帚木蓬生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ薦められて読んだ本。おもしろい、というより勉強になる本。普通に生きていたら知ることもない世界に対して、筆者の知ってほしいという感情が溢れている。「おそらく不意に襲ってきた不幸に対して、人は「どうしてよりによって」と反射的に考え、その解決策として原因探しをし、自分を責めるだろう。人間の遺伝子に組み込まれた知性がそうされるに違いない。
要するに人間の知性は<偶然>を受け入れられないのだ。すべてに因果関係を求めるこの傾向こそが、ヒトをその他の動物から抜きん出させた原因とさえ言える。」
蛇足だが岸川先生のような人材は罪に問われる必要は無いと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ文庫本サイズで上下巻計1000頁以上の久々の大作だった。
巻末の謝辞から、日本からヒトラーに贈られた剣道の防具があったというのは事実のようだ。なんともワクワクさせられる出だしではないか。そこから着想し、主人公の日独混血の青年将校を生み出し、彼の目を通して見た第二次世界大戦中のドイツと日本の様子を描き出す。タイトル『ヒトラーの防具』(『総統の防具』から改題)に含ませた意味が本書の大いなる伏線であり、見事な点。
著者の作品は初めて。医者である自分の立場から出てくるのであろう弱者への思いが繰り返される。強者の論理に振り回される弱者の立場を執拗に描くことで、「真理は弱者の側に宿る」(東郷大使、の -
Posted by ブクログ
『顔のない顔』『移された顔』の二編。
表題作は著者初の戯曲である。
『顔のない顔』アルコール依存症の夫に顔を奪われた「わたし」。
人々の好奇と恐怖の目を弱った視力の中でぼんやりと捉えながら「わたし」は生きている。
「モンスター」と幼い子は言った。
「わたし」はそれを優しく諭す。
顔の移植などという大掛かりなものが、本当にできるのだろうか。
顔を失った「わたし」は見知らぬドナーからもらった顔だった。
だから受け入れられたのかもしれない。
しかしそれが知人、親友だったら。
戯曲『移された顔』はそれを描いている。
事故で植物状態になったリナ。
ユミは顔をなくしてしまった。
唯一大けがを負わなか