帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
下巻に入ると、モナコ学会での成功に目をつけたアメリカの企業からの魔の手が伸びてくるなどして事件が多発。テンポもあがって一気読みです。主人公・岸川院長の考えは全くぶれず、基本的に「患者のため」「患者の要望を叶える」。その姿勢は正しいが、「患者のため」を理由に何をしてもいいのかというと、当然そんなことはない。岸川院長の評価が難しいのは、通常の小説やドラマなら、悪役の医者は自分の利権(主にお金、名誉)を追い求めるので分かりやすいのだが、岸川院長は単純な利権にしがみついているわけではないところだ。上巻からずっと主人公視点で書かれているのでずっと読んでいると、正しいことをしているような感覚になる。やはり
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Posted by ブクログ
天才医師といえば外科医のイメージが強いが、この本の主人公・産婦人科医の岸川はまさに天才。天才ゆえの倫理を無視した医療の研究と実践の数々が、難しいことなのに分かりやすく描かれており、圧倒的に引き込まれる。岸川視点でひとつひとつの行動・言動についての経緯や考えがものすごく丁寧に書かれているおかげだと思う。上巻ではまだ大きな事件とか事故は起こっていないので、小説としての盛り上がりはないが、今後の展開に期待せずにはいられない。人工受精〜エンブリオ産業・・・人間にとって何が正しくてどう進むべきなのか? ある程度自分の考えをもちながら下巻も読み進めていきたいと思う。
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Posted by ブクログ
憲兵という主役には取り上げられない仕事についていた人間を主人公にした物語。
長い話だが、そもそも対象となっている期間が昭和45年から47,8年ということと、適度に現在と過去がフラッシュバックする
構成もあって、飽きることなく読み進められる。
主人公は戦時における憲兵という仕事柄、非道なことにもかかわるが、実はそれを思い悩むことはあまりない。
そこらへん作者が医者であるということもあるのだろう。作中にも出てくる事件で、遠藤周作は、主人公が悩んで悩んで悩みまくっちゃうという
「海と毒薬」という傑作を書いているのが、本作はそこまでの高みに達していないというか、そもそもそれを目的にしていない。
いずれ -
Posted by ブクログ
倫理観、善悪、良心。
判断の基準はとても曖昧で、恣意的だ。
誰の立場で考えるかでも、判断は180度変わってしまう。
とりあげるのは臓器移植。
日本では、脳死の子どもの臓器移植は認められていない。法律で。
脳死判定の基準ができて、脳死と判定されれば臓器移植のドナーとなることが認められた。法律で。
じゃあ、無脳症児からの移植は?
移植でしか助かる道のない子どもを助ける方法がある。
脳死者からの臓器提供。
無脳症児からの臓器提供。
法律で認められている前者はセーフで、後者はアウト。
その線引きの恣意的さ。
ドナー側、患者側、どちらの立場で見るかによって、風景はころっと変わってしまう。
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Posted by ブクログ
帚木さんっぽい作品。
いま医療の様々な場面で取り上げられる難しい問題である、生命倫理。
このことについて、色々考えさせられた。
決して彼(主人公)の考え方が正しいと言うわけではないけれど、妙に納得させられたり。。。
『反倫理とは反自然に他ならなく、自然でない行為が、倫理的でないと難詰される。
では医学・医療とはなんなのか。
人の死・病を回避する術だとすれば、それは反自然的行為であり、従って反倫理行為となってしまう。』
医療に携わる者として1番心に残った場面。
これから先色んな生命倫理の問題に直面するのだろう。
そんな時、今はまだ自分の倫理観は確立していないけど、確実に影響を受ける1冊 -
Posted by ブクログ
もし、全て医療とは自然の摂理に反する行為だと割り切ってしまうのであれば、そこに限界など存在しないことになる。
しかし、仮に医療とは自然の摂理に反するものではないというのであれば、その根拠と限界を示さなければならない。それは非常に困難な作業だろう。ただ、その困難さを乗り越えないかぎり、最先端医学の暴走を止めることはできない。
「暴走」と決めつけること自体、ひとつのとらわれた思考ではある。ただ、暴走でないと言い切る勇気は自分にはない。
結論は見えない。考え続けることしか、今はできない。
現代の最先端医療を舞台にした『ペスト』といったところか。
最後のシーンは、作者のただものではない部分を思い知