あらすじ
子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。「夫婦」という形式への違和を軽妙洒脱に描いた表題作が第154回芥川賞受賞! 自由奔放な想像力で日常を異化する傑作短編集。
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Posted by ブクログ
いやあ、すごいな
おもしろかった。
「異類婚姻譚」
最後はえーーなんだけれど、
夫婦というのを例えに近しい二者間の話。
まあ、ところどころドキッというかわからなくもないというところもあり、個人的にはアライさんが気になる。
どんなに近しくても、やっぱりお互いの輪郭はくっきりしていたいし、境界は保っていたい
世にも奇妙な物語みたいでおもしろかった。
初読み作家さん
ここからネタバレあります…
ご注意を…
最終盤
「自分だけ、俺に…」のところ
いや、ホラーー
なんというか、共依存にお互い気づく感じというか、気づいたら共依存になっていたというか、それは夫婦に限らず、親子とかでもありうると思うので、ゾワッとした。
でも本当に近しい人であっても、いや逆に近すぎるからこそ、その人が求めていることは、全くわかっていなかったっていう…
あるあるだなあと思った。
ハコネちゃんの「もう少し別の人間でいたい」もわかる
結婚しても、ちゃんとずっと、別の人間でいたいし、いるべきと思う。
どうしても周りの人間の言動、仕草に影響を少なからず受けるという内容は「コンビニ人間」的要素もあった。
なんでもかんでも受けいれちゃあ、いけないな
何かを挟むか、断るか、手放すか…そもそも近づきすぎないか…
解説読んで、さらになるほどなと、本当に家族というものの末路とは…おそろしや
おもしろかった。さすが、芥川賞
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
「夫婦は似てくる」というのは良いことなのか?
表面的には似てきても、本質的には思いもしない相手の姿があるかもしれない。
⚫︎あらすじ
(異類婚姻譚)
専業主婦の私は、夫に顔が似てきていることに気づく。最後決別に至る。夫は可憐な花になる…
(犬たち)
別荘に女一人こもっている。犬がたくさんくる。村人は山を降りないと居ない。なぜか?
村人がいなくなる。犬は見つけたら捕まえられないといけないルールがある。
女の背中に白い毛が生えてくる。
(藁の夫)
夫の小言がどろどろの楽器になって、藁の間から漏れ出す…
⚫︎感想
「夫婦は似てくる」というフレーズを、マイナスの意味で受け取ったことがなかった気がするので、新しい見方を与えてもらった。他人の本音はわからないし、自分の本音すら見て見ぬ振りをしながら生きている…
犬たち、笑の夫も非常におもしろく、本谷有希子さんの他の著作も読みたいと思う。
Posted by ブクログ
結婚や家庭に関する寓話4作。根底には人と関わりたくない思いがある気がした。
結婚すると互いに似てくるとはよく言うけれど、それを溶解していく妖怪のように描いたのは風刺がきいてて面白い。粗相をするからという理由で山に捨てられる猫のサンショと、主人公のサンちゃんは名前が似ているし、夫婦は互いに尻尾から食べ合って頭だけが残る蛇ボールだという話を聞く時サンちゃんは鰻の食べ比べ弁当に山椒を振って食べている。最後に山芍薬になった夫を、サンショを捨てた山に植えに行く。隣に咲くよく似た竜胆はサンショであってサンちゃんなのだと思う。
キタヱさん夫婦や弟カップルの様に似ない夫婦もいて、それは間に「何かを挟んでいる」ということなのだろうが、意識的にそうしない限り飲み込まれていくのが結婚なのかもしれないし、そうして似た者同士になった2人だけで人間であることをやめて山でひっそり生きるのもいいなと私は思う。人間社会で夫婦として生きていくのはストレスフルなのかもしれない。
「藁の夫」は解説を読んで、たしかに口うるさいだけの夫をどろどろに溶けた楽器ばかり吐き出して後には家畜の飼料のような藁しか残らない人間に見立てているとしたら相当面白いなと思った。
Posted by ブクログ
2匹の蛇が互いに食い合うように、夫婦も少しずつお互いを食って、お互いに似ていって、お互いではないものになっていく。
「あの夫婦って見た目も似てるよね」という、多くの人が見聞きしたことある言葉の中には、実はこんな奇譚があるのかもしれない。
人間社会はクイズ番組なのだと思った(気が付いた?)主婦、山奥の小屋で不思議な犬たちに囲まれて生活する男、「藁の夫」との結婚は何も間違っていないと感じる妻。
どの物語も、ベースにあるありふれた生活風景が見事に奇譚・寓話として仕上がっているので、気味が悪いと思いながらも、「もしかして」という気持ちになるから面白い。
Posted by ブクログ
【フレーズメモ帳】
蛇ボールの話、知ってます?二匹の蛇がね、相手のしっぽをお互い、共食いしていくんです。どんどんどんどん、同じだけ食べていって、最後、頭と頭だけのボールみたいになって、そのあと、どっちも食べられてきれいにいなくなるんです。分かります?なんか結婚って、私の中でああいうイメージなのかもしれない。今の自分も、相手も、気づいた時にはいなくなってるっていうか。
Posted by ブクログ
再読。現代の怪談のような小説。どれも面白くてすいすい読めた。〈犬たち〉の裏テーマのようなものがよくわからず、他の人の感想や考察を聞いてみたくなった。この短編のタイトルだけ〈〉で閉じられているのも不思議。
Posted by ブクログ
・異類婚姻譚
感想がまとまらない
あとで考える。保留
・トモ子のバウムクーヘン
この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを理解した。
ってどんな感じ?
・〈犬たち〉
白い犬と雪深い白い世界が美しい。
街に誰もいなくなった描写は、本当に自分以外が街からいなくなったのか、それとも自分が異世界に連れて行かれたのか分からなくて、でも不思議と恐怖がない。一番好きな話。
・藁の夫
藁の夫むかつく
けど、車を傷つけたのは奥さんも悪いしな…とも思ったり。
全体的によくある夫婦の話だけど、少しのファンタジー要素が混じって不思議な読み心地と、家庭・夫婦の問題以外に伝えたいことがあるんだろうなと思わせる本谷有希子さんの作風がおもしろい
Posted by ブクログ
あなたは、『自分の顔が旦那の顔とそっくりになった』らどうするでしょうか?
夫婦は似た者同士が良いのか?そうでない方が上手くいくのか?このあたりは世の中意見は千差万別でしょう。同じものが好きだからといって一緒になった夫婦が最後まで添い遂げられるかといったらそんなことはありません。嗜好は正反対という夫婦が瞬殺で離婚してしまうかというとそんなこともありません。規則性、法則性がないから夫婦の形も数多あり、考え方も数多あるのだと思います。
とは言え、それは性格の話です。顔となってくると話は全く異なります。そもそも血縁関係にない男と女の顔がそっくりということ自体普通にはないと思います。もし偶然にもそっくりな顔をした異性と出会ったとしてもそれが結婚というゴールに繋がるとも思えません。
一方で、結婚した後、嗜好が似てくるということはあるかもしれません。これは可能性としてありうるようにも思います。しかし、顔が似てくる、これはないように思います。そんなことがあったとしたら結婚することに躊躇もしてしまいます?
さてここに、結婚してもうすぐ四年という夫婦を描いた物語があります。ある日、妻が『自分の顔が旦那の顔とそっくりになった』と気が付いたことから始まるこの作品。そんな作品の他に雰囲気感を共通とする三つの短編が収録されたこの作品。そしてそれは、”あとでじわじわ効いてくる毒が、ここにはたっぷり盛られている”という本谷有希子さんの芥川賞受賞作な物語です。
『ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた』とふと思ったのは主人公の『私』。『結婚していなかった五年前と、ここ最近の写真を見比べて』、『見れば見るほどに旦那が私に、私が旦那に近付いているようで、なんだか薄気味悪』いと感じる『私』。そんな『私』がそのことを弟に話すと、『うーん、二人が?俺は別に思ったことないけどなあ』、『あれじゃない?いつも二人でいるうちに、表情がお互い似てきたとか』と言われてしまいます。場面は変わり、『旦那に頼まれた小包を郵便局に出しに行った帰り』、マンションに設けられた『住人専用ドッグラン』のベンチにキタヱが座っているのを見かけた『私』は、そんなキタヱに手招きされます。『毎日昼過ぎに愛猫のサンショを』『日なたぼっこさせにやって』きているという『私とは三十歳近く離れている』キタヱはサンフランシスコから夫婦で日本に戻ってきました。そんなキタヱに『旦那と、顔が一緒になってきました』と話すと、『「やだ。」と予想外の食いつきを示し』ます。『結婚して何年だっけ?』と訊かれ『もうすぐ四年です』と答える『私』に、『サンちゃんみたいな、なんでもかんでも受け入れちゃうような子は、あっという間に…かれちゃうんだから』と返すキタヱ。よその住人の犬が吠えたせいで、『私』は『…』のところを聞き逃してしまいます。そして、キタヱは『私の知り合いの夫婦にさあ』とこんな話を始めます。『家族ぐるみで親しくしていた』『古くからの友人夫婦』と10年ぶりに『再開する機会に恵まれた』というキタヱは、イギリスに移り住んだ彼らとロンドンで食事をするために『待ち合わせのレストラン』へと訪れました。『「久しぶり。」と椅子から立ち上がった二人を見た瞬間、目を疑』うキタヱ。そこには、『双子みたいに、そっくりになって』いた夫婦の姿がありました。『一瞬、整形でもしたのかと思っ』たものの、『目、鼻、口を一つ一つ見ていくと、二人はやはりきちんと別人』という二人。『吸い寄せ合ってる感じっていうの?お互いがお互いを真似ちゃってるっていうかねえ』とその似具合を説明するキタヱ。そんなキタヱは、『さらに十年後に』夫婦と再開した話を続けます。『同じロンドンのレストランで待ち合わせをしたキタヱは、鏡のようにそっくりになっていた二人のことを思い出し、少しどきどきし』ますが、そこに待っていたのは『元の、似ても似つかぬ他人に戻っ』た二人でした。そんなキタヱが十年前のもやもやした思いを妻に打ち明けると、『二人の家に誘われ』ます。酔い潰れた夫を部屋にのこし、庭に出た二人。そんな中、『どうしてあたしが元に戻ったのか、教えてあげる』と『妻は笑いを堪えているような口調で』語ります。『あたしがどうして戻れたのか。知りたいでしょう』と言う妻は、『それよ、それ』とあるものを指さします。そんなまさかの説明に『酔いが一気に吹き飛んだ』というキタヱ。そんなキタヱが旦那と似ていくということのまさかの理由とまさかの結末が描かれていきます…という中編〈異類婚姻譚〉。スルスルと読みやすい物語が意味不明な結末へと読者を誘う好編でした。
“子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…”と、どこか危うい夫婦関係を匂わす内容紹介が妙に気になるこの作品。2015年に第154回芥川賞を受賞した本谷有希子さんの代表作です。そんな作品の表紙は一見古風な嫁入りを描写したイラストが描かれていますが、よく見ると花嫁を含め婿以外は猫が描かれているという怪しさ満点な体裁をとっています。そもそもが「異類婚姻譚」というなんだか今にも化け物が飛び出してきそうな書名もあって読む前から雰囲気感はバッチリだと思います。とは言え、この作品は化け猫が登場するようなおどろおどろしい物語ではありません。そこに描かれるのは〈解説〉の斎藤美奈子さんがこんな風に表現されるものです。
“慣れ親しんだ生活のなかで、ふと垣間見てしまった異世界。家族が他人に見える瞬間の恐怖”。
芥川賞を受賞した表題作はその傾向が特に顕著です。そんなこの作品は表題作が全体の分量の三分の二を占める中編、残りの三編がサクッと読める短編という異形な構成になっています。いずれも斎藤さんが評されるどこか不穏な雰囲気を纏っています。そんな中でも表題作の中に登場する『蛇ボールの話』は深く脳裏に刻まれました。想像するとあまりに不気味でこの作品の内容を忘れても一生私の記憶から消せない…そんな強烈なインパクトを受けました。このレビューを読んでくださっているあなたにはせっかくなので共有させていただきますね。あなたの記憶からも一生消えないと思います。
『蛇ボールの話、知ってます?』と訊く弟の彼女ハネコは、こんな風に続けます。『二匹の蛇がね、相手のしっぽをお互い、共食いしていくんです。どんどんどんどん、同じだけ食べていって、最後、頭と頭だけのボールみたいになって、そのあと、どっちも食べられてきれいにいなくなるんです』。そんなハネコは、『分かります?なんか結婚って、私の中でああいうイメージなのかもしれない。今の自分も、相手も、気付いた時にはいなくなってるっていうか』。そんな話を聞いて『うろこでびっしり覆われたまっ白な球を思い浮かべ』る主人公の『私』。
どうでしょうか?私はこの世で蛇が最も嫌いです。こんな風にタイプするだけで意識が飛びそうなくらい大嫌い。そんな蛇が登場する『蛇ボール』。怖いです。気持ち悪いです。やめて欲しいです。しかし、この表題作で取り上げられるのは上記でも触れた通り『ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた』という起点から夫婦の関係性に思いを馳せていく主人公の『私』の物語です。そんな『私』は、どうして旦那と自分が似てきたのかを考え続けます。そんな中に象徴的な登場する『蛇ボール』の話は、『私』にこんな思いを抱かせもします。
『恐らく私は男たちに自分を食わせ続けてきたのだ。今の私は何匹もの蛇に食われ続けてきた蛇の亡霊のようなもので、旦那に吞み込まれる前から、本来の自分などとっくに失っていたのだろう』。
そして、基本的にのんびりとした『私』の日常を描く物語は一気に不穏な雰囲気を増していきます。
『朝起きて鏡を見ると、顔がついに私を忘れ始めていた』。
まさかの表現で描写される『私』の物語は読者を振り落とそうとでもするように理解不能な表現世界へと突入していきます。これには驚きました。そして、ほぼ振り落とされてしまった私。〈解説〉の斎藤さんの丁寧な説明を読んでそんな物語を振り返りましたが、流石の芥川賞受賞作、なんとも言い難い世界を見る中に予想だにできない結末を見ることになりました。これは、ハマる方にはとてもハマる表現世界だと思います。
一方で、この作品の魅力は、そんな表題作に続いて上記した通り三つの短編が収録されているところです。決しておまけではなくこれら三作が続くことによって作品としての不穏な雰囲気が強化されていきます。続いてそんな三つの短編をご紹介しておきたいと思いますが、それぞれの短編は一見意味不明な宣言のもとに始まります。合わせてご紹介しましょう。
・〈トモ子のバウムクーヘン〉: 『コンロの火を弱火にしていたトモ子は、この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを理解した』。主人公のトモ子は『普段は甘いものをあまり食べさせない』子供たちに『バウムクーヘンを焼いてあげ』ます。そんなトモ子は『お兄ちゃんの頭の匂いを思いきり吸い込んだ時と、下の子の指をお守りのように握りしめた時だけ』『本当の意味で落ち着く』と感じています。そして、キッチンに立つトモ子は、ふと『リビングが自分を誘惑し、恐ろしい罠に嵌めようとしている』という思いに苛まれていきます…。
・〈犬たち〉: 『その山小屋にはたくさんの犬たちがいた。私は犬たちを愛し、犬たちも私を愛した。犬たちは何十匹もいた。そしてどの犬たちもみんな、降ったばかりの雪のように真っ白だった』。『誰にも会わず、暖かく暮らしていた』という主人公の『私』は、山小屋で犬と暮らす中に『彼らが糞や尿をするのを見ること』がないこと、『餌もほしがらな』いことに気づきます。たまたま麓の町で『犬にはくれぐれも用心して下さい』と言われた『私』は、ある日、『山の奥に向かう犬たちをこっそりつけてみることにし』ました。そして、そこに見たものは…。
・〈藁の夫〉: 『結婚して半年、自分達の前には、幸せへの道が用意されているという確信は強まるばかりだった』という主人公のトモ子は、自分の夫をこんな風に思います。『トモ子の夫は藁でできている。稲や小麦の茎の部分だけを乾燥させたあの藁 ー 家畜の飼料や、その寝具に使われる植物が、人間のように束ねられ、巻き上げられてできているのだった』。そんなトモ子はある日、夫が『買い替えてまだ一ヵ月も経っていない、真新しいBMV』に乗り込んだ時に『シートベルト』を窓枠にぶつけてしまいます。『ーがっくし』と溜め息を吐く夫との間に沈黙が訪れます…。
三つの短編の概要を簡単に抜き出してみましたが、なんだか意味がよく分からない…という声が聞こえてきそうです。でも…、
安心してください!私もよく分かっていませんよ(笑)
いずれにしても、上記した通り、これら三つの短編も表題作同様に不穏な雰囲気を纏っています。二人の子供の母親であるトモ子が、突然に奇妙な感覚に囚われていく様を描く〈とも子のバウムクーヘン〉はそんなトモ子がどんな感覚に陥っていくのか、ここが物語の筋の部分です。続く〈犬たち〉では、主人公の『私』が共に暮らす犬がいつどこで何を食べ、排泄しているかを知らないというところに不穏さが顔を出します。そして、最後の〈藁の夫〉は、そもそも『トモ子の夫は藁でできている』と意味不明なことを断定する記述の先に、新車を傷つけられた夫が示す反応が物語を薄暗く支配していきます。そんな不穏な雰囲気を味わえるのがこの作品を読む何よりもの醍醐味です。如何にも芥川賞作家さんの物語というその感覚が一つの作品世界を作り上げていきます。なかなかに深入りしそうにもなる四つの物語は、本谷有希子さんという作家さんの個性を強く感じさせる異形のものたちの存在をそこかしこに見せてくれるものでもありました。
『ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた』。
そんな言葉の先に旦那との関係性をさまざまに考えていく主人公の『私』が辿るまさかの結末を見る表題作など四つの中短編が収録されたこの作品。そこには不穏な雰囲気の中に見え隠れする異形なものたちの姿を感じる世界が描かれていました。とても読みやすい文体が故にイメージがスルスルと頭に入ってくるこの作品。そうであるが故に、物語が発するホラーっぽさとシュールさがダイレクトに伝わってくるこの作品。
なんだか癖になりそうな独特な味わいを感じさせる物語の中に、本谷有希子さんの上手さを見た、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
自分が男性なので、本谷さんの書く男性像にはドキッとする。
自分はこうじゃないと思ってるし、こうなりたくないなぁって感じの男。
でもそのダメさに主人公の女性などが慣れてたり諦めてたり、なんなら居心地良く感じたりしてるように思うので読んでて非常にむずむずする。居心地が悪い。
自分にはこういうあり方は無関係だ。
でもこういうあり方はきっと存在するし、それってすんごいイヤだなぁっていう。
あーやだやだ。
Posted by ブクログ
夫婦は妥協と諦めで互いに似てしまう。
不満を持ちながらも、どこか身を任せたほうが楽だと思った結果であり、自身も不満を持たれていることがある事実に目を背けた結果でもある。
そんな誰にも起こりうる問題をファンタジーに落とし込んだ秀作。
最後の藁の夫のモラハラDV具合が怖かった。
Posted by ブクログ
表題作を含む4編。いずれも夫婦や家庭に対する違和や不安をテーマにした奇譚。感覚に鋭いリアリティを感じる分、奇譚であることについていけない人もいそう。
表題作含め登場人物たちは基本的に「演じている」「演じさせられている」という感覚が課題の根本にあるように感じたが、劇作家の著者としてあえてそのような視点を狙って書いているのか、著者自身の人や社会の見方が基本的にそうであるからなのかは判断ができなかった。いずれ他の作品も読んで考えてみたい。
Posted by ブクログ
「異類婚姻譚」は、夫婦の合せ鏡のお話。
主人公が一方的に搾取されてるような気で読んでたけど、確かに主人公も夫を食べてた。
働かずに極楽に生きてて、夫の金で弟カップルに高いビュッフェ奢ったりしてたしなー。
妻になりたい夫の言葉にぞくっとした。
最後は衝撃。あんな夫がなりたいものは綺麗な花だったなんて…。
あのあと主人公は一人で生きていってるのだろうか…。
「藁の夫」は前提がわからなすぎたけど夫がムカつく。
全部燃やしてしまえばいいのに。
Posted by ブクログ
子供もおらず、ただぬくぬくと専業主婦生活を少しの罪悪感と共に過ごす主人公。だがある日、徐々に自分の顔が旦那の顔に似てきていることに気がつく。
唐突にこの世界が途中で消されてしまうクイズ番組だと理解した主人公。
隠遁生活の中で不思議な犬たちと出会う主人公。
町の人たちがいう「犬に気をつけろ」という不思議な言葉。
周りの反対を押し切り、藁の旦那と結婚した主人公。
どのお話も寓話的で、久しぶりに言葉をそのまま飲み込むのではなく、噛み砕かないといけない話を読んだ。
家庭の中の問題の多くは、本人たちが良ければそれでいいもので、周りから見れば些末な問題だったりする。
けれど、そこが幸せじゃないと根本的に自分が幸せになることはない気がする。目をつぶることは簡単で、できないことではない。でもそれは本当に幸せか?と突きつけられているような気がしてしまった。
Posted by ブクログ
2015年芥川賞受賞作(下期)
女性目線で人間関係を描く4部作
①異類婚姻譚(夫婦)
②トモ子のバウムクーヘン(子供)
③犬たち(社会)
④藁の夫(夫婦)
それぞれの人間模様をストレートに描くと、グロく、凡庸になるところを、妖怪じみたテイストにすることで、一種のホラーに仕立ている。
動物や植物がそれぞれのアクセント。
世界観についてけないのは、僕のポテンシャルが低いのか?異性だからか…
Posted by ブクログ
ともかく独特!
初めて本谷さんの本を読んだんだけど、この本から入ったのは正解⁉︎
夫婦が似てくるまではよかったが...異類婚姻譚
人が消えていく街の白い犬...犬たち
愛猫がナニカに⁉︎...トモ子のバウムクーヘン
藁と結婚⁉︎...藁の夫
変でしょ!すっごい変っ!
めちゃくちゃだけどSFファンタジーって思えばおもしろい!
Posted by ブクログ
「夫婦というのは不思議なものである」
言わずもがな、なんて身も蓋もないかな。
当然といえば当然なのだから。きっと家族になる過程で何かがあるのだろう。もしかしたら目に見えないだけで、夫婦ってこういうこともあるのかなあ、なんて、それもまた然り、なのかもしれない。異変や変化に気付くこと、気付けそうで気付かないこと、気付いているのに気付かないふりをすること…いろいろあるけれど、見てみぬふりのほうが、結局のところ、わかりやすくて良いのかもしれない。
きっと物語は、夫さんにもあるのだろうし、むしろ無いわけがないだろう。きっと彼も、あれやこれや折り合いを付けて、折り合いを付けて…付けて、付けて、付けて付けて、たどり着いた姿が山芍薬だったのだ。僕は、彼の平穏を願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作品という事もあり、とても期待して読んだわりには、、、?????
みたいな所が沢山ありました。
一作目はなかなか面白かったけど、、、4作目の藁???
私には理解不能でした
Posted by ブクログ
「人の形」
慣れ親しんだ生活の中に異物が一点混ざり込み、それが当たり前として読者の中に溶け込んだタイミングでその異物が“異物らしさ”を表象する。
読み手は強制的に第三者の立場から読むことになるため、この世界に恐ろしさを感じつつも現在の世界とそう大して変わらない世界に違和感を懐く。
怖さとユーモアが混ざった文章は、この筆者ならではだなあ。
Posted by ブクログ
旦那の横柄さとか、家で気が抜けて顔が崩れる感じ、ちょっと自分を顧みてヒヤッとする。描き方が上手だな、と。
最後、同一化した挙げ句に花になるのはなんだったのだ、、、?結局旦那捨てただけ、、?
それにしてはなんかほのぼのした読後感で不思議。
Posted by ブクログ
女の人が主人公の、4つの短編集。
家族や夫婦がテーマになっているが、寓話を読み慣れていないせいか、理解が難しかった。
異類婚姻譚と藁の夫に関してはこんな夫婦にならないよう気をつけようとは思った。
バウムクーヘンの話は、今自分がリアルと思っている世界は、作り物じゃないかという空想は恐ろしくもあるが案外楽な考え方かなと思った。
作り物の世界ならば、自分で判断したり責任を負わなくて済むから。
Posted by ブクログ
……ホラー⁉️と思った。
日常の話と思って読んでいたら、急に世にも奇妙な物語みたいな……まあ読み終わって考えてみるとなるほどと思ったりもする。
表題作の異類婚姻譚については、自分も長く付き合った男と話し方が似てきていたり「顔が似ている」と言われたりしたことがあるので、わかるなあと思った。まあ一緒にいる相手と似てくるというのは本当にある話なんだろう。しかし終盤の怒涛の"世にも"感たるや……。夫がどんどん妻に近づいていき、不穏な空気を纏っていくのが恐ろしかった。ラスト、あれは……下ネタか?と思ったのは私だけだろうか。まあそういうことではないと思う。夫が花になるって、そんな馬鹿なと思うけど、自分が単にこういう突拍子もない話が苦手なだけだと思う。
犬の話については、まあなんだか謎が多かったけどパストラミを助けたことで犬たちの仲間として認められ、結果犬との同一化が進んだみたいなことなのかなあ。なぜ町の人が消えたのかはよくわからなかった。犬が認める人間は1人だけだから?あの町に住む犬には何か特別な力があるとか?まあ深く理解しなくても良いものかなと気持ちを落ち着けた。
藁の夫の話は……わからなさすぎた。
周囲の反対を押し切り藁と結婚した←どんな世界線やねん。「がっくし。」がなんだか可愛いが藁の中身が楽器というのもわからない。し、妻が燃やしたいと感じているのも恐ろしい。みんなどんな気持ちで読んだんだ。どんな気持ちで読むものだったんだ。まあ正解なんてないけど、終始「ええ……」と思っていた。
実は宇宙人だとされてる芸能人の検証動画とかあるじゃない?エラ?があったり、まばたきが変なやつ。あれは合成かもしれないけど、なんかあれを思い出した。結婚生活は、自分と違う"異種"たる相手と線を引いてもいいし、融け合ってもいい、その選択ができるのはいいことだよな。自分は……難しい。もうだいぶ融けてしまっていると感じる。今鏡を見たら、顔のパーツがいそいそと動き出すかも。
Posted by ブクログ
夫婦は似る、とはよく聞く。同じものを食べ、同じ家で生活していれば、血のつながった者同士のように、似ていくのだろう、きっとそれが、家族になる、ということなのかもしれない。しかしそれは、少し怖いことかも。
Posted by ブクログ
うーーん、というのが素直な感想です笑はっきりと断言することの出来ない薄気味悪さが夫婦の日常の中にあります。
最初は顔が似てくることでマンネリ化してる生活を暗喩しているのかと思いましたが、そうでは無いようですし…。難しい!
ただどの話にも猫や犬が出てきたのでそれらの動物が物語の重要な鍵なのかとも思いましたが、私にはわかりませんでした
Posted by ブクログ
一番初めの夫婦が顔が似てくる、と言う話が興味深かった。溶けて混ざり合って、一緒になることを拒否することもできるし同化を望むこともできると言うのは単なる比喩表現ではないと感じた。でも、猫を山に〜のところは理解できなかった。
Posted by ブクログ
本谷有希子4冊目くらい
古本で購入
短編集「異類婚姻譚」「トモ子のバームクーヘン」「犬たち」「藁の夫」
文体がとても読みやすい、以前読んだ短編集の猫殺しと殺人ハウスが怖すぎてもう読まない!と思ったけどやはりちょっと気になってしまう棘が、この本はそこまで恐怖でないまでも存在している〜
解説の通り家庭に閉じ込められそうな女性は「主婦」一括りではなくその中の恐怖安寧驚きの機微を映し出しているところが愛おしいなと思った。まだ描かれていない感情を全部描く。
Posted by ブクログ
文藝春秋で読む。旦那と混ざり合う、私サンちゃん。夫婦が似てくるとはよく言うが、蛇ボールのように、食わせ合う図はゾッとする。夫婦とは、そこまで密な関係になることなのだろうか。自分がなくなり、相手を取り込むこと。
なんとか人のカタチを維持しようとする旦那。あなたは一体、、、摩訶不思議な話ではあるが、おとぎ話じゃなくて、もっと現実味を帯びた、、、ここまではいかずとも、似た現象は起きているのではないかと思ったりする。結婚してないけど。笑
Posted by ブクログ
異類婚姻譚は、結婚のリアル?を描いているのかなと思った。
他の三篇は私には難しくあまり理解できなかった。藁人間とは、本当に藁人間が存在する世界線なのか、それとも人間の夫が藁人間のように見えてしまう妻の目線なのか謎が多い、、、