帚木蓬生のレビュー一覧
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安楽病棟(痴呆病棟)で働く新人看護師・城野。ここには認知症が進んで家で生活できなくなった患者さんがたくさん入院している。一口に認知症といっても症状は十人十色。基本的に回復の見込みは無い患者さんばかりだが、城野は先輩看護師達と一緒に、どうすれば患者さんが快適に過ごせるか、楽しく人生を謳歌できるか。介護を工夫したりイベントを企画したりと毎日一生懸命働いていた。
裏表紙のあらすじを読んでこの本を購入したのは随分前である。そして、私はいざその本を読み始める時に改めてもう一度あらすじを読んでから読み始めることはしない。ということで、どんな話なのかわからないまま読み始めたのも同然だったので、これは痴 -
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ここで挙げられる良医は良心的なお医者さんです。単に腕の良い医者の事では有りません。現役の医者であり、ヒューマニティーに溢れた帚木さんの作品ですが、なぜか感動の量は少なく。
面白くない訳ではありません。帚木さんですから、一定以上の質は確保していると思います。でも、どうも地味な感じなのです。どこか物足らない。それぞれの物語がとても良い素材を持っているだけに残念な気がするのです。もう一つ二つ突っ込めば、大化けするのではないか。そんな気がするのです。読み手の精神的体調も有りますから、私のせいなのかもしれませんが。
そういえば、帚木さんの短編は珍しい。やはり長編が得意なのかな。 -
Posted by ブクログ
とにかく食べ物に関する描写が多いと感じた。
追われ続ける恐怖と、潜伏し続ける孤独と飢えの中では、とにもかくも、人間は欲求が食欲に集中するのだろう。
ボロボロになりながら逃げ続け、上の息子の出産は、赤紙により出征して立ち会えず、終戦後、ボロボロになり終われ終われて帰国したのに、今度は同じ日本人である警察に、戦犯と言われ追われ下の子の出産にも立ち会えない。
国が放つ号令に従い懸命に働いたのに、家族を引き裂かれ、こんなにも苦しまなければならなかったのか。
戦争という究極的状況下では、価値観というのは、現代に生きる自分からするとあまりにも強烈すぎて受け入れがたい。
そんな時代に翻弄され、人が消えて -
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作家が医師というのはよくあるようで、お医者さんって物書きになりたかった人が多いのかしら。
遺伝子医学がまだそれほど進んでいない時に書かれた作品にも拘らず、なかなか真実に沿った仕上げになっている。恋人を事故で亡くした女性に恋人の子供を生ませてあげようと誘って集める。最愛の人を亡くして悲しみに理性が曇っていても、夢心地で会った彼が実在する肉体として妊娠を可能にするかどうか、薬を飲まされたわけではないのに考えないところ。そして夢見心地ではない医師のほうは、支給された冷凍精子がその恋人のものと疑わない。今時ごく一般の男性が特に主義も理由も宗教もないのに、精子を保存するとお思いか?この2点がどうも説得力 -
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上巻から徐々に謎に迫り、そしていよいよすべての手稿が発見される。ここに出てくることっぽいことは、おそらく本当にあったのだろう。たくさんの人々がキリスト教の王道から違う(解釈が違う)というだけで、残虐に葬り去られてきた。普段は考えないが、信仰とはなんだろうかと考える。どう考えても、自分はこの小説に出てきた異端の考えの方が共感できる。そうなると、火あぶりかー、いやでも王道派のふりをするかな、しにたくないし。そう考えるとやっぱり、信仰を貫いて火刑に処される気持ちもわからず、どっちもやだなーと、思ってしまう自分は日本人っぽいといえばそうかと。物語的にはまーまー、ちょっと中だるみはあった。