本谷有希子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本書のタイトルにある「嵐」と「ピクニック」という相反する言葉の組み合わせに惹かれて購読。
もっと言えば、以前から積読している「夜のピクニック」を読まなくてはという意識と、偶然「嵐」の活動休止報道の時期が重なり、何となくタイトルに目が留まった、というたわい無い理由が大きかったかも知れない。だから、短編集だと買ってから気付いた。ちなみにこの作品は、13作品が収められた著者初の短編集で、大江健三郎賞受賞作。
①アウトサイド (10P)
問題児の女子中学生である「私」は、親のエゴでピアノを習わされるが何処も続かず、最後に行き着いたピアノ教室で優しい先生と出会う。しかし、どんなに根気よく教えても「私」には届かず、更に目に余る見た目から、習うのをやめる生徒も出始め、日に日に弱々しくなる先生。しかし、ある日のレッスンで、ピアノを弾く手首の下に尖った鉛筆の先端を近づけて指導する。「私」は恐怖を感じるが、その日から毎日鍵盤に触るようになり、怒涛の勢いで成長していった。そんな時、先生は教室をやめてしまった。離婚するらしい。旦那から自宅でピアノ教室をしていることを責められ続け、思春期だった娘にまで辛くあたられ、お義母さんの介護に疲れ、「私」の改心も先生の疲れ切った心にはもう届かない。ある日先生はグランドピアノの中にお義母さんを入れると蓋をして閉じ込め、半日放置したらしい。「私」はというと、先生がいなくなってからピアノを練習しなくなり、県で一番馬鹿な高校にも入れず、十七のときに子供ができた。ある時、お腹の子供が「私」をピアノに閉じ込めるところを想像し、自分もお腹に子供を閉じ込めていることに気付いた。誰だって自分が今、ピアノの中なのか外なのか分からないまま生きているのだろう。
②私は名前で呼んでる (10P)
とある女上司は、年下の部下たちと大事な会議をしていたが、視界に入ったカーテンの膨らみが無性に気になってしまう。どうせ何も居ない、でももしかしたら誰かいるんじゃ…女性だからといってなめられたくないプライドと、夢見る少女的な発想の間で葛藤するが、最後には急に会議室を後にして、「シューダダダ!」と叫びながら駆け回る。
③パプリカ次郎 (6P)
十歳のパプリカ次郎はおじいちゃんを手伝うため、屋台の売り子として市場に立ち、野菜を売りさばいた。そして帰る頃、幾つもの屋台を破壊しながら何かがやって来た。追われる謎の男女が屋台に突っ込み破壊、その後を黒いスーツの男たちが銃を撃ちながら追いかけ残ったものを破壊。慣れた様子で「あいつらはいつもわざと追われている」と言うおじいちゃん。なぜ逃げないのか聞くパプリカ次郎に、「露店商なら避けられない」と教えるおじいちゃんは、流れ弾に当たって死んだ。屋台を受け継いだパプリカ次郎は、何度目かの襲来時にスーツ男にしがみつくが、彼らは風のように速く走り、スーツに見える不思議な皮膚が剥がれ、パプリカ次郎は砂漠に落下。何日もかけて何とか故郷に帰り、今でも露店商を続けている。彼らはたまに破壊しにやってくるが、パプリカ次郎は誰よりもぶつかりやすい店先に立ち、激突していく彼らに最大の敬意を払い、なるべくオーバーリアクションで驚いてみせる。
④人間袋とじ (10P)
突然、しもやけを利用して足の小指と薬指をくっつけてみると言う彼女。戸惑う彼氏だったが、付き合いたての頃、足の二本の指にお互いのイニシャルを彫り合ったことを思い出す。薬指には彼氏、小指には彼女のイニシャルのタトゥ、それをくっ付ける意味が分からない。いい加減にしろと怒るが、彼女に見つめられ、最近ちょっかいをかけている女の子の存在がバレたのではと不安になる彼氏。
諦めたように「馬鹿馬鹿しくなってきたからやめる」「この皮膚裂いてよ」と言う彼女。そうして裂くのを手伝い、切れ目があと数ミリまで来たところで、指と一緒に二人の関係も終わることにようやく気付く彼氏。
⑤哀しみのウェイトトレーニー (21P)
夫に気を遣ってばかりいる妻は、夫がテレビで観ていたボクシング選手の身体に魅せられ、夫とは対照的なその肉体が頭から離れなくなり、次の日からボディビルダーを目指した。昔から、自分がこうだと決めつけすぎて、他の可能性を考えようとしない癖があり後悔していた。大人しい自分はジェットコースターなんか嫌いなはずという決めつけもその一つだ。もしあの時、みんなとジェットコースターに乗っていたら本当はどうだったんだろう。
だからジムに通い続け、職場でも隠しきれないほど身体が大きくなっていったが、何とか職場でも受け入れられた。そんなある日、とあるショックな出来事があり夫に弱音を吐いてみるが、夫のあまりに無関心な態度に涙を流し、家を出た。ジムへ行き、担当の若い男性コーチにトレーニングを頼み、「コーチが私のパートナーならよかったのに」と漏らしてしまう。その時、窓を叩く夫の姿。コーチが夫を迎えに行っている間、何か言いたそうな夫の目の前で、ガラス越しにボディビルのポーズをする妻。信じられない、という顔をする夫。
コーチに迎え入れられた夫は、不安そうにしながらも妻を抱きしめた。
それからは、夫婦で公園に出かけたりもするようになった。二人の体格差に道往く人が振り返るが、二人はまったく気にしない。
⑥マゴッチギャオの夜、いつも通り (13P)
動物園の猿マゴッチギャオは、新入りのチンパンジーが気になっていた。群れに馴染めない新入りに優しく話しかけ、オツムがよくてIQは人間の子供くらいあり、名前はゴードンだと教えてもらった。さらに他の動物のことや、笑顔だと人間と心を通じ合わせられる知った。その夜、人間がハナビを投げつけてきた。あれが当たるとすごく痛いし、赤い肉が見えるというのに、ゴードンはなぜか逃げず、ただ叫び声が響いていた。そして、口の端を持ち上げて心を通じ合わせようとしたが、そのうち人間が石を投げ出して、ゴードンは死んだ。
人間が帰ってから、マゴッチギャオたちはゴードンを囲んで祈りを捧げ、生き返らせた。生き返らせただけなのに、ゴードンはキセキだとか言って驚いていたが、マゴッチギャオは猿だから難しいことはあんましよく分かんない。
⑦亡霊病 (18P)
「亡霊病」は人生で一番幸せかもしれないという瞬間にかかる率が高い病気で、「自分じゃない感覚」の後、体が浮き平行移動する、口からエクトプラズムが出る、壁などを通り抜ける、体が薄くなり消滅、短時間で性格が変貌するという症状が表れる。
コンクールに入選した「アタシ」は、その贈呈式の最中に亡霊病が発症する。必死に隠そうとしながら、思考を巡らせ抵抗したり両親に感謝したりするが、無情にも悪口雑言を発して消滅。
⑧タイフーン (7P)
雨宿りをしている男の子に、ぼろぼろの服を着たおじさんがクッキーを差し出し、話しかけてきた。台風の中、ずぶ濡れでも傘を必死に差している人たちは、傘で人が飛べると信じているんだよと説明し、おじさんが3、2、1と数えると、傘をすぼめていた男性が空高く舞い上がっていった。その後不思議なおじさんも「バイビー!バイビー!バイビー!!」と言いながら消える。
おじさんは次の日、隣町で潰れて発見されたけど、飲み会でその話をすると、「バイビー!×3」のくだりで盛り上がること間違いなしだ。
⑨Q&A (12P)
仕事と家庭を両立し、かっこいい女性として持ち上げられ続けた80代?の女性がQ&A方式で、自分に対する世間のイメージや苦悩を正直に打ち明け、その後のお悩み相談でも、DV彼氏に困っているなら河原に呼び出し決闘を挑みましょうと言ったり、出会いがないと言う相談者にサドルをパートナーにすれば良いなどとふざけた事を言うが、それでも編集部はもはや神の声だと賞賛する。
⑩彼女たち (10P)
わけも分からず急に彼女に決闘を挑まれ戸惑う彼氏。場所を探して歩いていると、同じような男女に何組も出会う。男はみな悲しげな表情で、彼女たちは息を切らし、涎を垂らし、女性的なパーツが極端に変化し強調されていくようだった。そして数百組の壮絶な取っ組み合い。この彼氏は、「そのままの君が好きだよ」と言い、泣きながら棘のついた鉄球を振り回し、スタンガンを食らわせ、「お願いします。助けて」という彼女の頭を棍棒で何度も殴りつけた。彼女は川に倒れ、ゆっくりと流れて行った。
あのとき、本当は彼女がわざと負けてくれたんだと僕には分かっていた。なんて優しい彼女。君を失うなんて、死んでも考えられない。
⑪How to burden the girl (13P)
悪の組織と戦ういたいけな女の子だと思って助けることを決意したが、実際は巧妙に母親から父親を奪い子供を産んだヤバい女が、母親からの復讐を受けて殺し合っていた。そうとも知らずに好きになったせいで巻き込まれた男が、胸糞悪い思いをする話。
⑫ダウンズ&アップス (20P)
上部だけの権力者と、正直な凡人の価値観の話。
⑬いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか (10P)
試着室から全く姿を見せず、試着を延々と続ける謎の客の対応に苦労する店員さんだったが、日付が変わっても試着を続ける客を、逆に何としても満足させたいと熱心になり、ローラー付きの試着室ごと運び出して洋服を探しに外へ移動する事に。その間、謎の客の体型をカーテン越しに観察し、どうやら人と違う形に思えたが、結局その正体は分からなかった。坂の上まで運んで気が緩んだ時に、試着室だけが坂道を下り始めた。追いかける元気が残っていない店員さんは、声を振り絞り、「お客様!よかったら、その試着室のカーテンをどうぞ!」と叫んだ。
カーテンから突き出た手が、さよならするように振られ、道にはどこの国のものかも分からない紙幣が置かれていた。
それ以来、想像しながら歩く癖がついた店員さんは、野原に敷いたピクニックシートを見て、彼女に結構似合うんじゃないかと想像するのだった。
◯感想
全体を通して、タイトルでも感じた矛盾や意外性みたいなものが込められているように思った。
文学的というか、意味が分からなくて要約が長くなってしまったが、一つ一つの作品が個性的で読み応えがあったし、短編集はあまり好きでは無いと思っていたが、コレはこれで悪くないなと思えた。
その中で、アウトサイド、How to burden the girl、ダウンズ&アップスは、世の中にある表と裏の怖さを感じ、結構深い内容だと思う。
そして、私は名前で呼んでる、悲しみのウェイトトレーニー、Q&A、いかにして私が(省略)は、ユーモアのある作品で、特に哀しみのウェイトトレーニーは、男の肉体に惹かれていたと思ったら何故か自分がボディビルダーを目指したり、シリアスな場面なのにポージングしたりと、なかなかシュールで面白かった。いかにして私が(省略)に関しては、珍しい試着室の話ということもあり、お笑いコンビ、ロッチのネタが思い出された。内容的には試着が進まないと言う共通点以外関係なかったが、試着室ごと服探しに行くと言う発想がぶっ飛んでいて良かった。
パプリカ次郎やタイフーンはファンタジーって感じが強すぎてよく分からなかったため、いつか理解したいと思った。
以前の自分なら低評価になっていたかもしれないが、こういう楽しみ方もあるのだと再認識することが出来た。 -
Posted by ブクログ
SNS三部作(と期待して読むとちょっと違うかも。虚構と現実といった感じ。)
冒頭「本当の旅」のうすら寒〜〜い、痛々しい〜〜感じがもうたまらん。
SNSでは「イケて」て、他の人とは違う、クリエイティビティ溢れる仲間たち、であるところの40前後男女3人組がクアラルンプールへ旅をするお話。40ってとこがリアルに痛すぎてつらい。
SNSを、スマホを通して見る自分たちだけが本物。人生は金じゃない、大切なのはクリエイション。写真に写りこんだ冴えないおばさんも、動画の途中で外国語で文句を言ってきたおじさんも、トリミングしてしまえばなかったことになる。大丈夫、マジでチョーイケてる。
読んでいる間ずっと心がざわざわおしりがモヤモヤ落ち着かない。でも読んじゃう。
この痛さを真正面から真剣に描くあたり、本谷さんの悪口スキルをひしひしと感じる。
そしてとっても後味悪い。最後の最後までやってくれるわねという感じ。恐れ入ります。
3話とも、SNSというよりは何かしらに依存する話かなあ。本当の自分、とは。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ強烈な自己愛を持つ澄伽。
澄伽は高校卒業後、女優を目指して田舎から上京していたが、両親の事故死で4年ぶりに帰省。田舎に住む妹・清深や、兄そして兄嫁をまじえ、様々な騒動をまき起こす、というお話。
話が進むにつれ、ドロドロとした4年前の出来事が明らかになっていきます。
当時18歳の澄伽は、女優になるべく上京を望む。自身の才能を信じて疑わない澄伽は、上京さえすれば成功すると思い、上京の資金を貯めるため、身体すら同級生に売っていた。
澄伽は女優になりたいので上京したいと父親に訴えるが、澄伽の演技力は高校の文化祭ですら失笑されるレベル。父親は「お前に女優の才能はない」と一蹴するが、反発した澄伽は刃物を振り回して暴れ、兄に大きな傷を負わせる。
引っ込み思案の清深は、以前より澄伽の日記を盗み読みしており、澄伽の中で育つ自己愛を観察。この事件を機に澄伽の自己愛を何かの形として表現したいという衝動に駆られ、漫画にして応募してしまう。結果、この漫画は受賞。澄伽が同級生に身体を売っていたことを含めて内容は村全体に知れ渡る。そして。。
清深の分析は秀逸です。
「高校を卒業すれば、現実が日常に入り込んで来る割合は今までとは比べものにならない。・・・普通なら自信をなくす場面で、姉のプライドは一層高められ、自意識はますます強められていったのである。だから姉が社会に出て行くことは『姉の自我と現実との闘いなのだ』と清深は思った。現実が姉を呑み込むか、姉が現実を呑み込むか。」
自己愛は、自分を成長させる原動力になり得ます。一方で、自己愛が強すぎると、現実との折り合いをつけることが難しくなります。澄伽のように、「自分が何物でもない可能性など、あり得ない」と考えるまでこじらせてしまうと、もはや後戻りはできない。現実に呑み込まれてポッキリおれてしまうか、自己愛の対象に足るだけの成功をおさめるか、どちらかしか道はなくなってしまいます。
実際、澄伽の精神は、これまで侮蔑の対象だった清深にすら馬鹿にされていたという事実と、「ほらね。やっぱりお姉ちゃんは四年経ってもお姉ちゃんだ。最高に面白いよ。」という言葉で崩壊します。
「唯一無二の存在。あたしじゃなきゃ駄目だと。あたし以外は意味がないと。あたしだけが必要だと。誰か。あたしのことを。あたしを。特別だと認めて。他と違うと。価値を見出して。あたしの。あたしだけの。あたしという存在の。あたしという人間の。意味を。価値を。理由を。必要性を。存在意義を。今すぐ。今すぐに。だって死ねば終わる。終わる。消滅する。どこにもいなくなる。消滅する。死ねば終わる。終わる。終わる。終わる。・・・・」
澄伽の「終わる。終わる。終わる。・・・・」という言葉は約1ページ続きます。
自己愛で身を滅ぼさないようにしましょう。 -
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少し前の新聞に中村文則の「掏摸」が紹介されていた。中村さんは今や海外でも名を知られた作家だが、そのきっかけになったのが大江健三郎賞を受賞した本作が、賞の特典として翻訳されたからだ、という内容だった。
大江健三郎賞は聞いたことがあったが、選考委員は大江健三郎さんひとりで、賞金の代わりに海外に翻訳されて紹介される、賞は八年続いて既に終了しているということも知らなかった。
で、その賞の始めから終わりまでの受賞作の紹介とそれぞれの著者との対談を収録されているのが本作。
なかなか手ごわい本だったがおもしろかった。
受賞作のどれも読んだことが無いが、長島有の本は読んでみたいと思った。対談も一番楽しかった。
大江さんも最後の方で言及されている。
大江健三郎もよく知らなかったが、ご自身のことに触れられている部分も多く、知ることができた。
大江さんの文学に対する誠実さで成り立っていた賞だった。それを支えていた優秀な編集者も。 -
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ネタバレ作者は演劇の世界に身を置く人物であるので、きっと澄伽みたいに「実力はないけど、自尊心だけは高い」人物。
男性、女性に関わらずたくさん見てきただろう。
モデルはいるのだろうか。いるとしたら、作者は本気で嫌ってるんじゃないだろうか。
清深はどうだろう? 「不謹慎だと思いながらも物語のネタにしたくてしょうがない」人物。
これも沢山いそうだ。私生活を削って脚本を書く人。身近な人物をネタに使うわけだから、近ければ近いほどネタにしやすい。結果、ネタ元には嫌われる。こちらに対して、作者は同情的な立場にいるように思う。
タイトルの「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は誰から誰に対するメッセージなのだろうか。「腑抜けども」と複数形であるからには一対一の関係の中で発せられた想定のものではないだろう。
私には、作者から登場人物、ひいては演劇の世界に身を置く人たち全てに対して言っているように感じられた。身内を売ってでも、人の心を動かすものを作れよ、誰に嫌われてもいいだろ、と。 -
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「恋愛」ではなく「変愛」…変わった形の愛が描かれたアンソロジーです。
面白かったです。
ディストピア文学が大好きなので、「形見」が好きでした。工場で作られる動物由来の子ども、も気になりますが、主人公の子どもがもう50人くらいいるのも気になりました。色々と考えてしまいます。
「藁の夫」「逆毛のトメ」「クエルボ」も良かったです。藁の夫を燃やす妄想をしたり。クエルボはラストは本当に名の通りにカラスになったのだろうか。。
多和田葉子、村田沙耶香、吉田篤弘は再読でしたがやっぱり良いです。
岸本佐知子さんのセンス好きです。単行本から、木下古栗さんの作品だけ再録されなかったようですが。
表紙の感じに既視感が、と思ったら、多分小川洋子の「不時着する流星たち」の単行本の絵と同じ方でした。あったかいような不安になるような、好きな絵です。 -
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ネタバレ『異類婚姻譚』以来2冊目。既に崩壊しきっているる感のある家族で両親が死んでしまい、残された子どもたちと嫁いできたお嫁さんがいよいよ大変なことになっちゃう話。今年読んだ中でも屈指のヤバイ小説だった。もう本当に、ヤバイ以外の形容詞が思い付かないのだ。
『異類〜』は極めて近い人間関係が齎す発酵のようなものが非常に印象的だったが、こっちは発酵などといわず完全なる腐敗。もう捨てるしかないって感じ。
超絶自意識過剰ワガママ女に育った姉、間違った方法(だと私は思う)家族を守ろうとする嫁にDVする兄、家族の不幸を売り物にしちゃう妹、不幸欲張りセットな人生を歩んできたお嫁さん。楽しい話になる訳がない(ある意味めちゃくちゃ面白いが)。
丁度先日、引きこもりが小学生を殺害して自死を遂げる事件や、元政府高官が絵に描いたようなドラ息子を殺める事件があった。こうした家庭の問題(家庭が悪いという意味でなく、家庭の中で発生している問題)は、往々にして家庭内で解決するものではないと思う。
私も、嫁(私の母)小姑義父母の絡む問題が持ち上がって実家がヤバイことになっていることがあった。私は実家は出ていたので、個人的に外部の人に相談し、色々な知見を得たのを覚えている。家族の延長ではあるが、嫁の実家だったり知人だったり。家族の常識が傍から見れば非常識であることは結構あって、私も二十歳頃にカウンセリングを受けているなかで初めて家族の持つ「いやそれはおかしいよ」という点に気付いて目から鱗が落ちる思いをした。今は家族が好きになっている。
だから、窓を開けて換気をするような行為が、家族には必要なのだと思う。
そうした視点から本作の家族を見てみると、もうどんどん殻にこもる方向へひた走っている。人様に家庭の問題が妹のせいで外に漏れた(しかも噂がガンガン広がっていくムラ社会で)ことで、ますます煮詰まっている感がある。中でもこの傾向が一番強いのが兄で、俺がなんとかしなければと努力する方向性がヤバすぎる。まるで、火事になった家から外に飛び出さず、まだ燃えていない部屋に逃げ込んでいるかのようだ。
それだけに、最終盤で動く物語は、多大すぎる犠牲を払いつつも、打ちのめされた登場人物たちがスタート地点に立てたのだという爽やかさを感じないでもない。こんなこと『異類〜』でも書いた気がするな。
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