帚木蓬生のレビュー一覧

  • 国銅(下)

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    ネタバレ

    下巻。
    都での出世を断ち自らの仏を彫ることに打ち込んだ師匠様と、世俗と出世におぼれた師匠の友人との対比が、著者の強いメッセージ。

    主人公は、兄、友人、恋人、師匠様を亡くすも、また黙々と人足の仕事に打ち込むことを決意する。「己の仏を創る」ことを目指す。
    古い時代の人間を描いた話であるのに、現代にも通じるメッセージ性が印象的だ。

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    2013年09月30日
  • 国銅(上)

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    奈良の大仏を製作する為の、人足(力仕事をする作業員)の物語。
    時代も環境、身分、境遇は違えども、現代の自分達と変わらぬ「人の感情」がそこにはある。いや、むしろ常に生死を意識しながら、己の体を目一杯に使う毎日だからこそ現代以上の強い「感情」がある。

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    2013年09月30日
  • 安楽病棟

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    痴呆病棟を舞台にしたミステリーという括りだが、ミステリー要素はオマケ。新米看護師の目から見た痴呆病棟の叙述は密着ドキュメンタリーを観ているように細部まで描写されている。(身近に痴呆の人を見たことがない方は信じないだろうけど、かなりリアル)新米看護師の患者や家族との関わり方は慈愛に満ち、病棟で起きるハプニングもユーモラスにも思える。終末期の人間に関わるすべての人に対して粛々と問題提起する本。読んだ人は、家族なら、自分ならどうする?と考えずにいられなくなるはず。興味がある人は是非読むべき。

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    2013年09月08日
  • アフリカの瞳

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    どこまでが真実でどこまでがフィクションなのかわからないが、医者としての叫びのような作品。
    インフラや食糧や衣料のやみくもの援助すらも生活を破壊していく。10人に1人がHIVに感染している国。民主化後も貧しい人々は正しい知識も知らされず、満足な治療は受けられず、欧米の製薬会社による新薬開発の人体実験場と化していた。エイズを通してアフリカのかかえる様々な問題が書かれている。
    「アフリカの蹄」という作品が前篇として対になっているらしいが、これだけでも十分な完結したメッセージ小説となっている。

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    2013年09月08日
  • 国銅(上)

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    美しい景色と銅山での課役。そして奈良の大仏建立への挑戦。一人の人足の目線で語られる一大スペクタル歴史小説。天平の時代の彩る情景を思い浮かべる事が出来る美しい表現力。神の領域か。後半は味わって読もう♪

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    2013年08月25日
  • インターセックス

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    ネタバレ

    本の背表紙のあらすじでは「~やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気付き…」とがっつりサスペンス感があるけど、その話はたまーにチラチラ最後にポッと出てくるだけでほとんどがインターセックスやその当事者の事、主人公の考えなど。
    インターセックスに興味があったので興味深い事だらけでよかった
    インターセックスに全く興味が無く、サスペンスを期待して読むとキツイかも
    むしろサスペンス要素は無しで、インターセックスや性差医療、男とか女とかじゃなくて人間として…的な内容だけで十分だったかも

    たまに難しそうな医学的用語や描写があるけどとても読みやすかったので、サスペンスは期待せず、インターセックスを知

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    2013年07月18日
  • 三たびの海峡

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    エンディングがどうなんだろう?
    折角積み上げてきたものが全て台無しになってしまう位の設定選択、惜しいなぁ。でもこの本は一読に値すると思う。
    日本人の歴史に対する対峙の態度はどう贔屓目に見ても浅薄と言わざるを得ないと感じるが、こういった書物等から目を開いていくしかないでしょう。
    自戒の念も込めてそう思いますな。

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    2013年06月06日
  • 三たびの海峡

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    第二次大戦中に朝鮮から日本へ強制連行された一人の男の人生を描く作品。
    戦時中の日本が何をしてきたのか、私は恥ずかしいけれど何となくしか知らない。
    そんな人が日本でも、きっと沢山いると思う。
    戦争を、朝鮮の人々の立場から捕らえた作品を読んだのは初めてだったので勉強になったし、日本と朝鮮に限らず、人が人を支配しようとすることの醜さを改めて強く感じた。

    ただこの主人公の最後の行為(実際に行われたかは不明だが)の描写が、
    引き込まれて読んできた最後に、少し唐突に感じるような、違和感を覚えた。

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    2013年05月24日
  • 空の色紙

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    自分が知らない時代の話。戦後や学生運動を舞台に生きた人たちを読むことは、いまを生きる者として損な事ではないだろう。

    著者のデビュー作ということで、メディカルサスペンスではないけれど、その時代の無情は感じれた気がする。

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    2013年05月06日
  • エンブリオ 下

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    ネタバレ

    彼が積み上げてきた研究に危機が訪れる
    米国からのスパイ、裏切り者
    愛していた恋人までも裏切られ・・・
    そしてすべての邪魔がやみに葬られた
    エンブリオとともに・・・・

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    2013年04月27日
  • エンブリオ 上

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    ネタバレ

    中絶した胎児を保存
    死体から子宮を摘出して卵子を凍結、そして妊娠
    男性の妊娠、胎児の脳を摘出して手術に使われる・・・・
    夢のような話が書かれているのだけど
    実際に近いうちに行われるのではないかと考えさせられる
    倫理的にそれは悪なのか善なのかわからないが
    研究を追及し続ける主人公の危うさ感じられ目が離せない

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    2013年04月26日
  • エンブリオ 下

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     倫理を超えながらも、探究心、さらには冒険心で生殖医療に望む岸川。そのデーター、技術に巨額な金が動くことを見越しながらも、患者の要求に応えてこその医療といゆう信条が、この岸川医師を一刀両断に裁ききれないモヤモヤ感がある。
     患者にとっての最高の医者。その社会評価と背中合わせに感じるこのエグさはなんなんだろう。脳が未成熟で何ら判断の持たないエンブリオならば如何様にも手を下しても、堕胎してもかまわない、社会に未認知の空白の時間。人類のすべての子供が恵まれた環境で歓迎された状態で生まれてきてはいない事実はわかっていても、この空白時間にまで手をだすことは、やはり許されないと思う。
     医療がますますビジ

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    2013年03月17日
  • アフリカの蹄

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    白人の人種差別から来る陰謀としてのパンデミック、というなんともおぞましいスケールの大きいテーマの割にドキドキハラハラ、といった切迫感よりは黒人側につく主人公の静かな怒りが物語全体に低通している感じがした。

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    2013年03月03日
  • エンブリオ 上

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     小説でなければ書けなかった医療現場の飽くなき探究心、生命誕生にどこまで人為的な行動が許されるか?そして日本の医療の法的規制のない事実。倫理とか常識とかいった心情に訴えるだけで、現実として未出生になる胎児は、年間出生胎児とほぼ同数か倍数に百万から二十万という事実。特に医学・医療が延命に対して先端医療が認められるのならば、生命誕生にはどうななのか?という課題を衝き付ける13章は読ませる。
     山中教授のノーベル賞受賞報道の頃に本書の紹介文があり知りました。子孫を残していくという本能に近い部分と、それが叶わなかった人にも機会を、ここではips細胞発見まえだったので、血縁ある胎児細胞を移植に利用すると

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    2013年03月03日
  • アフリカの蹄

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    この国がどうして〈アフリカの蹄〉と言うのか教えてやろうか。白人が我々黒人を蹄で蹴散らし、踏みにじっている場所だからだー。
    アパルトヘイト政策のもと、人種差別が激烈であった南アフリカ共和国が舞台のモデルとなっている。

    根絶したはずの天然痘が、爆発的な勢いで黒人の子供達に蔓延した。白人の子供達には被害は無く、黒人の子供達だけが毎日多く命を落とす。この不可解な出来事と相重なって衛生局は病人を隔離し、病の拡散を防ぐことを謳い黒人達を黒人居住区へ追いやる。この国の白人は、古くからこの地で暮らしていた黒人を排斥して白人だけの国家を築くことを強く願っていた。一連の出来事は何者かの陰謀なのか?
    心臓外科を学

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    2013年02月04日
  • 水神(下)

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    さすがに感動させる文章。「名もなき英雄」の描き方がうまく、実話をもとにした作品だけにおもしろい。文章にくどさがなく、テンポがよく、それでいて起伏があってよい。複雑な伏線をはりめぐらす作品ではないだけに、ストレートなよさがある。

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    2013年01月09日
  • アフリカの蹄

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    新年一冊目は、チョット真面目なお話。ずっと気になっていた帚木蓬生さん。心臓移植を学ぶ為にアフリカに留学した若い日本人医師。そこで黒人差別の酷さを目の当たりにする。白人が黒人社会を排除する為に絶滅した天然痘ウィルスをばらまき、黒人の子供達の間に天然痘が一気に流行する。なんとかして助けてやりたいと、若き日本人医師が自分の命の危険を犯してまでも白人社会と闘う。教科書では知る事の出来ないアパルトヘイトについて書いてあって、どうしてこんな差別が起きたのか哀しくなった。最後は、日本人医師の人種を越えた勇気にただただ感動。

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    2013年01月05日
  • 千日紅の恋人

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    「千日紅」という文字に惹かれて手に取った一冊。
    九州を舞台に、バツ2で40歳間近の時子の日常生活を中心としたお話。

    ホームヘルパーとして、父の形見であるアパート「扇荘」の管理人として毎日を送っていますが、仕事を仕事と割り切らず、所々に感じる彼女の人の良さがとても自然で素敵でした。

    扇荘に一人の青年・有馬が現れたことから、少しずつ時子の生活が華やいでいきますが、終始ゆったりとした話です。
    鵜飼いや棚田など、田舎の描写が綺麗で、目に浮かぶようでした。
    ベトナムのサイゴンへも行ってみたくなりました。

    始めは途中で飽きてしまうかもと思ったけれど、たまにはこんな大人の恋愛も良いなぁと思える作品でし

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    2013年01月05日
  • ヒトラーの防具(下)

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    東西の壁が崩壊したベルリンで、「贈ヒトラー閣下」と書かれた剣道の防具が発見された事実から描かれた作品。
    ナチス政権下のベルリンに武官補佐官として派遣された日独混血の青年将校の苦悩と数奇な運命。回復の見込みのない精神病者の処分、ユダヤ人弾圧、ヒトラー・ナチスの外交戦略に惑わされる日本軍部の定見のなさが冷静な日本青年の目を通して描かれる。ナチスを通して更にその上を行く無定見な日本をも描いている。
    結末は少しどうかなとも思ったが、全体としてはすばらしい作品。
    視点としては戦争末期、朝鮮人の九州炭鉱への強制連行を朝鮮人の視点で描いた「三たびの海峡」と同じ目線。
    作者が精神科医として、精神病院の入院患者

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    2012年12月18日
  • エンブリオ 上

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    SF(実際現実がどこまで行ってるか知らんけど)映画なとこと小説らしい書き方流れ(お約束的な)。おもしろいし安定感(引き込まれる)だけど物足りないような(下巻の展開に期待)。とともに下巻しだい。

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    2012年11月08日