あらすじ
子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。「夫婦」という形式への違和を軽妙洒脱に描いた表題作が第154回芥川賞受賞! 自由奔放な想像力で日常を異化する傑作短編集。
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Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
「夫婦は似てくる」というのは良いことなのか?
表面的には似てきても、本質的には思いもしない相手の姿があるかもしれない。
⚫︎あらすじ
(異類婚姻譚)
専業主婦の私は、夫に顔が似てきていることに気づく。最後決別に至る。夫は可憐な花になる…
(犬たち)
別荘に女一人こもっている。犬がたくさんくる。村人は山を降りないと居ない。なぜか?
村人がいなくなる。犬は見つけたら捕まえられないといけないルールがある。
女の背中に白い毛が生えてくる。
(藁の夫)
夫の小言がどろどろの楽器になって、藁の間から漏れ出す…
⚫︎感想
「夫婦は似てくる」というフレーズを、マイナスの意味で受け取ったことがなかった気がするので、新しい見方を与えてもらった。他人の本音はわからないし、自分の本音すら見て見ぬ振りをしながら生きている…
犬たち、笑の夫も非常におもしろく、本谷有希子さんの他の著作も読みたいと思う。
Posted by ブクログ
どのお話も、奇妙なんだけど
なんか知ってる感覚。こういう人いるな、と思う。
世界観が好きだなあ。
トモ子のバウムクーヘンだけ、
はてな?だった。
解説がわかりやすくてありがたい。
・異類婚姻譚
ある日、自分の顔が旦那の顔と
そっくりになっていることに気が付いた。
書き出しから面白い。
そのことを、同じマンションで知り合ったキタヱさんに
話すと、彼女の友人夫婦の話を聞かされた。
10年ぶりに再会した友人夫婦が
双子みたいにそっくりになっていたそうなのだ。
食の好みも明らかに似てきているのに、
本人たちは気が付かない。
だが、さらに10年後再会したときは、
二人は元の、似ても似つかぬ他人に戻っていたらしい。
「キタヱちゃんにだけ、どうしてあたしが
元に戻れたのか、教えてあげる。」
寝室の石ころがどんどんあの人に似てきて、
入れ替えるうちに次から次に溜まっていった。
石が、自分の代わりになってくれたようだ。
私も注意して見ると、
旦那の顔は臨機応変に変化しているようだ。
私と二人のときは気が緩み、目や鼻の位置がなんだか
適当に置かれたようになる。時々、私の目鼻の間隔を
真似ていることがあって、どきりとさせられた。
元妻と向き合うときは、きっと人の形に戻るのだろう。
「ソファに寝そべる姿を見るたび、私はまるで自分が、
楽をしないと死んでしまう新種の生き物と暮らしている
気分になる。楽する、ということに対して、どうして
ここまで後ろめたさを感じないでいられるのか、
いつの間に私は、
人間以外のものと結婚してしまったのだろう。」
まあ、そう思う気持ちはとても分かる。
生活を共にすると、旦那が同じ人間とは思えないくらい
理解不能な生き物に思えてしまう時がある。
向こうも私を見て「サンちゃん、劣化したなあ」と言う。
変化、劣化、もしくは元々の本質が現れたか、
いずれにしても、そういう、その人の全てを飲み込んで
似通って、一人の人間になってしまうくらい強い力が
結婚生活というものには、あるのかな。
弟の彼女ハコネちゃんが結婚に踏み出さない理由は、
結婚に対する恐ろしさがあるのかも?
あるときから旦那は揚げ物ばかり作って、
私に食べさせるようになる、それを黙って受け入れる。
そんな私を見透かしたのか、キタヱさんの夫には、
「あなたはもう少し、ちゃんと人の形をしてたかなあ。
キタヱが話していた友人夫婦の石みたいに、
旦那さんとの間に何か挟んだほうがいいかもしれないね」
と言われる。だんだん侵食されていくのが怖い。
段々、主婦(私)の真似事をし始める旦那に苛立つ、
逆に私は、旦那のようにソファに転がりお酒を飲む。
旦那の後頭部の髪は、私の髪を真似て伸び出す。
ついに「私じゃないものになりなさい!もう、
山の生き物になりなさい!」と命じる。すると、
旦那は白くて可憐な山芍薬に姿を変えた。私はその花を
キタヱの猫を捨てに行った山へ還しに行った。
寂しいだろうと、近くの竜胆を、隣に植え替えてあげた。
翌年、旦那に会いに行くと隣に一緒に植えた竜胆が、
旦那の花とよく似ていることに気付き、
寒気がして逃げ出した。
私は最終的に、一つになるのを拒んだことになる。
何かとずっと一緒にいるって、恐ろしい。
二対の蛇が、お互いの尻尾から同じ速度で食べ合って
最後には頭だけが残るという蛇ボールの話が面白かった。
頭までぱくりと食べると、最後には自分も相手もいない、
空っぽだけがある。
(小川洋子さんの「無限ヤモリ」にも似たものを感じる。)
————
・犬たち
切り絵作家の作品の複製を作る仕事をしに、
雪に埋もれた山小屋にやってきた。
そこで、謎の白い犬たちに出会う。
町へ降りると、人々は何かに怯えていて
「犬にはくれぐれも用心してください」と言われた。
ある日、凍った井戸の底に誤って落ちた白い犬を
なんとか助け出したとき、
「確かに、合格だ」と犬たちは会話していた。
私は犬を助けたことで、生き残ることができたのか?
町には誰も居なくなっていた。それでも私は構わない。
最後は犬たちと寄り添って眠り、
肌にうっすらと白い毛が生え始めた。
昔、行方不明になった町人は、この白い犬たち?
人嫌いの私にとってはハッピーエンドだろう。
————
・トモ子のバウムクーヘン
自分の世界が、途中で消されてしまうクイズ番組だと
理解した、から始まる。
飼い猫が、振りをした知らない生き物だったら、
子供達が、そっくり別の何かに入れ替わっていたら、
そんな想像が頭をよぎる。震える足で、キッチンに戻り
バウムクーヘン作りを再開する。
クイズを出す機械だけが延々と動いていることを
知りながら、誰も指摘しようとはしない。
どこまでも日常は続いていく。
いつ、どこから
この日常に綻びができるか分からない、
という恐怖なのかな?
日常が綺麗すぎて、出来過ぎていて、急に怖いものが
飛び出てくるんじゃないか、というキリのない不安。
————
・藁の夫
トモ子の夫は藁で出来ている。自分の意思で結婚した、
自分達の前には、幸せへの道が用意されているという
確信があった。ところが突然、
トモ子の車の扱いについて怒り出す夫。
怒りとともに、藁の隙間から小さな楽器が溢れ出し、
最後には、中身が空っぽの藁だけが残る。
「乾いた藁は、どんなふうに燃えるのだろう。
きっと少しの火であっという間に燃え上がるに違いない」
そんな想像をしながらも、溢れた楽器たちを、
藁の中に戻す。仲直りした二人はまた日常に戻る。
あり得ない状況なのに、すごく映像が浮かんでくる、
不思議な感覚。藁っていう見た目の情けなさと、
執拗に責める感じが、嫌な気分にさせてくる。なんで
こんな、かすかすの藁に責められてんだ?と笑
いつか藁を燃やしてしまう日は、くるかな?
————
Posted by ブクログ
・異類婚姻譚
感想がまとまらない
あとで考える。保留
・トモ子のバウムクーヘン
この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを理解した。
ってどんな感じ?
・〈犬たち〉
白い犬と雪深い白い世界が美しい。
街に誰もいなくなった描写は、本当に自分以外が街からいなくなったのか、それとも自分が異世界に連れて行かれたのか分からなくて、でも不思議と恐怖がない。一番好きな話。
・藁の夫
藁の夫むかつく
けど、車を傷つけたのは奥さんも悪いしな…とも思ったり。
全体的によくある夫婦の話だけど、少しのファンタジー要素が混じって不思議な読み心地と、家庭・夫婦の問題以外に伝えたいことがあるんだろうなと思わせる本谷有希子さんの作風がおもしろい
Posted by ブクログ
表題含む四編からなる中短編集。
『異類婚姻譚』︰夫婦の顔が似てくるとは聞いたことがあるが、この設定は予想を超えている。パーツが動き、溶けていくように同化するとは。パートナーへの我儘、依存、自我の喪失。
『藁の夫』︰これもまた不可解な物語。夫が藁で出来てるなんて。藁の中で蠢く物って何?と寒気が起きながら読んだ。
この奇想天外さに毎回惹きつけられる。
Posted by ブクログ
「異類婚姻譚」は、夫婦の合せ鏡のお話。
主人公が一方的に搾取されてるような気で読んでたけど、確かに主人公も夫を食べてた。
働かずに極楽に生きてて、夫の金で弟カップルに高いビュッフェ奢ったりしてたしなー。
妻になりたい夫の言葉にぞくっとした。
最後は衝撃。あんな夫がなりたいものは綺麗な花だったなんて…。
あのあと主人公は一人で生きていってるのだろうか…。
「藁の夫」は前提がわからなすぎたけど夫がムカつく。
全部燃やしてしまえばいいのに。
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作品という事もあり、とても期待して読んだわりには、、、?????
みたいな所が沢山ありました。
一作目はなかなか面白かったけど、、、4作目の藁???
私には理解不能でした
Posted by ブクログ
旦那の横柄さとか、家で気が抜けて顔が崩れる感じ、ちょっと自分を顧みてヒヤッとする。描き方が上手だな、と。
最後、同一化した挙げ句に花になるのはなんだったのだ、、、?結局旦那捨てただけ、、?
それにしてはなんかほのぼのした読後感で不思議。
Posted by ブクログ
……ホラー⁉️と思った。
日常の話と思って読んでいたら、急に世にも奇妙な物語みたいな……まあ読み終わって考えてみるとなるほどと思ったりもする。
表題作の異類婚姻譚については、自分も長く付き合った男と話し方が似てきていたり「顔が似ている」と言われたりしたことがあるので、わかるなあと思った。まあ一緒にいる相手と似てくるというのは本当にある話なんだろう。しかし終盤の怒涛の"世にも"感たるや……。夫がどんどん妻に近づいていき、不穏な空気を纏っていくのが恐ろしかった。ラスト、あれは……下ネタか?と思ったのは私だけだろうか。まあそういうことではないと思う。夫が花になるって、そんな馬鹿なと思うけど、自分が単にこういう突拍子もない話が苦手なだけだと思う。
犬の話については、まあなんだか謎が多かったけどパストラミを助けたことで犬たちの仲間として認められ、結果犬との同一化が進んだみたいなことなのかなあ。なぜ町の人が消えたのかはよくわからなかった。犬が認める人間は1人だけだから?あの町に住む犬には何か特別な力があるとか?まあ深く理解しなくても良いものかなと気持ちを落ち着けた。
藁の夫の話は……わからなさすぎた。
周囲の反対を押し切り藁と結婚した←どんな世界線やねん。「がっくし。」がなんだか可愛いが藁の中身が楽器というのもわからない。し、妻が燃やしたいと感じているのも恐ろしい。みんなどんな気持ちで読んだんだ。どんな気持ちで読むものだったんだ。まあ正解なんてないけど、終始「ええ……」と思っていた。
実は宇宙人だとされてる芸能人の検証動画とかあるじゃない?エラ?があったり、まばたきが変なやつ。あれは合成かもしれないけど、なんかあれを思い出した。結婚生活は、自分と違う"異種"たる相手と線を引いてもいいし、融け合ってもいい、その選択ができるのはいいことだよな。自分は……難しい。もうだいぶ融けてしまっていると感じる。今鏡を見たら、顔のパーツがいそいそと動き出すかも。