帚木蓬生のレビュー一覧
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患者のためなら何をしても正義なのか。
上巻では、岸川先生は倫理的な問題を抱えつつも患者思いの名医という印象が強かった。
だが下巻に入ると、そのイメージは一変する。続きが気になって読む手が止まらなかった。
表向きは人格者で、誰もが惚れ込むほどの医療を提供する天才。
しかし裏では、自分にとって都合の悪い人間に対して冷酷で、罪悪感というものがまるでない。
全ては自分が正しいという確信のもとに行動しており、その姿はかなりのサイコパスだと思う。
善と悪が混在している人物だが、もし自分が患者の立場だったなら、きっと彼のことを神様みたいに感じてしまうのだろうなあと思った。 -
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不妊治療や流産・死産の経験がある人には、読むのが辛いかもしれない。
ショッキングな描写もあるが、残酷さを強調するのではなく淡々と書かれていて、その発想に驚かされる。
いくつかの症例が登場する中で、とりわけ印象に残るのは、亡くなった女性の卵子を人工授精させ、男性の腹部へ移植するというケース。
倫理的には完全にアウトで、世間から強く批判される類の治療だが、それでも医師の姿勢には揺さぶられるものがある。
患者に寄り添い、未来の医療を見据えるその信念を前にすると、本当に「なぜいけないのか」「倫理とは何か」と考えさせられる内容だった。
下巻の展開が楽しみ。 -
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今この概念を知れたことは恐らく私の財産になるだろうと思った。
箒木さんご本人の専攻(?)もあると思うけど、源氏物語のくだりが長かったのはちょっとこたえた、、笑
ただ言語や宗教が違えどヒューマニティというのが根本的にあるもので、それを根拠よく育てて行くことの大切さはよく理解できた。
現代社会において「ネガティブ・ケイパビリティ」という力を育てるのは、これからを生き抜く私たちには本当に大切なことだと感じている。
ネガティブケイパビリティという概念を知ったことで、何かあった時に焦ったり取り乱したりせず、一呼吸の余裕が生まれるんだろうと思う。
それだけでもこの本を読んでよかったと思うし、たとえ -
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この手の医療倫理モノって今となっては多数存在するのだけれど、40年以上前に発表され、今もってまったく古さを感じさせないというのは凄い。そして、書いたのが帚木さんというところに、本の説得力がある。
センダイ・ヴァイラスを発見、研究していた黒田氏がアメリカにヘッドハンティングされ、そのままアメリカで亡くなったと聞かされていたにもかかわらずフランスに手がかりが……という国際色溢れる作品。さすが、医学は国境を越える。
純粋なサスペンスとして、黒田の”死”の真相や、登場人物の関係性が徐々に明らかになっていくのは面白い。本当に、古さを感じない作品。
あと、センダイウイルスが実在することにも驚いた。完全に創 -
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舞台は1900年のパリ。1900年のパリ、と聞いても歴史に弱い私はそれがどういう時期だったのか、すぐに分かりませんでした。確かフランス革命って18世紀末だよな。じゃあそれから100年後くらいか。ふむふむ、パリ万博。おっ、これはなんか聞いたことあるぞ。ドレフュス事件……? うっ、こっちもなんか聞いたことはあるけど……、ほうほう、こんな事件だったのか。と正直そのくらいの知識で読みはじめたのですが、著者の紡ぐ丁寧な描写のおかげもあって、気付けば、心は1900年のパリにいました。
日本の芸術品に強い興味を持つ精神科医のラゼーグを語り手に、謎めいた日本人女性である音奴との出会い、そしてラゼーグに会 -
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先日、たまたま新聞のコラムで帚木蓬生さんの本が紹介されているのを目にして、ちょっと興味が湧いたので読んでみることにしました。
パチンコはギャンブルだ、というのは以前から認識していましたし、パチンコ屋がより人をパチンコにハマるような仕掛けをしてきている、ということはある程度分かっているつもりでした。また、その他の公営ギャンブルも何故合法なのか不思議に思ってはいたのですが、それらの裏には巧妙な利権のシステムがあった、というのはちょっと意外、と言うか自分の物の見方が甘かったということを改めて認識させられました。
本書を読む限り、日本という国のギャンブル依存は治りそうもないという絶望しかありませんね。 -
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いずみさん推薦
ネガティブ・ケイパビリティ(negative capablity 負の能力もしくは陰性能力)とは、「どうにも好えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」のこと
・ネガティブ・ケイパリティという概念を発見したことがすごい
ネガティブ・ケイパリティという概念があることを知っておくとよい
・ネガティブ・ケイパリティはキーツによって生み出された概念。
しかし、それは手紙の中の一節だったので、長年知られざるままだった。
キーツ死後の170年後、同じ英国のビオンによって再発見された。
・脳はわかりたがる傾向にある
・後半は精神科医にネガティブ・ケイパリティ -
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帚木蓬生は、精神科医としての知見を背景に人間の内面に深く迫る作品で知られ、また『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』という著書を持つ。
この「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、「どうにも答えの出ない、対処しようのない事態に耐える能力」であり、「事実や理由を拙速に求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」を指します。それは何かを解決する能力ではなく、むしろ「そういうことをしない能力」とも表現されます。帚木氏は、この能力を知ってからご自身の人生や創作活動が随分楽になったと述べています。
この「ネガティブ・ケイパビリティ」という視点から、『襲来』を読むと、作品の持つも -
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子供にも大人にも”問題解決能力”が強く求められている中、解決策が無い困難な課題や状況に耐える力と寛容の必要性を示した本。
医療現場や創作活動など、答えや正解が存在しない分野ならではの考え方だと感じた。
他方、ビジネスにおいては「全ての課題は解決できるもの」と捉え、「解決できないのは組織や個人の能力の問題」と片付けてしまうことが多い。
解決が可能かどうかの明確な線引きはできないものの、性急な答え探しを止めてみると、見える景色が変わりそうだと思われる。
昨今、答えが存在するタイプの問題は、その多くをAIで解決できるようになってきた。
将来、人間に求められる能力において「答えのない問題に対処する