帚木蓬生のレビュー一覧

  • 蠅の帝国―軍医たちの黙示録―

    Posted by ブクログ

    軍医の冷徹な視点から見た戦争の実相。
    原爆、満州引き揚げ、BC級戦犯など。人を救うはずの医者が医薬品、食糧不足から何もできないジレンマ、忍び寄る死の影。
    客観的な記述だけに、より悲惨さが浮き彫りになる。

    0
    2026年09月30日
  • 花散る里の病棟(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    北九州の町医者4代の物語。
    特に軍医として死線を彷徨う描写が圧巻。撤退時、動けない患者を処置する医師の葛藤。
    日夜、私生活を犠牲にして職務に励む医療従事者の方々に感謝。

    0
    2026年08月21日
  • アフリカの蹄

    Posted by ブクログ

    天然痘を使って黒人社会滅亡を図る白人に立ち向かう日本人医師の話。
    権力に抗って正義を貫こうとする人にはいつだって憧れる。

    0
    2026年08月15日
  • エンブリオ 下

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    カズオ・イシグロのわたしを離さないでを思いだした。倫理的に問題があっても希望する患者がいる、そして自分にはその腕がある。法を犯さなければ。中絶した胎児を臓器、卵子を育て必要なタイミングで融解して使用する。パーキンソン病治療のため自分の子の脳を使う。他人の卵子を使う事と、臓器移植、IPS細胞、など医療に無知な自分からするとすべて神の領域に思える。都合が悪くなると殺害するのは岸川医師が悪だが他については立場によるかもしれないと考えた。単行本で2014年既読、今現在はどこまで可能なのか気になる。続編があればいいのに。

    0
    2026年08月07日
  • エンブリオ 上

    Posted by ブクログ

    2014年既読、今読んでも面白い。エンブリオ、受精後八週までの胎児を言う。産婦人科医医療に無知だがこの中のどれくらいいま実現できるのかな。倫理的な問題もあるとはいえ岸川の言うことにも一理ある。廃物利用だと言われたらその通り。ファームなど違和感があるが人とヒトを区別するためかな。このまま下巻へ。

    0
    2026年08月07日
  • ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

    Posted by ブクログ

    すぐに答を安易に出そうと自然にしてしまう自分に、そういう風に他人にも接してしまう自分に、ずっと課題を感じていたので、ネガティヴケイパビリティやトリートメントはとても響きました。そして思い出しました。学生の頃に自分の好きな音楽を聴いていて、その声が、少し離れた隣で黙っていてくれるともだちみたいだと思い、そういうものを自分が求めているのだと感じたことを。
    何もしないしてくれないことの気持ち良さをもっと考えてみたいと思います。

    0
    2026年07月28日
  • 花散る里の病棟(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    北九州で4代続く医者の家系を時代ごとに描いた連作短編集。
    寄生虫に効く薬を調合し「虫医者」と呼ばれた初代、飢えに耐えながら南の島の最前線で奮闘した軍医の二代目、患者の四方山話を大切にする内科医の三代目、糖尿病の治療として肥満症の外科手術を行う四代目、そしてコロナ禍。
    どの時代にも医療は必要不可欠だが、世界の発展が次の健康課題を作り出す様子がよくわかる。おもしろかった。

    0
    2026年07月26日
  • ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

    Posted by ブクログ

    教育の過程では、問いに対し早く正確に回答することが求められますが、世の中の問題はそうはいきません。 どうなるか不安になったり、モヤモヤしたりしながらもその宙吊りに耐えるネガティブケイパビリティが必要と感じました。

    0
    2026年06月14日
  • 三たびの海峡

    Posted by ブクログ

    2回目の再読
    朝鮮人を強制連行し、苛烈な単行労働をさせた事にひどく衝撃を受けたのが初回
    どうしても当本を手放せず、何十年振りに読んだ また引き込まれた
    最後の息子宛て手紙、予定してた復讐は果たせなかったが、ガンで余命少ないのは変わらない事実だ

    0
    2026年04月09日
  • 閉鎖病棟

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    罪はどのように購うか、被害者と加害者の処遇については両者に深い溝があるのは当然だが、人の命の尊厳はどの方向からどのように見ればいいのだろう。医師の目でかかれた作品。

    平成7年度 山本周五郎賞受賞作

    犯罪を犯した人は、その状況によっては精神鑑定を受ける。最近はどのケースが異常で、またそうでないか、外部のものはわからないことも多いが。
    この本は、精神の異常で罪を犯した人たちが入院治療のために入っている精神病院が舞台である。
    開放病棟は届けを出せば外出もできる、治療によって平静を保つことができるようになった人たちがいる。閉鎖病棟は症状が重く、暴力的で外に出られない人たちが入っている。
    昼だけ開く半閉鎖病棟もある。
    入院しないで通院している人たちもいる。

    これは、入院している人たちの過去や現在を、現在精神科の医師である作者が、患者たちを温かい目で見守っていることが感じられる、優れた作品だ。
    登場人物の多い群像劇で、それぞれの悲しい過去が犯罪の原因になっていることがわかる。
    放火、殺人、など平常なら死刑になるはずの犯人たちが、入院、治療の結果、静かに日課をこなしている、完全に治る見込みはなくても、助け合い、趣味を楽しみ、お互いを理解して暮らしている。
    仲のよいグループができ、花見に行き、集団の遠足で近隣を歩き、演劇の台本を書き、演じたりもする。

    そこに粗暴で患者をいじめ殴りつけ、みんなから恐れれられている重宗と言う患者がいる。
    彼は通院患者の高校生を犯す。登校拒否の彼女は島崎さんと呼ばれ、陶芸教室に通っていてみんなに親しまれていた。
    そして殺人事件が起こった。

    精神の異常を抱え、追い詰められ、罪を犯した人たちが、病棟で暮らす日々を書いている。

    0
    2026年03月07日
  • 花散る里の病棟(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    九州で4代続く開業医の話、それぞれの時代ならではの医療は興味深く、引き込まれた。
    例えば大正時代、寄生虫、特に蛔虫が多く、虫下しを飲ませ出てくる虫の数を数える、初代は虫医者と呼ばれた。
    4代目は新型コロナの話、改めて当時の社会の騒動を思い返せた。

    0
    2026年03月05日
  • 閉鎖病棟

    Posted by ブクログ

    精神病院での殺人事件をテーマに精神病院の実態と精神病患者とは決してアブノーマルなひとばかりではない、普段は普通のこころの持ち主で、我々の側が色メガネでバイアスをもって見てしまっていることを教えてくれている。帚木蓬生はいつも温かな目で、この本も患者目線で、悪者であっても常に愛情をもった筆遣いに終始している。

    0
    2026年02月28日
  • 水神(下)

    Posted by ブクログ

    静かで深い感動。だが、磔の存在と、稀有な侍の切腹による救いなど、支配と被支配の関係の残酷さもありありと描かれる。

    解説を読んで、さらにそうした農民の暮らしと苦しさを、より深く感じる。
    為政者と民の関係。封建制から、民主主義に変わっても、その構図は変わっていない様な印象がある。

    権力が果たす役割→民が其々の利害で動くと大きな全体最適が得られないというところも描かれつつも、責任を取らない、権力により搾取をするという性質が権力側にはあるというところか。

    如何に権力を監視するのか、そして如何に権力を行使するのか。そんなことも改めて感じる機会となった。

    今日、本屋で見つけた、江戸時代からかんがえる民主主義という本も改めて読みたいと思った。

    ヒューマンドラマと、プロジェクトX的成功物語と、自然の美しさ自然との相克、仄かな恋と、上記のような政治と農民の塗炭の苦しみ。様々なテーマが味わえる、大河ドラマの様な小説でした。

    0
    2026年02月18日
  • 水神(上)

    Posted by ブクログ

    農家の苦労と、そこでの暮らし、人生が丁寧に描かれる。そして、その苦難の生活を改善するための灌漑事業が立ち上がる。
    その中で、進める人、反対する者、応援する者、付和雷同して暴れる者、お上との関係。様々なステークホルダーと関わりながら、如何に進めていくのか。
    事業を担当する者にとってのバイブルとなる。熱く、静かに、騒がず、耐えて進めていく。決して楽でもスカッとすることもないが、人と関わる大きな仕事を為すとは。

    下巻に続き、これからどうなるのか。

    0
    2026年02月18日
  • 臓器農場

    Posted by ブクログ

    閉鎖病棟を読んで気に入ったのでこちらも。

    同じ医療でも全く異なる内容。精神科医の先生がミステリーを書くとこうなるかのか…と登場人物の心情がよく伝わった。
    内容はとてもとても苦しくて何度も本を閉じては開いてを繰り返して読み終えた。1996年に書かれた内容とは思えない程現代にも通ずる課題が記されていた。


    個人的に小学生の頃、入退院を繰り返し看護師さんから暖かい励ましやお手紙を20年以上たった今でも持っているのだが、主人公が勤める小児科病棟での出来事を読むたびに思い出された。本当に看護師さんはじめ、医療従事者の方には感謝しきれません。

    0
    2026年02月17日
  • 閉鎖病棟

    Posted by ブクログ

    なかなか信用してもらえなかったり腫れ物として扱われたりと色々ある中でそれでも彼らの日常というものはたしかに存在している。
    彼らにも感情があるし彼らにも人生がある。
    そんなことを感じる内容でした。
    とても好きです。
    また読みます。

    0
    2026年02月06日
  • 老活の愉しみ 心と身体を100歳まで活躍させる

    Posted by ブクログ

    『老活の愉しみ』は、老後を「守り」に入って過ごすのではなく、動き、働き、関わり続けることこそが健康寿命を延ばすという一貫したメッセージを、医師としての知見と豊富な具体例で示した一冊である。著者の**帚木蓬生**は、超高齢化社会の現実として、医療費の増大や要介護・認知症の増加を冷静に見据えつつ、個人が取るべき実践的な指針を提示している。

    印象的なのは、「精神的不調は身を忙しくして直す」「脳も筋肉も使わなければ衰える」という考え方だ。ロコモティブシンドロームやサルコペニアへの対策としての運動、歯や咀嚼の重要性、睡眠や食事の基本を丁寧に積み重ねながら、最終的には人とのつながりと知的活動の継続が、認知症予防や生きがいの中核にあることが語られる。とりわけ「認知予備能」という概念は、多少の脳の変化があっても発症を食い止める力は、長年の学びや仕事、社会参加によって培われることを示し、本書全体の思想を象徴している。

    本書を読み終えて強く残る結論は明快だ。隠居して何もしない生活こそが最大のリスクであり、仕事や役割をできるだけ長く持ち続けることが、心身を若く保つ最良の老活であるということ。百歳時代を恐れるのではなく、自ら動き続ける主体として楽しむ——そのための現実的で力強い指南書だと感じた。

    0
    2026年02月03日
  • 水神(下)

    Posted by ブクログ

    工事が始まった。反対派の村々も公儀が決めたとあっては従うほかない。その上工事の費用は全部5庄屋が捻出すると決まっており、何かあった場合には5庄屋が命をかけるとまでいうのだ。庄屋の処刑台となる磔台も5つ設置された。

    筑後川には石を籠にいれて沈めて堰をつくり、川を掘削する。周囲の台地に水を二方向に巡らせ、田畑を潤す予定である。村々は活気づき、労務に励む人々が笑顔に包まれるようになった。2ヶ月の工期しかない。裏を返せばすぐに水の恵みを享受できるのだ。反対派の村々も村人たちが活気づくのを感じて、皆でお金を出し合い150両ものお金を5庄屋に届けてきた。わだかまりはなくなった。そこに、死人がでる。鰻を取ろうとして水流に飲み込まれたとのことだった。

    庄屋たちは処刑されるかもしれないと様子を見守る中、菊竹源三右衛門が腹を切る。それで犠牲は一人で済んだ。百姓のために腹を切る武家など聞いたこともない。
    無事に堰ができ、水路は新川と名づけられる。水が渡ってくる。音を聞いているだけでも爽やかでいつまでも時間がつぶれる。さあ、どこに何を植えようか。どこを新しい新田として耕そうか。

    0
    2026年01月24日
  • 水神(上)

    Posted by ブクログ

    久留米藩の台地は、筑後川のすぐ近くにありながら、台地であるがゆえに水が足りない。筑後川の水を人の手をかけて汲み上げなければ、田畑が灌漑しないのである。大水の時は比較的被害はなかったが、やはり雨の日以外汲み上げに人手を割かなければならないのはツラい。

    庄屋さんの助左衛門は、堰渠を作って台地に水を引く案を考え付き、同じ志をもつ庄屋を4件見つけた。藩にお許しをもらいたいと考えるが、反対派が横槍を入れてくる。逆に声がかからなかったけれど賛成派もいた。反対派が暴動のように助左衛門の家を襲ったりもしたが、水面下では藩による測量が開始された。

    0
    2026年01月24日
  • 守教(下)(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    慶長13年、家康は全国の外様にイエズス教徒取締りを命じる。慶長16年、毛利家でも修道士処刑、松浦唐津肥後でも弾圧開始。一方で上秋月や柳川に教会が建つ。
    慶長17年3月、切支丹禁教令。小倉中津博多甘木の教会閉鎖。天領で弾圧開始。慶長19年10月高山右近マニラ追放。

    元和7年、領主が替わり取締りが厳しくなる。
    寛永元年、中原ジュリアン神父来訪。各地での殉教の様子を語り、各地で弾圧による逃散も起こっている旨話す。
    寛永7年、信徒ではないという証文および血判提出。
    寛永8年、道蔵磔刑。
    一般人はあまり死なないけれど、ペドロ岐部神父や中浦ジュリアン神父など神職の人たちはほぼほぼ処刑されてしまう。
    寛文5年、宗旨人別帳。光琳寺住職、磔刑になった道蔵から信徒のみなをよくよく頼まれているから引き受けると。
    宝永5年、11歳以上の男女に絵踏み。その後水害や旱魃が起き、今村でも餓死者が出る。

    慶応3年、大浦天主堂が建ったとの噂あり、2年前に建っていたが、公儀の回し者ではないかと警戒して探りに行かせる。しかしまだ禁教令下にあった。7月に大浦四番崩れが起き、信徒3394名が遠流にあい、613名が殉教。
    今村にも公儀の手が入り、ロザリオやザビエルの絹布が焼かれてしまう。取調べが村人全員に行われたが、今更、村一つまるまる信徒ということでは責任問題になると無罪放免。
    明治6年、外圧により開教。
    明治14年。道蔵の墓の上に今村教会建立。

    静かな筆致で見事な作品でした。
    こうしてみると、よく耐えたなとか思うと同時に、何が信徒発見だという気がしてしまいます。

    0
    2026年01月05日