本谷有希子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
13の短編が収録されている。まず2つの作品を続けざまに読んだとき僕は、ずっとこれを求めていたに違いない! と目の覚めるような想いとともに、自分の読書脳と創作脳がほの温かく躍動し始めるのを感じたのでした。わかりそうな人たちに、「ちょっとこれ読んでみ」と前のめりで薦めたい。見つけた!感が泡立つのです。
話を展開をしていくために言葉のバランスを考えたり表現を考えたりしながら書いている部分と、内容や自己に沈潜して書いている部分と、そしてもともとの発想があると思うのだけど、三位一体的でした。そしてぎゅっとして無駄がない。
以下、とくに好きだった3作品についての感想です。
「私は名前で呼んでる」
カ -
Posted by ブクログ
ネタバレ結婚や家庭に関する寓話4作。根底には人と関わりたくない思いがある気がした。
結婚すると互いに似てくるとはよく言うけれど、それを溶解していく妖怪のように描いたのは風刺がきいてて面白い。粗相をするからという理由で山に捨てられる猫のサンショと、主人公のサンちゃんは名前が似ているし、夫婦は互いに尻尾から食べ合って頭だけが残る蛇ボールだという話を聞く時サンちゃんは鰻の食べ比べ弁当に山椒を振って食べている。最後に山芍薬になった夫を、サンショを捨てた山に植えに行く。隣に咲くよく似た竜胆はサンショであってサンちゃんなのだと思う。
キタヱさん夫婦や弟カップルの様に似ない夫婦もいて、それは間に「何かを挟んでいる」 -
購入済み
推子のデフォルト、面白い!
推子のデフォルト、面白かったです…!登場人物や物品のネーミングがユーモラスで、でも内容はシュールで、終始不穏な感じなのにサクサク読めてしまいました。推子が他人の悩みを内心面白がっている様子は確かに悪趣味ではありますが、実際に他人に対して酷いことを言ったりしたりするようなシーンはありませんので、そこまで胸糞悪くなるような話では無かったです。むしろ自分にも少し、そのような部分があるのでは?と振り返るきっかけにもなりました。
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Posted by ブクログ
昔京王井ノ頭線の『三鷹台』という駅の側で私は生活をしていました。
この本はその三鷹台を離れ、高円寺に在住の頃購入しました。この作品のシンボルは、おっぱい、ゴミ焼却場、男性器、、、ちょっとびっくりするけど本谷有希子さんならではだと思います。
取り分け、私達に取り憑いている、ダイオキシンをだしている(と、主人公達が思っている)高井戸のゴミ処理場は通勤でいつも見ていたので、なんとなく彼女達がぼんやりと空想にふける様が想像できたのですいすい読めました。しかもなんら抵抗もなく。
内容はざっくりいえば、痛い(かもしれない)女子の思い込みとか、不安や妄想を表出しあったり、日々の様を斜に構えて見ていたとし -
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Posted by ブクログ
「もう誰も思い出せないほど昔からこの家で活動する扇風機の生温かい送風を受け、彼女の短い黒髪、制服のスカートの裾だけがもがく生き物と化し、バタバタとはためいては逃亡の意志を見せている」
言葉が視覚的な意味で具体的。全ての場面が映画の一シーンのように脳に浮かぶ。さすがだと思いました。
読み返してみると姉以外はほとんど心理描写がなく迷いや期待もどこか遠くから解説しているようで。その無関心さが、逆に(読み手にとって)救いであるように感じた。
浅はかで残酷で、人間として何かを踏み外していて、やっぱり彼らは愛おしい兄妹なんだなと思いました。
最後に言葉が全部自分に跳ね返ってくる皮肉的な終わり方も良い。
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