帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画の原作だと知り購入。
ただ思っていた時代背景などが違う上に、精神疾患に対して理解がない時代でもあり、言葉に戸惑って、読むのを辞めようかと思ってしまった。
でも山本周五郎賞を受賞しているとあったので、最後まで読み進めてみた。
精神疾患に理解が得られない時代。
常識から外れると、おかしい、とされる時代。
個性だと認めてもらうことはもちろんなく、家族からさえ疎まれる人たち。
だけど、純粋に人を想いやれるのは、常識内にいるとされる人ではなく、この病棟にいる人たちではないのかな?と思ってしまう。
現代で心を病む人は増えていると聞く。
生きる意味を探している人も多い。
弱くても、存在が薄くても、常 -
Posted by ブクログ
昭和50年代に出された作品なのに、今読んでも色褪せない。仙台ヴァイラスを持ってアメリカの研究所へ渡った同僚の事故死。でも、それが事故じゃないと聞かされてから始まる物語。
細菌の融合によって生物兵器をも作り出せてしまう。逆立ちの科学。人を救うためのものではないのか。そんな自問自答が苦しいほど伝わる。
同僚の墓参りをし、しかし死体がないと聞かされる。
ひとすじの光に導かれるようにページをめくると真実にたどり着く。
某書店のポップアップ【どうしても売りたい本】というのに深くうなずける。そのポップがきっかけで手に取ったようなものだった。
南フランスの牧歌的な情景と、ピレネー山脈の風景が目に浮 -
Posted by ブクログ
ネタバレカバー裏の内容紹介を読んで、ミステリ?と思ってしまったけれど、この本はミステリではありませんでした。
一体いつの時代の話なのだろうと思うくらい、テクノロジーとは無縁の人々。
「普通」ではないと言われ、「普通」の人たちから隔離され、それでも明るく温かく時に寂しく日々を送る。
ストーリーはもちろんあるのだけど、大事なのはそこではない。
彼ら患者が発病する前の生活、今の暮らし、そしてこれからのこと。
作中で主人公のチュウさんが貰う手紙にこう書いてある。
”病院はついの棲み家ではありません。渡りに疲れた鳥たちが羽を休める杜(もり)でしかないのです。病院で死に鳥になってはいけません。いずれ翔び発って