帚木蓬生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
イギリスの詩人ジョン・キーツが、弟に当てた手紙の中で示した概念らしい(その手紙の文面自体は見当たらない)。「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」(p.3)
精神科医でもある著者のもとにやってくる患者への接し方や、“プラセボ効果”や、シェイクスピアや源氏物語や、現代の教育現場(不登校など)や世界政治(難民の受入れや、トランプ政権の不寛容さ)へと話を展開する。自ら決定し、解決し、正解を導き出す能力・姿勢を訓練・試験され続けるのが現代社会だけれども、逆に「問題を問題として認識しつつ、解決を急がない」という能力・姿勢が、新しい発見や、問題の解消に役立つことも -
Posted by ブクログ
ネタバレ生命倫理を考えさせられる作品でした。
胎児を意図的に堕胎させ、その臓器を使って不妊治療や難病治療を行う行為は、感覚的にも倫理的にも許される行為ではないものの、一本でそれが本当に困難な病気を治療するのに役立つのだとすれば全く否定もできないのではないか。
岸川には自分の技術や限界を押し広げようという研究者としての野心を持ちながらも、利益目的ではなく、困っている患者を本当に助けたいと考えている点も、彼の行為を正当化しないまでも間違っているとはいえないのではないかという気にさせます。
作品としては面白かったのですが、登場人物のセリフ回しがなんとなく古臭く感じられる点と、岸川の性行為のシーンが少しくど -
Posted by ブクログ
お勧めされてこちらの本を。
閉鎖病棟の中で事件が起こってそれを解決するようなミステリー小説だと思って読みはじめたが、全く異なるストーリーだった。
まず閉鎖病棟の中だけでずっと物語が進むのではなく、かなり頻繁に外に出かけることがある。それに驚いたと同時に、重い精神的な病を持つ人は治りづらく、病院の中にずっといるものだ、という自分の中の固定概念というか偏見というかに気が付かされた。
浅くもなく深くもなく、会社の同僚とも家族とも違う関係で、でも互いに想い合う日々の暮らしの話。
病気の症状を思わせる描写がいろいろ出てくるのだけど、主人公視点が統合失調症の患者なので、こちらも医者の言葉の方が間違っている -
Posted by ブクログ
【353冊目】答えの出ない事態に耐える力のことを言うようです。
本書の中では色んな事例を出して説明してくださるのですが、私なりの解釈は、
"拙速に「答え」に見えるものに飛びついて引き換えに安心を得るのではなく、「こういうこともある」と鷹揚にかまえてことの成り行きを受け入れるチカラ"
なのかなぁ?と思いました。
ただし、正直な感想は「なんだかよく分からん」でした笑。というのも、イヌの散歩やら、海外の作家やら、源氏物語の話やら、果てはドイツのメルケル元首相やトランプ大統領の話まで、話題が多岐に及んでしまっているのです。それぞれに絡めてネガティヴ・ケイパビリティが論じ -
Posted by ブクログ
30年以上前に書かれた作品。
アフリカの大学病院に留学して心臓移植手術を学んでいる日本人の作田信。
彼は黒人差別が横行していることに反発を抱き、大学病院へ行かない日はスラム地域での診療を始めた。
しかし、それに目をつけられ厳重注意を受けるが、それには従わず、スラムへ通い続ける。
そんな中、絶滅した筈の天然痘の症状が黒人地区の子どもたちばかりに見られるようになる。
それは人為的なものと見られる、作田は益々、黒人たちの側につくことになる。
しかし、この国での黒人に対する扱いは留まるところを知らずに、それに加担する作田も危険にさらされる。
何人もの犠牲を出しながら、戦う黒人たちの姿に、時代の残酷さを -
Posted by ブクログ
10年振り再読。
題材はとても面白いが、展開がやや回りくどく、前半は正直退屈に感じた。一方で終盤は一気に畳みかけるように進み、読み終えたあとはスッキリとした爽快感がある。
生体実験というテーマは、倫理的な問題が強く問われる一方で、今後の医療発展に大きく関わる可能性を持っている内容でもある。
しかし、その裏で犠牲になる被験者一人ひとりの人生や幸せを無視するような考え方は、決して許されるものではないと感じた。
『閉鎖病棟』では患者の目線から苦悩が描かれていたが、本書では医療者や研究者の立場からの思考が前面に出ており、読後に重さの残る作品だった。