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目の前を悠然と流れる筑後川。だが台地に住む百姓にその恵みは届かず、人力で愚直に汲み続けるしかない。助左衛門は歳月をかけて地形を足で確かめながら、この大河を堰止め、稲田の渇水に苦しむ村に水を分配する大工事を構想した。その案に、類似した事情を抱える四ヵ村の庄屋たちも同心する。彼ら五庄屋の悲願は、久留米藩と周囲の村々に容れられるのか──。新田次郎文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
目の前を悠然と流れる筑後川。だが台地に住む百姓にその恵みは届かず、人力で愚直に汲み続けるしかない。助左衛門は歳月をかけて地形を足で確かめながら、この大河を堰止め、稲田の渇水に苦しむ村に水を分配する大工事を構想した。その案に、類似した事情を抱える四ヵ村の庄屋たちも同心する。彼ら五庄屋の悲願は、久留米藩...続きを読むと周囲の村々に容れられるのか。
真っ当な小説を久々に読んだ気がします。勉強不足で、同県民なのに大石堰と五庄屋の事知らなかった…素晴らしい業績。 時代もので農民が中心に描かれてる作品って確かにあまり読んだことが無いかも。その上、庄屋様もお奉行様も利他な人が多くて凄い。庄屋たち、苦労は我々の代で終わらせて次世代に引き継がないという強い...続きを読む意志を感じます。身代潰しても、磔にされても構わない、って相当強い。 農民と庄屋や奉行、階級差は歴然とあるけど下々を虐げることは全く無くて凄い。農民のキツさは今の時代とは比べものにならないけど、農民を虐げて温々暮らす庄屋が居ない……庄屋って悪徳な印象だったけど五庄屋の面々には覆されました。 権がかわいい。忠犬。
中村哲さん急逝で読み直した。涙なしに読めない。江戸時代、身代をかけて筑後川に大石堰を築いた五人庄屋の実話に基づいた小説。五人を取り巻く人々が、細やかに描写されている。決して聖人君子物語ではない。
水神(上)
江戸時代の百姓の生活環境が良く書かれていると感じました。
再読です。 ややドロドロした本が続いたので、真っ直ぐな物語が読みたくなって。 江戸時代、両側を川に挟まれながら台地ゆえに水が回らず、困窮する村々。そこの五人の庄屋が立ち上がり、私財をなげうって筑後川に堰を設けて村に水を引くまでの物語です。 彼らの無私な熱意は藩を動かし、最初は反対をした他の庄屋や町の...続きを読む商人をも巻き込み突き進んでいきます。 悪人が一人も出てこない、真っ直ぐな話です。真直ぐゆえに、ストーリーの曲折は少ないのですが、それを十分にカバーする力があります。 でも、地図くらい付けて欲しかったなぁ。どうも水路の構造が理解できずに、話が見えなくなるところがありました。 ================== 12-055 2012/06/07 ☆☆☆☆☆ 『国銅』に続く帚木さんの2作目の歴史小説です。奈良時代と江戸時代の違いはあれ、難工事に臨んだ庶民の話というテーマは同じです。 「大石堰」とか「五庄屋物語」で調べると様々な記録がネット上に存在します。帚木さんは福岡県小郡市生まれ、調べてみると大石堰の近くです。たぶん小さい頃から聞かされていた話なのでしょう。 読み応えのある、ページをめくる手が止まらなくなる様な上下巻です。全ての登場人物が見事なほど善人として描かれ、その分物語として浅くなった感じはするものの、それを補って余りある程に貧農の痛々しいまでの生活と諦念が書き込まれます。 庄屋達の見事な心意気、それを支える武家や商人達、そして希望の未来へ進み始める農民たち。 帚木さんらしい端正で抑制の効いた文章と相まって、静かで爽やかな感動を生む作品です。
筑後川を目の前にしながら高台にあるため、水不足で農作物が育たない。 朝から晩まで川から水を汲み上げ水路に流す作業は打桶といわれ、元助と伊八の二人で行われていたが、桶で汲み上げられる水の量はたかが知れている この貧しい農民達を救いたいと、五人の庄屋が私財をなげうって堰を作る作業を奉行所に申し立てる ...続きを読む 下巻につづく…
こういったストーリーに定番の悪役が出てこないのに感じ入った。表現力がすばらしい。 「元助は深く息を吸い込む。朝方の空気と夕方の空気は匂いも味も微妙に違った。早朝の空気は、草いきれと土の匂いが入り混じったすがすがしさがあるが、夕方の空気はどこかかまどの匂いがした。」幼い頃に田舎で味わった体感そのもので...続きを読むはないか。2014.8.2
本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。 本書の舞台は...続きを読む島原の乱の記憶もまだ色褪せない頃の九州は筑後川流域。滔々と流れる大河の傍に住むにも関わらず、土地の高低によりその水を利用できず永年、水不足・旱魃に悩まされてきた村々。そこでは人力による水汲みだけを仕事として一生を終える百姓も居る。その窮状を何とかしようと流域の庄屋5名が、私財を投げ打ってまでも堰渠を構築し水不足の苦難を克服しようと久留米藩奉行に嘆願書を出すに至る。しかしながら100を超える流域の庄屋の中には反対の声も挙がる。藩奉行に「命を賭する」との血判状まで出した事業は藩に認められるのか、宿年の夢である堰渠工事は無事に完成するのか、事故が起きると庄屋の命はどうなるのか、ページをめくるのももどかしく先へ先へと読み進めたくなる長編物語だ。 物語の筋も面白いのだが、水に寄せる農民の想いや庄屋としての責任感、それらを応援する奉行・下級藩士・商人ら多くの人々の思いのたけが丁寧に語られており思わず胸が熱くなる名作だ。 そもそも2009年に出たときはついつい積読期間が長く、読み始めたのが年が明けて暫くしてから。読後の感動からすると2009年のベスト10に組み入れるべきだったと反省はすれども既に年が明けてしまい後の祭り。その反省も踏まえ、この文庫版が出たこの機に、声を大にして勧めたいものだ。
大河・筑後川の流域でありながら、台地のために川の水の恩恵を受けられない貧しい村々。その中の五人の庄屋が、水路(堰と堰渠)を作るため立ち上がった。前編はここまで。
前半は百姓の悲惨な生活…松皮粉、藁餅など農民文学かと思いきや、後半は涙涙の展開。下巻はもっとウルウルするのかな。
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