帚木蓬生のレビュー一覧

  • アフリカの蹄

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    天然痘ウィルスを使った黒人撲滅無差別テロ事件。
    天然痘ウィルスを国外に持ち出し、感染を防げるか!?というストーリー。
    2作目よりも私は1作目のほうが好きでした。

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    2013年04月10日
  • ギャンブル依存とたたかう

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     ギャンブルはこれまで一度もやったことはありませんが、ネットや音楽に依存しがちな自分にも役立つかもしれないと思い、手に取った本。

     第一章はギャンブル依存症の大まかな説明である。『007』シリーズのイアン・フレミングの「ギャンブルに絶対勝つ方法はただ一つ、イカサマをすることである」という言葉を引用した上で、DSM-Ⅳ病的賭博「衝動制御の障害」ICD-10「習慣及び衝動の障害」において放火癖・窃盗癖・抜毛癖と同等の疾患であり、日本では法律によって場所・実施方法が制限されていないパチンコの存在が最大の特徴であると指摘している。また、今後は株取引のデイトレードやネット上のギャンブルが問題になるだろうと考えている。

     第二章はギャンブル依存症者の特徴の説明である。依存者はゲームに対し過度に興奮しやすく、醒めにくい身体的な下地が形成されてしまっていることや、ギャンブル依存症は強迫性障害とは関係がなく、遺伝が絡んでいたとしても、環境要因も考えられている。筆者は「ギャンブル依存症になりやすい性格の傾向はあるかもしれないが、条件の整った状況に立ち入ってしまえば、大なり小なり依存症への道を歩んでしまうため、「遺伝と性格」ではなく「躾と教育」が大切」と論じている。

     第三章ではギャンブル依存症者の数を推測している。国や地域、時代によって数字がばらつくことを踏まえた上で、アメリカ・カナダ・オーストラリア・香港のデータから得られた数字を用いると、日本にはギャンブル依存症者は100万から200万人(政令指定都市4つ分の人数)ほどおり、その値はアルコール依存症者の数(400万人)の一割から一割五分にあたる、ギャンブルを始める年齢が早いのは男性であり、依存症に至るのが早いのは女性、そしてギャンブル行為とかける金額が異なるだけで、貧富の差無くギャンブル依存は発生すると筆者は見ている。

     第四章はギャンブル依存症者が抱えていることが多い病気の説明である。
     躁鬱病(誇大感・浪費傾向・過活動の影響)、うつ病(症状が軽い時に気晴らしとして始めてしまうか、ギャンブルの果てに発症)、統合失調症(幻覚・妄想が落ち着いた時にはまってしまう)、アルコール依存症(クロスアディクションによる同時進行)、買い物依存症(四割の人にアルコール依存や薬物依存が見られる)、摂食障害(負けたときのストレスを発散するため)など、多くの病がみられる事が分かる。

     第五章はギャンブル依存症者の周囲にいる人々の苦しみを説明している。「ギャンブル依存症の夫をもつ妻自身が「両親が離婚したという生い立ちを持ち、自分の家庭だけは崩壊させたくないという切ない願いが共依存を生み、結婚という形式をギリギリまで維持させ」、その結果身体は風邪をひきやすくなるといった抵抗力が弱まる、精神は音に大して敏感になる、自責の念にかられるなどしてしまう」という趣旨の説明はひたすら悲しい。借金の肩代わりを何度となく続け、兄弟の配偶者とその親類との関係までもが破壊されていく。企業に配置される産業医もギャンブル依存に疎い場合もあるため、対策を講じれないのも問題だろう。

     第六章ではギャンブル依存症に関わる法の問題に触れている。
     適当な口実で得た物を転売してまでもお金を得てギャンブルに投資し、しまいには債務地獄へと至る。債務整理には特定調停・任意整理・個人民事再生があるが、あくまで治療することが前提だと書かれている。
     それでも無理な場合には自己破産するしかなく(ここで筆者は日本には顧客の借り入れ状況を見極めずに貸し付けるという、多重債務者を生み出しやすい体質が放置されていることを批判している)、この時、精神疾患(躁鬱病・統合失調症)を抱えている場合、医師の診断書を提出すれば金融会社の方で債権を放棄することがある。
     しかし自己破産後も消費者金融からの甘い言葉を用いた罠があり、十分注意する必要があると述べている。自己破産者の中で大きな割合を占めているのは事業の失敗とギャンブル依存であり、追い詰められたあげく、文書偽造による借金や、詐欺・強盗、保険金詐欺といった不法行為に走ってしまう人がアメリカのGA会員の47%いるという。

     第七章は治療の手順の説明である。
     導入期・離脱期・学習期、自助グループや薬物治療が説明されており、「本人が作った借金は本人に返させる」「主治医は本人自身」という下りは当たり前の事だがとても重要なのだと述べられ、ギャンブルをやめて自分を取り戻した人と、その家族が過去のことで揉める事は不可避であると忠告している。

     八章はギャンブルをめぐる社会への進言である。
     国営でギャンブルを運営しておきながら、何故苦しんでいる人へ手を差し伸べる機関が充実していないのか、ギャンブル依存症の実態を探ろうとしないのか、せめて欧米諸国のように厳しい制限を設けるべきではないのかと国の至らなさを厳しく批判し、風俗営業だと言うのであれば換金システムを廃止しろと、遊技場の仮面をかぶってCMを垂れ流すパチスロ業界の責任を問いている。
     また、医学会においてもシェイラ・ブリュム氏の働きにも関わらず、『臨床精神医学講座』で1ページ弱しか記載されていないなど、まだまだ問題は山積みのようである。

     筆者は小節も執筆なさるそうで、とても分かりやすい文章を書くが、その中身は上で書いたように大変濃い。一読をおすすめしたい。

    自分用キーワード
    フロイト『ドストエフスキーと父親殺し』 ギャンブラーズ・アノニマス(GA) アルコホリック・アノニマス(AA) ノン・ケミカル・アディクション スペンダー・メンバーズ(SM) サウスオークス・ギャンブリング・スクリーン(SOGS) ギャマノン(Gam-Anon) クロスアディクション アダルトチルドレン ハイヤーパワー 出資法(金利の上限:29.2%) 利息制限法(元本10万未満:20%、100万以上:15%、その中間:18%) 貸付禁止依頼 成年後見制度 日本消費者金融協会 

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    2013年02月15日
  • 安楽病棟

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    ミステリ要素すら終末医療という避けられないテーマに組み込んだ良作。自分の未来を投影出来ればいくつもの読み方ができる。

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    2013年01月26日
  • 水神(下)

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    江戸初期の久留米藩が舞台。福岡県うきは市に残る大石堰がテーマ。 為政者ではなく村の庄屋が起案の前代未聞の治水工事。水から見放されている土地と百姓を救うという一心で身代ばかりか命までもかけた五人の庄屋。作者が込めた想いはただ百姓の事を書きたかったという通り日々の過酷な環境を日々の生活に重ね合わせて工事にかける意気込みとともに百姓の目線にて書き綴る。後半は藩への命がけの嘆願が通りいよいよ工事へ。陰には百姓を心身ともに支えた一人の老武士。死亡事故の責任を藩より庄屋に押し付けられた時の老武士の嘆願書。涙なしでは読めません。

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    2013年01月05日
  • 安楽病棟

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    ネタバレ

    帚木さんの『閉鎖病棟』が良かったので、今度はこちらを~。
    て久しぶりの帚木さんの作品だよ。

    老人性痴呆症、老後の生活、そして終末期医療を主筋にして書かれた小説です。
    かなーり重い内容で460ページの長編。
    考えさせられるね~。
    パパが死ぬ前に入院してた頃、ちょっとだけ看病したのを思い出しながら読みました~。

    今の時代、介護や看護は誰にでも切り離せない問題となったけど、
    本当にみんなは理解してるのか?
    そう思うわ~。

    私は癌のパパの看病をそんなにしてたわけじゃないけど、最後は寝たきりになって少しは看護婦さんの手助けを少しはしたかな?
    オムツの替え方、洗浄の仕方とかシーツの替え方、少しは知ってるからね~。
    でも、果たして今の人たちの何人がそれを知ってるのか?

    呆けても、一人の人間。
    それぞれ自分の人生を生き抜いてきて、呆けも人それぞれ。。。
    『呆け老人』を一つにひっくるめられるのではなく、一人一人の尊重がないと本当の介護はできないんじゃないか?と思う。

    今は本当に物が豊かにありすぎて、それが当たり前のように生活してるけど、
    おじいちゃんやおばあちゃんの若い頃は戦争から生き延び、物のない貧しい生活を生き抜いてきた人たち。本当に尊敬しないとダメだし、呆けても一人の人間として扱ってあげないと可哀想。

    そして衝撃的だったのはオランダの医療事情。
    もうダメだと思うと、医者や肉親は患者を死なせることに賛成してしまう。。。
    生きても障害を持つだけ。金がかかるだけ。生きてることに意味がない。
    そんなことを勝手に思って、患者を殺してしまう。
    それが普通なんて信じられない。
    それって殺人だよね~。
    オランダ人じゃなくてよかった。。。

    呆けて自分が誰かも他人が誰かも、何を食べたかも分からない人を殺す権利は誰にもないはず。
    脳死の場合は別として、意志をもって何かを出来る生活を送ってるなら、誰でも生きる権利があるはず。
    私はそう思う。

    最後の章では、まんまとやられたな~。
    これ、ミステリーだったとは思わなかったから、私としては大どんでん返しされた感じ。

    でも、この一冊は絶対持ってて損はない本。
    とても勉強になりました。

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    2012年11月27日
  • 水神(下)

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    ネタバレ

    筑後川の堰渠工事を舞台に、当時の百姓の生活、庄屋の苦悩、士農工商という身分の中でも生きる人の優しさ、思慮深さが描かれた素晴らしい名作だと思う。
    百姓の苦しさを救うがために、堰渠工事に尽くした庄屋のために、最後の藩の奉公として命を投げるという展開には思わずえっと声が出てしまうぐらい驚愕した。そして、堰渠工事の完成。五庄屋だけでなく、菊竹にも完成を見てほしかったと思わざるを得ない。
    外国に行くたびに(特にスペインとか)、水があふれる日本とはなんて恵まれた国なんだろうと思っていたけど、それは水のために命をかける人がいたからこそ。
    本当に良作でした。

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    2012年10月31日
  • 三たびの海峡

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    三たびの海峡は、韓国と日本の間を3往復と思っていたのですが、冷静に考えると、海峡を3度渡ることなので、その半分でした。
    日本と韓国との歴史的問題にふれた書物は数多くありますが、本書は読むべき本だと思います。おすすめです。

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    2012年10月02日
  • 安楽病棟

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    長編ではあるが、ショートストーリーが集まったような構成。一つ一つ良い内容であり、考えされるものである。とても良い。

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    2012年09月28日
  • アフリカの瞳

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    アフリカにある某国でエイズ勢力が跋扈している。アパルトヘイトから解放された矢先のエイズ禍。低所得者層では、効果的な抗エイズ薬は買えない。彼らは製薬会社から人体実験のモルモットにされ、黒人政府には踏み台にされていた。そんな所に日本人医師・作田が多くの人達と共にエイズと戦う。
    興味深く読むことができた。すんごい感動した。難しい本読むよりこういう小説絡みで読んで勉強できるんだから、もっと本を読もうと、読まないといけないと思った。力を合わせるって素敵な事、作田も皆もすっごい良い人。これは泣けるぞ。
    さて、これは差別・エイズを問題にしたものだ。日本に住んでてエイズを心配したことがあったろうか。小中高と性教育が設けられているが、どこかよそよそしい。エイズのことだって、これ読んでちゃんと危険な病気なんだと分かった。軽視してた。
    どっかの発展途上国に蔓延してる病気でしょ?薬あるんでしょ?
    いや、他人事で片付けてはいけない。今アフリカでのエイズ感染者は減少を見せているが、反対に中央アジアなどで増加しているのが現状だ。楽観視は禁物。
    援助の話も出たが、これも印象的だった。医師を派遣して病人の治療、食糧難なら食糧をあげればいいと単純に思ってた。大間違い‼自分も政府となんら変わらんじゃないかと落胆した。必要なのは育成。自分たちで生きていける力。現地の医師を育て、農業のやり方を指導する。自分の足で立てるようにすることこそが正しい。
    今こんなことに気づくとは…情けない。色々勉強になる。

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    2012年09月24日
  • 水神(下)

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    水に恵まれない土地で愚直に懸命に生きる百姓たち。
    渇水に苦しむ村に、筑後川の水を分配する工事を考える庄屋助左衛門。
    近隣の村の庄屋達と共に五庄屋が身代と命をかけて取り組む大事業を描く話です。
    上巻から読み進め、下巻では何度も涙がこみ上げてきた。
    村の百姓たちも庄屋も侍も金貸も、それぞれに感情移入してしまう。
    最後、タイトルにもなっている水神様の嘆願書は、きっとこの村を生きる人々に語り継がれることだろう。
    この作品は、また何度でも読みたいと思う。

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    2012年09月09日
  • 国銅(下)

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    長門の奈良登りで過酷な苦役の日々を送る国人が、
    大仏造営命を受け仲間と共に奈良へ旅立つ・・・

    黒虫の考え方、言葉がとても好き。
    また、歌や詩には大きな力があることを改めて感じる。
    人にとって大切なものは何か、この時代の人々の生きる様、
    色々な事を考えさせられる重量感ある話です。

    続きが気になって止められず、夜中まで起きて読みきってしまった。
    購入して再読したいと思います。

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    2012年08月19日
  • 水神(下)

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    百姓や庄屋の頑張りももちろんですが、反対派の庄屋や管轄する奉行の生き様も素晴らしく描かれています。
    なかなかに涙腺を刺激してくれます。
    ラストの描写はわかっていながら、「よかった。あぁよかった!」と心から思ってしまいます。
    上下巻共に素晴らしい読み物でした。

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    2012年08月16日
  • 水神(下)

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    本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。

    本書の舞台は島原の乱の記憶もまだ色褪せない頃の九州は筑後川流域。滔々と流れる大河の傍に住むにも関わらず、土地の高低によりその水を利用できず永年、水不足・旱魃に悩まされてきた村々。そこでは人力による水汲みだけを仕事として一生を終える百姓も居る。その窮状を何とかしようと流域の庄屋5名が、私財を投げ打ってまでも堰渠を構築し水不足の苦難を克服しようと久留米藩奉行に嘆願書を出すに至る。しかしながら100を超える流域の庄屋の中には反対の声も挙がる。藩奉行に「命を賭する」との血判状まで出した事業は藩に認められるのか、宿年の夢である堰渠工事は無事に完成するのか、事故が起きると庄屋の命はどうなるのか、ページをめくるのももどかしく先へ先へと読み進めたくなる長編物語だ。

    物語の筋も面白いのだが、水に寄せる農民の想いや庄屋としての責任感、それらを応援する奉行・下級藩士・商人ら多くの人々の思いのたけが丁寧に語られており思わず胸が熱くなる名作だ。

    そもそも2009年に出たときはついつい積読期間が長く、読み始めたのが年が明けて暫くしてから。読後の感動からすると2009年のベスト10に組み入れるべきだったと反省はすれども既に年が明けてしまい後の祭り。その反省も踏まえ、この文庫版が出たこの機に、声を大にして勧めたいものだ。

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    2012年06月26日
  • 水神(上)

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    本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。

    本書の舞台は島原の乱の記憶もまだ色褪せない頃の九州は筑後川流域。滔々と流れる大河の傍に住むにも関わらず、土地の高低によりその水を利用できず永年、水不足・旱魃に悩まされてきた村々。そこでは人力による水汲みだけを仕事として一生を終える百姓も居る。その窮状を何とかしようと流域の庄屋5名が、私財を投げ打ってまでも堰渠を構築し水不足の苦難を克服しようと久留米藩奉行に嘆願書を出すに至る。しかしながら100を超える流域の庄屋の中には反対の声も挙がる。藩奉行に「命を賭する」との血判状まで出した事業は藩に認められるのか、宿年の夢である堰渠工事は無事に完成するのか、事故が起きると庄屋の命はどうなるのか、ページをめくるのももどかしく先へ先へと読み進めたくなる長編物語だ。

    物語の筋も面白いのだが、水に寄せる農民の想いや庄屋としての責任感、それらを応援する奉行・下級藩士・商人ら多くの人々の思いのたけが丁寧に語られており思わず胸が熱くなる名作だ。

    そもそも2009年に出たときはついつい積読期間が長く、読み始めたのが年が明けて暫くしてから。読後の感動からすると2009年のベスト10に組み入れるべきだったと反省はすれども既に年が明けてしまい後の祭り。その反省も踏まえ、この文庫版が出たこの機に、声を大にして勧めたいものだ。

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    2012年06月26日
  • アフリカの蹄

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    ネタバレ

    傑作。
    ただ感動。
    帚木さんの本はいま別のを読み進めているが、
    この"アフリカの蹄"は越えられないと思う。

    アパルトヘイト下の南アフリカが舞台。
    心臓移植を学ぶため、一人日本から留学した作田信。
    友人のサミュエルと恋人のパメラとの出会いから、
    黒人スラム街の診療所を手伝う事に。

    ある日から黒人の子供のみに原因不明の奇病が発生。
    薬も医療器具もないなかで必死に戦い続けるが、
    裏では国家的な民族浄化が粛々と進められていた、という話。

    まぁーまぁー、よくあるストーリだが、
    まず白人の差別感情がすさまじい。
    黒人を家畜以下に考え、家畜以下に扱う。
    どこまでも追い詰めていく狂った選民思想に寒気がする。

    ただ、差別する側の人間は、自分が見えない。
    いかに狂ってしまおうが、狂った側に居てはそれが分らない。
    そして、差別する側とされる側の中間にいる人間は、
    疑問を持ちながらも、差別する側付いてしまう。

    作田信は、そんな邪念を払い除けながら、
    ついに黒人スラム街の人間と共に差別に対して立ち上がる。

    非暴力による行動によって、最後には勝利を勝ち取る。
    作田達の行動を世界中が助けるシーンは、涙なしには読めない。
    感動。
    感動。
    感動。

    どれだけ援助を必要としている人々がいるか。
    何をしろと言うわけではない。
    何かをしなければと考えさせられる作品である。

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    2012年05月06日
  • 安楽病棟

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    痴呆になりつつある数人の老人の描写から始まる。この人のようになるのかあの人のようになるのか……。それぞれの理由で痴呆病棟に入院になる。
    次は病院での様子を看護婦の目で教えてくれる。家族にとっての毎日は身内であるゆえの辛さや苦しさがあるのだと思える。仕事としてのほうが冷静に対応できるのかも知れない。痴呆になった人はもう人ではないのか?動く屍なのか?他人に迷惑をかけるなら早く死んだほうがいいのか?割り切れる回答は無いのかもしれないけれど、痴呆になっても生きていることを許していける社会だといいなと思う。
    安楽死を、死なせることを医者が選ぶのではなく自然に、命の火が消えるのがいいな。ぽっくり逝きたいと言う気持ちもある。病院で沢山の管につながれて生かされるのはいやかもしれない。
    見えてきた生の終わりを考える時期にきたと最近良く思う。

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    2012年03月06日
  • 聖灰の暗号(下)

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    やはりこの作家は凄い。文句なし☆×5。13世紀フランスにて実際におきた血ぬられた過去を示す一通の古文書を一人の日本人歴史学者が偶然発見することから物語は始まる。バチカンによる実際に起きたカタリ派の粛清を史実に基づいて一級のミステリーに仕上げてある。驚愕すべきは古文書が全て筆者の創作。「 彼らの生きた証を探しだし人々の意識のどこかに収めるのが歴史家のやろうとしている試みである」 感動という安易な一言では言い表すことは出来ない。完敗です。そういえばダ・ヴィンチコードに似ているかな。

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    2012年01月23日
  • 風花病棟

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    かざはなびょうとう と読むのですね。
    10人の医師が診療に携わる姿勢が、それぞれの立場や周りとのかかわり方から浮かび上がる。
    命と向き合うことを職業に選んだ彼らは、人と向き合い学びながら生きている。真摯に人と関わっている。お金のためでも自らのプライドのためでもなく。病を得た人とゆったりと真面目に関わっていく医師を頼もしいと思う。
    この本に出合えてよかった。

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    2011年12月30日
  • アフリカの蹄

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    心臓移植を学ぶために、アフリカに留学した日本の外科医師の物語。
    アフリカの「実際」を見ていくうちに、それまでとこれからの自分の道に違和感を感じ始める。

    国際協力がどのような意味を持つのか
    何のためにその道に進むのか
    自分の意思と照らし合わせながら読み進めた

    時代設定が人種差別のもっとも激しい時代(アパルトヘイト時)が舞台なので、現在とは異なるだろうが、感じるものは多かった。

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    2011年12月11日
  • ギャンブル依存とたたかう

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    パチンコ、麻雀、競馬、競輪…。「庶民の娯楽」という美名の陰で、急速に増えつづける依存者の群れ。この本には「地獄への片道切符」に乗ってしまった人たちの末路が描かれております。

    僕は西原理恵子を始め、伊集院静や白川道など、確実にギャンブル依存症の作家のエッセイや作品を読んで、彼らの日常を笑ってみていたことがありましたけれど、それでも、彼らの日常が破滅しないのは彼らがやっぱり普通の人間の何倍もお金を稼いでいるのだという事実と、仮に、破綻はしていても『作家だから』ということで、多めに見てもらっているのであって、普通の人間が病的なまでにギャンブルにのめりこんでしまうと確実に待っているのは地獄への一本道です。

    僕は少年時代に、いわゆるアーケードゲームでこの症状に近い状態になってしまったことがあるんですけれど、やっぱり、ゲームをしないことには落ち着かなくなりますし、どんな手段を使ってでもお金を工面してやりたくなるという意味ではやっぱり似たようなものがあったのでしょうね。しかし、ギャンブル。この本では特にパチンコを取り上げておりますが、普通の主婦がパチンコにのめりこんで、夫の貯金に始まり、子供たちの保険を解約したしたり、果てはサラ金。ついにはヤミ金にまで手を出して、家族や親戚にも愛想をつかされて堕ちていくさまがなんともやり切れませんでした。

    ギャンブル依存はれっきとした病気できちんと病院に通って適切な治療を経ないことにはますます悪化させていく。そして本人だけではなく、家族や親戚さえも泥沼に沈ませてしまう。本当に恐ろしいものだということを感じました。ギャンブルそのものに関しては、個人的にはすべて否定するものではありませんが、何事も『過ぎたざるはなお及ばざるが如し』で節度を持って、楽しむ方は楽しんでください。

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    2011年12月01日