帚木蓬生のレビュー一覧

  • 逃亡(上)

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     とにかく難しいテーマだ、というのが第一の感想。戦後生まれの作者が何故、このテーマを選んだのか。そこにものすごく興味を惹かれた。
     BC級戦犯といって取り上げられてきた人々は、例えば『私は貝になりたい』のように、上官命令で仕方なく現地人や捕虜を虐待・殺害したような人々が多い。その中で、「憲兵」という、訴追されても仕方ないんじゃないか、という諦めを覚えさせられる立場の人間を主人公に据えたのは何故か。この微妙な視点の置き所が、帚木蓬生という作家がいいと思う所以なのだと思う。
     それでいて、ただひたすら、淡々と描く筆致も好きだ。余計な感情を挿まずに、ただ、そこにあった事象と語り手の心情だけに集中する

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    2009年10月04日
  • 国銅(下)

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     実のところ、国人が都に行くことになった辺りから、結末はほとんど予測できていた。下手をすれば、国人だって奈良登りにはたどり着けない。でも、国人が待ち望んでいた再会はなかった。それが、悲しい。たくさん、話したいことがあっただろうに。
     都で、国人の感覚は、詩や歌を覚えることで、ずいぶんと華やいでいたと思う。人足たちの中でも、文字が読め、仏の意味も深く考えていた。すごく雅て見える。でも、奈良登りへ帰る道々、仲間を失っていく中で、どんどん荒々しいものになっていったように見える。そして、奈良登りの石仏の碑を彫りつけようとする国人の姿は、荒々しさそのもの。
     これは、仏作りに関わって、聖なる者になってい

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    2009年10月04日
  • 国銅(上)

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     やっぱり帚木蓬生は面白い。固そうでそうでもなく、かと言って緩すぎず。文章に適度な重みがあっていい。
     広国が死んだ辺りまでは、国人が課役から逃げ出していく話になるのかなぁ、と思いながら読んでいたんだけど、段々に国人は仏の教えに染まっていって、なんだか複雑。ただ、彼が信じているのは、ある意味、治世に利用されている仏教ではなく、本当に日本に伝わってきた仏典の中の仏教で、そこには私自身も共鳴できるものが多いとも思った。今、私の身近にある、世俗化した仏教ではなくて、日本に入ってきたばかりの仏教。涼やかな感じがする。

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    2009年10月04日
  • 逃亡(上)

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    第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
    しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。

    主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
    そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。

    終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になって

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    2009年10月04日
  • 逃亡(下)

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    第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
    しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。

    主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
    そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。

    終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になって

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    2009年10月04日
  • 逃亡(上)

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    私の大好きな作家、ははきぎほうせい氏の(う〜漢字がどうしてもパソコンで打てない!)作品です。
    長編ですが、この方の人間味溢れる語り口には引き込まれてしまいます。 内容は、戦争中に憲兵をしていた主人公が戦犯として手配され、逃亡するというものです。 今まで、あまり戦犯について考えた事がなかったので、とても考えさせられました。 ぜひ皆さんも読んでみて!

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    2009年10月04日
  • アフリカの蹄

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    アパルトヘイト解放後もなお残る黒人差別をモチーフに描き上げられたサスペンス。フィクションとしてだけでなく、社会派小説としてもとても勉強になった。確かNHKで特番ドラマ(主人公は大沢たかお)になったはずなのだが、後編を見逃してしまった。再放送してくれないかなぁ。

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    2009年10月04日
  • ヒトラーの防具(上)

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    ドイツ物だからなぁ・・・manaの採点は甘い!だなんて思わないでくださいまし〜。本当に感動しました! 上・下巻に分かれているものの、あっという間に読むことができますよん。戦争中のドイツの残虐な行為についても書かれていますし、それに対抗しようとしていたアンダーグラウンド組織のこともでてきます。もう涙・涙ですよん。戦争の悲劇は人間を狂わせてしまうところですよね。日本国家を背負って駐在している主人公のヒューマニズムはだまってはいませんでした。しつこいですけど、満点をうなずいていただける作品だと思います。それにしてもこの剣道の防具、実存しているんですよ〜。フランスにあったらしいのですが、今は日本剣道協

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    2009年10月04日
  • 白い夏の墓標

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    謎解きは、早々とわかってしまった。それでも、そこに至る登場人物の描写が素晴らしい。読書中は、必要のない文脈のように感じたが、それがあってこその結末だった。
    医学の知識が皆無のわたしには、読み難い場所は多かった

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    2026年02月28日
  • ギャンブル脳(新潮新書)

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    臨床例を読むと身につまされる。偶々依存症になってないだけでドーパミン次第で容易に同じ体験をしてしまいそうな自分を感じる。大根おろしが大根に戻らないように大金で興奮して溶けた脳は元に戻らないのかもしれない。

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    2026年02月14日
  • 老活の愉しみ 心と身体を100歳まで活躍させる

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    スクワットで筋力維持、口腔衛生、口腔機能を大切に。酒はやめる。きちんと食べる、笑って笑って、沢山喋る。今からできることは沢山ある。

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    2026年02月12日
  • ヒトラーの防具(下)

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    本当にフィクション?!という感じ。ラストのヒトラーとのやり取りは緊張感があり、疾走感があり、ロマンがあった。とんでもない最期。ゲシュタポの忌々しさや空爆の恐ろしさ。シナゴーグ。どれもリアリティが有り、映像が目に浮かんでくるほど。作者の膨大な知識量にただただ感服である。

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    2026年02月03日
  • 白い夏の墓標

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    仙台の大学に在学中、机を並べた親友・黒田はアメリカへ留学するも、留学先で事故死したと知らされた佐伯
    と思っていたら、パリで開かれた肝炎ウィルス国際会議にて見知らぬ老紳士から、黒田はフランスで自殺したと告げられる
    黒田の死の謎に迫るサスペンスやミステリー、死のトリックどうこうというよりも

    黒田の、細菌学者としての理想と苦悩を、良心の呵責を、人となりを、黒田の過去を辿り、時には踏み込まなくていいとこまで踏み込んじゃって後悔しながらも、佐伯はひとつひとつ知っていく
    黒田の過去と、過去に裏打ちされた生き様とに触れ、一度は切れてしまった黒田との糸を手繰り寄せる

    テーマがテーマだから、すごく専門的な用

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    2026年02月02日
  • ヒトラーの防具(上)

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    本当にフィクションなのか?と思うくらいリアルに描かれている。ヒトラーの関心を受ける香田だったが、本人は違和感を感じていた。ゲシュタポの様子やアウシュビッツ行きの電車での惨状など、改めて心苦しくなる。本当にこんな時代があったのかと勉強になる。

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    2026年02月01日
  • 白い夏の墓標

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    ミステリ部分というよりは、倫理と科学の探求の間で揺らぐ青年の心情描写が印象的でした。
    手記の章が特に好きです。

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    2026年01月20日
  • 臓器農場

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    ネタバレ

    内容的にも物量的にも重い本だったけど、おもしろかった。
    全体的に明るいよりは暗めな雰囲気の作品。
    景色や心情描写は細かく綺麗で想像もしやすい。

    新人看護師が勤め始めた病院で無脳症児を飼育して金儲けをする裏の動きに気づいてしまう。
    親友とその病院の医師と謎を暴こうとするが2人は不審な死をとげ、主人公が解決に奔走する。

    医療関係の知識は無いに等しいけど、無脳症の子供を「生」すらない、物体のように扱うのか、母のお腹に宿った時点で「生」が始まり人間として扱われるべきなのか、倫理観的には後者だけど間島看護婦の言うように前者と捉え他の患者の治療に役立てるのもそれもまた一つの理想なのかなと思ったり。

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    2026年01月07日
  • 臓器農場

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    90年代の小説だがこれが一気に読ませる掘り出し物だった。難しそうなテーマだからと敬遠していたが、医療サスペンスとして一級品だが、それだけでなくヒューマンドラマとしても面白かった。
    命を扱う、という事は命に対して責任がある、という事である。
    そこにあるのは医療を金儲けの手段や道具としか考えていない人々への警鐘であり、命の重たさを伝える事でもある。
    この世に産まれ落ちた命はどんな形であれ生きるという宿命を負っている、本書にはそんな声が宿っている。

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    2026年01月02日
  • 白い夏の墓標

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    久々にのめり込んだ作品。
    細菌兵器に手を染めさせられた科学者の悲運な人生をなぞる、自分にとってある種盲点な、なじみのないテーマに強く惹きつけられる。
    本書で取り上げる科学の二面性は、昨今のAIに対しても同じ思いを抱かずにはいられない。

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    2025年12月28日
  • インターセックス

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    『エンブリオ』の続編。
    天才だがサイコパス的な岸川先生は、前作では圧倒的な存在感だった。
    しかし本書では秋野先生という才色兼備で患者に寄り添うスーパードクターの登場によって、岸川の異常な才能や性格がやや薄まった印象。
    秋野先生には岸川の罪を究明してほしい気もするし、してほしくない気もして、ドキドキして一気読みしてしまった。
    また、インターセックスの患者を取り巻く現状が描かれており、その点は非常に勉強になる。

    医療はマイノリティを排除する側面があるという考えにはなるほどと思わされたが、どんな状況でも人工中絶は悪だとする秋野先生の信念には、正直なところ全面的には共感できない。
    ラストでは秋野先生

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    2025年12月22日
  • 閉鎖病棟

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    つまらなすぎて途中で読むのをやめようかと思ったが、最後の方は涙が止まらず、読んどいてよかった。精神病院というとなんだか不気味なイメージがあるけど、人間なんだよ。そうなりたくてなった人達ではなく、生まれ持ったものや社会やそうさせたものなんだ。そして精神病院の中でもいろんな人間関係はあるのだなと改めて思う。
    島崎さんの原因を勝手に決めつけていた自分に大反省。そして法廷でのちゅうさんの言葉には心を打たれ、警察の都合のよさには怒り心頭。みんな仲良く助け合って生きていってほしいと切に願います。

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    2025年12月15日