本谷有希子のレビュー一覧

  • 嵐のピクニック

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    13の短編が収録されている。まず2つの作品を続けざまに読んだとき僕は、ずっとこれを求めていたに違いない! と目の覚めるような想いとともに、自分の読書脳と創作脳がほの温かく躍動し始めるのを感じたのでした。わかりそうな人たちに、「ちょっとこれ読んでみ」と前のめりで薦めたい。見つけた!感が泡立つのです。

    話を展開をしていくために言葉のバランスを考えたり表現を考えたりしながら書いている部分と、内容や自己に沈潜して書いている部分と、そしてもともとの発想があると思うのだけど、三位一体的でした。そしてぎゅっとして無駄がない。

    以下、とくに好きだった3作品についての感想です。

    「私は名前で呼んでる」

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    2022年10月26日
  • 異類婚姻譚

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    ネタバレ

    結婚や家庭に関する寓話4作。根底には人と関わりたくない思いがある気がした。
    結婚すると互いに似てくるとはよく言うけれど、それを溶解していく妖怪のように描いたのは風刺がきいてて面白い。粗相をするからという理由で山に捨てられる猫のサンショと、主人公のサンちゃんは名前が似ているし、夫婦は互いに尻尾から食べ合って頭だけが残る蛇ボールだという話を聞く時サンちゃんは鰻の食べ比べ弁当に山椒を振って食べている。最後に山芍薬になった夫を、サンショを捨てた山に植えに行く。隣に咲くよく似た竜胆はサンショであってサンちゃんなのだと思う。
    キタヱさん夫婦や弟カップルの様に似ない夫婦もいて、それは間に「何かを挟んでいる」

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    2022年10月10日
  • 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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    小説でここまで感情をむき出しに伝えられるのはすごい。
    パッションに圧倒されつつ、自分も勘違いな学生時代を生きていたよなって思い出しながら主人公のことがちょっと愛しく感じる。手段を選ばなすぎてちょっと引くけど。

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    2022年08月06日
  • 【無料版】『あなたにオススメの』抜粋 書下ろしエッセイ付き

    購入済み

    推子のデフォルト、面白い!

    推子のデフォルト、面白かったです…!登場人物や物品のネーミングがユーモラスで、でも内容はシュールで、終始不穏な感じなのにサクサク読めてしまいました。推子が他人の悩みを内心面白がっている様子は確かに悪趣味ではありますが、実際に他人に対して酷いことを言ったりしたりするようなシーンはありませんので、そこまで胸糞悪くなるような話では無かったです。むしろ自分にも少し、そのような部分があるのでは?と振り返るきっかけにもなりました。

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    2022年02月01日
  • あの子の考えることは変

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    久々に小説を読んだけど一気に読んでしまったくらい引き込まれた。2人に共感したり切なくなったり嫌悪を抱いたりでも愛おしかったり、文章も雰囲気も全部が好き。こういう小説が好きなんだよなあ〜と嬉しくなってしばらく小説離れしてたけど同作者さんの他の作品も読みたくなった。

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    2022年01月11日
  • 自分を好きになる方法

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    ネタバレ

    自己啓発風タイトルの小説。

    怖い。

    孤独というか、運命の人を諦められない人を間近で見ている気分。滑稽だが、私にも確実に同じ面がある。たまからより怖く感じる。

    歳を重ねて、経験を重ねたから何でもハッピーエンドにはならないのかなと最近思う。

    しかし、この小説が、あくまで滑稽で怖い瞬間を切り取って見せているからそう思うのであって、私たちも楽しい日と苦しい日を交互交互に過ごしている。

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    2021年08月03日
  • 『静かに、ねぇ、静かに』刊行記念 無料試し読み! 本当の旅

    購入済み

    怖い話

    中年の、精神的に成長が止まったような社会から排除されそうな3人のアジアへの旅道中が描かれて入る。読者は3人の思考が歪んでいることに気づいているが3人は全く気づいていない。結末がホラーより怖い話だと思った。

    #深い

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    2021年06月20日
  • 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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    幸せって諦めることなんだな
    どれだけ酷い仕打ちに遭っても不幸中の幸いを見出そうとする待子の姿が印象的だった
    相反して自分だけは特別だと思い込む澄加はどう見ても痛々しかった
    自分に似た部分があるから余計に
    ある程度の諦めが大事なのかもしれないな
    映画の方もまたみてみたい

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    2021年01月15日
  • あの子の考えることは変

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    昔京王井ノ頭線の『三鷹台』という駅の側で私は生活をしていました。
    この本はその三鷹台を離れ、高円寺に在住の頃購入しました。この作品のシンボルは、おっぱい、ゴミ焼却場、男性器、、、ちょっとびっくりするけど本谷有希子さんならではだと思います。

    取り分け、私達に取り憑いている、ダイオキシンをだしている(と、主人公達が思っている)高井戸のゴミ処理場は通勤でいつも見ていたので、なんとなく彼女達がぼんやりと空想にふける様が想像できたのですいすい読めました。しかもなんら抵抗もなく。

    内容はざっくりいえば、痛い(かもしれない)女子の思い込みとか、不安や妄想を表出しあったり、日々の様を斜に構えて見ていたとし

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    2020年12月24日
  • 嵐のピクニック

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    一冊の本でジェットコースター体験ができる。

    「は??」
    「ええええ!!」
    「嘘だろ…」
    「どういうこと」

    新しい話を開くたび、常識や現実が派手に壊される。
    なんだこれ、なんなんだコレ。

    ただ間違いないのはどの話も恐ろしく面白い。
    どこかが確実に狂っているあべこべな世界なのに、妙な現実味と手触りがある。
    一度読み始めたら最後、終わるまで降りられない。

    本谷有希子という奇才のエンターテインメント性を
    思う存分楽しめる大満足の一冊だった。
    個人的には「哀しみのウェイトトレーニー」「亡霊病」がすき。

    彼女はヤクでもきめてるのか。

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    2020年04月24日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

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    2019年09月14日
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)

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    ずしりと響いた。
    自分が自分のことをわかってないのに、それを全部分かってもらおうなんて無理な話。
    葛飾北斎の波を描いた絵が、現代の技術を駆使して撮った写真とちょうどぴったり重なって見えるその確率5千分の1。
    それがうまくこの話を盛り上げてくれてて、実際にどんなものか見てみたくなったし、知ってから絵を見ると見方もかわって今では絵まで好きな作品になった。
    本当にぴたりと重なってるように見えて、小説の内容は勿論、絵と写真、2度楽しめました。

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    2024年08月21日
  • 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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    異常な自尊心とそうではないものとの境界はどこなんだろう。人に必要とされたい要求、特別だと思われたい要求は、人間の普通の感情な訳で、でもそこがあまりにも高いとその人にも周りの人にも悲劇を生む結果になる。自尊心は大切だ。誰のものも。ただ相手を大事にすることが行き過ぎると、自分を粗末にし汚してしまうことも起こる。本末転倒だ。自尊心をコントロールするバランスはなかなか難しい。

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    2017年01月07日
  • 自分を好きになる方法

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    リンデはおそらく多くの女性の映し出す鏡のような存在だろうなと読みながら思った。だから、嫌悪もするし、こうなりたくないとも思う。でも、この日本には多くのリンデがいるのだと思う。おそらく私もその一人。まだ私はリンデのすべての年齢を超えていないけれど、年齢をとるということは孤独にも近くなるのだと思った。

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    2016年09月10日
  • 嵐のピクニック

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    シュールなユーモアが光る短編集。
    日常の風景の中に絶妙な違和感を埋め込んだ世界観に、ぐいぐい引き込まれた。
    著者の想像力に脱帽。
    「マゴッチギャオの夜、いつも通り」、「亡霊病」がとくに印象に残った。
    「Q&A」の畳み掛けていく語り口調も面白かった。

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    2016年09月09日
  • 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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    「もう誰も思い出せないほど昔からこの家で活動する扇風機の生温かい送風を受け、彼女の短い黒髪、制服のスカートの裾だけがもがく生き物と化し、バタバタとはためいては逃亡の意志を見せている」

    言葉が視覚的な意味で具体的。全ての場面が映画の一シーンのように脳に浮かぶ。さすがだと思いました。
    読み返してみると姉以外はほとんど心理描写がなく迷いや期待もどこか遠くから解説しているようで。その無関心さが、逆に(読み手にとって)救いであるように感じた。

    浅はかで残酷で、人間として何かを踏み外していて、やっぱり彼らは愛おしい兄妹なんだなと思いました。
    最後に言葉が全部自分に跳ね返ってくる皮肉的な終わり方も良い。

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    2016年03月07日
  • 嵐のピクニック

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    この人の書く文章は心地よすぎて、いっそ毒であるように感じる。「哀しみのウェイトトレーニー」「亡霊病」「Q&A」がとくに好き。

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    2015年08月08日
  • あの子の考えることは変

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    やっぱり本谷さんの描くパニックの緊迫感がすごい。

    狂気のぶつかり合いが、なぜだか嫌悪感と爽快感を生み出す。

    いまの東京で生きてくことの幸せってなんだろうと考え込んでしまう。

    この作品は、青春エンターテインメントらしい。
    これをエンターテインメントといってしまっていいの?…

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    2014年08月02日
  • あの子の考えることは変

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    きっとこの物語は日田と巡谷のピークのときだけを切り取った話で、これからも巡谷はグルーヴ先輩になって死にたいとか思うときがくるんだろうなとか思った。

    それに、出てくるサブキャラ(この物語に正常な人は出てこないが)たちのその後が気になって、それを考えると思わず笑ってしまう。

    横ちんは延長コードで縛られたままなのかな、ゲシュタポは今でも日田の「すいませぇ〜ん」の声を聞いていて、壁を延々と殴っているのかなとか。

    でも、S区に住んでいる人たちは症状が発症してるからきっとそうなんだろうな。

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    2014年06月14日
  • グ、ア、ム(新潮文庫)

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    ほんと面白かった。
    娘しかいないお父さんって、このタイプ多いよね、と。
    サービス精神が溢れてしまっているかんじ。
    方言の会話がテンポ良くて、読んでいるうちに自分が
    おもち(何代目?)になって一家と一緒に過ごしているような。

    帰宅時に何か読みたいなと職場の文庫書架で目についた一冊を考えなしに手に取ったのだけれど、この直前に『死刑のための殺人』を読んで「砂漠のような家族」に戦慄していたので、「大丈夫、こんな家族もあるよ」と慰められた。
    こういうことがあるから本の虫は止められない。

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    2014年06月03日