帚木蓬生のレビュー一覧

  • ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
    わからないことをわからないまま耐える、というネガティブ・ケイパビリティは、「気づき」「言語化」「見える化」などの、現代の主流の思考法(フレームワーク)を逆に行くものである。
    その概念と重要性を説いた数少ない著書として貴重。作家でもあって文章も読みやすい。

    本書では述べられていなかったが、「育児」の...続きを読む
  • やめられない ギャンブル地獄からの生還
    身内にギャンブルをやっている方がいたらまずは本書の診断だけでもやってもらうべき。
    一回借金の精算をしてくれた息子の結婚資金を再度パチンコに注ぎ込むくらいのレベルの症例が多く文字通り鬼かロボットと化している。ここまでやって離婚離縁されていないケースもあるのには驚く。
    借金については絶対に肩替わりしない...続きを読む
  • 閉鎖病棟
    映画の原作だと知り購入。
    ただ思っていた時代背景などが違う上に、精神疾患に対して理解がない時代でもあり、言葉に戸惑って、読むのを辞めようかと思ってしまった。
    でも山本周五郎賞を受賞しているとあったので、最後まで読み進めてみた。

    精神疾患に理解が得られない時代。
    常識から外れると、おかしい、とされる...続きを読む
  • 白い夏の墓標
    昭和50年代に出された作品なのに、今読んでも色褪せない。仙台ヴァイラスを持ってアメリカの研究所へ渡った同僚の事故死。でも、それが事故じゃないと聞かされてから始まる物語。

    細菌の融合によって生物兵器をも作り出せてしまう。逆立ちの科学。人を救うためのものではないのか。そんな自問自答が苦しいほど伝わる。...続きを読む
  • 閉鎖病棟
    カバー裏の内容紹介を読んで、ミステリ?と思ってしまったけれど、この本はミステリではありませんでした。

    一体いつの時代の話なのだろうと思うくらい、テクノロジーとは無縁の人々。
    「普通」ではないと言われ、「普通」の人たちから隔離され、それでも明るく温かく時に寂しく日々を送る。
    ストーリーはもちろんある...続きを読む
  • やめられない ギャンブル地獄からの生還

    絶対読むべき

    今までパチンコやスロット屋が当たり前のように街にある中で育ち、当たり前の風景がいかに恐ろしいかよく判りました。人が鬼、ゴミ以下になる、こんな恐ろしいものはないです。
    今までパチンコ屋には一度も行った事ありませんでしたが、パチンコ屋含めギャンブルは死ぬまで一度たりとも絶対にやらないと強く思うきっかけに...続きを読む
  • ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
    容易に答えの出ない事態に耐えうる能力が、ネガティブ・ケイパビリティ。
    それが持てない人達が争いを生み、戦争に突き進んでいく。
    これがあるとされるのは、シェイクスピア、紫式部、詩人のキーツ、メルケル首相。
    この能力が必要なのは、精神科医、教育者、現代人。
    素晴らしい概念だと思う。
  • 守教(下)(新潮文庫)
    圧巻の物語。
    三十代半ばにして初めて、信仰とは何か考えさせられたように思える。今までももちろん宗教についての本は読んだことがあるけれど、それは単に教義について知りたいという知識欲の延長でしかなくて、精神性についてまで考えが及んでいなかった。というか頭で考えて理解できるものではない…。「信仰とは?」と...続きを読む
  • 閉鎖病棟
    誰一人として見捨ててない小説
    変に気取らずありのままを書いているから、その分感動できる

    名作かどうかはわからないが、自分にはバリ刺さった
  • 風花病棟
    地域の医師・開業医の重要な役割、守備範囲の広さ、診療において根底で大切なことを改めて学んだ。
    総合病院勤務医の仕事とは根本的に違うし、人間力が問われる。
    医師として専門性を突き詰めることも大切だけど、同じくらいか、もっと大切なことを改めて気付かされた。
  • 閉鎖病棟
    閉鎖病棟で過ごす人たちも、同じ病名で括られていようと、それぞれにこれまでの人生、思い、誇りがあって生きているんだという、当たり前だけど大切なことを、当事者目線で語ってくれる本。
  • 信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察
    プラセボとの関係が知りたくて読み始めたけど、少女ベルナデットの物語に引き込まれました。(こんなところで自分の伝記好きを実感)ベルナデットに対しての星5つ。読後、動画でルルドがどんな場所なのか検索しまくり、そこからあちこちの観光動画にハマりました。私の知らない世界が広がり、これはこれで小さなルルドの奇...続きを読む
  • 蛍の航跡―軍医たちの黙示録―
    戦場に送られた軍医15人の物語短編。勉強を早期に切り上げて前線に送られた人や、思いがけずに現地の出産に立ち会う人(産科の臨床教育を受けずに出征)、現地の人と良好な関係を築き生き延びた人、仲間がバタバタと倒れ同僚の軍医も自殺する中何とか踏みとどまった人。どの話も読んでいて息苦しくなる。しかし、しっかり...続きを読む
  • 襲来 下
    蒙古襲来、元寇・・・
    必ず異国が海を渡って日本を攻めて来ると考えた日蓮様は漁師の出である見助を対馬へ送る。見助は日蓮様の耳目として13年間その任にあたり、ついに巨大な船団がやって来る。圧倒的な力に立ち向かうこともできず、ひたすら「見る」事に徹する見助。
    蒙古の襲撃の場面は読んでいて胸が張り裂けそうに...続きを読む
  • 花散る里の病棟
    読み応えが有り、おもしろかったです。
    現役の医師ならではの専門的な内容も多々。
    短編集かと思ったら、連作短編でした。その繋がり方が秀逸。
    「告知」が、特に好きです。
    戦争の話は、膨大な時間と量の取材からの執筆だろうと思います。
    コロナの事も最後にあり、その現実が戦争中の悲惨な状況に重なりました。医療...続きを読む
  • 花散る里の病棟
    面白かった!
    軍医のあの描写はどこから手に入れたんだろう?どうやって取材したんだろう?
    書き上げるのに10年かかったそうだが、わかる気がする。
    コロナ禍の様子もありありと手に取るように。
    レントゲン画像の患者名をみたときはきっと腰が抜ける想いだったろう。
    それを公表することもままならず、そして、世間...続きを読む
  • 花散る里の病棟
    「医は仁術」との思いを強くする。4 代に渡る町医者の物語。

    明治維新や太平洋戦争、近年のコロナ禍まで4代に渡り医師を務める九州の一族を描いた感動作。

    一話一話ほぼ独立した短編であるが、町医者のDNAが流れている。年代順になっているわけでもなくバラバラな構成ではあるがそれも悪くはない。

    大きな感...続きを読む
  • 賞の柩
    面白かった。読みやすかった。
    帚木蓬生さんの作品は本当にどれも読みやすい。
    こういう世界があるんだなぁ、と思いながら読んだ。医学、生理学などの研究に携わる人は、純粋に苦しむ人を助けたい、という志で励んで欲しいものだと思った。
  • 花散る里の病棟
    2022/04/27リクエスト 3

    1代目
    大正時代、寄生虫胎児で評判を得た
    野北保造(のぎた やすぞう)は九州帝国大学医科大学を卒業した。

    二代目
    野北宏一(のぎた こういち)は、久留米の九州医学専門学校に入学して、軍医としてフィリピンで過ごし、命からがら祖国に戻る。尊敬していた上官の指の骨を...続きを読む
  • やめられない ギャンブル地獄からの生還
    私はギャンブルはしないが、友人にパチンコ・パチスロ狂がいて、その心理を理解する為にこの本を手に取った。
    筆者は本書の中でギャンブル依存症患者の事を「鬼・ロボット以下」と評する。
    そしてそれは当たっていると思う。
    本人だけでなく周りの関係者も不幸のどん底へ叩き落とすから。
    ただ、ギャンブル依存症は本人...続きを読む