帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まずミステリーとして見るならば、全体を貫くストーリーや様々な仕掛けと呼ぶに値する伏線などは秀逸だと思うし、早く先の展開を読み進めたくなる気持ちははやるばかりなんだけど、肝心なところの多くが明かされぬまま、おそらくは意図的に曖昧なまま置いて小説は閉幕しているので、何だかかゆいところに手が届かないような、指に刺さった棘がなかなか抜けないようなモヤーっとしたものが残る。
ただ、あえてそんな不満点から述べてしまったけれど、この小説の最大にして唯一のテーマはそういった類のものではないので、謎の多くが明文化して示されていないというモヤモヤ感を打ち消して余りある満足を読後は得ることができた。
じゃあそのテー -
Posted by ブクログ
まずミステリーとして見るならば、全体を貫くストーリーや様々な仕掛けと呼ぶに値する伏線などは秀逸だと思うし、早く先の展開を読み進めたくなる気持ちははやるばかりなんだけど、肝心なところの多くが明かされぬまま、おそらくは意図的に曖昧なまま置いて小説は閉幕しているので、何だかかゆいところに手が届かないような、指に刺さった棘がなかなか抜けないようなモヤーっとしたものが残る。
ただ、あえてそんな不満点から述べてしまったけれど、この小説の最大にして唯一のテーマはそういった類のものではないので、謎の多くが明文化して示されていないというモヤモヤ感を打ち消して余りある満足を読後は得ることができた。
じゃあそのテー -
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ドイツ物だからなぁ・・・私の採点は甘い!だなんて思わないでくださいまし~。本当に感動しました! 上・下巻に分かれているものの、あっという間に読むことができますよん。
戦争中のドイツの残虐な行為についても書かれていますし、それに対抗しようとしていたアンダーグラウンド組織のこともでてきます。もう涙・涙ですよん。戦争の悲劇は人間を狂わせてしまうところですよね。日本国家を背負って駐在している主人公のヒューマニズムはだまってはいませんでした。しつこいですけど、満点をうなずいていただける作品だと思います。
著者である帚木(ははきぎ)氏は元精神科のお医者様。初期の作品はお仕事柄か、精神医学ミステリが多かった -
Posted by ブクログ
『閉鎖病棟』がすごく良かったから、
帚木蓬生2冊目いってみました。
こっちも… とっても良かった!
シンプルな日常の物語なんだけれど、
登場人物1人1人がすごく魅力的。
父親の遺したアパート“扇荘”を管理している時子と、
扇荘に暮らすちょっと変わった住民たち。
ほんわりする恋の話。
それは『閉鎖病棟』でもそうなんだけど、
帚木蓬生さんは人をいきいきと描くのがうまいと思う。
扇荘に暮らす人たちの描写はもちろん、
時子と母親が通うカラオケ教室の生徒たち
時子が働く特養ホームの同僚や高齢者たち
みんなすごく温かい目で描かれていると思う。
柏木のおじいちゃんのお葬式の場面がお気に入り。 -
Posted by ブクログ
若い頃「師」と呼べるような人と出会えることは本当に幸せなことだと思う。
この物語に出てくる主人公「国人」もそのような出会いを経て次第に成長していく。
時には死者もでる程過酷な大仏建立の課役を務めつつ、様々な人との出会い、別れを乗り越えて「自分の仏」=アイデンティティを確立していく主人公の様子を、徐々に出来ていく大仏と平行させて描いている。
「国人」が次第に魅力的な人間に成長していく過程を「景信」をはじめ様々な個性あふれる登場人物や、大仏建立作業はもちろん、その他にも当時の都の様子、食べ物等の細かい風俗描写を織り交ぜて描いており、全く飽きずに読み進めることができた。そして最後には本