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弾いている私の手首の下に尖った鉛筆が近づく――。優しいピアノ教師が見せた一瞬の狂気「アウトサイド」、カーテンの膨らみで広がる妄想「私は名前で呼んでる」、ボディビルにのめりこむ主婦の隠された想い「哀しみのウェイトトレーニー」他13編。キュートでブラック、しかもユーモラス。異才を放つ著者初の短編集にして、大江健三郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
⚫︎感想 ひとつひとつ、大変興味深い短編が13編。 語り手の年齢、性別を自在に操る感覚に感銘を受けた。日常の設定からわずかに逸脱していく感覚が共通していて、興味深く読めた。また読み返したい。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 弾いている私の手首の下に尖った鉛筆が近づく――。優しいピアノ教師が見せた一...続きを読む瞬の狂気「アウトサイド」、カーテンの膨らみで広がる妄想「私は名前で呼んでる」、ボディビルにのめりこむ主婦の隠された想い「哀しみのウェイトトレーニー」他13編。キュートでブラック、しかもユーモラス。異才を放つ著者初の短編集にして、大江健三郎賞受賞作。
13の短編が収録されている。まず2つの作品を続けざまに読んだとき僕は、ずっとこれを求めていたに違いない! と目の覚めるような想いとともに、自分の読書脳と創作脳がほの温かく躍動し始めるのを感じたのでした。わかりそうな人たちに、「ちょっとこれ読んでみ」と前のめりで薦めたい。見つけた!感が泡立つのです。 ...続きを読む 話を展開をしていくために言葉のバランスを考えたり表現を考えたりしながら書いている部分と、内容や自己に沈潜して書いている部分と、そしてもともとの発想があると思うのだけど、三位一体的でした。そしてぎゅっとして無駄がない。 以下、とくに好きだった3作品についての感想です。 「私は名前で呼んでる」 カーテンのふくらみから妄想と記憶が流れ出す話。こういう、なんともいえない錯覚の渦中にいる感じってあるなあと思う。でも、言葉にできるほど意識の腕が届いていない領域のものでもある。この、書き手の「意識の立ち位置」みたいなものを考えないわけにはいかない。そんなところに立っていたか!と言うような立ち位置から書いている気がした。目を閉じて想像や思考の世界に耽溺しているだけでは書けない。だからといって目をかっと見開き外の世界をつぶさに見つめ続けるだけでも書けない。言うなれば、薄目で外の世界を眺めながら思考や想像ともつながっている意識で書いたような小説、という感じがして、そこを対象化して言葉にしたのがすばらしい。 「マゴッチギャオの夜、いつも通り」 猿山のなかのいっぴきの猿。名前をマゴッチギャオという。その猿山にいっぴきのチンパンジーが入れられることになり、マゴッチギャオはおそるおそる近づいてみる。この作品はもっとも寓意を感じるような話で、印象深い。ラストの締め方に一撃を食らいます、それもやられてしまう一撃ではなく、なんていうか力がわくような一撃です。 「ダウンズ&アップス」 主人公のデザイナーは、自分にこびへつらいお世辞ばかり言われる環境を、とても心地の良いものと肯定している。それも、強固な肯定感で。意見を言う若者を、表向きは物珍しさのために近くに置くようになるのですが、それでも、自己肯定感の恒常性のほうが強かった。意見を言う若者を近づけたのは、ほんとうに、物珍しさのためだけなのか。主人公の心の中にはいっさい迷いがないようではありますが、実は無意識のほうで渇望しているものがあったのだろうなとうっすらと思うのでした。しかし、この主人公の自己肯定感の強さはほんとうにすごくて、読んでいると、主人公が穢れのないくらい潔癖に正しい、と思えてしまうくらい。それほど、この短い話に揺さぶられてしまった。主人公像としては、アンディ・ウォーホルが思い浮かびました。 というようなところです。僕も自分の小説を書くにあたって、真似したいわけではないのだけど、自分の才能をぐいいっと空間の隅々まで伸ばして書くような書き方をしてみたいです。読み手としては興奮するし、書き手としては刺激になりました。よい出合いでした。おすすめです。
一冊の本でジェットコースター体験ができる。 「は??」 「ええええ!!」 「嘘だろ…」 「どういうこと」 新しい話を開くたび、常識や現実が派手に壊される。 なんだこれ、なんなんだコレ。 ただ間違いないのはどの話も恐ろしく面白い。 どこかが確実に狂っているあべこべな世界なのに、妙な現実味と手触り...続きを読むがある。 一度読み始めたら最後、終わるまで降りられない。 本谷有希子という奇才のエンターテインメント性を 思う存分楽しめる大満足の一冊だった。 個人的には「哀しみのウェイトトレーニー」「亡霊病」がすき。 彼女はヤクでもきめてるのか。
シュールなユーモアが光る短編集。 日常の風景の中に絶妙な違和感を埋め込んだ世界観に、ぐいぐい引き込まれた。 著者の想像力に脱帽。 「マゴッチギャオの夜、いつも通り」、「亡霊病」がとくに印象に残った。 「Q&A」の畳み掛けていく語り口調も面白かった。
この人の書く文章は心地よすぎて、いっそ毒であるように感じる。「哀しみのウェイトトレーニー」「亡霊病」「Q&A」がとくに好き。
ずっと、クスクス笑いながら、でもどこか、後ろを振り返りたくなるような怖さもありつつ…短編だからこそ、後をひきづることなく読み終えられました。
本谷有希作。各話趣向の異なる短編集。 いい意味で狂ってる。筒井康隆風味。 「彼女たち」「タイフーン」の勢いはヤバかった。
怖いような、不思議なような、解説にもあるがなんとも奇妙な味のする短編集。 「哀しみのウェイトトレーニー」「マゴッチギャオの夜、いつも通り」「いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか」が好き。 「Q&A」からの「彼女たち」の流れもおもしろかった。
一つ目からガッツリ心を掴まれた短篇集。非常に短い短篇ばかりながら、どれもこれも違った世界観で構成されており、読んでいて飽きがこない。 なかでも面白かったのは、一つ目の短篇「アウトサイド」。中学生が抱く、みみっちいけど残酷な悪意と、そんなものを一瞬で吹き飛ばすような大人の底なしの狂気と闇。 最後...続きを読むの短篇の〇〇も味があって良かった。 『異類婚姻譚』『腑抜けども(略』も良かったけど、エンタメ的な意味ではこれが一番面白かったかな。
奇想天外な物語の短編集だが、どの作品もかなり深い内容やオチになっているなと感じた。 本谷有希子らしい一冊になっているが自分はやはり長編の方が好みだす。
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幸せ最高ありがとうマジで!
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