本谷有希子のレビュー一覧
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寄生虫の一種にロイコクロリディウムというのがいて、かれらは中間宿主であるカタツムリの意識を収奪してゾンビ化させると、終宿主である鳥類に見つかりやすい明るい場所へと誘導する特徴を持っている。なぜこの生き物の事を書いたかといえば、本作のキーであるSNSや所謂映えにそれと近いものを感じたからだ。主人公は何がなんでもフォロワーを増やしたい正に寄生されている側の人間である。ただひとつ違うのは自らを承認欲求と自意識が生み出した子だとはっきり認識している点。絶対的な価値基準をフォロワー数に置き、他者と接する時マウントを取らずにはいられない、実に卑小で滑稽な人間ではあるものの、他でもない本人がその卑小さ滑稽さ
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ネタバレSNSのフォロワーを増やすことに己の全てを囚われており、他者とは迷惑を介してしかつながり合えず、店員に難癖をつけてマウントを取ることをライフワークにしているミクルと呼ばれる女性が主人公。またの名を勘解由小路、だいなごんあずき、五百旗頭、大右近。本名不詳。
現代ではわりに見かける設定ではあるけれど、主人公の奇天烈っぷりと暴走っぷりが突き抜けていてサイコーだった。近年の綿谷りさと金原ひとみの作風を足して二乗したような感じ。
回転寿司店で、寿司ネタに唾を擦り付けるという迷惑行為をくり返すきょうだいを目撃したとき、勝手に姉のようなシンパシーを感じているシーンが好き。 -
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「夫婦というのは不思議なものである」
言わずもがな、なんて身も蓋もないかな。
当然といえば当然なのだから。きっと家族になる過程で何かがあるのだろう。もしかしたら目に見えないだけで、夫婦ってこういうこともあるのかなあ、なんて、それもまた然り、なのかもしれない。異変や変化に気付くこと、気付けそうで気付かないこと、気付いているのに気付かないふりをすること…いろいろあるけれど、見てみぬふりのほうが、結局のところ、わかりやすくて良いのかもしれない。
きっと物語は、夫さんにもあるのだろうし、むしろ無いわけがないだろう。きっと彼も、あれやこれや折り合いを付けて、折り合いを付けて…付けて、付けて、付けて付けて -
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ヤンキーのオーナーたちとの隔たりが切ないんだけどなんかギャグっぽくも思えてあまり深刻になりすぎずそれがよかった。寧子が自分と津奈木との関係を葛飾北斎の絵の奇跡的1秒に喩えたくだりが良かった。多分、ピカソ展のあとのラーラリラーとラーラリヒーのくだりがこの二人にとって富嶽三十六景的瞬間だったんじゃないかと思う。人間なんて基本的にわかり合えないものだし、その一瞬があっただけでも元は取ったのではないかな。
あの明け方のの時間軸は素直に生き愛の後日談と捉えてよいか?別れたものだと思ってたけど津奈木と寧子があんな感じで続いてるのが嬉しかったし愛しいな〜と思った。 -
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純文学作家の発想
ひとつづつ評していく。
川上弘美。未来SF。
発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
妙にSFが現実路線のわりには
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