【感想・ネタバレ】ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力のレビュー

あらすじ

臨床40年の精神科医が、最も関心をもつネガティブ・ケイパビリティとは何か。せっかちに答えをもとめ、マニュアルに慣れた脳の弊害……教育、医療、介護でも注目されている、共感の成熟に寄り添う「負の力」について、初の著書。

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気になっていた本。ネガティブ・ケイパビリティという言葉。早急に答えを求めがちな自分。そうなることで、生きづらくなったり、身動きが取れなくなっている。それは仕事でも感じる。共感、寛容。これらの言葉もキーワードになっている。
患者さんと向き合う時、変化をすぐに求めたり、変わらないことにもやもやしたり、待てないと感じる自分がいる。そんな時にまさにこのネガティブ・ケイパビリティが欠けているのだ。急がず、焦らず、耐えていく力。ずっとそばで見守る力。答えは出ない。でもそばで見守るってことが何よりのケアになるんじゃないか。自分自身、自分からも他者からもそうしてもらえなかったと、これまでの人生で感じてきたのではないか。今度は私が自分自身に、私以外の人に、ネガティブ・ケイパビリティで接していく番だ。

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2024年06月02日

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帚木蓬生さん。『白い夏の墓標』が好きすぎて一気にファンになってしまった。作者とテーマが気になって買った。
心から読んでよかったと思う。

ネガティブ・ケイパビリティとは帯にあるとおり「すぐに解決できない問題に耐える力」のことである。そしてこの力の真価は「なんとかしてくうちになんとかなる」ということである。「なんとか…なれー!!」とハチワレ(ちいかわの主要登場人物のひとり)が難敵に立ち向かってくのも、もしかしたらネガティブ・ケイパビリティかもしれない(これは今適当に思いついた。)。

ネットの情報って上っ面なことしか書いてなくて。そんなん分かってるし。とか思うことも多々ある。特に成功するためのなんちゃらとか、気分が前向きになるナントカとか、読んでるだけで気が滅入る。なぜなら、そういうことを実践してても上手くいかないってことを心の底ではわかってるからだと思う。

ネガティブ・ケイパビリティという仰々しい言葉にまとめられてるけど、「なんとかしてるうちになんとかなる」ことに気づいた時、肩の力がふっと抜けるんだね。そこで本著におけるもう1つのキーワード「寛容さ」が出てきた。

本当私の人生って上手くいかなくて。どうして周りの人が仕事に結婚に子育てに、充実してるのかこれまたわからない。
でもまあ、これは私じゃなければ耐えてこられない人生だろうからさ。まずは私に対して寛容になろう。そしてこれからも、なんとかしていこう。て、ちょっと前向きになってみる。

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2024年04月15日

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ヒトの脳には、「分かろう」とする生物としての方向性が備わっている。さまざまなしゃさいじょうきょや自然現象、病気や苦悩に、私たちが色々な意味付けをして「理解」し「分かった」つもりになろうとするのも、そうした脳の傾向が下地になっている。目の前の、わからないもの、不思議なもの、嫌なものが放置されていると、脳は落ち着かず、及び腰になる。そうした困惑状況を回避しようとして、脳は直面している事象に、とりあえず意味付けし、何とか「分かろう」とする。しかし、ここには大きな落とし穴がある。「分かった」つもりの理解が、ごく低い次元にとどまってしまい、より高い次元まで発展しない。まして、理解が誤っていれば、悲劇はさらに深刻になる。

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2023年11月21日

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ネタバレ

解決不可能なもの、答えを簡単に出せないもの、分からないものをそのままにしてその事態に耐える力をネガティブケイパビリティというとのこと。
これはとても今の時代こそ必要な力のように感じられる。
小説や絵画という芸術において、また戦争という事態においてなどそれが必要だろうと思われる場面について章を改めて考察しているのが興味深かった。
第七章の中で、米国のノーベル賞作家の7割がアルコール依存症だったという話が出てきたが衝撃的だった。統合失調症の性向と創造性との関連も興味深かった。著者が医師であり小説家でもある立場から考察していることで話の信憑性がより深く感じられたように思う。
小説家にはネガティブケイパビリティが必要だというのは間違いないように私も感じました。
第十章にはまた深く考えさせられました。ここに掲載された戦士された学生兵士の方々の言葉が胸に迫り苦しくなりました。
そして今の世界の現状を思うと…途方に暮れる思いもします。
寛容であることの必要性、共感を養うことの大切さを改めて認識します。今読まれるべき一冊と思います。

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2023年11月20日

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宙ぶらりんな状態に耐えうる力、ネガティブケイパビリティ。治療の中でも人生の中でも必要性を根幹をなす力だと思った。それを幹とした共感、親切が、人生や世界をより良くするものだと感じた。
自分のしてきたこと、世間とずれていると感じたことが分かった気がした。答えを急ぐ世界ではあるけど、子どもたちには、寛容で親切で共感できる人たちになってほしいと思った。

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2023年11月03日

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生きている中で、白でも黒でもない状態に身を置くことって沢山あると思う。このような状態を維持する力って実は撮っても大切だと思う。

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2023年11月02日

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いい本だった。もやもやしてたのがすとんと納得できた感じだ。
ついでに源氏物語のあらすじをはじめて知った。

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2023年09月28日

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住吉美紀さんのラジオで、ネガティブ・ケイパビリティという言葉を初めて知った。「解決しなくても持ちこたえていくことができる力を培っていけば、落ち着くところに落ち着き解決していく」概念がわかってよかった。治療ではなくトリートメント。日薬。シェイクスピアや紫式部、ドイツのメルケル元首相に備わっているという見方。

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2024年08月30日

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人間の底力を再確認できた本。
以下読みながら思いを馳せた事
【子育てについて】
こどもが不登校になったとき、その子はネガティヴ・ケイパビリティを駆使している。容易に解決できない事態にジッと耐えているのだ。
つい親は、画一教育に適応してきた自分を基準に、子どもの落第を想像して、安易に解決させようとする。励ましや叱咤をするだろう。しかし、本当に必要なのは親も子どもへネガティヴ・ケイパビリティを駆使することだ。記憶も理解も欲望も発揮してはならない。神秘と不可思議さを持ちながら、ひたすらに見守るのだ。なぜなら、世の中には解決できない問題の方がずっと多い。こどもはまさにそういった現実を直感で感じとり、対処方法を実践しているのだ。強い人間に育つ芽を摘むことはいけない。
【研究分野について】
研究に必要なのは「運、鈍、根」
光明が見える運の巡り合わせ信じ、浅薄な知識で安易な解決を図らず、結果の出ない日々を根気強く耐え抜く。これが世紀の大発見に繋がる。
わたしは新聞で、日本の研究者に対する風当たりは酷いと聞いた。なんでも選択と集中を推し進められて、研究費が削られ続けているらしい。しかしネガティヴ・ケイパビリティの力を知れば、社会が安直な成果を求めることがそもそも間違いなのだと知る。
【問いを立てる能力について】
なにかの本で、これからの時代は問いを立てる力が必要だとあった。世の中の現象にアンテナを張って、仮説をもって自分で問いを設定するのだ。そうして問いを立てれば解決策を考えられる。これからの混沌社会の大きなスキルと書かれていた。
今回の本を読んで、この問いを立てる力への認識がより深まった。これまでは、問題解決能力の重要さ(ポジティブ・ケイパビリティ)について言及しているように感じていた。しかし、この本の読後は『問いが生まれるまでジッと現象に耐えて観察すること』だと感じた。問いを立てる力とは、逃げずに社会を直視し続けて、問いが羽化するのを信じることだ。
【寛容であること】
この社会には解決できない事柄が溢れており、今人間はそれにジッと耐えていく力が試されている。決して安直な解決策に流されず、互いのwin-winを信じて探る寛容さが求められる。寛容は平和の土台だ。権力者はもちろん、我々主権者も、寛容を大切によく生きねばならない。

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2024年07月18日

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問題解決ではなくそもそも問いを疑え,的な話はビジネス本でよく見かけるけど問題解決だけでなく発見(問い直し)すらもできない宙ぶらりんな状態の状態に身を置くことの価値,重要性を言語化し,ネガティブケイパビリティと定義をした(著者が再発見し現代に甦らせた)ことの価値は非常に大きいと思う.

反脆弱性にも通ずるものを感じる.
暗中模索,宙ぶらりんに耐えて,性急な結論や過激な意思決定に強く自戒し,一方でその場に背を向けることなく対峙し続ける姿勢.
現実にこの概念を当てはめ,眼前の苦境をメタ認知できるようになったことは今後の仕事や生活の中でも役に立つだろう.

あと現代の創作の源泉にもなっているシェイクスピアや紫式部といった歴史的な文学作品にちょっと興味を持った.

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ネガティブケイパビリティ
事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力

その先には発展的な深い理解が待ち受けると確信して、耐えていく持続力を生み出す


宙ぶらりんの状態を回避せず、耐え抜く能力

脳は当面している事象に、とりあえず意味付けしをし、何とか「わかろう」とする

ネガティブケイパビリティが保持するのは、形のない、無限の、言葉では言い表しようのない、非存在の存在

接客業での脳死のマニュアル再現→チグハグした本来のサービス精神を忘れた接客


合理的な懐疑主義者

"分からなくてもいい"
分かることを前提としないもの...音楽、景色、抽象画etc

"答えは質問の不幸である
"答えは好奇心を殺す"

問題解決でもなく、問題発見でもなく、その過程・間にある暗中模索を耐える力

精神科医→身の上相談をよく受ける→手の施しようのないものも→患者を見捨てず、かといって無理やり解決策につなげることもなく、同情。

治療ではなく、トリートメント。治すのではなく、これ以上、傷まないようにする

ギャンブル障害の本質
「同じ行為を繰り返しながら、違う結果を期待すること」

プラセボ効果
看護師ではなく主治医が訪問
錠剤ではなく注射
薬の色や形、大きさも

エセ医療、水素水など→プラセボ商売

プラセボ効果の副作用→ノセボ効果

ネガティブケイパビリティが最も自戒するのは、性急な結論づけ

小説家は宙吊りに耐える
→創作の葛藤の本質、宙吊り

シェイクスピア→黒澤明映画、ウエストサイド物語などの原典

ネガティブケイパビリティ= 運 鈍 根

戦争は寛容さ、ネガティブケイパビリティを失ったものが引き起こすもの

共感にはネガティブケイパビリティが大前提

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2024年07月06日

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・印象的だったところ
 ビオンの半生、及び集団療法への系統(要調べ)、荘子「混沌」=行き過ぎた知性化は可能性を殺す、*太陽に近づきすぎたエルメスが燃えたのは、真実を追い求めようとしたものの末路の話か?プラセボ効果の理屈=エンドルフィンの分泌、メディシン・マン=儀式について、芸術(文化)のネガティブ・ケイパビリティにおける有用性、紫式部のネガティブ・ケイパビリティ性について

双子対象転移=オキシトシン?
理想化対象転移?=希望=エンドルフィン?

スリランカの悪魔祓い=儀式は、この両方を満たすものかもしれない。芸術、文化の効能も同じか。個人を超えた普遍的な領域で、感覚を共有することが必要。我ー汝の世界。
 メメント・モリ、その恐ろしさから目をそらさず受け止める。他者とそれを共有できたとき=現状を正しく認識してもらった上で、かつ希望を見出せるところで人は癒える。
 現状の正しい認識は個人ではできない。=ラプラスの悪魔のパラドックス。種への貢献への欲動によって、個人で断定的に環境、現状の評価を決めつけることは、禁止されているのではないか。バグを種にもたらさない為に。

 メメント・モリ=人の死を知ること=自分の人生の限界を知ること。限界はある、「それでも!」と、希望を持って自らの役割に邁進しようとすること=幸福なのではないか?(メイド・イン・ヘブンの幸福論はこれか)
そうあろうと決めること、これが「覚悟」。

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2024年06月09日

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ネガティブ・ケイパビリティとは、「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さ、不思議さ、会議の中にいられる能力」。その端緒は、中世の詩人キーツに遡る。脳は「本来わかりたがる」。そしてわかろうとする時に、「希望」を付加しがちだ。プラセボ効果(偽薬)の歴史にふれながら、脳が希望を付加する機能を持つことを説いている。ネガティブケイパビリティは、シェイクスピアや紫式部にはあった。ドイツのメルケル首相にもあった。(トランプにはない…)ネガティブケイパビリティは、とても興味深い考え方だ。たとえば答えを出すこと狙いである「教育」の場面でその能力はどう鍛えられるのか。医学や心理学の治療の現場では?そしてクリエイティブな領域においてその能力はどう鍛えられるのか、もしくは先天的なものなのか。他の書も読みたくなりました!

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2024年06月04日

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ネガティブケイパビリティ。宙ぶらりんにも耐えうる力。耐えうる先にあるものが何か少しでも光が見えていることがあるから耐えられるのか。物事の本質をとらえ、今何が大事かじっくり耐えて考えていくことがもとめられる

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2024年04月30日

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タイトルである「ネガティブ・ケイパビリティ」とはなにか?それがまさに本書で著者が伝えたい事。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」‥それは具体的にどんな能力なのか一緒に考えませんか?精神科医で、小説家でもある著者は古今東西の医学書や文学作品、又実体験など様々な例を挙げ問いかける。
読書会の課題図書として読んだのだが、私自身もそれなりに起伏のある人生を通じて無意識のうちにこの能力が鍛えられ、救われてきたのかもと思った。

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2024年02月22日

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物事は白黒つけなきゃいけないと思い込んでいたけど、そうではないらしい。むしろグレーにしておくことがよい結果を生むこともある。「なんとかなるさ」の精神でとりあえず凌いでいればなんとかなる。有耶無耶にするとか適当にするとかでいいと知って、気持ちが少し楽になった。「どうしようもないことは放置でいい」ってとても心強い考え方。
プラセボ効果を有効活用したいので、できる限り前向きに期待して生きていきたい。

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2024年01月28日

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結果が何か出ないとやっぱりモヤモヤするし嫌なもんだけど、考えてみれば世の中は一人で生きているわけではないのだから、どっちつかずみたいな状況はいくらでもある。今の自分は正にそういう状態なので、まぁ、必ずしも1日も早く解決したいわけでもないのだけれど、こういう、共感というのとはちょっと違うようにも思うのだが、何事も突き進んでしまうばかりではなし得ないのが真理なのかなと、考えさせられた。

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2024年01月09日

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ユリイカのヤマシタトモコ特集で、桜庭一樹が『違国日記』を評するために「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を援用していたので、この本に興味を持った。

「不確かさの中で事態や状況をもちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力」を指すネガティブ・ケイパビリティ。

ここ1年、学問、就職、人間関係全てにおいて、先の見えないトンネルの中にいるような状態が続いてて、鬱蒼としていたけど、確実にネガティブ・ケイパビリティは育ってたんだな。トンネルの先は見えなくても、その事実が自分を照らしてくれるから、これからも走っていける気がする。

前半は、ネガティブ・ケイパビリティの概念を提唱した詩人のキーツと、再発掘した精神科医のビオンの生涯が丁寧に紹介されてる。冗長に思えるけど、これを読み耐えることがネガティブ・ケイパビリティを身につけることに直接繋がってる。構成に1本取られた気分。
最相葉月『理系という生き方 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』の中で、最相は「人間というものは、物事が発見された順序に沿って説明されたとき、いちばんよく理解できるものだよ」という恩師の言葉を紹介していた。
なぜその人がその研究をやっているのか、なぜそのテーマに生涯を賭けたのかという思考の道筋が伝記や評伝には表れる。こう考えたからこの技術が生まれたんだ、こう考えたからこの発見に導かれたんだという実感が持てて、科学を理解する手がかりになるから、伝記や評伝は大事という話。
確かに、今回もキーツとビオンの伝記を読んでいく中で、2人の人生に寄り添ってるような感覚になって、異物感なく自然と、ネガティブ・ケイパビリティの誕生や発見の経緯を受け入れられた。
対人関係においても、時間が許すのであれば、できるだけ、生い立ちや過去のことを聞いていきたいと思った。冗長だと思えることばかり話したい。手前の段階でキャラ付けしてわかったつもりになりたくない。複雑な人間性を複雑なまま愛したい。

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2023年11月05日

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「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、「事実や理由をせっかちに求めず、事態や状況を持ちこたえ、不確実さ、懐疑の中にいられる能力」あるいは「論理を離れ、どのようにも決められない、宙ぶらりんの状態を回避せず、耐え抜く能力」
古くは詩人のキーツがシェイクスピアに備わっていると発見した「負の力」である。第二次世界大戦に従軍した精神科医ビオンにより再発見され、著者が臨床現場において腑に落ちる治療を行う上での支えとなっている。 
精神科医に必要とされるのは「共感すること」であり、治療ではなく「トリートメント」(ケアすること)。
また、主治医の処方はすぐに解決することを求めない〈日薬〉と見守っているという〈目薬〉だと指摘する。
「ネガティブ・ケイパビリティ」と対極にある「ポジティブ・ケイパビリティ」には、才能や才覚、問題の解決や処理能力を求めてせっかちに対処したり、見せかけ的な対応に走る嫌いがある。
著者は、これに関して、知識を詰め込んだり、早急かつ単純に解決を求めて問題設定をする現代教育のあり方を引き合いに出して、批判の目を向ける。その上で、学習速度にこだわらず、感受性を大事にし、問題解決が課せられていない芸術や研究の分野に必要な「運・鈍・根」に触れ、「ネガティブ・ケイパビリティ」を育てる意義を説く。
また、昭和18年10月、徴兵猶予の恩恵を廃止し、学徒出陣に至った史実や、「きけわだつみのこえ」の戦死者の言葉を取り上げ、戦時における「ネガティブ・ケイパビリティ」の欠如を嘆き、平和を維持する面からも為政者、国民ともども、この能力の発揮が必要であると述べている。
人間の脳には「分かりたがる」傾向があり、そのために、行き過ぎた知性化、拙速な理解といった弊害をもたらすことがある。逆に脳はポジティブで楽観的に考えるようにもできており、これを利用した医学的効用もあるなど医学者ならではの見解も興味深かった。特に、プラセボ効果が、薬だけでなく、外科的治療にも示されているというデータやプラセボにもノセボ効果という副作用があるという事実には驚かされた。
全体を通して、医療のみならず、文学や歴史に関する著者の博覧強記ぶりに感心したが、第一、ニ章のキーツやビオンに関する伝記的記述、第八章の源氏物語の内容を滔々と解説する部分は正直、ついていけず読み流した。
ちなみに、源氏物語に関しては、第ニ巻「帚木」、第十五巻「蓬生」が著者の名前になっていること、第十一巻「花散里」が著者の作品名に使われていることから、著者の源氏物語へのこだわりが垣間見れた。
最後になるが、自分は、問題解決に性急に対処するポジティブ・ケイパビリティを重視する傾向が強いので、どこまて対応できるかわからないが、この本で書かれている内容を教訓として、生かしていきたいと感じた。

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2023年10月22日

Posted by ブクログ

TVで紹介されていて、わたしに必要だと思い手に取った本。「日薬」なんとかしているうちになんとかなる、「目薬」ちゃんと見守っている目があると苦しみに耐えられる、という言葉がなるほどと腑に落ちた。

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2024年11月24日

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ビジネスの世界ではポジティブケイパビリティが求められる事が多いが、ネガティヴケイパビリティは精神的な強さの証明である気がする。早々に結論を出して楽になるのではなく、答えの出ない事態に耐える力。 問題解決をしたがる夫と愚痴を言って発散したい妻が相容れない、、という話を思い出した。

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2024年06月19日

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最近話題のネガティブ・ケイパビリティについて、早くからそれに言及していたという本書を読みたいと思っていた。
もっと学術的にネガティブ・ケイパビリティについて論じられていると期待していたがそうではなく、これはいわゆるエッセイだなと。
中にはそれらしい部分もあるのだが、それは僅か。そういう意味では期待外れではあった。しかし、ネガティブ・ケイパビリティに対して、現代の学校で行われているポジティブ・ケイパビリティに偏った教育の危うさや、ネガティブ・ケイパビリティの欠如がもたらす危険についての著者の考察は大変示唆に富むものであった。
現代は不寛容が大きく蔓延り、不寛容の象徴的なリーダーはトランプ元大統領、その発言はヒトラーに通ずる、そしてその先にあるのは戦争だという危惧は、現代社会の危険性を端的に表している。
例えば、対人援助の場面では、おそらくその全てがネガティブ・ケイパビリティの上に成り立つと言ってよい。次の瞬間には何が起こるか分からず、全てに対して臨機応変に対応しなければならず、労力は全て無駄になるかも知れない。終わりもわからなければ、始まりもわからない、正解もない世界。結果ではなくその過程に一番の価値があるような現場だ。
ただ、それは決して居心地の悪いものではなくむしろ、相手と共に一喜一憂することそのものが幸せだったりもする。
そのことにみんなが気がつけば、もっと生きやすい世の中になるのかもしれない。

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2024年03月16日

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容易に答えの出ない事態に耐えることが、能力として「ネガティブ•ケイパビリティ」と命名されていることを初めて知った。

私自身、サッと答えが出せずズルズルと考え続けたり、なかなかできるようにならず時間をかけたり、1+1=2のような分かりやすい回答や説明に違和感をもったりすることがあるが、それはそれで考えようによっては悪いことではないのかなと思った。

ネガティブ•ケイパビリティを論じながら、結果的に「『寛容』と『共感すること』が最も必要」という点に至っているところに、ネガテティブ•ケイパビリティの大切さを感じる。

「シェイクスピアと紫式部」など、途中理解が追いつかないところがあったので星3つとしたが、改めて再読し、理解を深めたい。

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2024年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ポジティブケイパビリティ=分かった、つもりの状態。低い次元で留まり、発展しない。
ネガティブケイパビリティ=どのようにも決められない宙ぶらりんの状態。その居心地の悪さにた得る能力。

医師は、病気が分からない、と告げるよりも、診断名を告げた方が改善率がいい。
鎮痛剤のプラセボは効く。プラセボは、脳内麻薬のエンドルフィンを分泌させることから効果がある。気のせい、のおかげでエンドルフィンが分泌される。ただし、前もって説明を受けて期待していることが前提。プラセボと知っていたら効かない。

瀉血は、一部のうっ血には効いた。ワシントン大統領は咽頭炎に2.5Lの瀉血を行い致命傷になった。
瀉血の有効性を信じていればプラセボ効果が働く。瀉血をしなかった場合との比較をしなかった。

ノセボ効果=プラセボでも副作用が出る。

現代教育がポジティブケイパビリティを助長している。問題解決のための教育。漢文の素読は反対の方法の教育。
世の中は簡単には解決できない問題の方が多い。学校教育では限界があるのはないか。問題解決能力(ポジティブケイパビリティ)だけでなく、解決しなくても持ちこたえる能力(ネガティブケイパビリティ)が必要。

ネガティブケイパビリティが無いところに共感は育たない。

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2024年02月27日

Posted by ブクログ

まだ理解が不十分なので、3の評価にしたものの、折に触れて読んで行きたいと思った1冊。現時点で一番、心に響いたのは「寛容は大きな力は持ちえません。しかし寛容がないところでは、かならずや物事を極端に走らせてしまいます。」というところ。分かりやすさの名のもとに、正解やスピードを求める風潮が強まり、疑問や違う視点を提示しにくい昨今、帚木さんの至言だと思う。

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2024年02月03日

Posted by ブクログ

 ネガティブ・ケイパビリティは、すぐに答えを出したいという欲求に抗い、耐え忍ぶ能力とのこと。耐えていれば、光明が見えて来たり、考えが熟成されより良くなる。この能力は、人生につまずいてしまったと「される」不登校や無職の人にとっては、幸せに生きるために必要だと思った。

一方で、ただ耐えるだけという行為は、周りの人間に都合良く使われてしまうこともあると思った。
全員がネガティブ・ケイパビリティを重視するなら、寛容な世の中になると思う。しかし、現状は、それを重視しない人間の方が多い。ネガティブ・ケイパビリティだけを重視するのは、危険に思う。

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2024年01月23日

Posted by ブクログ

答えが出ない、解決できない問題と付き合うために必要な資質や考え方についての本。多様な事例をもとに、ネガティブケイパビリティとは何か、どんな行動が該当するのかといった内容が列挙されている。事例やストーリーが多く、どのように資質を育んでいくべきなのかなど具体的な行動指南が少ないのが残念。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

 前半では、ネガティブ・ケイパビリティの概念を初めて言った(おそらく世界で初めて言い表し且つ書き物が残っている)詩人のキーツが、なぜその概念に至ったかと、キーツの死後にネガティブ・ケイパビリティを取り上げた精神科医ビオンがどうしてネガティブ・ケイパビリティに辿り着き、重要視するようになったかについて、詳細が描かれています。一般的なビジネス書とは異なり、個人の生い立ちや環境などから、個人がどのように生き、どのような考えを持ち、どうしてそこに至ったかが描かれており、表面的な説明・理解ではなく、概念的な深い理解につながる本だと思いました。教養という点でも良いかと思います。
 ただ、単純にネガティブ・ケイパビリティだけの説明・理解をめざすなら、別のビジネス本の方が簡単で良いかもしれません。
 後半は、ネガティブ・ケイパビリティに関係する内容ではありますが、後半自体が、ネガティブ・ケイパビリティを鍛えるかのようでした。

なんとなく精神科や心理学の先生が書いた本だなぁと感じました。(偏見かも。すみません)

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2023年12月24日

Posted by ブクログ

ずっと読みたいと寝かせていたので、読んでみている。用語の解釈や説明、どう向き合うかみたいな実用書かと思ったら、物語っぽいので少し意外。
本の内容がというより、勝手な期待が外れてしまったという意味での星3つ。

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最近よく、利害関係のない第三者(まあ金銭授受という意味では利害関係なのだろうけど)の存在がひとを癒すことってあるよなあと思う。著者が診療で聞いている「身の上話」も、それができる場があるだけで救われていることたくさんあるのだろう。誰もみていないところでする苦労ってつらいもんね。めげないように、トリートメント。

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脳は「期待」をするもの。脳の「期待」に刺激を与えられれば光明が見出せるという精神疾患へのアプローチはいい話だなと思った(そもそも薬を嫌う患者さんは、薬に「期待」していないので期待しているひとに比べて効果も落ちやすいらしい←これはだいぶ意訳)

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メモ
問題解決が余りに強調されると、まず問題設定のときに、問題そのものを平易化してしまう傾向が生まれる。

画一的な教育に対して警鐘を鳴らされているけど、ある程度仕方ない部分もあるよなあと思ってしまった(というかそれを教育現場に求めるのは主語が大きすぎるのではないかとモヤっとした)

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

ネガティブケイパビリティとは
分からないものを分からないままにしておく能力のこと。
ついつい私達はわからない物事をすぐに解決しなきゃと思ってしまうけど、
分からない事を分からないままにしておく事で、
より深い解釈や創造を得ることが出来る。
というのは理解したし、面白いと思うけど、
源氏物語とかシェイクスピアの戯曲のあらすじが
どうネガティブケイパビリティにつながっていくのかがいまいちピンとこなくて、そこが少し残念だった。

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

テレビで紹介されていたのを見て興味を持ち、読みました。

ところどころ面白くなくて読み飛ばしてしまいましたが、そういうことをしているのがネガティブケイパビリティの欠如の証なのかもしれないと思いました。

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2023年09月26日

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