帚木蓬生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【目次】
はじめに――ネガティブ・ケイパビリティとの出会い
精神医学の限界/心揺さぶられた論文/ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティ
第一章 キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」への旅
キーツはどこで死んだのか/燃えるような愛の手紙/キーツの短い生涯/文学と医師への道/経済的困窮の中で「受身的能力」へ/シェイクスピアを再読しながら詩作/初恋とともに詩作/療養のためにローマへ
第二章 精神科医ビオンの再発見
精神分析におけるネガティブ・ケイパビリティの重要性/ビオンの生涯/第一次世界大戦の戦列へ/精神分析医になる決意/ベケットの治療から発見したこと/第二次世界大戦 -
Posted by ブクログ
このところオンラインカジノが大きな話題となり、その利用者は国内337万人に推計されると報道されました。
私自身、一番くじや宝くじは時々楽しみますが、オンラインカジノの広告なんて目にしたことはありません。損するとわかっているのに、なぜ手を出してしまうのか?
そんなことを考えていた矢先に書店で本書を見つけ、興味深く読みました。
幸いといっていいでしょうが、私の周りに「ギャンブル脳」はいません。
ですので、本書で赤裸々に語られる患者とその家族の地獄の様相には言葉も出ませんでした。
特に、ギャンブルをやめられない息子に悩む母親から「『ギャンブルをやめて』と遺書を書いて私が首を吊ったらやめてくれますか -
Posted by ブクログ
「どうにも答えが出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」
「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」
本文の中で書かれているネガティブ・ケイパビリティの定義は前述の通り。
詩人・キーツが兄弟への手紙に書いた「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を、精神分析医・ビオンが取り上げ、「記憶も欲望も理解も捨てて、初めて行き着ける」と言ったそうだ。
キーツが述べた「ネガティブ・ケイパビリティ」は、シェイクスピアの作品の根底にあるものとして捉えられた。
シェイクスピアの作新は、この世界にある複雑なものを、複雑なまま取り上げて組み立てている。
ものごと -
Posted by ブクログ
須貝らによって発見されたレイモン・マルティの手稿が圧巻だった
〜生きた人が焼かれるのを見たからだ
焼かれる人の祈りを聞いたからだ
煙として立ち昇る人の匂いをかいだからだ
灰の上をかすめる風の温もりを感じたからだ〜
神を仰ぎ、慎ましく、嘘をつかず静かに暮らしてきた人びとがなぜ聖職者により、残酷な火刑に処されることになったのか?
宗教や信仰が悪いわけではない…
カタリ派の一掃はフランス王にとっては南仏への領土拡大、教皇にとっては異端排除…
それぞれの思惑が一致したのだ
結局は人間の欲だ…
深く心に残る作品になった
須貝とクリスチーヌの❤はやはりお約束だったが…(笑)
-
Posted by ブクログ
吉川英治文学新人賞
最近、日本の植民地支配はいいことしかなかった、大東亜共栄圏はアジアの人たちを欧米列強の支配から解放してあげたから感謝された。などなど真顔で言う人の話を聞いたが、その人に読んでもらいたい。でも、全部作り話だと言うだろうけど。
いくら戦争中とはいえ、人間とは思えない鬼畜のような日本人、そして日本人に取り入り、同胞をいたぶる朝鮮人に怒りを覚えるが、その中でもまともな日本人もいるのを知って少し安心した。しかし、戦後も、戦中にこのような悪行を働いていたにもかかわらず、何食わぬ顔で成功していた人物も多いんだろう。
次が気になり、速攻で読み終えたけど、最後が納得できない終わり方だった -
Posted by ブクログ
1995年第8回山本周五郎賞受賞作
帚木氏は、小説家で精神科医でもあります
精神病院の施錠を必要とする病棟
その中で今を生きる患者達を淡々と描きます
患者達それぞれに過去があり、家族と過ごしたこともある
そこから切り離された日常を寄り添いながら生きている彼らにも 感情があり希望がある
病院の内側から語られていきます
山本周五郎の「季節のない街」を 思い出しながら読みました
語り口、社会から取り残されたような世界観
山本周五郎賞に相応しい作品でした
しかーし、面白く読み切れるかというとちょっと辛いんですね
患者の群像劇(正しいわからないけど)で、
それぞれの病気と性格を把握していくのが
ち -
Posted by ブクログ
ネタバレ三人のショートストーリーから始まり、これ短編集?その割には尻切れみたいな終わり方だなぁと思っていたら、突然本章となり、一つの病棟の朝の描写から始まった。すでに異常な行動が書きだされ、ああ、閉鎖病棟=精神病院(旧)の話だと理解する。
それぞれに様々な症状の患者がおり、その中でも日常生活をまともに過ごす何人かが中心となり、しかしそのまともな人もまともじゃなかった過去がある。今ではだいぶんとケアの仕方も変わっているんだろうけど、当時はまさにこの小説の世界そのものだった。一人一人を丁寧に描かれており、読んでいくうちに誰もが愛おしく感じられるが、後半に入ると息も詰まるような事件が発生し、ああ、冒頭の話が