帚木蓬生のレビュー一覧
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1979年第81回直木賞候補作
文庫化は1983年
コロナ禍で、ウィルス研究小説として再注目されたようです
「ウィルス」研究の成果を評価され、アメリカの研究施設へと乞われた一人の若き細菌学者
程なく、同じ細菌研究者の友人は、突然の彼の事故死の連絡を受けた
数十年後パリで死んだ男の元上司の訪問を受け、彼の墓がフランスの田舎にある事を知る
墓を訪れた友人は、死んだ男の元恋人と会い、彼の死の真相を知る事になる
ウィルス研究に没頭していた男の生い立ち、アメリカへ渡ってからの研究者としての葛藤が、徐々に明らかになっていく
研究が兵器として使われる事を拒んだ男の過酷な人生を友人がたどる
細菌研究につ -
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2010年、平城京遷都1300年の記念すべき年に読んだ。
大仏建立の詔が聖武天皇によってなされたのは743年のことだ。
通常、大仏建立記は為政者の立場から、つまり聖武天皇•光明皇后•藤原仲麻呂•僧玄昉•行基の視点から語られる。
だが、本書は巨大大仏を実際に建立した一人の人夫の視点から描かれる。
市井の市民の視点を通すことで、時代背景がよりリアルに切実に感じられ、登場人物が生き生きと描かれることになるのだ。
主人公国人(くにと)に課せられた銅作りの苦役は悲惨極まりないが、その状況を易々と乗り越える主人公の心映えは純粋で美しい。
大仏建立に徴用され、長門国から奈良に向かうに当たっては、役人の庇護 -
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ネタバレ著者作品は3作目。
そのペンネームから源氏物語とはなにかしら所縁があろうことは想像できたが、ついに手を付けたかという感じだ。
折しも今年は大河ドラマでも紫式部の物語が放映されている。満を持してということだろう。
400頁を超える文量だが、まだ第1巻。今後も、続巻が予定されている(すでに3巻までは出てる?!)。毎月の上梓とは恐れ入る。
この第1巻は、紫式部こと香子が8歳のときから物語は始まり、藤原宣孝と結婚する20代半ばのころまでが描かれる。
そして、「源氏物語」はすでに書き始めている。
もとより、謎多き女性であり、生没年も不詳。世界最古の小説である「源氏物語」も、いつ書き -
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この作品が45年も前に書かれたとは思えないほど、決して古びない科学の進歩と科学者の向き合い方の問題が描かれる。
貧しさと人間不信故にウイルス研究に憑かれた男の哀しい人生。死んだことにされ生涯を無名の科学者として国に奉仕することを強いられた男の行く末。
手記の形で描かれる黒田の生い立ちや、唯一の拠り所だった研究が「逆立ちした科学」であることへの疑問と絶望がヒリヒリと胸に迫る。
巻末の手紙が全ての謎を明らかにして、そこに一筋の希望が残されたことに安堵する。
科学の進歩も使い方次第。人を生かすも殺すも紙一重の医学の闇。
核兵器よりもはるかに安価で開発ができ、簡単に大量殺戮が可能な細菌兵器。あの国も -
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【星:3.5】
メンタル的に弱っている時に、とある人に勧められて読んでみた。
私はこれまで知らなかったのだが、精神症状療法に「森田療法」というのがあり、その森田療法のエッセンスを15個に分けて気軽に説明している。
正直心に強く刺さるというのはなかったが、辛い状態も日常の中の一部分としてあるがままに受け入れて、考え込むのではなくとにかく行動し。今に全力を注ぐ、といったところであろうか?
ひとつ面白いと思ったのが「平常心」の捉え方である。普通だったら「なにかあっても動じない心」とか何だろうけど、この本では逆に「何かあったらあたふたしてしまったりする」方が平常心だと説いている。
そのうえで、あ -
購入済み
日蓮上人伝記と鎌倉時代の旅日記
題名に反して上巻は、日蓮上人伝記と鎌倉時代の旅日記であった。同じ作家の「国銅」を思わせる出だしであったので期待したが、日蓮上人の活動の記述がどうしても敬意を払わざるを得ないようで、逆に小説としては平板なものになっていると感じた。見助の九州への旅の記述のほうが当時の様子がよくわかって面白い。