あらすじ
長き眠りから覚めた古文書は、須貝たちの胸を揺さぶった。神を仰ぎ慎ましく暮らしてきた人びとがなぜ、聖職者により、残酷な火刑に処されなければならなかったのか。そして、恋人たちの目前で連続する奇怪な殺人事件。次々と暗号を解いてきた須貝とクリスチーヌの行く手には、闇が顎を開けていた。遥かな過去、遠きヨーロッパの地から、いま日本人に問いかける、人間という名の難問。
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Posted by ブクログ
圧巻のレイモン・マルティの手稿!!マルティは、14世紀、カタリ派を弾圧するローマ教会の審問官について記録するドミニコ会の修道士なのだが、カタリ派の指導者が聖書のイエスの言葉を引用して審問官を糾弾していく姿を見て、本当のキリスト者はカタリ派の人々ではなかったかと思い始めるのだ。マルティとカタリ派の指導者との心の交流は感動的である。イエスは罪と冒涜と腐敗を拒む人々は迫害されると言ったが、その迫害者こそローマ教会である。はっきり言って、ローマ教会は人殺し集団だ。この小説の現代の場面においても、この14世紀のマルティの手稿を抹殺しようと殺人を繰り返したり、誘拐事件を起こしたりするのは教会の手先たちなのだ。あとがきを書いている陣野氏が、フランス語に翻訳されるべきだと言っているが、難しいかもしれない。カトリックに対する明らかな糾弾であるから。問題作だ。排他的で好戦的な宗教に対する挑戦である。カタリ派の平和的で平等で敬虔な宗教観は見直されるべきかもしれない。
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登場人物がフランス語(やらオキシタン語)やらで話しているせいなのか、著者の癖なのか、とにかく一文が長く、接続も多い。しかし、それが翻訳のような雰囲気を生んでおり、外国文学を読んだような後味がある。
カタリ派から見た歴史も、あるひとつの見方にしか過ぎず、全てを肯定的にとらえてよいのかはわからないが、少なくとも人殺しに神の名を借りる者に、神を説く資格はない。どのような宗教であろうが、罪を犯したり他人を害したわけでなもないのに、特定の思想を持たなければ救わないような狭量な者は、神でなくただの王ではないか。
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やはりこの作家は凄い。文句なし☆×5。13世紀フランスにて実際におきた血ぬられた過去を示す一通の古文書を一人の日本人歴史学者が偶然発見することから物語は始まる。バチカンによる実際に起きたカタリ派の粛清を史実に基づいて一級のミステリーに仕上げてある。驚愕すべきは古文書が全て筆者の創作。「 彼らの生きた証を探しだし人々の意識のどこかに収めるのが歴史家のやろうとしている試みである」 感動という安易な一言では言い表すことは出来ない。完敗です。そういえばダ・ヴィンチコードに似ているかな。
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信仰とは何か、善とは何か。
古文書によって解明されるローマ教会とカタリ派の対比が、(日本人にもわかりやすいようにデフォルメされているのかもしれないけれど)非常に興味深い。ミステリーの要素も充分で、次々と頁を繰りたくなるスリリングさ。ラブストーリーや友情も気持ち良く描かれていて、小説としての面白さあり、信仰、宗教についてわずかでも考えるきっかけにもなり、魅力的な本でした。
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上下2巻のそれも厚みのある2冊だったけど、停滞することなく最後まで読めた。途中、カタリ派の<良き人>の説教、問答に感動。実際に聖職者による問答のように思えるくらい。
文中で紹介されるワインや郷土料理も楽しい。恋愛のシーンはは・・・なくてもいいかな。
Posted by ブクログ
2010初読
2023/8再読
〈十字軍〉はイスラム勢力と戦ったものだけでなく、ヨーロッパ内でも、“異端”と決め付けたカタリ派の迫害に関わったものもあったことを知った作品。一体、ローマ教皇庁は、過去の総括をしているのだろうか?
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宗教には関心がないがキリスト教も複雑な。勿論仏教もイスラム教も然りだが。外(全く異質のもの)に対しては一丸となり勝敗が明確だが内部抗争となると、止め処ない執拗さが継続する。会社という組織も同様だ。
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初めての帚木 蓬生 さん
面白い
細かな描写でグイグイ引き込まれる
悠久の歴史に思いを馳せタイムスリップ
宗教と人間とそれを取り巻く巨大な力に翻弄されながらも立ち向かう人々の姿に感銘を受けた
信念を貫くことはシンプルでいてとても難しい
いつの時代も歴史を作るのは揺ぎ無い信念と情熱を持つこういう人達なんだろうな
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神をあがめる集団といえども、どうしてこうもおろかなんだろう。
人間は何故、組織となるとこうも愚かな行いを繰り返す生き物なのか。
人間、一人ひとりと話せばまともであるのに、組織に属した集団となると、どこまでも狭い了見で止まること無く突き進んでしまう。
救いを求めて生み出されたであろう宗教のもとには必ず犠牲が伴うというのは、所詮は人間が産み出したものだからなのか。
途中何度も何度もハラハラして気が気ではなかった。
最後まで主人公を助ける、山に住むエリックの描写を読んでいる間、自然のままに暮らしている、敬愛する彫師さんの姿が思い浮かんだ。
またもや良作でした。
帚木作品大好きです。
Posted by ブクログ
『聖灰の暗号(下)』(帚木蓬生、2010年、新潮文庫 )
キリスト教がテーマ、謎解き、謎解きと並行して起こる殺人事件。小説の設定としては『ダヴィンチ・コード』と似てます。
『聖灰の暗号』では、中世にローマカトリック教会から異端とされたカタリ派に関する世紀の大発見をした日本人歴史学者スガイとフランス人医師らとともに、物語が進んでいきます。
謎解きが進むにつれ、追手がいることが明らかに。それはスガイの発見を阻害しようとします。それがため、殺人事件にまで発展してしまいます。
追手が迫るなか、スガイらは謎解きと完成することができるのか。
(2009年12月31日)
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もっとミステリ色が強い作品を期待していたんだけど、どちらかといえば”カタリ派”の歴史に重きを置いた話だった。ちょうど『アフリカの蹄』と同じようなテイスト。しかしアパルトヘイトはともかく、カタリ派なんてマイナーなところによくスポットを当てたな。Googleで検索しても、携帯サイト込みで4,600件くらいかヒットしない語なのに。
宗教ってやっぱり怖いな。盲目的に何かを信じている人って、争いが絶えないイメージ。
けれど創作の手記はなんだかリアルで、よく出来ているな~と思った。
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通訳書記として居合わせたドミニコ会修道士が書いた手稿を追う主人公。
ローマカトリック教会の弾圧に遭いながらも信仰を捨てなかったカタリ派を書いた手稿は泣ける
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★2.5だが友人の顔を立てておまけ。
日本の小説に非常にありがちなエンターテインメントへのこだわり不足の典型例。
こういった点がハリウッドをはじめとした(良くも悪くも)娯楽大国アメリカとの決定的、そして埋めがたい差という気がしてならない。
作家はカタリ派の想いの代弁に力点を置いていたのかもしれなし、またそこに日本の特徴があると見るべきかもしれないが、それは中途半端な特徴に過ぎないことを皆自覚すべきかと思う。
返す返す、題材・途中までの展開は面白いのに本当に惜しい。
Posted by ブクログ
読み応えのある傑作
本当は細部まで読み解きたかったが読みたい本が溜まっていて少し流し読み。
歴史とサスペンスが好きな人にはぴったり。
今年は、宗教・ヨーロッパ文化にふれる機会が多そうな予感
Posted by ブクログ
上巻から徐々に謎に迫り、そしていよいよすべての手稿が発見される。ここに出てくることっぽいことは、おそらく本当にあったのだろう。たくさんの人々がキリスト教の王道から違う(解釈が違う)というだけで、残虐に葬り去られてきた。普段は考えないが、信仰とはなんだろうかと考える。どう考えても、自分はこの小説に出てきた異端の考えの方が共感できる。そうなると、火あぶりかー、いやでも王道派のふりをするかな、しにたくないし。そう考えるとやっぱり、信仰を貫いて火刑に処される気持ちもわからず、どっちもやだなーと、思ってしまう自分は日本人っぽいといえばそうかと。物語的にはまーまー、ちょっと中だるみはあった。
Posted by ブクログ
話ができすぎていて、スリルに欠ける部分がある。
ただ、カタリ派というあまり馴染みのないキリスト教の一派に対する中世キリスト教の異端審問を題材にして、権威、権力と個人の信仰、内面という問題をうまく扱っていて、なかなか勉強させられる。
あまり馴染みのないテーマをわかりやすく、興味をひきだすように描きだす技術はすごい。
カタリ派が日本人の宗教観に近いのか、カタリ派を日本人の宗教観に合わせて解釈しているのかよくわからないが、カタリ派の独特な考え方がなかなか興味深い。
前回読んだ、『深い河』の大津の考え方を思い出したりもした。
ただ、カタリ派に対する評価と、ローマ教会に対する批判的態度がいずれも一面的な気がしないでもない。