あらすじ
あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで──。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。
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まさに本谷有希子作品。誰もが持つ人間の嫌な部分を蒸留して千倍濃縮したような毒性がありますよね。
素直に共感はできないが、自分の中にある何がえぐりだされて後ろめたさを感じるような。
すごく良かったです。
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この子と同じ切実さで全身がぐったりした。なんとなく思い当たるような惨めさをひとつ残らず目の前に突きつけてくる力強さに痺れた。読み終わった後も言葉の渦が頭から消えない。
家庭環境の複雑さに縛られていることはパーソナリティに大きく関わる事柄のはずなのに、こうした情報が整然と提示されることはなく、むしろ向伊との交渉という物語の必要によってようやく明かされる。そういう事情と向伊との交渉がどうやら一続きであるようだと読み手の立場からは受け取れてしまうけど、彼女自身は全く関心を払っていなそうなことにビックリした。他にも何が語られないかを見ると面白くて、向伊とのセックスも妄想の内容は生々しく描写されるのに実際の行為については割愛されることとか。ひたすらに自意識のたたかいの話だった。大好き
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タイトルの「ぬるい毒」まさにそのまま(笑)
すごいタイトルがしっくりきたし、手が止まらない面白さがあったので星5。
こんな男に5年も……もったいないね(´;ω;`)
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主人公の考え方に共感?というか自分に似たものを感じて、どんどん読み進めてしまいました。
ただ、途中の時代劇のような場面は理解ができませんでした。が、そこをどんな意味があるのだろうと考えることもまた面白さがあるなと思いました。
人間の汚さとか東京の大学生の下品さが自分もその場にいるように感じるくらい伝わってきて、気持ち悪かったりしますが、それが癖になっていきます。
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⚫︎感想
まず、知らない人から電話がかかってくるパターン、好きだった笑 一気に読むつもりはなく読み始めたけど、一気読みした。
自分が自意識過剰だと気づかない19歳。もう昔の自分でもないし、その他大勢の女どもでもない。全てを分かっている。馬鹿にされていることも分かった上で、手のひらの上で転がされているのを演じている。いつかひっくり返してやる。…という全能感に近いような思いを秘めている反面、自分の欲望をコントロールできてはいない、そんな若く危うくて、自分のことが嫌いで好き、尊いけど本当は矮小で一般的な主人公や他の登場人物を通して、読者は多かれ少なかれ、どこかに自分の姿を思うのではないかと思った。こんな気持ち悪い登場人物ばっかりの世界、ある?と思ったけど、読み終わった頃には、振り返ってみれば20代前半、拒絶したくなるような、恥ずかしい、未熟な自分が確かにいたよなと思わされ、「ぬるい毒」がまわった。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで――。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。
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向伊にどんなひどい目に合わされるかと怖くて、でも続きが気になって読み進めた。
とことん侮蔑されたら意外と平気だった。
恐れているものに目を背けず対峙すると案外スルッと抜けだせるのかも。
Posted by ブクログ
本屋で手に取り数ページ読んでみると、これは自分を投影させた話のように思えて思わず購入してしまった。
家や容姿、過去の経験などから構築された圧倒的な熊田の自意識と、向伊の出現により熊田自身が向き合わなければならない状況へと引き摺り込まれる様子をまざまざとそして冷静に描かれている様に感じた。
ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかも読み手に委ねられているようだった。
Posted by ブクログ
なんだかヌメヌメとしたものが心の中に張り付いてくる1冊。
これは恋なのかはたまた恋じゃないのか
分かってた上で近づく主人公
でも実は私たちの周りでどこでも起こっていそうな。
いい意味での気持ち悪さがある話だった
Posted by ブクログ
ゆったり、ねっとりとしていて最高だった。ムカイのクズ男っぷりも最高。自意識過剰すぎるクマダさんも最高!
好きな男と不幸になる幸せ,,, はぁ、うっとり。
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自分もいつかぬるい毒に陥ってしまう時が来るのかもしれないと思った。魅力の塊のような男性に出会ってしまったら、私はどうするのだろう。もう出会ってしまった時点で毒されてしまう気がする。非常に非現実的な側面を持ちながら、自分もいつかそうなってしまいそうで非常に恐怖を覚えた。
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あー、めんどくせぇ!でもこのめんどくせぇのにハマってますわ。
いいところなーんにもない。自己中心的な小説をわざわざ書いてるんだろうね。
イヤミスと同じ括り。怖いものみたさのみ。
Posted by ブクログ
欲望と欲望は惹かれ合う。欲を重ね合う私たちはどこまでが本当でどこまでが嘘かなんてわからない。それは実に滑稽に見えるけれど同時にそれがリアル、でもある。
僕たちが紡ぎ出す言葉や行動は滑稽でなんの思考も介さない浅はかなものに他人の目からは写るだろう。だがその過程には、並々ならぬ葛藤と迷いと、欲望やらが飛び交っているのだ。
この作品は終始熊田の脳内での会話を描いている。手に取るように熊田が感じられ、熊田という女性が自分の中の人格のうちの一人なんじゃないかと錯覚するような読書体験だ。共感はしないけれど、お腹の中の何かを煮えくり返されるようで面白かった。
Posted by ブクログ
2018.2.26
魅力的な人間に対しての表現が鍵がしっくりおさまるようにぴったりくる表現でとてもよかった すきだと思う気持ちと暴くという気持ちを同時に持ってしまう感情をわたしももったことがある、最後までこれが恋なのかわからなかったし暴いたと思った瞬間どうでもよくなったりした そしてこういう人間との出会いをわたしは本当に求めている、旅をしている これが興味というものなのだろうか?そうだとすればたしかに興味はひとを殺しかねないぬるい毒だ ひとりの人間の奇妙さみたいなものをリアルにいきていても見つめていたいし、小説にして解説したい気持ちをずっと思っているので、やりたいことも作品の意図もとても心の深いところまで染み込んだ
Posted by ブクログ
結局 主人公目線の世界がどこまで本当で、本当の世界はどんななのかな?!
と 考えずにはいられない おもしろさ。
序盤では話が掴みきれずになかなか興味がそそられなかったけど、中盤からは 結末に何が待っているのか…?!と前のめりで読んでしまった。
Posted by ブクログ
タイトル通りじんわりとぬるい毒が体内に巡っていくような、しんどい読後感。ガツンとした衝撃はないけど、確実にダメージを受けた気分。
私は本谷さんがおっしゃるように(あとがきより)、熊田は向伊に恋をしてはいないと思う。だけど強烈に引き込まれているのは確かで、そこまで魅力ある向伊に会ってみたい、人を平気で嘲笑える嫌な男なのに会ってみたいと思ってしまう。それが熊田が(ある意味)虜になった向伊の魅力なら、怖い。ラストは熊田の徹底的な逆襲が見られる訳でもないところがまた、こちらをじんわりと重たくさせる。
Posted by ブクログ
熊田という女性は入り組んだパズルのような不可解な自意識を持っている。そしてそれが真摯に描かれていると思った。向伊が彼女にとって強烈な光源となって彼女自身の濃密な影を浮かび上がらせている。
彼女の自意識は生まれなどの現実に歪められ、嘘によって繋ぎ止められている。彼女自身を損なうこと、周囲を傷つけること、それのどこまでが嘘によって取り繕われたものなのだろうか?
Posted by ブクログ
向伊を考えている時間か考えていない時間かの二択とか、想像上の粘液(だっけ?唾液だっけ?)とか、ものすごい言葉がたくさん並んでいて、私の脳みその中身かと思った
Posted by ブクログ
むかついたーーーって。
嘘をついたり演技をしたり、劇団を持つ本谷さんならではの言葉がすごく生々しく感じられた。
熊田の狂気を帯びた世界観はどこか憎めない、共感すら覚えるもので、とてもよかった。
Posted by ブクログ
難しい内容だった。
正直理解が難しかった。熊田の考え方に共感する部分はなかったし、なんだかひねくれてる世界だなと思った。
出来事に目を向ける話ではなくて、熊田の思考に目を向ける感じだった。
あまり面白くなかった。理解できないかもしれない。
でもまたいつか読んでみたいかもしれないし。
Posted by ブクログ
腑抜けども•••は映画を見たことがあるけど、読書ははじめまして、な本谷有希子。
いやはや、難解。登場人物みんな自意識過剰でなんだか気持ちが悪い。気持ちが悪いまんま終わる。ええええ・・・。自意識と外部との境界が曖昧で終始クラクラする。
こんな時期自分もあったかな・・・あったっけ・・・?
堅苦しい家に生まれ、地元の短大から地元に就職した熊田さんと、東京の大学に進学し、帰省するたびにちょっかいをだしてくる向伊。危険な魅力の向伊くん、ほんといけすかない。若い時に、こういういけすかない男にあえてひっかかるのもまあ、いい思い出だよね?と意味がわからなすぎて逃避。他の作品はもう少し読みやすいようなので、またチャレンジしてみます。
Posted by ブクログ
読み終えた時、吐き気がした。
本のタイトルのように毒を飲まされた感覚。
明日になれば、そういやアイツの生きる世界ってぬるいよなとか思えるかもしれないけど、今は胸の辺りが黒くなってて、何も考えられない。
Posted by ブクログ
本谷有希子さんが可愛いことに気付いたので、どんな本書いてんだろ、と試しに読んでみました。
女性と分かっていて読んだからか、女性作家特有のドロドロ感が心地良くはありましたが、なんだか気に食わないやつしか出てこない小説でした。
やたらとモテる嘘つき男と、そいつを好きになったフリをしているようで、実は本当に好きになっているような感じの主人公と、その主人公を小馬鹿にするモテ男の友達、、、
特にモテ男の口車に乗ってるフリをしているハズなのに、なんか女出しちゃう感じの主人公がなんともムズムズしました。
Posted by ブクログ
文庫版解説にある「弱火でずっと沸騰している感覚」という文言が非常にしっくりときた。
本谷有希子の作品は好き嫌いの激しいものが多いと思うけど、そのぶん宗教的、熱狂的な人気もある。
ただし今作はその信者でさえもふるいにかけるような挑発的な作品だと思う。
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(01)
罪や罰,自意識,渇きと潤いというさまざまな連関があり,中盤あたりを読み進めるうちに,ふと,ドストエフスキーの独白に思い当たった.
文庫版の解説にもあるように,確かにこの小さな物語は,主人公の女性の長いモノローグ(*02)であったのかもしれない.そこには他者が存在しているようでもある.男性,女ども,家の歴史,水,そして他人のような自分など,モノローグを語る主体の存在の危うさも示され,主体が他者の関係性の間にか発生していないようにも思える.
対話や会話の内容はいつも嘘であること,その嘘を成立させている身体や物の方にアイデンティティの対象が向いてしまうのは,そちらの即物の間の関係のほうがより安定的であるからでもあるだろう.その論理からすれば,物を動かすほどの言葉,つまりは「ぬるくない」嘘に痺れる(*03)ほどの価値があるのは必然でもある.
(02)
人称の問題もある.彼女ら彼らはなぜきらびやかな名をもたず姓としてあるのか.1箇所ほど主人公の名が音響されるセリフがあるのはなぜか,僕や俺や私にこだわるのはなぜか,こうした問題は,ドストエフスキー的なモノローグや,物レベルに築かれる安心な関係性にも絡みつく.
個や個性が匿名になってもいいような,匿名になりかけの地点が目指されていることには好感がもてる.その地点が地獄であり,そこを行くものを鬼と呼ぶのかもしれない.
(03)
この痺れは,おおよそ笑いと同義であろう.笑われることは侮辱されることでもある.こうした痺れ,笑い,侮辱が言葉ではなく,それも物の水準にあって,水面に波紋を織りなすものであることに注意したい.
Posted by ブクログ
あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで――。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。
Posted by ブクログ
しんどい読書だった。主人公はコンプレックスの塊の自意識過剰人間なのだが、個人的にとてもよく共感できてしまって苦しい。さらに、出てくる男がどいつもこいつも人を舐め腐ってるタイプの最低な人間で、主人公を何度も精神的に辱めるものだから、気分が悪くて人間不信が悪化しそうになった。復讐劇を成功させて欲しかったけど、実際にこういう人たちに自分で復讐を果たすのは極めて難しいのは分かるし、自分は立ち向かったんだということで満足するのができる限りの最高の落とし所なんだと思う。最後に主人公が言う、笑われるのも慣れれば良いものだ、というのは私には理解しかねるしそんなことに慣れたくはないと思うが、決定的な反抗を示すことで嫌な出来事も気持ち的にすっきり決別できるのは確かだよね。だから、不当な扱いをされても毅然と反抗できる人間になれたらいいけど……。
文章は正直うまくないと思うけど、爆発するようなエネルギーが感じられる。溜まりに溜まった負の感情に基づく反抗というような話を本谷有希子はいつも書いてるイメージだが、なんでそういう話を書くのか気になった。
Posted by ブクログ
エキセントリックな女の子ものではなく、嘘の毒牙に酔わされつつ逆襲を画策する、内面に潜り込んだ小説。
痛快さはない。
精神面における崩壊感覚。
初期のエキセントリックな「痛い女子」
→本作
→じんわりと描かれる「痛い女」
その分岐点。