帚木蓬生のレビュー一覧
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この手の医療倫理モノって今となっては多数存在するのだけれど、40年以上前に発表され、今もってまったく古さを感じさせないというのは凄い。そして、書いたのが帚木さんというところに、本の説得力がある。
センダイ・ヴァイラスを発見、研究していた黒田氏がアメリカにヘッドハンティングされ、そのままアメリカで亡くなったと聞かされていたにもかかわらずフランスに手がかりが……という国際色溢れる作品。さすが、医学は国境を越える。
純粋なサスペンスとして、黒田の”死”の真相や、登場人物の関係性が徐々に明らかになっていくのは面白い。本当に、古さを感じない作品。
あと、センダイウイルスが実在することにも驚いた。完全に創 -
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舞台は1900年のパリ。1900年のパリ、と聞いても歴史に弱い私はそれがどういう時期だったのか、すぐに分かりませんでした。確かフランス革命って18世紀末だよな。じゃあそれから100年後くらいか。ふむふむ、パリ万博。おっ、これはなんか聞いたことあるぞ。ドレフュス事件……? うっ、こっちもなんか聞いたことはあるけど……、ほうほう、こんな事件だったのか。と正直そのくらいの知識で読みはじめたのですが、著者の紡ぐ丁寧な描写のおかげもあって、気付けば、心は1900年のパリにいました。
日本の芸術品に強い興味を持つ精神科医のラゼーグを語り手に、謎めいた日本人女性である音奴との出会い、そしてラゼーグに会 -
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先日、たまたま新聞のコラムで帚木蓬生さんの本が紹介されているのを目にして、ちょっと興味が湧いたので読んでみることにしました。
パチンコはギャンブルだ、というのは以前から認識していましたし、パチンコ屋がより人をパチンコにハマるような仕掛けをしてきている、ということはある程度分かっているつもりでした。また、その他の公営ギャンブルも何故合法なのか不思議に思ってはいたのですが、それらの裏には巧妙な利権のシステムがあった、というのはちょっと意外、と言うか自分の物の見方が甘かったということを改めて認識させられました。
本書を読む限り、日本という国のギャンブル依存は治りそうもないという絶望しかありませんね。 -
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いずみさん推薦
ネガティブ・ケイパビリティ(negative capablity 負の能力もしくは陰性能力)とは、「どうにも好えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」のこと
・ネガティブ・ケイパリティという概念を発見したことがすごい
ネガティブ・ケイパリティという概念があることを知っておくとよい
・ネガティブ・ケイパリティはキーツによって生み出された概念。
しかし、それは手紙の中の一節だったので、長年知られざるままだった。
キーツ死後の170年後、同じ英国のビオンによって再発見された。
・脳はわかりたがる傾向にある
・後半は精神科医にネガティブ・ケイパリティ -
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## 書評:帚木蓬生著『襲来』―ネガティブ・ケイパビリティ)の視点から
帚木蓬生氏といえば、精神科医としての知見を背景に人間の内面に深く迫る作品で知られ、また『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』という著書を持つことでも知られています。この「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、「どうにも答えの出ない、対処しようのない事態に耐える能力」であり、「事実や理由を拙速に求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」を指します。それは何かを解決する能力ではなく、むしろ「そういうことをしない能力」とも表現されます。帚木氏は、この能力を知ってからご自身の人生や創作活動が随分楽になっ -
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子供にも大人にも”問題解決能力”が強く求められている中、解決策が無い困難な課題や状況に耐える力と寛容の必要性を示した本。
医療現場や創作活動など、答えや正解が存在しない分野ならではの考え方だと感じた。
他方、ビジネスにおいては「全ての課題は解決できるもの」と捉え、「解決できないのは組織や個人の能力の問題」と片付けてしまうことが多い。
解決が可能かどうかの明確な線引きはできないものの、性急な答え探しを止めてみると、見える景色が変わりそうだと思われる。
昨今、答えが存在するタイプの問題は、その多くをAIで解決できるようになってきた。
将来、人間に求められる能力において「答えのない問題に対処する -
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著者の専門である依存症の自助グループのミーティングについての特徴から、オープンダイアログの共通性に、著者が広めたネガティブケイパビリティと、その源流につながる話。おそらくすべてに通じた人でないと分かりにくい部分もある。「答えは質問の不幸である」といったブランショの言でビオンが「答えは質問を殺す」と言い、ネガティブケイパビリティの重要性を語ったが、本書の後半はブランショがその発想を得た「サン・ブノア通りの仲間たち」のデュラスの話が主となる。戦時中のレジスタンスから戦後のパリの知識人を生み出した中心にデュラスはおり、そこでの対話が豊かな発想を生んだ。デュラスは映画になった「愛人」で有名であるが、本