帚木蓬生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
痴呆病棟を舞台にした終末期医療について考えさせられる作品。
全てが日記・手紙調で書かれており、病棟での歳月を追っているため、文章はかなり長めになっている。文章自体は読みやすいのだが、登場人物も多いため「誰がどんな症状で、家族はどんな様子…」といったことを確認しながら読み進めるとかなりの時間を要する。
167ページまでは入院患者の紹介(患者本人や家族などから)のため、看護師の視点がなく本書を読み始めたときは「?」といった感じだったが、徐々に読み進めていくうちに内容が明らかになってきた。
ミステリーとされているが、謎解き要素は少ない。ただ、痴呆の現状と医療の問題点は浮き彫りにされているよう -
Posted by ブクログ
帚木蓬生の初期作品3作を収めた本書は、時代背景もあり、鬱屈した、しかしなにか正義の上に立ち続けたいという複雑な意思を表明しつつ環境に流されてしまうもどかしさあるいは諦めが表現されている作品である。つまり、文学的であるというよりも著者の意図が前面に立ち、言いたいことは何かあることはわかるが、分かりにくいといったある意味それが若々しさなのかもしれん、と感じたのだ。(「つまり」になっていなようだが。)
表題作『空の色紙』は精神鑑定に携わる精神科医の視点から、精神鑑定の意義を問いかけていることとは別に精神的に病むほど思い込んでしまう男女関係の疑いの恐ろしさと、精神科医といえでもその状況にはまり込んで -
Posted by ブクログ
時は1700年前半、久留米の大庄屋の次男として生まれた主人公。各地の庄屋を取りまとめる大庄屋は兄が継ぐことは決まっているなかで、自分の道を決められずにいた。
ある日領主の理不尽な要求に反発した百姓たちが城下を火の海にしようと集まり手に鋤や鍬を持って続々と城下へ向かう場面に遭遇する。結果的には領主と百姓の間に入った家老が事を収めるのだが、その光景は主人公の心に焼きつき、さらにその家老の立派な処置に感銘を受ける。
そうこうしているうちに疱瘡にかかり生死をさまようが腕利きの医師に命を救われるが、彼がうつしてしまった母と女中が死んでしまう。それを機に兄との確執が生まれ、そして主人公は命を救ってくれた医 -
Posted by ブクログ
最愛の恋人を事故で亡くし、悲しみに包まれていた舞子。
かつて二人で訪れたことのある山を再度訪ねた際に偶然出会った老僧に、亡くなった恋人との子供を授かることが出来ると持ちかけられた。
それはブラジルにある病院で叶えられると聞き、迷わず向かう。
そこで、同じ境遇の韓国人の寛順と出会い、二人は固い絆で結ばれていく。
そして、そこでは亡くなった恋人に会え、彼の子供を身籠れるという幸せな日々を送れるはずだった。
しかし、そんな日々は長くは続かなかった。
ブラジル行きに隠された恐ろしい秘密と大切な友人との日々が少しずつ崩壊していく。
最初から何か胡散臭いと思っていたことが、明らかになっていく過程はハラハ -
Posted by ブクログ
日本ミステリーのレンチャン。めったに無いことですね。
帚木蓬生さんは前回の閉鎖病棟が気に入って2冊目。余りミステリーめいたものは避けて購入したつもりが・・・。面白くなかったわけではないのです。ただ、この題材ならミステリー的な比重をもう少し下げたほうが、良い作品になったように思えます。優子も的場医師も死を賭してまで調査する必要も無いですし、殺害されなくても・・。
一人一人の登場人物は生きていると思います。例えばケーブルカー乗員の藤野さんとか、間島看護婦とか。そうした人物像中心で話を進めたら臓器移植という題材をより生かせたように思えるのです。
また、最後50ページはチョッとくどい感じですねエ -
Posted by ブクログ
最初に一人一人の入院までの過程が短編風に語られ、その後、病院での生活風景が続き、最後にサスペンス。「閉鎖病棟」によく似た構成でできています。
この人の文章はよほど私の波長と会うのでしょうか、導入部では一気に没入できました。しかし、祖父や母のことを思い起こさせる中盤はちょっと辛い。延々と痴呆の実態がつづられます。なんだか一種のルポルタージュみたいです。何がテーマなのか、どうエンディングにつながるのかと心配した頃、いきなりサスペンスに変わります。
サスペンスが書きたかったのか、痴呆と言う社会問題を提起したかったのか、どちらにしても中途半端な感じは否めません。