帚木蓬生のレビュー一覧
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解説を読んで、守田が作者の父だとわかり、上巻での疑問は吹っ飛んだ。だとすれば、作者は、父の顔も知らずに育つはずだった竜次。彼はその後、父から、何をどのように聞かされ、育ったのだろうか。全てを聞いたのではないだろう。だからこそ、作者は、小説という形で上梓しなければならなかったのではないか。父の語ったものの隙間を埋めていく作者の心中はいかばかりであっただろう。
結末は、やはり予想の範囲内ではあった。あの時期、逃げおおせた人や、逃げて捕まるのが遅かった人たちの多くが助かり、早々に捕まった人たちが生贄にされたのだ、という話はいくつか聞いていたから。逃亡期間が1年になったことで、確信は深まった。それ -
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とにかく難しいテーマだ、というのが第一の感想。戦後生まれの作者が何故、このテーマを選んだのか。そこにものすごく興味を惹かれた。
BC級戦犯といって取り上げられてきた人々は、例えば『私は貝になりたい』のように、上官命令で仕方なく現地人や捕虜を虐待・殺害したような人々が多い。その中で、「憲兵」という、訴追されても仕方ないんじゃないか、という諦めを覚えさせられる立場の人間を主人公に据えたのは何故か。この微妙な視点の置き所が、帚木蓬生という作家がいいと思う所以なのだと思う。
それでいて、ただひたすら、淡々と描く筆致も好きだ。余計な感情を挿まずに、ただ、そこにあった事象と語り手の心情だけに集中する -
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実のところ、国人が都に行くことになった辺りから、結末はほとんど予測できていた。下手をすれば、国人だって奈良登りにはたどり着けない。でも、国人が待ち望んでいた再会はなかった。それが、悲しい。たくさん、話したいことがあっただろうに。
都で、国人の感覚は、詩や歌を覚えることで、ずいぶんと華やいでいたと思う。人足たちの中でも、文字が読め、仏の意味も深く考えていた。すごく雅て見える。でも、奈良登りへ帰る道々、仲間を失っていく中で、どんどん荒々しいものになっていったように見える。そして、奈良登りの石仏の碑を彫りつけようとする国人の姿は、荒々しさそのもの。
これは、仏作りに関わって、聖なる者になってい -
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第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。
主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。
終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になって -
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第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。
主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。
終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になって -
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ドイツ物だからなぁ・・・manaの採点は甘い!だなんて思わないでくださいまし〜。本当に感動しました! 上・下巻に分かれているものの、あっという間に読むことができますよん。戦争中のドイツの残虐な行為についても書かれていますし、それに対抗しようとしていたアンダーグラウンド組織のこともでてきます。もう涙・涙ですよん。戦争の悲劇は人間を狂わせてしまうところですよね。日本国家を背負って駐在している主人公のヒューマニズムはだまってはいませんでした。しつこいですけど、満点をうなずいていただける作品だと思います。それにしてもこの剣道の防具、実存しているんですよ〜。フランスにあったらしいのですが、今は日本剣道協
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『ネガティブ・ケイパビリティ』を読み、「答えを急がないこと」の大切さについて深く考えさせられた。
現代はすぐに答えや解決を求めがちだが、本書では、あえて「わからないままにしておく力」が人にとって重要だと説かれている。特に、精神科医の役割としての「共感」や「寄り添い」は、問題を解決すること以上に価値があると感じた。
また、ポジティブ思考が常に良いわけではなく、無理に前向きになろうとすることで苦しくなることもあるという視点には強く共感した。ネガティブな感情を排除するのではなく、そのまま抱えることが必要な場面もあるのだと思う。
さらに、音楽や絵のように言葉にできない理解や、人生の終末期における -
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仙台の大学に在学中、机を並べた親友・黒田はアメリカへ留学するも、留学先で事故死したと知らされた佐伯
と思っていたら、パリで開かれた肝炎ウィルス国際会議にて見知らぬ老紳士から、黒田はフランスで自殺したと告げられる
黒田の死の謎に迫るサスペンスやミステリー、死のトリックどうこうというよりも
黒田の、細菌学者としての理想と苦悩を、良心の呵責を、人となりを、黒田の過去を辿り、時には踏み込まなくていいとこまで踏み込んじゃって後悔しながらも、佐伯はひとつひとつ知っていく
黒田の過去と、過去に裏打ちされた生き様とに触れ、一度は切れてしまった黒田との糸を手繰り寄せる
テーマがテーマだから、すごく専門的な用 -
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ネタバレ内容的にも物量的にも重い本だったけど、おもしろかった。
全体的に明るいよりは暗めな雰囲気の作品。
景色や心情描写は細かく綺麗で想像もしやすい。
新人看護師が勤め始めた病院で無脳症児を飼育して金儲けをする裏の動きに気づいてしまう。
親友とその病院の医師と謎を暴こうとするが2人は不審な死をとげ、主人公が解決に奔走する。
医療関係の知識は無いに等しいけど、無脳症の子供を「生」すらない、物体のように扱うのか、母のお腹に宿った時点で「生」が始まり人間として扱われるべきなのか、倫理観的には後者だけど間島看護婦の言うように前者と捉え他の患者の治療に役立てるのもそれもまた一つの理想なのかなと思ったり。
藤