本谷有希子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(01)
罪や罰,自意識,渇きと潤いというさまざまな連関があり,中盤あたりを読み進めるうちに,ふと,ドストエフスキーの独白に思い当たった.
文庫版の解説にもあるように,確かにこの小さな物語は,主人公の女性の長いモノローグ(*02)であったのかもしれない.そこには他者が存在しているようでもある.男性,女ども,家の歴史,水,そして他人のような自分など,モノローグを語る主体の存在の危うさも示され,主体が他者の関係性の間にか発生していないようにも思える.
対話や会話の内容はいつも嘘であること,その嘘を成立させている身体や物の方にアイデンティティの対象が向いてしまうのは,そちらの即物の間の関係のほうがよ -
Posted by ブクログ
年代ごとに切り取られる”ある女性”の日常とその感情。
自分の言いたいことを言えるようになる瞬間
目の前の人間が本当に一緒にいたい人ではないと確認する瞬間
人にしてもらいたいことをしてもらえた経験と
それを求めるようになったきっかけ
リンデという登場人物の素顔。
それはどんな女性にも当てはまるものではないかもしれない。
ただ、その抱える不安や痛みには
どこか人間として絶対的な何かを内包しているようにも思える。
個人的にはジョウさんとの関係の中で出てくる47歳のリンデと
郵便配達人を待つ63歳のリンデに魅せられる。
それは共感とも違う、けど、何だか理解の中にある感情。
僕はまだ47歳でも63 -
Posted by ブクログ
ネタバレ女優志望の女性が両親の葬儀のため実家に帰ったことから巻き起こる家族内の確執とその結末を描いた物語です。
どこかにいそうと思える部分がなくはないものの、現実離れした個性を与えられた登場人物が何よりも印象的でした。
特別な人間でありたいという思い。
自分の負の側面から目を背けること。
本人が大真面目でも、他人から見て滑稽であること。
誰もが経験するありきたりなものと思えますが、その歪さを何倍にもして見せつけられました。
登場人物たちの姿は読後振り返ってみると滑稽としか言いようのないものですが、ままならない性質や環境に対する切実さ・重々しさは尋常でなく、悲劇というのか喜劇というのか判別不能な -
Posted by ブクログ
悲しみの愛ってなんだろうか。
憎悪に満ちたなんとも烈しくて凶暴な話だった。
両親の死をきっかけに東京から戻ってきた姉の澄伽が、かつて自分を貶めた妹に復讐をしかける。
この姉がくせ者というか、プライドの高さがエベレスト級なのである。
「自分は特別なんだ」という自意識はこんなにも周囲を破滅させていく恐ろしいものだったとは。
突き抜けすぎていて、読者としてはいっそ面白いほどだったのですが、それでも拭えぬ絶望感。
澄伽を救おうとする兄の宍道が、結局のみこまれて身を滅ぼすところなんて目も当てられない。
でも、不思議だ。
みんなはいつ気付くものなんだろう。自分は特別な存在なんかじゃないんだってことに。
才
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