あらすじ
乳癌と闘いながら、懸命に仕事を続ける、泣き虫先生(「雨に濡れて」)。診療所を守っていた父を亡くし、寂れゆく故郷を久々に訪れた勤務医(「百日紅」)。三十年間地域で頼りにされてきたクリニックを、今まさに閉じようとしている、老ドクター(「終診」)。医師は患者から病気について学ぶのではなく、生き方を学ぶのだ――。生命の尊厳と日夜対峙する、十人の良医たちのストーリー。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
地域の医師・開業医の重要な役割、守備範囲の広さ、診療において根底で大切なことを改めて学んだ。
総合病院勤務医の仕事とは根本的に違うし、人間力が問われる。
医師として専門性を突き詰めることも大切だけど、同じくらいか、もっと大切なことを改めて気付かされた。
Posted by ブクログ
ちょっと心が辛いときに読みたくなる本。立ち止まって後ろを振り返って良いし、そうやって日々を過ごしていけばいいんだな、と。優しい気持ちになれます。
Posted by ブクログ
帚木蓬生、いい作品が多いと改めて思う。
これを読むの、3回目。
どの先生も、穏やかでいいドクターです。こんなドクターにかかりたいと、みんな思うことでしょう。
Posted by ブクログ
2015/11/05
NHKラジオである土曜日の朝に朗読された「かがやく」をきいて涙があふれ、サイトで帚木蓬生さんの作品だと知り本書を手にした。読み進めるのが惜しく一話読むたびに時間を置いた。ほんとうに良い本だった。
Posted by ブクログ
かざはなびょうとう と読むのですね。
10人の医師が診療に携わる姿勢が、それぞれの立場や周りとのかかわり方から浮かび上がる。
命と向き合うことを職業に選んだ彼らは、人と向き合い学びながら生きている。真摯に人と関わっている。お金のためでも自らのプライドのためでもなく。病を得た人とゆったりと真面目に関わっていく医師を頼もしいと思う。
この本に出合えてよかった。
Posted by ブクログ
生きることのさみしさと、喜びとが、しんみりと沁みてくる。
死と向き合う医者という仕事は、同時に自分の生き方をも見つめ直すことになる。
父の生き方、戦争という歴史、貧困、癌、・・・・・扱っている題材は、どれも生き方を見つめ直させるものばかりだが、
作中に描かれる、花の記憶が、作品に灯りをともしている。
「三たびの海峡」や「閉鎖病棟」など、誠実に生きることと向き合う作品を描いてきた作者の、遺言のような本。
一話、一話を、噛みしめながら読みました。
Posted by ブクログ
十編を収めた短編集。
いずれも老若男女の「良医」が主人公・花が必ず登場するもので、どれもものすごく大きな起伏があるという話ではないけれど、なんだかじんわりよかったなと思わせられた。
現役精神科医である作者によると、メディアなどで大きく名医だと取り沙汰される医者よりも、日の当たらないところに良医はいるのだと、それを伝えたかったのだと。
たしかに作中に出てくる医師たちは、患者をよく見て、患者との関わりを常に模索している人たちが多かったな。
1話目は個人的に導入が入りづらいなあと感じだけど、どの話も全体的にどこか印象に残る。
あらすじには紹介されてない話だけど、藤籠、顔、アヒルおばさんという話が好きかな。
Posted by ブクログ
帚木さんの作品はやはりとても読みやすい。
短編なので、気楽に読むことができた。
長編のようなずっしりとした読み応えはもちろんないが、読後感のさわやかさがあった。
Posted by ブクログ
短編10篇の、うちはじめの2篇はしみじみとした趣があるものの物足りなく感じてしまった。
しかし3遍目からは前のめりに読み耽ってしまった。今まで読んできた医療小説とは少々趣を異にするものだった。
私の我儘ではあるが、最後の「終診」は泣けるものであって欲しかった。
Posted by ブクログ
2015年の51冊目です。
帚木蓬生氏の小説を初めて読みました。
2014年秋にリサイクル本として購入し、
積読状態だったのですがようやく読みました。
10作の短篇を集めた作品集です。
著者は精神科医だけあり、医療や病気に関する表現はリアリティーを感じました。
医療を通した人の生き様に対する真摯な視線を感じます。
健康や生死の問題は、否が応でも人の心に突き刺さります。
時に鋭い刃物の様に心を切り裂き、時に小骨がのどに引っかかるように、
断続的に気持ちを乱します。それらに向き合う人間の心情はとても弱く、
揺らいでいると思います。どうやって折り合いをつけるのかが綴られているように感じました。それを傍で見つめる医療に携わる人の思いは、”尊厳”なのか。
同じく救急医療の現場を舞台にした渡辺祐一氏の小説を思い起こさせました。
Posted by ブクログ
乳癌と闘いながら仕事を続ける泣き虫先生。長年地域で頼りにされてきたクリニックを閉じようとしている老ドクター。顔を失った妻と妻を支える夫を見つめる医者。同じ戦地を経験した日米の二人の医師。など
医師という共通の職業を持った10人の人間物語の温かい短編集。短編小説というよりも医者としての日記のような作品。
病を乗り越えて更にいい作品を描いて頂きたい。
Posted by ブクログ
お医者さんを題材にした10の短編。エンタメとかサスペンスではなく誠実な人間ドラマがきちんと描かれてた…いろんな場所いろんな時代いろんな社会医療問題を背景としたお話なので飽きないし、楽しめるとともに勉強になった。花のエピソードがまたいい。
Posted by ブクログ
どの話もよかった。
しっかりした、中身の詰まった読み物、という感じ。
昔読んだ「閉鎖病棟」ほど暗くなく、安心して読める。
(戦争の話や重い病や、人間の残酷さなどは描かれているけど)
盛り上がりは少ないけど、いい本だなー
特に、「藤籠」「雨に濡れて」「百日紅」に、じーんとした。
さわりは何となく重松清っぽいかなと思ったけど、
嫌な言い方をすれば、もっと説得力があって、媚びの少ない感じ?
重松清も好きだけど。
あとがきもいい。
Posted by ブクログ
10話の短編集。医療に携わっている私には、周りの状況や主人公の思いなどが想像しやすい。だから入り込んで読み、涙ぐんだ作品もある。みんなこんな素敵な医師や看護師だったらなぁと思う。テレビの医療ドラマのような現実離れした所はなく、今の医療に欠けている部分を鋭くなく、柔らかな感じで現されている。
Posted by ブクログ
帚木 蓬生
新潮社 (2011/10)
(新潮文庫)
現役の精神科医
以前「三たびの海峡」を読んであまりの過酷さに最後まで読めなかった
これは市井の良医10人のやさしいストーリー
「死」を見つめ生きていく人たちと向き合う医師が描かれている
それぞれのストーリーに投げ込まれたそれぞれの花が印象的だった
≪ 病棟に かざはな舞えば 窓蒼く ≫
Posted by ブクログ
かなり生々しくリアルな描写があり、多くの作中に悲しみなり寂寞感が漂っているのに、最後は希望を抱けるところが素晴らしい。著者の淡々としながら人間を信じる目線は透徹って言葉がぴったりだ。
ストーリーによって診療科が違うところ、植物の描写が文字通り花を添えているところなども読んでいて飽きない。個人的には戦争を絡めた2つのエピソードが印象深かった。
Posted by ブクログ
ご自身もお医者さんである、箒木蓬生さんの、お医者さんの良心を描いた短篇集です。
病を治すということは、単に医学的な事だけではなくて、人と人との繋がりが基本にあるんだなあ~と、思わせてくれます。
お医者さんは、単に知識があるだけの、施術士になって欲しくない。
この物語に出てくるような、未熟でも人としての心を持つ医者であって欲しい…
と、思わずにはいられないです。
Posted by ブクログ
性別、診療科、状況のそれぞれ違う10人の医師の視点から描かれる短編集。淡々とした筆致の中に、著者の主張・テーマが差し入れられた内容は、素直に共感できる。「かがやく」と「終診」に心惹かれた。
「逃げんで、踏みとどまって、見届ける。」支援者としてのあるべき姿だと...。
Posted by ブクログ
病院の窓から見える山藤、実家の百日紅、庭のチューリップ、造花のカーネーション。
病院という閉ざされた空間と縦軸の時間を繋いでいく花々のモチーフが、日常のさりげない情景として、ストンと入ってきてくれた。医者としての苦悩も伝わってきた。
Posted by ブクログ
2013.9.17
医師として患者に向き合う前に1人のひととして向き合う姿に心温まる10編ではあるものの、他の長編が大変重厚であるだけに、少々物足りなさは残る・・。
Posted by ブクログ
ここで挙げられる良医は良心的なお医者さんです。単に腕の良い医者の事では有りません。現役の医者であり、ヒューマニティーに溢れた帚木さんの作品ですが、なぜか感動の量は少なく。
面白くない訳ではありません。帚木さんですから、一定以上の質は確保していると思います。でも、どうも地味な感じなのです。どこか物足らない。それぞれの物語がとても良い素材を持っているだけに残念な気がするのです。もう一つ二つ突っ込めば、大化けするのではないか。そんな気がするのです。読み手の精神的体調も有りますから、私のせいなのかもしれませんが。
そういえば、帚木さんの短編は珍しい。やはり長編が得意なのかな。