帚木蓬生のレビュー一覧
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“ネガティブ・ケイパビリティ”は、どうやったら身につくのか?
帚木蓬生はその著書『ネガティブ・ケイパビリティ』において、
「じっくり耐えて、熟慮するのが教養」であると説いている。
これには深く頷かざるを得ない。
だとすれば、哲学や文学に親しむことこそが、
着実に“ネガティブ・ケイパビリティ”を育む営みになるのではないかと私は思う。
哲学は、わかったようでわからない思索へと読者を放り込み、
純文学は、人間臭いじれったさの中で読者を悶々とさせる。
その積み重ねで、人は“ネガティブ・ケイパビリティ”を身につけていく。
とりあえずの答えをすぐ見つけられる時代だからこそ、
ChatGPTに頼りがちな日々に、
じっくり熟慮する読書を差し込む意味がここにある。 -
Posted by ブクログ
実際に起こった「オウム心理教事件」を医学的な視点から書かれている。
下巻ではその事件の裁判に関する意見書を、主人公の九州大学医学部教授の沢井が求められ、対応していく経緯が描かれ、その裁判でも証人として呼ばれることになる。
世間を震撼させた事件だけに、当時の裁判への感心は相当なものだった。
ただ、本作にも書かれているが、13人の死刑囚を出し、既にその執行もされて、事件は全て終結したように思われているが、真相としてわからない部分は残されている。
それだけ、闇が深く、真相にたどり着けなかったことも多かったのかと思われる。
世の中には次々と事件が起き、都度 それらも風化してしまう。
この事件はそんなひとつにしてしまうには、あまりにも大きく衝撃的なものかもしれない。
2026.6.3 -
Posted by ブクログ
ギャンブル依存症の治療には自助グループのミーティングが有効。そのミーティングには討議が無ければ結論も無い。メンバーの話を聞き、自分もしゃべって散会するだけ。それを延々と重ねるうちに、当事者のメンタルヘルスが回復する。
不祥事の裏には害毒に相当する会議があり、そこでは言いたいことが発言できない。ほんとうの会議とは誰もが平等に発言できるものである。
答えが質問を殺し、正しい説明が凶器になる、そういう場面もある
オープン・ダイアローグ
ポリフォニー、多声性からなるミーティング、参加者全員が発言し、どの発言も平等に扱われる
ネガティヴ・ケイパビリティ
答えの出ない事態に耐える力 -
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イギリスの詩人ジョン・キーツが、弟に当てた手紙の中で示した概念らしい(その手紙の文面自体は見当たらない)。「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」(p.3)
精神科医でもある著者のもとにやってくる患者への接し方や、“プラセボ効果”や、シェイクスピアや源氏物語や、現代の教育現場(不登校など)や世界政治(難民の受入れや、トランプ政権の不寛容さ)へと話を展開する。自ら決定し、解決し、正解を導き出す能力・姿勢を訓練・試験され続けるのが現代社会だけれども、逆に「問題を問題として認識しつつ、解決を急がない」という能力・姿勢が、新しい発見や、問題の解消に役立つこともある、という話。
それにしても、本書の内容として、「源氏物語」に文量を割きすぎと思う(筆名を源氏の巻名から取るくらいに源氏好きの著者なのだろうなあ)。まあ、ユルスナールの書いた続編というのは、私は初めて知ったもので、面白いのだけれども。
先ごろ行われた衆院選(2026年2月8日投開票)を考え合わせると、「選挙」というのは随分と「ポジティブ・ケイパビリティ」志向の制度なのだなあ、と思い至る。有権者一人の政治的意思表示を、一人の候補者名、一つの政党名という形で、短期間のうちに決定させられる(特定の候補者、特定の政党に対して、全幅の信頼を寄せている有権者なんてそうそう居ないだろうに)。投票しないという姿勢も一個人としては可能だが、「選挙」という制度としては、そんな姿勢はただただ無視され、有効投票の中で当選者が決定され、政治ってものはずんずん進んでいく。先の選挙結果がどうこうというより、「選挙」という制度それ自体を考え直しても良い時期なのでは? と思ったりした。 -
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ネタバレ生命倫理を考えさせられる作品でした。
胎児を意図的に堕胎させ、その臓器を使って不妊治療や難病治療を行う行為は、感覚的にも倫理的にも許される行為ではないものの、一本でそれが本当に困難な病気を治療するのに役立つのだとすれば全く否定もできないのではないか。
岸川には自分の技術や限界を押し広げようという研究者としての野心を持ちながらも、利益目的ではなく、困っている患者を本当に助けたいと考えている点も、彼の行為を正当化しないまでも間違っているとはいえないのではないかという気にさせます。
作品としては面白かったのですが、登場人物のセリフ回しがなんとなく古臭く感じられる点と、岸川の性行為のシーンが少しくどく感じました(笑) -
Posted by ブクログ
お勧めされてこちらの本を。
閉鎖病棟の中で事件が起こってそれを解決するようなミステリー小説だと思って読みはじめたが、全く異なるストーリーだった。
まず閉鎖病棟の中だけでずっと物語が進むのではなく、かなり頻繁に外に出かけることがある。それに驚いたと同時に、重い精神的な病を持つ人は治りづらく、病院の中にずっといるものだ、という自分の中の固定概念というか偏見というかに気が付かされた。
浅くもなく深くもなく、会社の同僚とも家族とも違う関係で、でも互いに想い合う日々の暮らしの話。
病気の症状を思わせる描写がいろいろ出てくるのだけど、主人公視点が統合失調症の患者なので、こちらも医者の言葉の方が間違っているような気がしてきて、まさにこういう気持ちなのだろうと思ったりした。
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Posted by ブクログ
【353冊目】答えの出ない事態に耐える力のことを言うようです。
本書の中では色んな事例を出して説明してくださるのですが、私なりの解釈は、
"拙速に「答え」に見えるものに飛びついて引き換えに安心を得るのではなく、「こういうこともある」と鷹揚にかまえてことの成り行きを受け入れるチカラ"
なのかなぁ?と思いました。
ただし、正直な感想は「なんだかよく分からん」でした笑。というのも、イヌの散歩やら、海外の作家やら、源氏物語の話やら、果てはドイツのメルケル元首相やトランプ大統領の話まで、話題が多岐に及んでしまっているのです。それぞれに絡めてネガティヴ・ケイパビリティが論じられているのですが、ちょっと強引な印象が拭えませんでした。単に筆者が書きたいことを書いて、無理矢理ネガティヴ・ケイパビリティと結びつけているような…
学術的に深掘りされている概念ではなく、また、広く知られた一般的な考えでもないので議論が浅く広くなるのは仕方がないのかもしれません。
ただ、そうだとしたら、筆者の専門領域である精神医学の話題に集中して深掘りしてほしかったなと思います。実際、精神科の臨床事例を複数並べた数ページは、「確かにすぐにできる解決方法がない。こういう状況を乗り越えるためにはネガティヴ・ケイパビリティが必要だ」と思わせる説得力がありました。なので、こうした説明を多くすることで読者自身にもっとネガティヴ・ケイパビリティの概念を定着させることができたのではないでしょうか?基礎を固めずに応用の話をされてしまっているように感じてしまいました。
全体のテーマとの関連では分かりづらさを感じるものの、ひとつひとつの文章はとても読みやすく、さすが医師で作家の方が筆者だなぁと感嘆するばかりでした。入試問題に本書の文章が使われているというのも納得。
色々と書きましたが、「そんなに焦るな。あるがまま受け入れて、気長に待ちな。なんとかなるから。」という本書のメッセージは、とても素敵だと思います。
また、そういう姿勢は「人格」の問題ではなく、「能力=ケイパビリティ」なんだよ!と言われると、なんだか自分にも出来そうな気がしてきませんか?笑
生まれつきの性格の悪さはなかなか治りませんが笑、逆上がりや計算のような能力であれば訓練で身につけられそうな気になってきます。
とかく成果とスピードを求められる時代で、中間管理職をやっているとそれも仕方がないよなぁと思いつつ、「のんびり、じっくり、どっしり、ふんわり」こそが生きるために必要だという本書のメッセージに励まされる人はたくさんいると思います。