帚木蓬生のレビュー一覧
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最愛の恋人を事故で亡くし、悲しみに包まれていた舞子。
かつて二人で訪れたことのある山を再度訪ねた際に偶然出会った老僧に、亡くなった恋人との子供を授かることが出来ると持ちかけられた。
それはブラジルにある病院で叶えられると聞き、迷わず向かう。
そこで、同じ境遇の韓国人の寛順と出会い、二人は固い絆で結ばれていく。
そして、そこでは亡くなった恋人に会え、彼の子供を身籠れるという幸せな日々を送れるはずだった。
しかし、そんな日々は長くは続かなかった。
ブラジル行きに隠された恐ろしい秘密と大切な友人との日々が少しずつ崩壊していく。
最初から何か胡散臭いと思っていたことが、明らかになっていく過程はハラハ -
Posted by ブクログ
日本ミステリーのレンチャン。めったに無いことですね。
帚木蓬生さんは前回の閉鎖病棟が気に入って2冊目。余りミステリーめいたものは避けて購入したつもりが・・・。面白くなかったわけではないのです。ただ、この題材ならミステリー的な比重をもう少し下げたほうが、良い作品になったように思えます。優子も的場医師も死を賭してまで調査する必要も無いですし、殺害されなくても・・。
一人一人の登場人物は生きていると思います。例えばケーブルカー乗員の藤野さんとか、間島看護婦とか。そうした人物像中心で話を進めたら臓器移植という題材をより生かせたように思えるのです。
また、最後50ページはチョッとくどい感じですねエ -
Posted by ブクログ
最初に一人一人の入院までの過程が短編風に語られ、その後、病院での生活風景が続き、最後にサスペンス。「閉鎖病棟」によく似た構成でできています。
この人の文章はよほど私の波長と会うのでしょうか、導入部では一気に没入できました。しかし、祖父や母のことを思い起こさせる中盤はちょっと辛い。延々と痴呆の実態がつづられます。なんだか一種のルポルタージュみたいです。何がテーマなのか、どうエンディングにつながるのかと心配した頃、いきなりサスペンスに変わります。
サスペンスが書きたかったのか、痴呆と言う社会問題を提起したかったのか、どちらにしても中途半端な感じは否めません。
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Posted by ブクログ
ネタバレ薦められて読んだ本。おもしろい、というより勉強になる本。普通に生きていたら知ることもない世界に対して、筆者の知ってほしいという感情が溢れている。「おそらく不意に襲ってきた不幸に対して、人は「どうしてよりによって」と反射的に考え、その解決策として原因探しをし、自分を責めるだろう。人間の遺伝子に組み込まれた知性がそうされるに違いない。
要するに人間の知性は<偶然>を受け入れられないのだ。すべてに因果関係を求めるこの傾向こそが、ヒトをその他の動物から抜きん出させた原因とさえ言える。」
蛇足だが岸川先生のような人材は罪に問われる必要は無いと思う。