本谷有希子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
完敗。
テンポよい北陸の方言での会話や、“おもち”のネタでゲラゲラ笑って勢いよく読み終えてしまったけれど、解説を読んで本谷さんの鋭さを感じて怖くなってしまった。まるで、頭のキレるやり手芸人だー。(なぜか残っているつまらぬ芸人ではなく、頭の冴えたずるがしこい人間。)
母、姉と3人で私もグアムに行ったことがあり、小説に登場するナイトマーケットの情景が容易に思い描けた分物語の迫力が3倍増しくらいになった。 なんて書きたいわけではなく、、、
本谷さんの表現する対象が、とっても好ましい! 痒い所に手が届く とはこのことであろう・・・ 生きることに大半の時間を割いている つまらぬ日常をぬかりなく切り取って説明してくれる。
読解力のない自分には、こういうことぐらいしか本谷さんの魅力は解らないのだろう・・・ ああ悲しい。
家族の存在を確認するためにも。もう1回読みます。 オススメ!! 生きてるだけで、愛 を読んでウツウツさで苦手な方も グ、ア、ム は読めると思います。
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Posted by ブクログ
『時代が時代なら「うつけ者!」と斬りつけられてもおかしくないほど集中力を欠いた状態である。』
『人の顔に点在するほくろを線でつなぐと何かのメッセージが浮かび上がってきそうで怖い…だの。』
『長女は「妹をアリバイ工作に利用した、睡眠時間経過の誤認トリックを思いつきましたので」と泣き、「わけが分からん!」と父親からさらに怒られていた。』
『うるさいな、おとん! あほ! おとんがあほや! おとんが将来ぼけろ! ぼけ老人になれ! ー ぼけたらほっぽり出してやる! 裸で近所、うろうろしろ!』
『ちなみに長女が状況する際、彼が同様に出した条件は"AV女優にならないこと"だった。』
『信用金庫の同僚ともそれほど信用のある付き合いはしていない。』
『今のはたぶん「オランジィ・ジャゥス、プリーズ」と発音せねばならなかったに違いない。 ー 「オランジィ・ジャゥス」と言わなかったばかりにトメィトォ・ジャゥスが目の前に来てしまった。』
『「ビーファーチッキン?」もうビーファーとしか聞こえない。どうせお前ら分からないだろうと高をくくり、本当にビーファーと言っているとしか思えない。』
『あー、何が幸せなのか分からないけど、今が幸せじゃないことだけは、分かる。』
『ああ、一人って楽だな。人間って他人といなければストレスなんて発生しないんだな、と思えてきた。』
『やきもきー、と実際に声に出して言ったのは、彼女にとってもこれが人生で初めてのことである。』
『やがて次女が死刑台にこれから上がろうとするかのような表情でバスルームのドアを重々しく開けて現れ、そこから一歩も動こうとせずに声を発した。』
『お前はいっつもそんなんやからやろ? なんでお前はいっつもそんな自分が正しい、みたいな言い方するんじゃ。なんの、どんな根拠があってお前が正しいんじゃ。』
『もういい。なんでもいいから、おかん、喜ばせよう ー 楽しいふり、しよう』
『甘酸っぱ辛い!』
『苦悩なんて誰にでもできるということに気づいて、じゃあもうそういうのは他の人に任せようと目をつぶった。そうだ、苦悩なんて誰にでも、できる。』 -
Posted by ブクログ
ネタバレどのお話も、奇妙なんだけど
なんか知ってる感覚。こういう人いるな、と思う。
世界観が好きだなあ。
トモ子のバウムクーヘンだけ、
はてな?だった。
解説がわかりやすくてありがたい。
・異類婚姻譚
ある日、自分の顔が旦那の顔と
そっくりになっていることに気が付いた。
書き出しから面白い。
そのことを、同じマンションで知り合ったキタヱさんに
話すと、彼女の友人夫婦の話を聞かされた。
10年ぶりに再会した友人夫婦が
双子みたいにそっくりになっていたそうなのだ。
食の好みも明らかに似てきているのに、
本人たちは気が付かない。
だが、さらに10年後再会したときは、
二人は元の、似ても似つかぬ他人に戻っていたらしい。
「キタヱちゃんにだけ、どうしてあたしが
元に戻れたのか、教えてあげる。」
寝室の石ころがどんどんあの人に似てきて、
入れ替えるうちに次から次に溜まっていった。
石が、自分の代わりになってくれたようだ。
私も注意して見ると、
旦那の顔は臨機応変に変化しているようだ。
私と二人のときは気が緩み、目や鼻の位置がなんだか
適当に置かれたようになる。時々、私の目鼻の間隔を
真似ていることがあって、どきりとさせられた。
元妻と向き合うときは、きっと人の形に戻るのだろう。
「ソファに寝そべる姿を見るたび、私はまるで自分が、
楽をしないと死んでしまう新種の生き物と暮らしている
気分になる。楽する、ということに対して、どうして
ここまで後ろめたさを感じないでいられるのか、
いつの間に私は、
人間以外のものと結婚してしまったのだろう。」
まあ、そう思う気持ちはとても分かる。
生活を共にすると、旦那が同じ人間とは思えないくらい
理解不能な生き物に思えてしまう時がある。
向こうも私を見て「サンちゃん、劣化したなあ」と言う。
変化、劣化、もしくは元々の本質が現れたか、
いずれにしても、そういう、その人の全てを飲み込んで
似通って、一人の人間になってしまうくらい強い力が
結婚生活というものには、あるのかな。
弟の彼女ハコネちゃんが結婚に踏み出さない理由は、
結婚に対する恐ろしさがあるのかも?
あるときから旦那は揚げ物ばかり作って、
私に食べさせるようになる、それを黙って受け入れる。
そんな私を見透かしたのか、キタヱさんの夫には、
「あなたはもう少し、ちゃんと人の形をしてたかなあ。
キタヱが話していた友人夫婦の石みたいに、
旦那さんとの間に何か挟んだほうがいいかもしれないね」
と言われる。だんだん侵食されていくのが怖い。
段々、主婦(私)の真似事をし始める旦那に苛立つ、
逆に私は、旦那のようにソファに転がりお酒を飲む。
旦那の後頭部の髪は、私の髪を真似て伸び出す。
ついに「私じゃないものになりなさい!もう、
山の生き物になりなさい!」と命じる。すると、
旦那は白くて可憐な山芍薬に姿を変えた。私はその花を
キタヱの猫を捨てに行った山へ還しに行った。
寂しいだろうと、近くの竜胆を、隣に植え替えてあげた。
翌年、旦那に会いに行くと隣に一緒に植えた竜胆が、
旦那の花とよく似ていることに気付き、
寒気がして逃げ出した。
私は最終的に、一つになるのを拒んだことになる。
何かとずっと一緒にいるって、恐ろしい。
二対の蛇が、お互いの尻尾から同じ速度で食べ合って
最後には頭だけが残るという蛇ボールの話が面白かった。
頭までぱくりと食べると、最後には自分も相手もいない、
空っぽだけがある。
(小川洋子さんの「無限ヤモリ」にも似たものを感じる。)
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・犬たち
切り絵作家の作品の複製を作る仕事をしに、
雪に埋もれた山小屋にやってきた。
そこで、謎の白い犬たちに出会う。
町へ降りると、人々は何かに怯えていて
「犬にはくれぐれも用心してください」と言われた。
ある日、凍った井戸の底に誤って落ちた白い犬を
なんとか助け出したとき、
「確かに、合格だ」と犬たちは会話していた。
私は犬を助けたことで、生き残ることができたのか?
町には誰も居なくなっていた。それでも私は構わない。
最後は犬たちと寄り添って眠り、
肌にうっすらと白い毛が生え始めた。
昔、行方不明になった町人は、この白い犬たち?
人嫌いの私にとってはハッピーエンドだろう。
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・トモ子のバウムクーヘン
自分の世界が、途中で消されてしまうクイズ番組だと
理解した、から始まる。
飼い猫が、振りをした知らない生き物だったら、
子供達が、そっくり別の何かに入れ替わっていたら、
そんな想像が頭をよぎる。震える足で、キッチンに戻り
バウムクーヘン作りを再開する。
クイズを出す機械だけが延々と動いていることを
知りながら、誰も指摘しようとはしない。
どこまでも日常は続いていく。
いつ、どこから
この日常に綻びができるか分からない、
という恐怖なのかな?
日常が綺麗すぎて、出来過ぎていて、急に怖いものが
飛び出てくるんじゃないか、というキリのない不安。
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・藁の夫
トモ子の夫は藁で出来ている。自分の意思で結婚した、
自分達の前には、幸せへの道が用意されているという
確信があった。ところが突然、
トモ子の車の扱いについて怒り出す夫。
怒りとともに、藁の隙間から小さな楽器が溢れ出し、
最後には、中身が空っぽの藁だけが残る。
「乾いた藁は、どんなふうに燃えるのだろう。
きっと少しの火であっという間に燃え上がるに違いない」
そんな想像をしながらも、溢れた楽器たちを、
藁の中に戻す。仲直りした二人はまた日常に戻る。
あり得ない状況なのに、すごく映像が浮かんでくる、
不思議な感覚。藁っていう見た目の情けなさと、
執拗に責める感じが、嫌な気分にさせてくる。なんで
こんな、かすかすの藁に責められてんだ?と笑
いつか藁を燃やしてしまう日は、くるかな?
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