帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本の背表紙のあらすじでは「~やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気付き…」とがっつりサスペンス感があるけど、その話はたまーにチラチラ最後にポッと出てくるだけでほとんどがインターセックスやその当事者の事、主人公の考えなど。
インターセックスに興味があったので興味深い事だらけでよかった
インターセックスに全く興味が無く、サスペンスを期待して読むとキツイかも
むしろサスペンス要素は無しで、インターセックスや性差医療、男とか女とかじゃなくて人間として…的な内容だけで十分だったかも
たまに難しそうな医学的用語や描写があるけどとても読みやすかったので、サスペンスは期待せず、インターセックスを知 -
Posted by ブクログ
倫理を超えながらも、探究心、さらには冒険心で生殖医療に望む岸川。そのデーター、技術に巨額な金が動くことを見越しながらも、患者の要求に応えてこその医療といゆう信条が、この岸川医師を一刀両断に裁ききれないモヤモヤ感がある。
患者にとっての最高の医者。その社会評価と背中合わせに感じるこのエグさはなんなんだろう。脳が未成熟で何ら判断の持たないエンブリオならば如何様にも手を下しても、堕胎してもかまわない、社会に未認知の空白の時間。人類のすべての子供が恵まれた環境で歓迎された状態で生まれてきてはいない事実はわかっていても、この空白時間にまで手をだすことは、やはり許されないと思う。
医療がますますビジ -
Posted by ブクログ
小説でなければ書けなかった医療現場の飽くなき探究心、生命誕生にどこまで人為的な行動が許されるか?そして日本の医療の法的規制のない事実。倫理とか常識とかいった心情に訴えるだけで、現実として未出生になる胎児は、年間出生胎児とほぼ同数か倍数に百万から二十万という事実。特に医学・医療が延命に対して先端医療が認められるのならば、生命誕生にはどうななのか?という課題を衝き付ける13章は読ませる。
山中教授のノーベル賞受賞報道の頃に本書の紹介文があり知りました。子孫を残していくという本能に近い部分と、それが叶わなかった人にも機会を、ここではips細胞発見まえだったので、血縁ある胎児細胞を移植に利用すると -
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この国がどうして〈アフリカの蹄〉と言うのか教えてやろうか。白人が我々黒人を蹄で蹴散らし、踏みにじっている場所だからだー。
アパルトヘイト政策のもと、人種差別が激烈であった南アフリカ共和国が舞台のモデルとなっている。
根絶したはずの天然痘が、爆発的な勢いで黒人の子供達に蔓延した。白人の子供達には被害は無く、黒人の子供達だけが毎日多く命を落とす。この不可解な出来事と相重なって衛生局は病人を隔離し、病の拡散を防ぐことを謳い黒人達を黒人居住区へ追いやる。この国の白人は、古くからこの地で暮らしていた黒人を排斥して白人だけの国家を築くことを強く願っていた。一連の出来事は何者かの陰謀なのか?
心臓外科を学 -
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「千日紅」という文字に惹かれて手に取った一冊。
九州を舞台に、バツ2で40歳間近の時子の日常生活を中心としたお話。
ホームヘルパーとして、父の形見であるアパート「扇荘」の管理人として毎日を送っていますが、仕事を仕事と割り切らず、所々に感じる彼女の人の良さがとても自然で素敵でした。
扇荘に一人の青年・有馬が現れたことから、少しずつ時子の生活が華やいでいきますが、終始ゆったりとした話です。
鵜飼いや棚田など、田舎の描写が綺麗で、目に浮かぶようでした。
ベトナムのサイゴンへも行ってみたくなりました。
始めは途中で飽きてしまうかもと思ったけれど、たまにはこんな大人の恋愛も良いなぁと思える作品でし -
Posted by ブクログ
東西の壁が崩壊したベルリンで、「贈ヒトラー閣下」と書かれた剣道の防具が発見された事実から描かれた作品。
ナチス政権下のベルリンに武官補佐官として派遣された日独混血の青年将校の苦悩と数奇な運命。回復の見込みのない精神病者の処分、ユダヤ人弾圧、ヒトラー・ナチスの外交戦略に惑わされる日本軍部の定見のなさが冷静な日本青年の目を通して描かれる。ナチスを通して更にその上を行く無定見な日本をも描いている。
結末は少しどうかなとも思ったが、全体としてはすばらしい作品。
視点としては戦争末期、朝鮮人の九州炭鉱への強制連行を朝鮮人の視点で描いた「三たびの海峡」と同じ目線。
作者が精神科医として、精神病院の入院患者