本谷有希子のレビュー一覧
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「夫婦というのは不思議なものである」
言わずもがな、なんて身も蓋もないかな。
当然といえば当然なのだから。きっと家族になる過程で何かがあるのだろう。もしかしたら目に見えないだけで、夫婦ってこういうこともあるのかなあ、なんて、それもまた然り、なのかもしれない。異変や変化に気付くこと、気付けそうで気付かないこと、気付いているのに気付かないふりをすること…いろいろあるけれど、見てみぬふりのほうが、結局のところ、わかりやすくて良いのかもしれない。
きっと物語は、夫さんにもあるのだろうし、むしろ無いわけがないだろう。きっと彼も、あれやこれや折り合いを付けて、折り合いを付けて…付けて、付けて、付けて付けて、たどり着いた姿が山芍薬だったのだ。僕は、彼の平穏を願わずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
ヤンキーのオーナーたちとの隔たりが切ないんだけどなんかギャグっぽくも思えてあまり深刻になりすぎずそれがよかった。寧子が自分と津奈木との関係を葛飾北斎の絵の奇跡的1秒に喩えたくだりが良かった。多分、ピカソ展のあとのラーラリラーとラーラリヒーのくだりがこの二人にとって富嶽三十六景的瞬間だったんじゃないかと思う。人間なんて基本的にわかり合えないものだし、その一瞬があっただけでも元は取ったのではないかな。
あの明け方のの時間軸は素直に生き愛の後日談と捉えてよいか?別れたものだと思ってたけど津奈木と寧子があんな感じで続いてるのが嬉しかったし愛しいな〜と思った。 -
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純文学作家の発想
ひとつづつ評していく。
川上弘美。未来SF。
発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
妙にSFが現実路線のわりには、ふはっとしてあいまいだ。雰囲気小説のたぐひか。さいきんの川上弘美には『大きな鳥にさらわれないよう』等、未来小説がある。
多和田葉子。
川上弘美より面白い。
純文学らしく突っかかる表現が冒頭から続く。生花で花の首をちょんぎるだの、乱暴な表現は筒井康隆を想起した。独特で考へ抜かれた奇妙さを意識して、多和田自身も意図しない効果が出るやうな浮揺感を狙ってゐる。言語にこだはるナショナリストぶりもあらはれて、いつもの社会諷刺もある。
全体としては普段の多和田の域をつかず離れず。 -
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共感はできないが、理解はしたい。私は寧子に腹が立ってしまったが、寧子のような感情や精神状態が、私に1ミリもないとは言えない。「生きづらい」だって感じるし、どうして皆んなは普通にできることが自分にはできないんだろう?と思う事柄だってある。人に自分を見透かされている気がする感覚だってわかるし、人の善意に逃げ出したくなる気持ちもわかる。なにより、たった1人でいいから、自分の全部を心から肯定して欲しい、この欲だけには激しく共感。って、書きながら思ってたより共感してたことに気づいた。
「あたし、楽されると苛つくんだよ。あたしがこんだけあんたに感情ぶつけてるのに楽されるとね、元取れてないなぁって思っちゃうんだよね。あんたの選んでる言葉って結局あんたの気持ちじゃなくて、あたしを納得させるための言葉でしょ?」
「あたしを怒らせない一番の方法はね、とりあえずうなずいてやり過ごすんじゃないから。あたしが頭使って言葉並べてんのと同じくらい謝罪の言葉考えて、あたしがエネルギー使ってんのと同じくらい振り回されろってことなんだよね」
「あたしと同じだけあたしに疲れてほしいってのはさ、やっぱ依存?」
「別れてもいいけど、あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね一生。いいなぁ津奈木。あたしと別れられて、いいなぁ」
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