帚木蓬生のレビュー一覧
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ネタバレ文庫本サイズで上下巻計1000頁以上の久々の大作だった。
巻末の謝辞から、日本からヒトラーに贈られた剣道の防具があったというのは事実のようだ。なんともワクワクさせられる出だしではないか。そこから着想し、主人公の日独混血の青年将校を生み出し、彼の目を通して見た第二次世界大戦中のドイツと日本の様子を描き出す。タイトル『ヒトラーの防具』(『総統の防具』から改題)に含ませた意味が本書の大いなる伏線であり、見事な点。
著者の作品は初めて。医者である自分の立場から出てくるのであろう弱者への思いが繰り返される。強者の論理に振り回される弱者の立場を執拗に描くことで、「真理は弱者の側に宿る」(東郷大使、の -
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『顔のない顔』『移された顔』の二編。
表題作は著者初の戯曲である。
『顔のない顔』アルコール依存症の夫に顔を奪われた「わたし」。
人々の好奇と恐怖の目を弱った視力の中でぼんやりと捉えながら「わたし」は生きている。
「モンスター」と幼い子は言った。
「わたし」はそれを優しく諭す。
顔の移植などという大掛かりなものが、本当にできるのだろうか。
顔を失った「わたし」は見知らぬドナーからもらった顔だった。
だから受け入れられたのかもしれない。
しかしそれが知人、親友だったら。
戯曲『移された顔』はそれを描いている。
事故で植物状態になったリナ。
ユミは顔をなくしてしまった。
唯一大けがを負わなか -
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国際学会から帰国後、海外からの患者を受けいれることになった岸川。同じころ、研究の情報が外部に漏れている可能性が浮かび上がり岸川は調査を始める。
上巻で岸川の性格についてナルシストと思いましたが、ナルシスト以上にエゴイストなのかな、と読み終えて思いました。
患者や医療の未来のため、という自身の正義のためなら倫理を顧みない岸川の異常な性格が下巻では徐々に露わになってきます。
以前海堂尊さんの小説を読んだときにも感じたことなのですが、主人公に対し「お前は何様のつもりだ」と読んでいて感じてしまうんですよね。どちらも主人公は産婦人科医で患者のためという理念も共通しているのに、なぜ終盤になる -
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患者からの信頼の厚く国際的にも評価の高い産婦人科医の岸川。彼は人為的に流産させた胎児の臓器移植や男性の妊娠実験などを成功させ国際学会でも発表するのだが…
冒頭からいきなり胎児の臓器移植の場面があって、「おいおい、まじかよ」となりましたが(笑)、しかし読んでいくと岸川の色々な実験や手術はグレーゾーンの範囲内ということが分かります。
自分はてっきりこの手の行為は中絶や不妊治療といったものを除いてほとんど違法だと思っていたのですが、どうやら法律は追いついてなくて、学会の倫理ガイドライン程度の規制しかないみたいです。ガイドラインもあくまで目安程度のもので、破れば罰則があるというわけでもないら -
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ネタバレちょっと前に、母が言いました。
この人の本は、優しい本だね、と。
その時まだ、一冊しか読んでなかったので、優しいのか、やさしくないのか、まったくもって区別が付かなかったんですが、今回これで、2冊目。
ちょっとミステリーがかっているのかしら? と思ったら、結婚もして子供もいる奥様方の恋愛話。
でもなんというか、自然とドロドロもしていなければ、濃くもない感じはしました。読後感はどちからというと、さっぱり……というか、落ち着くところに落ち着いたのかなあ……と思います。
情念は情念なんだけど、理性的でないわけではない話なので、どろどろにはならなかったかなあ……と。
後、多分、恋愛して