帚木蓬生のレビュー一覧
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この作品が45年も前に書かれたとは思えないほど、決して古びない科学の進歩と科学者の向き合い方の問題が描かれる。
貧しさと人間不信故にウイルス研究に憑かれた男の哀しい人生。死んだことにされ生涯を無名の科学者として国に奉仕することを強いられた男の行く末。
手記の形で描かれる黒田の生い立ちや、唯一の拠り所だった研究が「逆立ちした科学」であることへの疑問と絶望がヒリヒリと胸に迫る。
巻末の手紙が全ての謎を明らかにして、そこに一筋の希望が残されたことに安堵する。
科学の進歩も使い方次第。人を生かすも殺すも紙一重の医学の闇。
核兵器よりもはるかに安価で開発ができ、簡単に大量殺戮が可能な細菌兵器。あの国も -
Posted by ブクログ
【星:3.5】
メンタル的に弱っている時に、とある人に勧められて読んでみた。
私はこれまで知らなかったのだが、精神症状療法に「森田療法」というのがあり、その森田療法のエッセンスを15個に分けて気軽に説明している。
正直心に強く刺さるというのはなかったが、辛い状態も日常の中の一部分としてあるがままに受け入れて、考え込むのではなくとにかく行動し。今に全力を注ぐ、といったところであろうか?
ひとつ面白いと思ったのが「平常心」の捉え方である。普通だったら「なにかあっても動じない心」とか何だろうけど、この本では逆に「何かあったらあたふたしてしまったりする」方が平常心だと説いている。
そのうえで、あ -
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日蓮上人伝記と鎌倉時代の旅日記
題名に反して上巻は、日蓮上人伝記と鎌倉時代の旅日記であった。同じ作家の「国銅」を思わせる出だしであったので期待したが、日蓮上人の活動の記述がどうしても敬意を払わざるを得ないようで、逆に小説としては平板なものになっていると感じた。見助の九州への旅の記述のほうが当時の様子がよくわかって面白い。
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Posted by ブクログ
1998年に発生した和歌山毒物カレー事件を覚えておられる方も多いのではないでしょうか。本書はその事件を題材にした小説で、登場人物は架空(例えば容疑者の林眞須美は小林真由美の名前で登場)のフィクションの体裁をとっていますが、基本的には警察から調査協力を依頼された毒物中毒の専門医が調査を進める過程を忠実に描いています。
著者が九州大学医学部卒の医師ということもあって、被害者の毒物中毒の描写、カルテや調書から混入された毒物が砒素であることを確定していくプロセスはかなりリアルです。私自身は毒物や医学に特別詳しくないので、本書で述べられている症状などがどの程度正確なのかの判断はできませんが、すべての描写 -
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長い間、敗戦後の占領政策で洗脳され、国内が経済的に発展すればそれでよいというようにのんびり暮らしてきた日本。「国防」というキーワードが意識されだしたのは、拉致事件が明るみに出た頃から強くなったのではと、わたしは思います。
鎌倉時代の世も昔のこととはいえ、やはり狭い国内でだけで覇権争いをしていた。そんな時代に日蓮というお坊さんが現れ「外敵が攻めてくるかもしれない」と予言、その諜報員のような働きをした若者の物語を通して、やんわりと国を守るということを解き明かされているような作品です。
主人公は千葉の先端で育った孤児の「見助」。「日蓮」に出会い、関わっていくうちにはるばる九州の沖の対馬まで旅