・二五動乱、済州島四・三事件など時代に翻弄される主人公を思うと大変な時代であったと思う。 未来に事実を残そうという意志はもっともだと思うが、成功してもなお、強烈な過去の怨みが消えない事の恐ろしさ、残念さを思う。

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    2016年03月25日
  • 臓器農場

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    話が唐突に進んでいくので、ええー? って思うんだけど、先が気になって気になって一気読みしてしまった。
    面白かった

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    2016年02月13日
  • 水神(下)

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    水田の水不足に苦しむ村で、川から水路を引いてくる計画を立て成し遂げる話。
    五庄屋の情熱に、菊竹さんの想いに、心熱くなりながら読みました。私がいま情熱を注ぐべきは何だろうとも考えさせられました。
    そのとき自分の置かれている状況によって、何を考えるかまた違ってきそうか気がします。

    時間を置いてまた読んでみたい1冊です。

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    2015年12月24日
  • 風花病棟

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    ネタバレ

    2015年の51冊目です。
    帚木蓬生氏の小説を初めて読みました。
    2014年秋にリサイクル本として購入し、
    積読状態だったのですがようやく読みました。
    10作の短篇を集めた作品集です。
    著者は精神科医だけあり、医療や病気に関する表現はリアリティーを感じました。
    医療を通した人の生き様に対する真摯な視線を感じます。
    健康や生死の問題は、否が応でも人の心に突き刺さります。
    時に鋭い刃物の様に心を切り裂き、時に小骨がのどに引っかかるように、
    断続的に気持ちを乱します。それらに向き合う人間の心情はとても弱く、
    揺らいでいると思います。どうやって折り合いをつけるのかが綴られているように感じました。それを

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    2015年12月09日
  • 水神(下)

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    「水神 下」

    感動した!

    無事に堰ができて水路に水が各村まで流れた時には感動しました!

    今の私たちってこうやってなんでも人間の手で作り上げてきた昔の人たちの土台があってこそなんですね。

    つくづく感心しました!

    途中何度も危うい目に合うけど最後はハッピーエンドで本当に良かったです!

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    2015年11月26日
  • 聖灰の暗号(上)

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    フランスの地名もわからないし、キリスト教やカタリ派もよくわからないので、冒頭部分は読むのがしんどかったが、パリを出る頃から加速して面白くなった。読んでいるうちに、フランスの情景や、カタリ派の苦しみが見えてくるようだ。
    まだ、敵?の気配しか見えていないので、ここからどうなっていくのかが楽しみ。

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    2015年11月13日
  • アフリカの瞳

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    『アフリカの蹄』の姉妹編。
    白人極右組織による黒人抹殺の陰謀を書いている『アフリカの蹄』の後、南アフリカは黒人政権の国となったのだが、貧困は変わらず、そのうえエイズが国中に蔓延して、希望を失った人々はアルコールに依存したりするのだった。

    出口の見えない南アフリカの現実。
    白人は高価なエイズの治療薬を使うことができるが、黒人は病院にかかるお金も病院へ行く交通費もないのに、エイズの治療薬なんて買えるわけがない。
    経済的に豊かな国が、企業が、個人が、ほんの少しのお金をエイズ撲滅のために使ってくれたら。

    “要するに、アフリカの貧困とエイズから日本が学ぶことは多々あるのに、日本の眼はアフリカには向け

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    2015年11月09日
  • 水神(下)

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    地味な話なのに読ませるよなあ(感嘆)しかし失敗した。「天に星、地に花」より前に読むべきだった。それが残念。

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    2015年10月24日
  • 賞の柩

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    ついこの間ノーベル賞が発表になり、日本人が受賞したことは喜ばしいニュースであるが、この作品はそのノーベル賞が背景の医療サスペンス。恩師の死因を探るため主人公は、疑惑の受賞者や関係者を訪ねて、ヨーロッパ各地を巡り歩く。疑惑追及の旅ではあるが、旅情豊かな景色の描写に、爽やかな読後感となっている。

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    2015年10月15日
  • アフリカの蹄

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    私は自分が生まれる前の出来事は書物に出てくる「歴史上の出来事」として一歩引いて見ているが、アパルトヘイトは紛れもなく私が生まれてからもしばらくは存在していて(中学生の時に文化祭の壁新聞でアパルトヘイトについて書いた覚えがある)、そういう意味では私にとってアパルトヘイトは歴史上の出来事ではなく、現実に認識できた出来事と言える。

    にもかかわらず、中学生の頃、「名誉白人と呼ばれる日本人を私はちっとも名誉だとは思いません。」みたいなことを偉そうに壁新聞に書いた私は、アパルトヘイト撤廃のために何かした訳でもなく、その後は正直遠い国の話としてあまり考えたこともなかった。

    今更ではあるが、この本を読んで

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    2015年10月23日
  • 日御子(下)

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    那国時代から、漢の国を志向していた歴史と、通訳の家柄「あずみ」の交流を、邪馬台国時代まで俯瞰した物語。馬車や船の歴史や鉄の歴史について触れながら、卑弥呼のありようを丁寧に語った物語だと思った。通訳達の祖先からのつながりを「あずみ」と「3つの掟」で表現したところがうまいなと思った。

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    2015年09月06日
  • 臓器農場

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    ネタバレ

    厚いけれど一気に読めました。
    解説にもあったが帚木さんの本は言葉がわかりやすく抑制がきいていて読みやすい。

    「無脳症児」は人間か。
    生きられないならせめて他の子供の役に立って欲しいという親や医療関係者の気持ちもわかる気がするが・・・。

    登場人物の言動が何となく古いなと思ったら、20年以上前の作品でした。が、内容は古さを感じさせない。
    ケーブルカーと車掌藤野茂がいい味を出している。

    しかし貞村医師の学生時代の部活エピソードはひどい!

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    2015年08月27日
  • 三たびの海峡

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    帚木さん、「全部同じような話でどれがどれかわからなくなってくる」なんて言ってごめんなさい。
    全然違うお話も書かれるんですね。
    しかし、重い。重すぎる。
    そして、これが史実に近いかと思うと・・・。

    日本に強制的に連れてこられ、強制労働を強いられた朝鮮の人々のお話。
    人間でいることが嫌になる。
    強制労働を強いる日本人のひどさ。
    その手先となり、同胞を苦しめまくる人々のひどさ。
    こういう時、一番残虐なことができるのは実は、敵より味方なのかもしれない。
    鞭打たれる仲間たちと同等になるのであれば、忌み嫌っていたはずの日本人の手先となっても、鞭打つ立場でありたいと思うその気持ちを責めることはできないけれ

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    2015年08月07日
  • ギャンブル依存国家・日本~パチンコからはじまる精神疾患~

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    パチンコ・スロットはゲームであってギャンブルではないというのは無理があるだろう。宝くじがギャンブルと言われるとなんだかなぁ~と思わないこともない。

    ギャンブル中毒患者がこんなにいるとは驚き。

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    2015年08月07日
  • 三たびの海峡

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     戦争が犯した罪の一つ。強者が弱者を対等な人として、認めてこなかった事。
     帚木氏は戦争の罪を書きとどめてきている作家の一人だと思う。
     この作品の凄さは、人さらいの様に連れて来られ、強制労働を強いられた韓国人を軸となっていること。あまり知ることのない、韓国人の習慣などを描き、民族の違いを浮き出さしている。でも本来だったら、もっと朝鮮民族の”恨”の感情が強いのではないのだろうか。
     日本に残した子、そして孫までもが日本と韓国の橋となろうとしている展開。現実より、さらに一般に受け入れ易い様に、すこし柔らかいニュアンスにしているところ、そのもどかしさが、作品そのものを弱めてしまったのでは・・・

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    2015年06月20日