帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とにかく食べ物に関する描写が多いと感じた。
追われ続ける恐怖と、潜伏し続ける孤独と飢えの中では、とにもかくも、人間は欲求が食欲に集中するのだろう。
ボロボロになりながら逃げ続け、上の息子の出産は、赤紙により出征して立ち会えず、終戦後、ボロボロになり終われ終われて帰国したのに、今度は同じ日本人である警察に、戦犯と言われ追われ下の子の出産にも立ち会えない。
国が放つ号令に従い懸命に働いたのに、家族を引き裂かれ、こんなにも苦しまなければならなかったのか。
戦争という究極的状況下では、価値観というのは、現代に生きる自分からするとあまりにも強烈すぎて受け入れがたい。
そんな時代に翻弄され、人が消えて行くのは切なく、無性に腹がたって仕方がない。
自分がこの時代に生きてたらと何度も想像を巡らせながら読み進めたが、相当タフな精神を持たないと生き延びれないなと、諦めの境地に陥って頭が真っ白になる。
帚木作品2作品連続で読み、充実したものの精神がすっかり疲労してしまった。
次はもちっと軽いものを読もう。 -
Posted by ブクログ
作家が医師というのはよくあるようで、お医者さんって物書きになりたかった人が多いのかしら。
遺伝子医学がまだそれほど進んでいない時に書かれた作品にも拘らず、なかなか真実に沿った仕上げになっている。恋人を事故で亡くした女性に恋人の子供を生ませてあげようと誘って集める。最愛の人を亡くして悲しみに理性が曇っていても、夢心地で会った彼が実在する肉体として妊娠を可能にするかどうか、薬を飲まされたわけではないのに考えないところ。そして夢見心地ではない医師のほうは、支給された冷凍精子がその恋人のものと疑わない。今時ごく一般の男性が特に主義も理由も宗教もないのに、精子を保存するとお思いか?この2点がどうも説得力に欠けるところ。皆の目を覚まさせるきっかけとなる女性(同じ理由で来院し、妊娠中)の死、胎児が奇形だったので、遺伝性の病気を研究するために女性を集めているのかと思いきや、実はネオナチの話だった。現実でもユーゲントのメンバーだった今は老人となった子供たちはノーチェックなのだろうか。恋人を事故を装って殺すところまで計画するのはちょっと不思議だった。彼女たちにヒトラー2世の母としてどのようなクォリティがあったのだろうか。 -
Posted by ブクログ
上巻から徐々に謎に迫り、そしていよいよすべての手稿が発見される。ここに出てくることっぽいことは、おそらく本当にあったのだろう。たくさんの人々がキリスト教の王道から違う(解釈が違う)というだけで、残虐に葬り去られてきた。普段は考えないが、信仰とはなんだろうかと考える。どう考えても、自分はこの小説に出てきた異端の考えの方が共感できる。そうなると、火あぶりかー、いやでも王道派のふりをするかな、しにたくないし。そう考えるとやっぱり、信仰を貫いて火刑に処される気持ちもわからず、どっちもやだなーと、思ってしまう自分は日本人っぽいといえばそうかと。物語的にはまーまー、ちょっと中だるみはあった。
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Posted by ブクログ
戦争の話とか、医療の話とか、途中読んでてしんどくなってきたけど(内容理解できない的な意味で)読んでよかったと思う。
ミステリーな部分は本当にほんのちょっとで(最終章までミステリーだということを忘れていました)ドキュメントみたいに感じました。
安楽死の問題はいくら話し合っても答えの出ない重い問題だと思います。
この本ではミステリーなので殺人という形でしたが、実際自分の祖父母が、父母が、兄弟が、自分が、ああいう立場になったときにどういう決断をするのか、とても考えさせられました。
とりあえず自分には介護の仕事は死んでも勤まらないなと思いました。
世のヘルパーさんたちはすごい。 -
Posted by ブクログ
話ができすぎていて、スリルに欠ける部分がある。
ただ、カタリ派というあまり馴染みのないキリスト教の一派に対する中世キリスト教の異端審問を題材にして、権威、権力と個人の信仰、内面という問題をうまく扱っていて、なかなか勉強させられる。
あまり馴染みのないテーマをわかりやすく、興味をひきだすように描きだす技術はすごい。
カタリ派が日本人の宗教観に近いのか、カタリ派を日本人の宗教観に合わせて解釈しているのかよくわからないが、カタリ派の独特な考え方がなかなか興味深い。
前回読んだ、『深い河』の大津の考え方を思い出したりもした。
ただ、カタリ派に対する評価と、ローマ教会に対する批判的態度がいずれも一面的な気がしないでもない。