帚木蓬生のレビュー一覧

  • 風花病棟

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    どの話もよかった。

    しっかりした、中身の詰まった読み物、という感じ。
    昔読んだ「閉鎖病棟」ほど暗くなく、安心して読める。
    (戦争の話や重い病や、人間の残酷さなどは描かれているけど)

    盛り上がりは少ないけど、いい本だなー
    特に、「藤籠」「雨に濡れて」「百日紅」に、じーんとした。

    さわりは何となく重松清っぽいかなと思ったけど、
    嫌な言い方をすれば、もっと説得力があって、媚びの少ない感じ?
    重松清も好きだけど。

    あとがきもいい。

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    2012年08月09日
  • アフリカの蹄

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    「絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師」の話。

    医療系のパニック小説も実は好きなので、本の紹介文を見て予約。
    だが実際に読んでみて、ウィルスの怖さ以上に人種差別の問題が何よりも大きく重い。
    アパルトヘイトについて、恥ずかしい事に大雑把な知識しか持っていないが
    本書に描かれる「この国」の様子は、当時の実際の状況を表しているのだと思う。
    黒人医師サミュエルの言葉「黒人が解放されることは、白人が解放されることなんだよ」が胸に来る。
    誰かを抑圧し支配して生きる事は、実際には自分自身が、人間として大切なものをすり減らし失って生きていくこ

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    2012年08月08日
  • 安楽病棟

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    終末期医療の作品。

    閉鎖病棟も読みましたが、痴呆病棟内の描写は秀逸だとかんじました。

    ミステリーに仕上げてあるので、読み続ける愉しみも持ちつつ、また、主人公の看護師の公私ともの心の動きも興味深く読める帚木氏ならではの作品だと思います。

    看護師さんが、ある種語り部みたいな役割を担っているので、
    作品全体が優しいかんじになっているのかな。

    ただ、ミステリーとして読むとラストは、ちょっと寂しかったなあ。

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    2012年07月23日
  • 三たびの海峡

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    構成とテンポが非常によく、物語の長さを感じさせないのはさすが。テーマの重さや感情表現の巧みさもあって、読み応えが非常にあった。戦時中の日本を普段あまり考えない角度から描いているので、読まないよりも読んだほうが良い本だと思う。

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    2012年07月12日
  • 水神(下)

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    今のような重機がない時代。川に堰を作り用水路を張り巡らせるのはどんなに大変だったろう。大石を運ぶ場面で思い出したのはピラミッドの石運び。試験通水で起きた事故に対して庄屋に咎が行かないようにした下奉行の行為に涙が止まらなかった。命を懸ける覚悟をした五人の庄屋、命を懸けてそれを助けた武士。

    読み終わって、筑後川を大石堰を見てみたいと思った。インターネットは便利で、写真は見つけたけれどやっぱりこの目で見たいものだ。

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    2012年07月06日
  • 風花病棟

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    10話の短編集。医療に携わっている私には、周りの状況や主人公の思いなどが想像しやすい。だから入り込んで読み、涙ぐんだ作品もある。みんなこんな素敵な医師や看護師だったらなぁと思う。テレビの医療ドラマのような現実離れした所はなく、今の医療に欠けている部分を鋭くなく、柔らかな感じで現されている。

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    2012年06月30日
  • 水神(下)

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    下巻では未来の為、村人の為に借銀までしながら全ての責任を背負い命をかけた五庄屋の覚悟が益々凄まじくなってくる。また、筑後川に大石堰が集められた百姓達によって造られて行く様子が目の前に展開するように書かれていて読む速度が速まってしまう。五庄屋に最初反対した藤兵衛が助左衛門に謝りに来た時に「〜みんなこれから先の話を一生懸命するとです。そればで聞いていて、私は水が人をこうも変えるものかと、つくづく思いました。」と話すところが印象に残った。どんなに大変でも未来に希望が持てるなら人の会話は明るく弾むものだと思う。筑後川を改めて見に行きたくなった。

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    2012年06月27日
  • エンブリオ 下

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    事の善悪や生命倫理はおいておくとして、これほどの先端医療に関わり、次々と新たな治験を試み、生殖医療や再生医療の最新技術を切り拓いていけるとなれば、もはやとどまるところを知らず虜になってしまうに違いない。
    あくなき探究心、進みすぎた医療、そして実際にそれらの技術がよそでは救えなかった患者を救えるという事実。おそらくこの小説は決して未来の話ではなく、今やすでにこのような研究開発は行われているのではないかと思う。「患者のため」という免罪符をもって猛進する科学や医療を、どのような現実的なラインで線引きし、特に不妊治療や再生、移植などの方針を国が定めていくのか、明らかに国の方針が立ち遅れている感がありあ

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    2012年06月20日
  • 水神(上)

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    江戸時代、九州の筑後川で実際にあったお話し。側に筑後川があるのにその地形から村の稲田には水が届かず村人は生活に苦しんでいる。おまけに大水が出て川が氾濫するとさらに悲惨な状態になってしまう。長年のこのような状況を筑後川に堰を作る事で打開しようと決死の覚悟で立ち上がる五人の庄屋の想いが胸を打つ。軽快な九州弁での会話が全般を包み、筑後川から村人の為に水を汲む(打桶と言うらしい)元助と伊八の大変さや気持ちの美しさが心を打つ。打桶の際の二人の掛け声「オイッサ、エットナ」が聞こえてきそうであり光景が目に浮かぶような感覚になってしまった。堰がどのように出来ていくのか、下巻を急ぎ読みたい。

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    2012年06月19日
  • 国銅(下)

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    作品を読み進むにつれ、いつしか主人公の国人(くにと)と同じ目線で奈良をながめるようになり、大仏建立のそのシーンは、こちらまでもが思わず息を呑んでしまいそうな、荘厳な雰囲気に充ち満ちています。

    けれど、国人に感情移入をすればするほど、物語世界から抜けきれなくなって、読み終えたその時にはどっと疲れに見舞われることは必至。

    そうして気づくのです。

    ああこれは、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」のような英雄譚ではなくて、『奈良の大仏造りに身を捧げ、報われずに散った男達の深き歓びと哀しみを描』いた作品だったのだな、ということに。

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    2012年06月19日
  • エンブリオ 上

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    天才産婦人科医による、法の網をかいくぐる生殖医療、あるいはもはや生殖産業か。
    生命倫理を考えるととんでもない医療技術なのだろうけれど、あくなき探究心で次々に新しい研究を進めていくのはとてもエキサイティングなのだと思う。医学の進歩には、過去に多くの黒歴史があり、その上に現代医学が成り立っていると考えれば、この小説のようにエンブリオを利用した技術がすでにどこかで開発されていたとしても決して不思議ではない。
    倫理、善悪を抜きにするならば、興奮でぞくぞくしてしまうほどの研究の数々。なじみのない生殖医療の用語もわかりやすく、読みやすい。
    下巻はどのような展開になるのか楽しみ。天才医・岸川がドナーになり続

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    2012年06月18日
  • 国銅(下)

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    ネタバレ

    国人の目線と登場人物の生き様を通じて生きるとはというところを考えさせられる
    それとやっぱり言葉の持つ力ってすごいなぁーって
    国人が字や薬草の知識を学んでいくところがステキだった
    何を学ぶかもとても重要なことなのだと
    苦難の中に喜びや驚きが点在しまた突然抗い難い残酷な一面を見せ付ける人生とはかくも感慨深いものだ

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    2012年05月31日
  • ヒトラーの防具(下)

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    ネタバレ

    下巻も基本的に上巻と変わらず。
    ベルリンの変化を主人公視点で見続ける。
    ヒトラー影武者説も取り入れて、軽く変化を加えて終了。
    おもしろかったです。

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    2012年05月26日
  • ヒトラーの防具(上)

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    現代ドイツで古い剣道の防具が見つかった。
    その防具には「贈ヒトラー閣下」との文字が。
    第2次大戦時いったい誰が、なぜ、防具をヒトラーに・・・?

    なんて歴史ミステリーかと思いきや、その謎はあっさり解かれるw
    期待した方向と違った製もあり、最初はイマイチかと思っていたが、歴史が動き始めてから一気に面白くなる。
    変わっていくベルリンとそれを見続ける主人公。
    ミステリとか深い人間ドラマとか期待しちゃうとあれだけど、当時のベルリンを一人の人間から見た記録なんて感じで読むといい感じ。

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    2012年05月26日
  • 国銅(上)

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    よくもまあこんなに幅広くジャンルを拡げて小説をまとめられるものだ!

    筆を持つほどに自ずと文章が溢れ出るのであろう。

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    2012年05月21日
  • 聖灰の暗号(下)

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    ネタバレ

    初めての帚木 蓬生 さん

    面白い
    細かな描写でグイグイ引き込まれる

    悠久の歴史に思いを馳せタイムスリップ

    宗教と人間とそれを取り巻く巨大な力に翻弄されながらも立ち向かう人々の姿に感銘を受けた

    信念を貫くことはシンプルでいてとても難しい

    いつの時代も歴史を作るのは揺ぎ無い信念と情熱を持つこういう人達なんだろうな

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    2012年05月05日
  • エンブリオ 下

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    男性を妊娠させたり胎児を品物のように扱う岸川に反感を持ちました。また、自分を利用しようとした相手に反撃するシーンは恐怖感でいっぱいでした。

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    2012年04月08日
  • 逃亡(下)

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    ”逃亡”とは、憲兵の戦後を描いた大作である。国のために働いた彼らが戦後連合国に追われ、自国にも追われるという悲哀の物語である。プロの作家は資料を読み込むことで90%作品を完成させることができる。残りはリアリティをいかに追求するかがカギとのこと。本作品のリアリティのすごさとは、戦後の日本の農家の暮らしぶりや焼け野原となった博多の街並みと闇市の様。当時の人々の苦しみや希望を見事なまでに描いている。また戦犯への追及。戦争は終わってない。戦争は継続していることに対する緊張感。それにしてもリアリティの源泉が・・とは。解説を読んでびっくりです。

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    2012年03月10日
  • 国銅(上)

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    ネタバレ

    奈良の大仏を作るための銅をつくる人足が主人公。

    その後、奈良で実際に大仏造営にもたずさわる。

    1000年

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    2012年02月12日
  • 逃亡(下)

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    今まで私が読んだ帚木作品は、精神科医らしく心を病む人物の登場が多かった。
    これは第二次大戦中憲兵として働き、敗戦後逃亡し続ける主人公の限界とも思える物語だ。
    同時期に大陸で新聞記者として従軍した父の面影と重ね合わせた。

    戦争は人を変えると言うが、随所にそれがうかがえる場面が出てくる。
    しかし、極限状態にあっても友情の存在があることも知った。

    小説としてより、ドキュメンタリーのような迫力、面白さを感じた。
    敗戦後の混乱、戦争裁判の不条理、道を誤った国家の恐ろしさ
    、どれも私年代(80歳)にとっては記憶にある事だけに胸を打ちまた痛みを感じた。

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    2012年01月31日