帚木蓬生のレビュー一覧

  • 水神(上)

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    本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。

    本書の舞台は島原の乱の記憶もまだ色褪せない頃の九州は筑後川流域。滔々と流れる大河の傍に住むにも関わらず、土地の高低によりその水を利用できず永年、水不足・旱魃に悩まされてきた村々。そこでは人力による水汲みだけを仕事として一生を終える百姓も居る。その窮状を何とかしようと流域の庄屋5名が、私財を投げ打ってまでも堰渠を

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    2012年06月26日
  • アフリカの蹄

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    ネタバレ

    傑作。
    ただ感動。
    帚木さんの本はいま別のを読み進めているが、
    この"アフリカの蹄"は越えられないと思う。

    アパルトヘイト下の南アフリカが舞台。
    心臓移植を学ぶため、一人日本から留学した作田信。
    友人のサミュエルと恋人のパメラとの出会いから、
    黒人スラム街の診療所を手伝う事に。

    ある日から黒人の子供のみに原因不明の奇病が発生。
    薬も医療器具もないなかで必死に戦い続けるが、
    裏では国家的な民族浄化が粛々と進められていた、という話。

    まぁーまぁー、よくあるストーリだが、
    まず白人の差別感情がすさまじい。
    黒人を家畜以下に考え、家畜以下に扱う。
    どこまでも追い詰めていく狂っ

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    2012年05月06日
  • 安楽病棟

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    痴呆になりつつある数人の老人の描写から始まる。この人のようになるのかあの人のようになるのか……。それぞれの理由で痴呆病棟に入院になる。
    次は病院での様子を看護婦の目で教えてくれる。家族にとっての毎日は身内であるゆえの辛さや苦しさがあるのだと思える。仕事としてのほうが冷静に対応できるのかも知れない。痴呆になった人はもう人ではないのか?動く屍なのか?他人に迷惑をかけるなら早く死んだほうがいいのか?割り切れる回答は無いのかもしれないけれど、痴呆になっても生きていることを許していける社会だといいなと思う。
    安楽死を、死なせることを医者が選ぶのではなく自然に、命の火が消えるのがいいな。ぽっくり逝きたいと

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    2012年03月06日
  • 三たびの海峡

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    朝鮮から強制連行されて、無理やり炭鉱の仕事をさせられる。それが、海を渡る最初の経験。ぎりぎりで生き延びてやっとのことで国へ帰るのが二度目。三度目は炭鉱町のその後の状況を知り、自分に約束したことを為すために日本へ渡る。

    強制連行、炭鉱労働、会社の横暴、これらのことを日本人が朝鮮人に対して行ったことを読んで知ってはいた。彼らの身に気持ちを映して読むと、虐げられる辛さを感じ、虐げる側の国の者として申しわけないと思う。暴力を受け続けた結果逃げ出した先で、愛する女性にめぐり合う。虐げた側の国の女性なのに拘らずに彼女自身を見つめて恋をする彼はなんて大きな人なんだろう。
    三度目に海を渡り、日本で最後に遣り

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    2012年01月25日
  • 聖灰の暗号(下)

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    やはりこの作家は凄い。文句なし☆×5。13世紀フランスにて実際におきた血ぬられた過去を示す一通の古文書を一人の日本人歴史学者が偶然発見することから物語は始まる。バチカンによる実際に起きたカタリ派の粛清を史実に基づいて一級のミステリーに仕上げてある。驚愕すべきは古文書が全て筆者の創作。「 彼らの生きた証を探しだし人々の意識のどこかに収めるのが歴史家のやろうとしている試みである」 感動という安易な一言では言い表すことは出来ない。完敗です。そういえばダ・ヴィンチコードに似ているかな。

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    2012年01月23日
  • 風花病棟

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    かざはなびょうとう と読むのですね。
    10人の医師が診療に携わる姿勢が、それぞれの立場や周りとのかかわり方から浮かび上がる。
    命と向き合うことを職業に選んだ彼らは、人と向き合い学びながら生きている。真摯に人と関わっている。お金のためでも自らのプライドのためでもなく。病を得た人とゆったりと真面目に関わっていく医師を頼もしいと思う。
    この本に出合えてよかった。

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    2011年12月30日
  • アフリカの蹄

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    心臓移植を学ぶために、アフリカに留学した日本の外科医師の物語。
    アフリカの「実際」を見ていくうちに、それまでとこれからの自分の道に違和感を感じ始める。

    国際協力がどのような意味を持つのか
    何のためにその道に進むのか
    自分の意思と照らし合わせながら読み進めた

    時代設定が人種差別のもっとも激しい時代(アパルトヘイト時)が舞台なので、現在とは異なるだろうが、感じるものは多かった。

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    2011年12月11日
  • ギャンブル依存とたたかう

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    パチンコ、麻雀、競馬、競輪…。「庶民の娯楽」という美名の陰で、急速に増えつづける依存者の群れ。この本には「地獄への片道切符」に乗ってしまった人たちの末路が描かれております。

    僕は西原理恵子を始め、伊集院静や白川道など、確実にギャンブル依存症の作家のエッセイや作品を読んで、彼らの日常を笑ってみていたことがありましたけれど、それでも、彼らの日常が破滅しないのは彼らがやっぱり普通の人間の何倍もお金を稼いでいるのだという事実と、仮に、破綻はしていても『作家だから』ということで、多めに見てもらっているのであって、普通の人間が病的なまでにギャンブルにのめりこんでしまうと確実に待っているのは地獄への一本道

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    2011年12月01日
  • 風花病棟

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    いろいろなお医者さんが出てきます。
    自分もあのなかで取り上げられるようなお医者さんになれたらいいな。

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    2011年11月17日
  • 風花病棟

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    生きることのさみしさと、喜びとが、しんみりと沁みてくる。

    死と向き合う医者という仕事は、同時に自分の生き方をも見つめ直すことになる。

    父の生き方、戦争という歴史、貧困、癌、・・・・・扱っている題材は、どれも生き方を見つめ直させるものばかりだが、
    作中に描かれる、花の記憶が、作品に灯りをともしている。

    「三たびの海峡」や「閉鎖病棟」など、誠実に生きることと向き合う作品を描いてきた作者の、遺言のような本。

    一話、一話を、噛みしめながら読みました。

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    2011年11月14日
  • アフリカの瞳

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    ノンフィクションなのではないか?
    と思わせるほどの小説でした。

    アフリカに蔓延るエイズ、そのエイズと政府に立ち向かっていく日本人医師と彼の仲間たちの様子を描いた物です。
    世界各国でエイズは今も蔓延しています。圧倒的に多いのはアフリカですが、日本でもエイズ患者は多くいます。決して他人事ではないのだと、この本を読んで思いました。

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    2011年11月03日
  • ヒトラーの防具(下)

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    下巻は一気読み。歴史小説は終わりがわかるためあまり加速する事はない。ただしこの作品さすがにミステリーの要素も加わり最後まで気の抜けない作品に仕上がっている。戦争という狂気をテーマにしながら最後まで人間らしさを失わずにあたたかい気持ちを持ち続けた人々を描くを満ち続けた人々を見事に描き切っている。かなり深い余韻が残りました。

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    2011年11月20日
  • 安楽病棟

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    ネタバレ

    分類では医療サスペンス?だけど、小説の本質と良さとは全く違うところにある。なので本書がサスペンスの角度で紹介され、また呆け老人の行動の描写でまるで好奇心を煽るような紹介文には個人的に違和感を感じる。
    小説の構成は、病院の中の老人個人個人のストーリを集めて構成される病院の日常、新人看護婦の視点、サスペンスのキーとなる医師の講演、その後老人のあいつぐ急死、手紙での告発。
    小説後半のスピードが早く、たたみかけるような終結も箒木蓬生さんのパターンではあるが、今回も終盤で一気にギアチェンジし急にサスペンスに入った。だから医療サスペンスなんやけど、なんかちょっと奇妙。

    本質は老人医療、安楽死等の倫

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    2011年10月26日
  • 国銅(下)

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    私は先に「水神」の方を読んでしまったが、この「国銅」があって「水神」がある、そんなことが自ずと頓悟された。

    非常によくできた二昔前ぐらいの連続テレビドラマを観ているかのようだ。
    主人公の国人が絵に描いたような善人の模範で、周りの人々や環境にも異様なほど恵まれる、などといったフィクションならではの好都合も随所に見られるが、本作全体を貫き通す真っ直ぐな流れは揺らぐことなく、読者の真情に迫る。
    物語の中には、謎もどんでん返しもトリックも出てはこないが、“生きる”とはどういうことなのか、そんな命題に真っ向から取り組み、そのプロセスを経て得られた著者なりの答えが示されている。

    「水神」同様、作中に出

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    2011年10月24日
  • 国銅(上)

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    私は先に「水神」の方を読んでしまったが、この「国銅」があって「水神」がある、そんなことが自ずと頓悟された。

    非常によくできた二昔前ぐらいの連続テレビドラマを観ているかのようだ。
    主人公の国人が絵に描いたような善人の模範で、周りの人々や環境にも異様なほど恵まれる、などといったフィクションならではの好都合も随所に見られるが、本作全体を貫き通す真っ直ぐな流れは揺らぐことなく、読者の真情に迫る。
    物語の中には、謎もどんでん返しもトリックも出てはこないが、“生きる”とはどういうことなのか、そんな命題に真っ向から取り組み、そのプロセスを経て得られた著者なりの答えが示されている。

    「水神」同様、作中に出

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    2011年10月24日
  • ヒトラーの防具(上)

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    昔剣道をやっていたことがあり、表紙の剣道防具の絵にひかれて購入した本。
    第2次世界大戦中のドイツで、日独混血の青年、香田光彦の、誇りを失わない力強い生き方に感動した。
    戦争の愚かしさというものを改めて考えさせられた。

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    2011年10月10日
  • 聖灰の暗号(下)

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    信仰とは何か、善とは何か。
    古文書によって解明されるローマ教会とカタリ派の対比が、(日本人にもわかりやすいようにデフォルメされているのかもしれないけれど)非常に興味深い。ミステリーの要素も充分で、次々と頁を繰りたくなるスリリングさ。ラブストーリーや友情も気持ち良く描かれていて、小説としての面白さあり、信仰、宗教についてわずかでも考えるきっかけにもなり、魅力的な本でした。

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    2011年10月05日
  • インターセックス

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    ネタバレ

    読み終わって、息を殆ど止めた状態で読んでいたことに気づいた。

    無知な私には、医学の知識をそのまま鵜呑みにしてしまっていいのかはわからない。
    でも、かなりの確率で第三の性を持って生まれてくる人達がいて、その大部分がひっそりと生きているのだろうことはわかった。

    岸川院長の考え方にはハラハラさせられたが、遺書を読むと、もう何も言えない。

    誰もが楽しめる本だとは思わないけど、読み応えのある作品に挑戦したい人にはお薦め。
    『閉鎖病棟』とは違い、読み手に元気がなくても充分楽しめるのもよい。
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    「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障碍者への性

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    2015年06月01日
  • 三たびの海峡

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    第14回吉川英治文学新人賞。このミス「BEST 1993国内編09位」。キーワードは、河時限(ハーシグン)、強制労働、ボタ山。朝鮮半島と日本の関係。3回の海峡越え・・・胸が熱くなりました。

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    2012年05月20日
  • アフリカの瞳

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    遠いアフリカで何が行われているかを知ることができる本。日本人が無関心な大陸で、日本はじめ先進国の施しが国の自立を妨げている現実を著者は厳しく指摘している。

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    2010年12月28日