あらすじ
華やかな奈良の都で、国人は大仏造営の作業に打ちこんでいた。ともに汗を流す仲間たちと友情を築いた。短き命を燃やす娘と、逢瀬を重ねた。薬草の知識で病める人びとを救い、日々を詩に詠む。彼は、確かな成長を遂げていた。数え切れぬほどの無名の男たちによって、鉱石に命が吹き込まれ、大仏は遂に完成した。そして、役目を終えた国人は――。静かな感動に包まれる、完結篇。
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この本を読んでから奈良時代が気になって仕方がない。
改めてすごく影響を受けたことに気づき、⭐︎5へ変更。
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源氏物語のことを調べていて帚木蓬生さんを知り、ネガティブケイパビリティという考え方も気になっていたので興味を持った。
書かれてるジャンルは精神科医としてのものからく小説だけでも色々あるようで、直感でこちらを選択。
奈良の大仏を作る人足(肉体労働者)の話。
歴史小説、にしては古すぎて文献などはほとんど残ってないだろうから、ほぼ創作だと思われる。
が、本当にこんなだったんだろうなというリアリティがあり、エンタメとして読みやすくて上下ともどんどん読み進められた。
とても面白く、他のものも読んでみたくなった。
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20年ぶりに再読。帚木蓬生さんの小説の根底に流れるものは「優しさ」だと思う。
奈良登の黒虫や吹屋頭、都の池万呂や島万呂や二見。何度もその優しさに涙する。
何年後かにまた読もう。
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広国 国人 『国銅』
主人公と本の題名が読み進むにつれて どうしてそういう名を付けたのかが繋がりました。
漢詩において、おそらくこうだろうなと拡がる風景心情など、余韻に浸る素晴らしさを実感しました。漢詩 本当に良いですね。
色んな場面で考えてさせられる優れた本です。
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蟻の如く働くこと十年。繰り返しの過酷な毎日でも、国人は仏の教えとわずかな言葉を頼りに必死に生きた。そして遂に大仏は完成したが…。無名の者たちの深き歓びと痛切なる哀しみを描く大平ロマン、万感のラストシーン。
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久々にヒット!
地味な主人公だけど、奈良時代の話が克明に描かれていてその時代が目に浮かんでくるようだ。
箒木篷生って知らなかったけど、他の本も是非読んでみたい。
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長門の奈良登りで過酷な苦役の日々を送る国人が、
大仏造営命を受け仲間と共に奈良へ旅立つ・・・
黒虫の考え方、言葉がとても好き。
また、歌や詩には大きな力があることを改めて感じる。
人にとって大切なものは何か、この時代の人々の生きる様、
色々な事を考えさせられる重量感ある話です。
続きが気になって止められず、夜中まで起きて読みきってしまった。
購入して再読したいと思います。
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私は先に「水神」の方を読んでしまったが、この「国銅」があって「水神」がある、そんなことが自ずと頓悟された。
非常によくできた二昔前ぐらいの連続テレビドラマを観ているかのようだ。
主人公の国人が絵に描いたような善人の模範で、周りの人々や環境にも異様なほど恵まれる、などといったフィクションならではの好都合も随所に見られるが、本作全体を貫き通す真っ直ぐな流れは揺らぐことなく、読者の真情に迫る。
物語の中には、謎もどんでん返しもトリックも出てはこないが、“生きる”とはどういうことなのか、そんな命題に真っ向から取り組み、そのプロセスを経て得られた著者なりの答えが示されている。
「水神」同様、作中に出てくるなんでもない食べ物の数々や、また医師ならではの見地から描かれた疾病の表現などが印象に残る。
大仏建立の具体的な方法についても、ここまでよく調べられたものだと感服する。
奈良登りの掘り口や釜屋、吹屋もそうだが、登場人物たちが働いている現場の暑さ寒さまで伝わってくるような臨場感だ。
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これほどに魅了された作品は久しくない。
想像をはるかに超える苦役に就きながらも、心は腐らず真っ直ぐに生きる主人公を応援し、全ての出会いに感謝しながら読んでるなんて。
何度となく大仏さんにお参りしているが、次回は別の見方で感慨一入になるだろう。
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華やかな奈良の都で、大仏造営に携わった国人が主人公の物語。
銅の産出から、大仏造営と奈良時代の社会、風俗良く描かれていて大変興味深く読めた。
大仏造営を底辺で支えた人々の営みが興味深かった。
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棹銅を作り、都へ行き大仏を作った国人を初めとする奈良時代の人足の物語。もうほとんど語り手・国人と同じ視線で、朝から晩まで働き、山草木を愛で、字を覚え宇宙の広がりを感じてることが出来た。聖武天皇ではなく人足何十万人の労働で大仏は出来た。この小説を読まなければそう思うこともできなかったでしょう。
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実のところ、国人が都に行くことになった辺りから、結末はほとんど予測できていた。下手をすれば、国人だって奈良登りにはたどり着けない。でも、国人が待ち望んでいた再会はなかった。それが、悲しい。たくさん、話したいことがあっただろうに。
都で、国人の感覚は、詩や歌を覚えることで、ずいぶんと華やいでいたと思う。人足たちの中でも、文字が読め、仏の意味も深く考えていた。すごく雅て見える。でも、奈良登りへ帰る道々、仲間を失っていく中で、どんどん荒々しいものになっていったように見える。そして、奈良登りの石仏の碑を彫りつけようとする国人の姿は、荒々しさそのもの。
これは、仏作りに関わって、聖なる者になっていく話ではなく、仏と交わることによって、かえって俗に戻っていく話だったのだと思う。
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東大寺の大仏を作るのにどれだけの人々の苦労があったのだろう。その一人がいた、いやいなかったかもしれないが、大きな建造物を作り上げるための限りないほどの労力は今でも変わりはないのかもしれないと思った。故郷の景信和尚と絹女を思いながら都の作業、生活に打ち込む国人の潔さ、清々しい姿が心に染みた。
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いつか読みたいと思っていた。
オーソドックスな歴史小説だと思うが、奈良時代の使役の様子を再現するというのは、作家の想像力というのは凄いものだ。生きていくことが、諸国を移動することがとてつもなく困難で危険であった時代、丁寧に丁寧に日々を生きることが、なにより大事であったのだろう。そういう感慨で胸が包まれる。
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(上下巻通じての感想です)
奈良の大仏を作る物語ですが、時の権力者や僧侶の側からではなく、作業に直接携わる人足の側から書いています。大仏の材料となる銅鉱石の掘り出しから始まって、精錬し、地方から都へ舟で運び、大仏の製造鋳込みを行います。その作業過程の描写や働く人足たちの気持ちの記述は素晴らしかったです。
ただ、ちょっと残念だったのは主人公があまりにも体力的、知的、人物的に優れていたことでした。もっと庶民の姿で書いてあれば良かったのにと思いました。
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下巻。
都での出世を断ち自らの仏を彫ることに打ち込んだ師匠様と、世俗と出世におぼれた師匠の友人との対比が、著者の強いメッセージ。
主人公は、兄、友人、恋人、師匠様を亡くすも、また黙々と人足の仕事に打ち込むことを決意する。「己の仏を創る」ことを目指す。
古い時代の人間を描いた話であるのに、現代にも通じるメッセージ性が印象的だ。
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作品を読み進むにつれ、いつしか主人公の国人(くにと)と同じ目線で奈良をながめるようになり、大仏建立のそのシーンは、こちらまでもが思わず息を呑んでしまいそうな、荘厳な雰囲気に充ち満ちています。
けれど、国人に感情移入をすればするほど、物語世界から抜けきれなくなって、読み終えたその時にはどっと疲れに見舞われることは必至。
そうして気づくのです。
ああこれは、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」のような英雄譚ではなくて、『奈良の大仏造りに身を捧げ、報われずに散った男達の深き歓びと哀しみを描』いた作品だったのだな、ということに。
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国人の目線と登場人物の生き様を通じて生きるとはというところを考えさせられる
それとやっぱり言葉の持つ力ってすごいなぁーって
国人が字や薬草の知識を学んでいくところがステキだった
何を学ぶかもとても重要なことなのだと
苦難の中に喜びや驚きが点在しまた突然抗い難い残酷な一面を見せ付ける人生とはかくも感慨深いものだ
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国人は大仏の完成をみる。そして帰郷の許可が…。
だが、その過程で失ったものも。
大仏を造り、そして故郷に戻り、彼が得たもの、失ったものは?
最後は涙なしでは読めませんでした。
国人の歩みは、ちょっと歯がゆいところがあるのですが、それもまた彼の良さで、歯がゆく感じてしまう私の考え方が間違いなのかもしれません。
素直に聞き、学ぶ…それが大事なんですよね。
Posted by ブクログ
なんか史料館か博物館を見学した気分。とてもみっしり丁寧に当時の様子が描きこまれていて読み応えあり。でも大きな舞台のわりに主人公の心の波が小さくていまいち共感できず…
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若者の成長物語なのだがなんとも切ない。奈良時代を描いた作品といえば、「天平の甍」が思い出されるが、通じるものがある。人間的な深みとか、様々なタイプの人間を描いているという点では、やはり井上靖の方に軍配があがるが、奈良時代を描くという点では、本作品も調べが行き届いている感じがした。
帚木さんの作品は初めてだが、様々なタイプの物があるようなのでまた読みたい。
Posted by ブクログ
奈良の都、国人と仲間が作る大仏の作り方が克明に書かれる。
日々を詩に詠み成長を遂げていた。数え切れぬほどの無名の男たちによって、鉱石に命が吹き込まれ、大仏は遂に完成した。
5年後、帰国を許された国人22歳の困難な道中
師匠の修行僧景信
思い人絹女
ケン・フォレットの「大聖堂」は、イギリス十二世紀。ジャックは、大聖堂をこの手で建てたいと家族と無茶な旅をする。それより、約四百年前、、東大寺大仏建立のため日本各地から奈良の都に使役として人足たちが故郷に家族を置き駆り出される。
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帚木の異色作品。
天平の時代に生きた一人の仕丁「国人こくと」が、長門の銅山から徴用され、奈良の都の大仏建立に携わり、重労働に明け暮れ、故郷に帰る。
淡々と人生の悲しみ、人との出会いと別れ、そしてひたすら誠実に生きる国人と徴用から帰国まで一緒に歩む。
また、大仏をどのように作ったかということが詳細に描かれている。
物語とは関係ないが、銅の大仏をつくることで、私鋳銭も含め広く行き渡った銅の回収をはかったというマクロ経済の見方はちょっと面白い。
Posted by ブクログ
国人は、大仏造営の傍ら詩を詠み、薬草を採り過ごし、遂に故郷へ帰ることを許されたが・・・
意外とあっさりだったかな。それでも、これだけの人々の労苦の上に成り立っていると思うと、大仏を見る目も変わってくるかもと思った。