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ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。「水が来たぞ」。苦難の果てに叫び声は上がった。子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成されなかった。故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。
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Posted by ブクログ
水に恵まれない土地で、農民の為、五庄屋が筑後川の堰渠(せきりょう)工事を命と財産を賭して成し遂げた話。 解説は縄田一男さん。「嗚咽なしには読めない」と書かれている。ああ、自分だけじゃないんだと思った。「私は近来、これほど平易にして達意の文章を操ることのできる作家を知らない。正しくその文章は読む者の心...続きを読むをふるわせるのだ。」これ以上の適切な表現が思いつかず、引用させていただきます。 帚木蓬生の三部作の一つという事で、「天に星 地に花」に感動して読んだ。次は「守教」を読む。
ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。「水が来たぞ」。苦難の果てに叫び声は上がった。子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成さ...続きを読むれなかった。故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。
素晴らしい。感動した。読後感も良い。 縄田さん絶賛も新田二郎賞受賞も大いに納得で 登場人物に対する抑制された愛情を感じた。
筑後川の流域にありながら高地なため水に恵まれない土地.久留米藩の財政も苦しい中.5庄屋が全財産と命までも投げ売って筑後川大石堰の工事に乗り出す.武士,農民.商人たちの協力のもと大事業は成し遂げられる.3度は泣ける.この物語に悪人は一人も出てこないのが読後感を良いものにしている.
後半は涙涙です 堰を作る作業、大きな石を川に沈める描写など実際に観ているようです 悪人が登場しないところも好きです! 読みやすく感動的な作品でした
江戸初期の久留米藩が舞台。福岡県うきは市に残る大石堰がテーマ。 為政者ではなく村の庄屋が起案の前代未聞の治水工事。水から見放されている土地と百姓を救うという一心で身代ばかりか命までもかけた五人の庄屋。作者が込めた想いはただ百姓の事を書きたかったという通り日々の過酷な環境を日々の生活に重ね合わせて工事...続きを読むにかける意気込みとともに百姓の目線にて書き綴る。後半は藩への命がけの嘆願が通りいよいよ工事へ。陰には百姓を心身ともに支えた一人の老武士。死亡事故の責任を藩より庄屋に押し付けられた時の老武士の嘆願書。涙なしでは読めません。
水に恵まれない土地で愚直に懸命に生きる百姓たち。 渇水に苦しむ村に、筑後川の水を分配する工事を考える庄屋助左衛門。 近隣の村の庄屋達と共に五庄屋が身代と命をかけて取り組む大事業を描く話です。 上巻から読み進め、下巻では何度も涙がこみ上げてきた。 村の百姓たちも庄屋も侍も金貸も、それぞれに感情移入して...続きを読むしまう。 最後、タイトルにもなっている水神様の嘆願書は、きっとこの村を生きる人々に語り継がれることだろう。 この作品は、また何度でも読みたいと思う。
百姓や庄屋の頑張りももちろんですが、反対派の庄屋や管轄する奉行の生き様も素晴らしく描かれています。 なかなかに涙腺を刺激してくれます。 ラストの描写はわかっていながら、「よかった。あぁよかった!」と心から思ってしまいます。 上下巻共に素晴らしい読み物でした。
本書は2009年8月末に単行本として出版されているもので、本年6月に文庫化されたものだから既読本である。再読すると往々にして当初の感動イメージが損なわれることがあるのだが、本書はかつて読んだときの感動がそのまま再現された稀有な例で兎に角読んで絶対に損はさせないと太鼓判を押せる作品だ。 本書の舞台は...続きを読む島原の乱の記憶もまだ色褪せない頃の九州は筑後川流域。滔々と流れる大河の傍に住むにも関わらず、土地の高低によりその水を利用できず永年、水不足・旱魃に悩まされてきた村々。そこでは人力による水汲みだけを仕事として一生を終える百姓も居る。その窮状を何とかしようと流域の庄屋5名が、私財を投げ打ってまでも堰渠を構築し水不足の苦難を克服しようと久留米藩奉行に嘆願書を出すに至る。しかしながら100を超える流域の庄屋の中には反対の声も挙がる。藩奉行に「命を賭する」との血判状まで出した事業は藩に認められるのか、宿年の夢である堰渠工事は無事に完成するのか、事故が起きると庄屋の命はどうなるのか、ページをめくるのももどかしく先へ先へと読み進めたくなる長編物語だ。 物語の筋も面白いのだが、水に寄せる農民の想いや庄屋としての責任感、それらを応援する奉行・下級藩士・商人ら多くの人々の思いのたけが丁寧に語られており思わず胸が熱くなる名作だ。 そもそも2009年に出たときはついつい積読期間が長く、読み始めたのが年が明けて暫くしてから。読後の感動からすると2009年のベスト10に組み入れるべきだったと反省はすれども既に年が明けてしまい後の祭り。その反省も踏まえ、この文庫版が出たこの機に、声を大にして勧めたいものだ。
江戸時代の筑後川治水工事の話の後編。難工事ではなく、一冬の間に堰渠は完成。順調に話が進むと思われたが、試験通水で戻り水が起こり、死者を出してしまう。しかし、菊竹源左衛門によって、五人の庄屋は救われた。いい話でした。
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